悪魔の海域航海、七日目の夜。
見張りを交代したスヴェン達は遅い夜食を掻っ込むように口に運ぶ。
あとは軽くシャワーでも浴びて休息に入るのだが、練日の活動に船員も慣れたのか陽気な声で語った。
「今日も大変だったな」
「デビルシャークとポイズンサーペントの同時襲撃……スヴェンと同じ当番で良かったと思うよ」
そんな言葉をかけられたスヴェンは戦闘時を振り返る。
最初の頃は援護にあまり期待できないと思っていたが、五日目となると彼らは適切な援護を行うようになった。
ティンギルの死を忘れた訳では無いが死なないために、互いに船員を死なせない為に彼らは立ち直り、迷いや不安を払うことで本来の実力が発揮されるように。
そのおかげで戦闘時には随分と助けられ、その分甲板で雑談する時間も増えた。
「俺も随分楽させてもらってる」
「そうかぁ? 魔力を纏った衝撃波とか瞬時にモンスターを背後から強襲とかさ、かなり動き回ってるから疲れたりしないの?」
「常に走り続けて戦うよりはマシだ」
話しを聴いていた船員がそんな戦闘を想像したのか、
「それは……うん、考えるだけで気が滅入りそうだ」
嫌そうに眉を寄せていた。
孤島諸島に上陸すればそんな事も言ってられない状態になるが、今は言わぬが吉だ。
スヴェンは敢えて続く苦難を隠し、同意を示すように頷く。
そして食事も終え、そろそろシャワーでも浴びようかと全員が立ち上がった時ーー航海士のヨハンが慌てた様子で食堂に駆け込んだ。
彼が顔面蒼白で息を荒げる様子に、何かが起こったあるいは厄介なモンスターが出現したのだと悟ったスヴェンは、背中にガンバスターを背負う。
「なにが有った?」
「で、出たんだ! ご、ゴーストシップがっ!」
夜の海域にゴーストシップの出現、デウス・ウェポンでも人気な夏定番のホラーハウスを思い出しながらスヴェンは訊ねる。
「ゴーストシップってのは厄介なのか?」
「ゴーストシップそのものは魔法も物理攻撃も通用しない! 討伐するには中に潜むネクロマンサーを討伐しなきゃダメなんだ!」
それはゴーストシップというよりはネクロマンサーと呼ばれるモンスターなのでは? スヴェンがそんな疑問を浮かべと、船内が激しく揺れ出す。
「体当たりでも受けたか!?」
「いや、そんなに強い襲撃は無いから魔法か弩砲かもしれないぞ!」
今の見張り番はミアと航海士、そして二人の船員だが、ミアには遠距離から攻撃する手段が無い。
アシュナも呼ぶべきか? そんな事を思案したスヴェンは船員に振り向く。
「まあ、ここに居ても仕方ねえ。俺は甲板に行くがアンタらは休んでて良いんだぞ?」
「おっとスヴェン、俺達の体力を舐めて貰っちゃ困るぜ!」
船員達はやる気に満ち溢れ、強気な表情を浮かべていた。
▽ ▽ ▽
増援のために甲板に駆け付ければ既に甲板は武装したスケルトンに溢れていた。
そしてプリンセスマーメイド号の左舷に隣接するゴーストシップが視界に映り込む。
破れ焦げた帆、鋭く大きな何かに貫かれ、反り返った甲板に溢れるスケルトンと船員だったと思われる亡者が呻く。
何よりもゴーストシップが纏う冷気と恐ろしげな気配がスヴェンの隣に並ぶ船員達を恐怖させた。
「やっぱり休んでていいかな?」
さっきまでの威勢は何処へやら。そんなツッコミを呑み込み、徐々に囲まれ始めるミア達に眉が歪む。
ミアが魔力を纏った杖で棒術を繰り出し、スケルトンを蹴散らしているものの既に彼女の側は負傷者ばかり。
そして続々と甲板に降り立つスケルトン。これでは幾らミアでも詠唱する隙が無い。
