中原ミズキがスパダリ男装美女にレズ堕ちする話 作:あんみつ炙りカルビ
次はぼっちざろっくのアニメを見終わったら書くかも
「おっじゃましまーす!!」
「………え、と。何でここに?」
真島によるテロの後、椿は渡米してマジシャンとして復帰していた。やはりと言うべきか、延空木の件について色々詰められはしたが、最終的には納得して貰って肩の力が抜けたところだ。
そして、半年間、彼女は世界を股にかけてマジックショーを行っていたのだが、その傍らに大好きな人はいない。
『千束が失踪したのよ。店長が心臓を手に入れたから、死ぬ心配はないんだけど………あいつも式に呼びたいからもう少し待っていてくれない?』
お互いに近況が落ち着いて交わしたラブコールの内容はそんな約束だった。呆れた彼女の申し訳なさげな言葉に椿は勿論二つ返事でOKした。
千束が生きてる事はいい事だし、彼女を結婚式に呼びたい理由も分かるからだ。それに結婚自体、根回しにもまだまだ時間がかかる。
同性婚も昨今に比べれば比較的に受け入れられてはいるが、忌避する者たちもまだ多い。
それを納得させる為にも時間をかける事は必要事項だったのだが………あろう事か、ミズキが探してるであろう千束が目の前に現れれば王子様の仮面なんて容易くズレてしまって。
「スケジュール見ましたよ〜暫く厄介になりまーす!」
「う、うん? いや、よく僕が借りてるホテルの部屋がわかったね」
「最近のSNS舐めてはいけませんよ〜暫くしたら出ていくのでそれまでお願いしますよ〜」
「まあ………いいけどさ。僕もショーが終わったら出ていくよ? 近日には」
「いいですいいですって。私もバイト見つけたら、部屋借りるんで。その前に少しお話がしたくて。入っていいですか?」
断っても入って来るのは間違いないので、部屋に招き入れる。わざわざ沖縄五つ星スイートルームを借りてたことが功を奏したようだ。
持参したコーヒーの粉でコーヒーを淹れて、ベッドで跳ねる千束に差し出せば、彼女は興奮した趣で、
「いや〜ミズキも幸せものだな〜こんなお金持ちで優しいイケメンと結婚できるなんてさ〜」
「逆だよ。ミズキが僕を選んでくれたんだ。ミズキなら幾らでも引くて数多だって言うのに」
「アレが? ナイナイ。しかし、ミズキが結婚か〜」
コーヒーをサイドテーブルに置いて、使ってないベッドの上をゴロゴロする千束。あまりにも遠慮がないが、その振る舞いは何かを誤魔化すように見えて。
「ねえ、椿さん」
「うん? 何だい?」
「結婚ってさ、どんな気持ち?」
投げかけられた他愛ない質問。だとしても何かを悩んでいるような彼女の言葉に、椿もまた少し、思案して、
「今は正直浮かれてるね。どんな未来が待ってるだろう、楽しいことがあるだろうって」
「でも楽しいことばかりじゃないわけでしょう? ミズキや椿さんの心臓が急に止まったりしたら? いつ何が起きて当たり前がなくなるかもしれないじゃん」
そこまで言われて質問の本当の意図に椿は気づいた。
「………迷っているのかい? 自分がこれからどうすればいいか」
「………やっぱり、何か聞いてたりする?」
「ミズキからは簡潔にね。それで、悩んでるのか。何が出来るか、何をしたいかに」
「最初はさぁ………ああ、死ぬんだなって思って死に場所探してたんだよね。半年くらいして? あれ、私、死なねえな?ってなって。ひとまず行きたかった所に来てみたわけですよ」
まるで捨てられた子猫みたいに彼女は自分の居場所を探しているのだ。急に与えられた未来を前に怯えているただの少女がそこにいた。
かつての自分とは違うとしても、悩みの方向性は同じもので。
「それじゃあさ、書いてみようか」
「書く? 何を?」
「『やりたいことリスト』だよ。『最高の人生の見つけ方』って映画は知ってるだろ?」
メモ用紙を渡して、10個の丸を書いて渡す。
ミズキに慰められた自分も作ったこれからの人生でやりたいこと、したいことリスト。それを希望に今まで生きて来た。
「何でもいいんだ。恋愛をしてみたい。海外に行きたい。無謀でもいい。書きたいものを書いてごらん」
渡したメモを受け取って、彼女は思案してペンを走らせる。
端末を見て、考えて、昔を思い返して、記していく。
その小さな未来予想図は数時間後に完成して。
「出来た!」
「どれどれ?」
①ハワイで綺麗な海とフラダンスを踊る
②ハリウッド俳優にサインをもらいたい
③映画の舞台となった場所を巡りたい
④リコリコ喫茶店を再開したい
⑤恋愛をしてみたい
⑥成人式に出て振袖を着る
⑦ラスベガスでカジノをやりたい
⑧世界一美味しいパンケーキを食べる
⑨オーロラを見てみたい
⑩誰かの役に立っていたい
「ほとんどが海外になっちゃうからさ、多分無理だとは思うけどね………」