スヴェンはガンバスターを引き抜き、こちらに駆け付けるスケルトン共をまとめて斬り払う。
「……障壁を纏ってねぇな。亡者と同じ原理か?」
メルリアの地下遺跡で召喚された亡者は障壁を展開することは無かった。
だからこのスケルトンもネクロマンサーに召喚された存在と推測したスヴェンは、欠けた剣を杖で防ぐミアとその背後で槍を握り締め、彼女の背中を狙うスケルトンに気が付きその場を駆け出す。
「数が多いな! ヨハンは他の連中にも知らせてくれ!」
「分かってるけど、その前にっ」
スヴェンがスケルトンの頭部を足場にガンバスターをミアの背中を狙うスケルトンに投擲し、
「『炎よ、屍を撃ち抜け』」
ヨハンの詠唱によって魔法陣がプリンセスマーメイド号の甲板に形成され、火球が甲板に群がるスケルトンに爆ぜる。
スケルトンが爆風に舞い、甲板に隙間を生み出す。
スヴェンはスケルトンの頭部を砕いたガンバスターを拾い、ミアに欠けた剣を振り下ろすスケルトンを彼女の横から蹴り飛ばした。
「す、スヴェンさん、休息はいいの?」
負傷した二人の船員とゴーストシップからプリンセスマーメイド号の甲板に飛び移るスケルトンの群れに息を吐く。
「こんな状況で休息なんざできるか」
「スヴェンさんには休んでて欲しいけど、でも危なかったから助かったよ」
「こんな時は素直に助けを求めんのが正解だ。それよりもアンタは負傷者を治療してやれ」
「うん、その間は援護をお願い」
ミアはすかさず杖を構え負傷者に向けて詠唱に入る。
「『この者達に癒しの光よ』」
そんな彼女にゴーストシップのスケルトンが弓矢を構え、矢を放つ。
脳味噌が無いから知識など無いように思えるが、治療魔法の詠唱に入ったミアを即座に狙うあたり、スケルトンとはいえバカにできない。
スヴェンはそんな事を考えながら飛来する矢を斬り払い、ついでに突進を仕掛けるスケルトンを纏めて薙ぎ払う。
ガンバスターの刃にスケルトン共の骨が砕け散り、そこへ再び複数のスケルトンが武器を振り抜く。
だが、横合いから放たれた疾風がスケルトンを吹っ飛ばす。
「ミアのおかげで復活!」
「覚悟しろ骨野郎!」
魔法を唱えた船員が復活と共に斧を片手にスケルトンに駆け出した。
「あ、流した血と体力までは回復しないのに……」
「キリがねえんだ、少しでも手数は必要だろ」
「ゴーストシップを操るネクロマンサーを討伐しない限りは終わらなさそう……それに時間をかけてると他のモンスターまで来ちゃうよね」
数に押されている状態で他のモンスター襲来など勘弁して欲しい。
嫌な状況と想像にスヴェンは眉を歪めながら飛び掛かるスケルトンを拳で殴り骨を粉砕する。
「まあそこまで硬くねえからマシか」
「スヴェンさんにとってはそうかもだけど、私達は魔力を使わないと少し厳しいよ」
それはそれで早急にネクロマンサーを討伐しなければ数の暴力によって全滅してしまう。
戦場で何が怖いかと問われれば、一騎当千の強者は当然だが絶えず湧き続ける数の暴力が最も恐ろしい。
ここが逃げ場の無い海上ならなおさらプリンセスマーメイド号の死守も必要だ。
スヴェンが足を一歩踏み出せば、ゴーストシップの弩砲から魔力の矢と魔力の球が同時にプリンセスマーメイド号を襲う。
甲板の左舷を魔力の球が直撃し、船体を激しく揺らす。
「うわ、きゃあっ!」
揺れに足を取られたミアが咄嗟にスヴェンの左腕を掴むことで転倒を防ぐ。
そこにチャンスと言わんばかりに嬉々として欠けた剣を振り下ろすスケルトンをスヴェンが睨む。
ミアの身体を引き寄せ右腕でガンバスターでスケルトンを欠けた剣ごと砕く。
「危なかったぁ〜揺れには慣れたつもりだったけど、スヴェンさんもありがとね」
ミアはそう軽く礼を告げながら左腕から離れ、駆け寄るスケルトンを魔力を纏った杖で殴り飛ばす。
「野郎共! 待たせたな!」
アンセムの声と共に同時に炎の熱線が甲板に攻め込んだスケルトンだけを薙ぎ払う。
一度に大量のスケルトンが炎の熱線に焼かれ、視界からスケルトンが消える。
だがそれでもゴーストシップから無尽蔵とも思える数のスケルトンがまたプリンセスマーメイド号の甲板に飛び移った。
そこに船内から飛び出した船員達がそれぞれの武器と魔法で迎え討ち、プリンセスマーメイド号の甲板が戦場になる。
「やっぱ内部のネクロマンサーを討伐する必要があるな。スヴェンは俺と来い! あとは誰を連れて行くべきか」
アンセムに指名されたスヴェンが頷くと、その隣でミアが手を挙げた。
「私も行く! 治療魔法は必要でしょ?」
確かにミアの治療魔法は無尽蔵に出現するスケルトンと亡者を相手にするなら必要だ。
だがネクロマンサーを討伐すればゴーストシップは沈む可能性が高い。スヴェンはその確認を含めてアンセムに問う。
「ネクロマンサーを討伐したら船は沈むのか?」
「あぁ、廃船も奴の魔法で無理矢理動かされてるに過ぎないからな」
沈むと判ってるゴーストシップにアンセムとミアを連れて乗り込むのはかなりリスクが有る。
そもそもミアは泳げない。此処は有る程度海中でもガンバスターを振り回せる自身が率先して行くべきだ。
「ならアンタとミアも船の防衛に着いた方がいいだろ」
「バカ言え、船長として沈むと判ってる船に船員だけを送り出せるかよ」
如何あっても船長であるアンセムはゴーストシップに乗り込む。彼の眼から向けれる硬い意志に説得は時間的猶予も無い状況では無理だ。そう判断したスヴェンは肩を竦めながらミアに視線を向ける。
「……スヴェンさんが担いでくれるよね?」
「泳げねえアンタを連れて行くほどバカじゃねえよ」
「なんだミアは泳げないのか、なら防衛に専念してくれ。俺とスヴェンで幽霊船デートツアーして来るから」
戯けるアンセムにミアは落胆し、
「ゴーストシップ内部で驚くスヴェンさんが見れるかと思ったのになぁ」
戯言を吐きながら接近するスケルトンを蹴散した。
しかしスヴェンはミアの震える肩を決して見逃さず、
「なら来るか? アンタが腰を抜かせば俺は平気で置き去りにする」
「ごめんなさい! 本当は怖いからかなずちを素直に喜んでますっ!」
スヴェンは背後に忍び寄るスケルトンに、振り向き様にガンバスターを斬り払い、アシュナに視線を向けた。
二本の短剣で不機嫌そうに素早くスケルトンを斬り刻む彼女にスヴェンとアンセムは顔を見合わせる。
素早く風の魔法も使えるアシュナならゴーストシップに乗り込んでもそこまで心配は無さそうだ。
そう考えたスヴェンはスケルトンを斬り払いながらアシュナの下に駆け付ける。
「今からゴーストシップに乗り込むがアンタの手を借りたい」
此処で手を借りると告げられたことが意外に思ったのか、アシュナは風の風圧でスケルトンを海に落としながら首を傾げた。
「一緒に行って良いの?」
「あぁ、いざって時はアンタがアンセムを強引にでも連れて離脱しろ」
アンセムの安全を優先させると告げた途端、アシュナが不満気に頬を膨らませる。
「むっ、魔力を活性化させれば2人とも運び出せる」
それはそれで大人二人が少女に担がれるのも如何なんだ?