「無理だなんてまだ早いよ、千束さん。僕だってマジシャンになれるなんて、リコリス時代は誰も信じていなかったくらいだ」
頬を掻いて、照れたように言う千束に椿は優しい声で語りかける。
出来るわけないと誰もに思われた自分が夢を叶えて、今はここにいるのだから。
「後、数年すればリコリスは卒業だ。そこからは君の人生が始まる。歴代最強の名前を使えばこんな夢を叶えるくらい安いものだよ。だから──未来を見るのを怖がらないでほしい」
怖がって怯えた未来には、幸せで笑っている自分がいたと過去の自分に言えるくらいには彼女は今の未来に来れてよかったと思っている。
だからこそ、自分の恩人にもそうであって欲しいと願うくらいに。
「だね………その日その日を楽しんでいけば後悔なき人生が送れるってわけか。ちょっとゆっくり考えてみるよ。時間はあることだしね」
ある種の納得が出来た彼女は穏やかに笑って、立ち上がると、スーツケースを開いて、取り出したのは水着。
「というわけで、沖縄に来たから海を満喫してきます! ありがとございました! 椿さん!」
「着替えなら一階だよ」
「ラジャー!」
復活した千束は浮き輪と水着を片手に廊下に飛び出して行く。
椿は彼女の明るさを取り戻した事を嬉しく思いながら、携帯を取り出して、
「ああ、ミズキ? 今、沖縄に千束がいるんだけど………誰か迎えに来れない?」
あっさりと彼女を売ったのだった。
*
「今でも半年前に椿さんが私を売ったことは許さない」
「………今からその人と結婚する人間に言う事か?」
何処までも行けそうなその夏空の下、集まった人数から何らかのイベントを思わせるその中心に、白いタキシードに身を包んだ絵本の王子様のような椿がいて。
彼女は来てくれたスポンサーや俳優達、友人のマジシャン達と挨拶を交わして新婦を待つ。
そして、その新婦は現在雰囲気に合わせた純白のウエディングドレス擬きを着て、マリッジブルーに苛まれていた。
「顔、真っ青ですよ。ミズキさん」
「うっせえ………分かるだろ、なあ、なあ!」
「あんなにベタベタしてた癖に間近になって逃げるんだから」
「千束が言えたセリフじゃないですけどね」
可愛らしいフリルがあしられ、白の髪を後ろでポニーテールに纏め、露出は極限まで抑えられているが上品な印象と、彼女の素の美しさを引き出したドレスと同じように顔色は真っ白だ。
「結婚が嫌なわけじゃありませんし、むしろ喜ぶべきでは?」
「今更になって、自分が釣り合うかどうか悩んでるんだよ、このアル中は。遅すぎない?」
「遅すぎねえよ、やばい………心臓が口から出る」
「一生のメモリアルになりそうですね」
外から歓迎のベルが鳴って、開始の時間が間近に迫る。千束もたきなもそれを聞いて、ニマニマとした顔で控室を出ていき、代わりに入って来たのはダンディさを溢れ出す初老の男。
「まさか店長が父親代わりね………」
「不服か? ミズキ?」
「まさか。父親代わりできるのはアンタしかいないでしょうし………」
腕を組んで外に待つ椿の元へ向かうミズキとミカ。バージンロードを歩くミズキとミカに会話はない。こんな時に気が聞いた会話ができるほど2人とも余裕はなくて。
「ミズキ」
外に出る扉を前にして、ミカは腕を外してミズキの背中を押す。
その時に呼びかけた小さな声は、オーケストラの生演奏にかき消されながらも、確かにミズキの耳には届いていて。
「──幸せに、なれ」
開いた扉の前に振り向いたミズキが見たのは頬を濡らすミカの姿で。それに釣られて泣き出しそうになるミズキは深く息をついて、前を向く。
待っているのだから、これから先も数えきれないほどの思いをいつまでも送り続けて行く最愛の人が、手を差し出して待っている。
ずっとずっと先も繰り返し、手を握ってそばにいてくれる伴侶が。
「綺麗だよ、ミズキ。惚れ直した」
「何回目よ、もう………」
相変わらず無邪気な君の笑顔が夏の日差しよりも輝いていて。
貴方の横顔に見惚れている暇もなく、式は滞りなく続いていく。
「指輪の交換を」
英語で言われたその言葉に従って、指輪が薬指に嵌められる。これから先、見る度に思い出す幸せの象徴、運命の糸がその手に繋げられたのだから。
「では誓いのキスを」
ベールを優しく上げた先には見慣れた顔の彼女がいて。だけどその顔にはちょっとばかり余裕がなくて。仕方ないのだけど、何だか少しおかしくて、微笑んで彼女を待つ。
それは、一瞬にも満たないけれど確かな熱を交換して、湧き上がる拍手と舞い上がる花吹雪が、彼女の花嫁になった事を表している。
いまだに実感が湧かないけど、優しく手を引く椿にミズキもまた泣き笑いながら、歩いて行く。
50年後の未来もきっと、世界中の誰よりも、貴方と2人でこの先も歩いて行くと確かな予感に身を包まれながら。