スヴェンは僅かにアシュナに担がれる様子を想像し、同時にミアが大爆笑する光景も浮かぶ。
そんなことになればミアを海に蹴り落とさない自信が無い。
だが安全に脱出するにはそれも些細な問題であり、膨れるアシュナを納得させるのも一つだけだ。
「分かった、いざとなれば頼む」
「任された」
スヴェンとアシュナはスケルトンを斬り伏せながらアンセムの下に駆け寄り、彼からスケルトンと戦う船員達に指示が飛ぶ。
「よし、突入は俺、スヴェン、アシュナで決まりだな。他の野郎共は防衛に専念! 骨野郎共を船内に入れんなよ!」
「任せてください船長! 他のモンスターも警戒しやすんで!」
「スヴェン! 船長を頼むぜ! 俺は操舵手として回避に専念するからよ!」
そんな声を背中に受けながらスヴェン達は冷気を放つゴーストシップに乗り込んだ。
▽ ▽ ▽
ゴーストシップの崩れた甲板に群がるスケルトンとかつて船員だった亡者が一斉に襲いかかる。
スヴェンとアンセムが武器を構える中、アシュナが魔力を巡らせ、
「『風よ斬り刻め』」
詠唱と共に魔法陣が形成され、魔法陣から無数に等しい風の刃が縦横無尽にスケルトンと亡者を切り刻んでいく。
魔法一つで甲板に居た敵が一掃された隙に三人は崩れたドアを蹴破り、船内に入り込む。
だが一掃したにも関わらず甲板にスケルトンが再召喚され、狭い出入り口に駆け出した。
「アシュナ、魔法で塞いじまえ」
「ん、『風壁よ我が背後を守護したまえ』」
アシュナの詠唱によって形成された魔法陣が、暴風の壁を作り出し出入り口を塞ぐ。
そこにスケルトンが突破を試みれば、暴風によって身体が弾かれる。
あとは船内の中層。そこから感じる魔力を辿り、ネクロマンサーを討伐するだけだが、船内の抜け落ちた床と脆く朽ち果てた通路に思わず眉が歪む。
「下手をすりゃあ足元が抜けるか」
足元と内部に潜む敵を警戒しながら歩き出す。
「しかも船底は浸水してるだろうな……しかしまぁ、この船はいつのもんだ?」
悪魔の海域で遭遇したゴーストシップは孤島諸島を目指した冒険家と安易に推測できるが、
「アンタの友人の船って可能性は?」
二ヶ月前に消息不明になったアンセムの友人の船の可能性に付いて訊ねた。
「いや、それはねえな。アイツの船首は獅子を象ってるからな」
首を横に振りながらそう答え、アンセムが真っ直ぐな足取りで先に進む。
通路を進む中、大穴が生じた壁とその側で朽ち果てた無惨な骸が無造作に投げ捨てられていた。
あらぬ方向に捻じ曲げられた全身の骨、甲板の大穴といいこの船が一体なにに襲われたのか。
無惨な骸の横を通り抜けるスヴェンの腕を小さな手に引っ張る。
視線をわずかに向ければ、アシュナが外に顔を向けていた。
「一面海だが、何か見えたのか?」
「ん。この大穴って何でできたのかな」
如何やら彼女も大穴を作り出したモンスターが気になる様子。そこにアンセムが普段よりもトーンを落とした声で、
「キングクラーケンの仕業さ」
短く答えた。
キングクラーケンによって壊滅した冒険家が後を絶たず、そして沈没した船はネクロマンサーの移動船として利用される。
万が一キングクラーケンに組み付かれた場合、脱出することも容易では無いだろう。
▽ ▽ ▽
朽ち果てた通路を進み、中層に降りたスヴェン達を氷の矢が突如して襲う。
咄嗟にガンバスターの刃で飛来した氷の矢を斬り払うが、ガンバスターの刃が凍り付き銃口が塞がれてしまう。
凍り付いたガンバスターの刃にスヴェンは舌打ちを鳴らし、最奥に居る装飾品を身に付け、ボロフードを被った骸のモンスター、ネクロマンサーを睨む。
しかしネクロマンサーの魔力に意識を向ければ、魔力が消耗され弱ってる様子が見え、アンセムとアシュナが不思議そうに首を傾げた。
--まさか、スケルトンと亡者の召喚、船の浮上や弩砲の操作によって魔力を消耗していた? んなバカな話が有るか?