*
「結婚おめでとう、ミズキ。疲れてるようだな」
「どーも、司令。そりゃ、旦那の知り合いが映画やらドラマやらで見た顔ばかりだと血の気が引きますよ! 見知った顔にどれだけ安堵する事か」
「よくわからないが、幸せそうなら何よりだ。仕事はどうするつもりだ?」
「暫くはハワイでリコリコ喫茶をやりますよーだ。椿のショーにはなるべくついていきますけどね」
「そうか。DAとしては特に言うことはない。幸せにな」
わざわざ来てくれた事に感謝はしつつも、何かしらの圧を感じる楠木司令を終えて、次に来てくれたのはフルーツジュースを持った金髪の少女。
「ママ」
「おいバカ、やめろ。冗談じゃ済まなくなるだろ!?」
「というのは置いといて。ミズキ、千束とたきなの戸籍は貸しにしとく。良かったな、行き遅れにならなくて」
「減らず口ばかりか! もうちょっと祝え!」
「冗談だ。結婚おめでとう、ミズキ。夢が叶って良かったな。ところで椿は何処だ? お色直しか? それと服、変えたのか?」
金髪の少女ことくるみが不思議そうに問いかけたミズキの服は先程までの純白のウェディングドレスはまた違う黒を基調としたシックなタキシードを纏っていた。
「待ってんのよ、私の妻をね」
髪をアップにして、出来る女を醸し出す彼女が見る先、建物の扉が開かれて、照れたような声の彼女が腕を引かれて飛び出して来る。
「や、やっぱり似合わないって、楓!」
「ぐだぐだ言わないの! せっかくの一生に一度のイベントなのにウェディングドレスを着ないのはおかしいでしょうが!」
「だからって、お色直しで着なくても!」
「うるさい! つべこべ言わずに来る! ほら!」
マーメイドラインを主体としたパンツルックのウェディングドレスとは真反対の茹で蛸のように顔を真っ赤にした椿は相棒に連れられて、立ち上がったミズキの胸におさまった。
「あ、み、ミズキ………」
「あら、可愛いわね。いつもと雰囲気が違って、綺麗だわ。今まで見て来た誰よりも」
「う、あ、う………」
大好きな人に歯の浮くような台詞のオンパレード。自らが言う分には構わないのに、新妻に立場を逆転されて、言われるのがどれだけ恥ずかしいかは椿の花みたい耳まで真っ赤な彼女が語っている。
「椿。私は移り変わりゆく季節をこの目で貴方と眺めていたい。貴方とならどんな色も景色も愛する事ができそうだもの」
「も、勿論さ、ミズキ。僕も君となら、何処へだって楽しめる………」
「そうね。輝く星のような貴方となら、数えきれないほどの願いも夢もいくらでも叶えていけると信じて行けるわ。だから──」
ミズキは彼女の手を掴み、跪く。
何度も隠れて練習した成果は、酸素を求める魚のように口をパクパクさせる椿の姿に表れていて。
「私の妻になってくれない? 椿。貴方を愛してるわ」
直球すぎる愛言葉に、最早頷く以外の感情表現を失った椿が首が取れそうに頷いたのを確認して、ミズキは椿の手の甲にキスを落とす。
まるで演劇のようなシチュエーションに千束は騒ぎ立て、周りも釣られて口笛を吹き出し、歓声が上がる。
「はぁ〜慣れない事はするもんじゃないわね。どう? 椿? 記憶した?」
「………記憶回路が焼かれた気がする」
パタパタと胸元を仰ぐ彼女にミズキはしたり顔、歳上の威厳は果たせたとばかりに椿の腰を抱き寄せて、
「私も一緒よ。アンタに脳味噌焼かれたんだから。責任とってよね」
照れくさそうに呟くミズキに椿もまた、ミズキの指先に自らの指先を絡めて寄り添って
「責任くらい取るよ。だって──いつも『私』の深いところに貴方がいるんだもん」
王子様の仮面を取り去った一人の少女の言葉にミズキは穏やかな笑みを浮かべて、キスをして、椿が持っていたブーケを投げるように背中を押した。
「せーのっ!!」
可愛らしい掛け声と共に投げられた愛がこもった花束が空を舞う。
孤を描いて、飛んだ先、その先にいるのは、与えられた未来に怯えていた少女がいて。
「よっしゃぁ!! 私のものー!!」
これから先、彼女もまたその目に映る景色全てが光のない闇の中を映す事になるかもしれない。けれど悲しみに怯えて逃げ出しそうになったとしても、
「おめでとうございます。千束」
そばにいる誰かの言葉に救われるかもしれない。
他でもない貴方の言葉に救われた彼女だからこそ、ある種の確信がそこにはあって。
「ミズキ」
「何? 椿」
花が咲くような笑顔の彼女は、幸せを噛み締めるように、
「これから先も──私と一緒に歩いてくださいね」
繋いだ心を離さないと、強く手を握りしめていた。
これにておしまいです。ミズキさんはいい女。復唱。
後は結婚後のイチャイチャを番外編で投稿するかしないかって感じになります。ありがとうございました。