何度か眼を凝らしてネクロマンサーの魔力を視認すれば、やはりデビルシャークなど遭遇したモンスターと比較して魔力が消耗してる。
だがネクロマンサーを討伐すれば船は沈む。そう考えれば身を挺した道連れに眉を歪む。
スヴェンはアンセムとアシュナに視線を向け、
「障壁は砕く、アンタらはこの位置で援護してくれ」
階段と近い位置。この場所なら二人が脱出する猶予は得られる。
それに狭い一本道の通路で三人同時にネクロマンサーに向かうのは得策とは言えない。
自身の判断が正しいということは無いが、優先すべきはアンセムとアシュナの無事だ。
だからこそスヴェンは二人が有無を言う前に床を蹴り、ネクロマンサーの下に駆け出す。
「あ、おい! たく、しょうがねえなぁ」
背後から聴こえるアンセムのぼやきを聞きながら、スヴェンはネクロマンサーに魔力を纏った一閃を放った。
狭い通路の壁ごとネクロマンサーの障壁を刃が斬り裂き、スヴェンは愚かアンセムとアシュナまでもが眼を見開く。
障壁を展開したにも関わらずネクロマンサーが横一文字に両断され、屍が粒子状に離散していく光景になんとも言えない沈黙が漂う。
--消耗しすぎだろうがぁっ!!
内心でツッコミを叫び、激しく揺れ壁の穴から海水が流れ始める。
スヴェンは急ぎ駆け出し、先行するアンセムとアシュナを追いかけるように脱出を図る。
階段を一息で飛び越え、天井が崩れスヴェンの道を塞ぐ。
決して足を止めずガンバスターの刃で瓦礫を排除し、道を作ったスヴェンは通路を駆け出す。
だが船全体が縦に傾き、アンセムとアシュナが堪らず転げ落ちた。
「おわっ!」
「落ちる!」
浸水が進む中、スヴェンはガンバスターを鞘にしまい、転げ落ちる二人を掴む。
そしてすかさず両脇に二人を抱えたスヴェンが一気に壁を駆け上がる。
「お前さんの身体能力ってどうなってんの?」
「壁を垂直……ミアに自慢しよ」
浸水と船が沈む状態で二人が存外余裕そうだ。
しかし垂直に壁を駆け上がったはいいものの、出入り口が先から浸水に追い付かれるのが先か。
スヴェンは冷や汗を滲ませながら足に魔力を流し込む。
そして壁を一気に蹴り上げ、壁を足場に蹴り進みながら出入り口を通り抜ける。
完全に沈みかけたゴーストシップの上空に出たスヴェンは、プリンセスマーメイド号の甲板でこちらを見上げる全員に視線を向け--アンセムとアシュナを甲板目掛けで投げ飛ばした。
「おわぁぁ!!」
「んー!!」
二人の悲鳴が夜の海に響く中、スヴェンの身体は海面に落下する。
その瞬間、船員の一人が縄を放り投げ--スヴェンは縄を掴むんだ。だが引き戻しが間に合わずスヴェンの身体が海に落ちてしまう。
水飛沫と水圧に呑まれる身体、水分を吸った衣服が重みを増す。それでも幸いなのはモンスターが付近に居らず、サイドポーチの完全防水と銃弾のプロージョン粉末が湿気にやられない点だ。
「スヴェンを引っ張り上げろ!」
「急げよ! モンスターが来ねえとも限らないんだ!」
海中に沈んだスヴェンは船員達の手で救助され、
「ふぅ、海水ってのは相変わらず塩っぱいな」
口に入り込んだ海水を吐き出し船員達の安堵の息が響き渡った。