傭兵、異世界に召喚される   作:藤咲晃

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17-10.オルゼア王の悩み

 スヴェンがラウル達と温かな食事に舌鼓している頃。オルゼア王は自身の寝室でカトルバス森王と対面していた。

 

「友よ、国の方はどうか?」

 

「あまり芳しくは無いようだ。アルディアの解放により人質を失った邪神教団では有るが、未だ国内の隠れ家を転々としておるようだ」

 

 ミルディル森林国内に点在する邪神教団の隠れ家が一体いくつ在り、どこにリーシャを閉じ込めているのかが問題だ。

 人質状態のリーシャの救済には居処を知り、特殊作戦部隊による救出が望ましい。

 その為の部隊編成は完了しているが、邪神教団の眼を欺くには他の方法を用意する必要も有る。

 本来なら邪神教団の声明通りにレーナとシャルルに偽りの婚約締結をさせるべきだが、連中は既にミルディル森林国の隠れ家の何処かに潜伏している状態だ。

 そもそも見合いも無しに王族の婚約締結は成立しない。そのため--婚約を締結させる気も婚約破棄させる気も微塵は無いが、一度は邪神教団を欺くためにも形だけでも見合いをする必要が有る。

 二人の王族が見合いをするとなればあらゆる眼が見合い会場に注目する。当然邪神教団も自分達が立てた策に繋がると考え、見合いの様子を見に出て来るはずだ。

 

 --そこを一人でも捕縛し情報を吐かせる、か。

 

 しかし偽りとは言え、相思相愛のシャルルとリーシャに一度でも婚約破棄などさせたくは無い。

 幸いことに婚約破棄は両者の合意の上ではじめて成立する。魔王アルディア救出まで誘拐したリーシャと会わせなかった結果、邪神教団はまだシャルルとリーシャの婚約破棄には至ってない。

 まだ十分に間に合う可能性は有る。

 そのことを踏まえたオルゼア王は悩ましげな表情を浮かべ、

 

「娘と友の子を囮に使うのは心苦しいな」

 

 自身の策に深いため息を吐く。

 

「オルゼア王、無理に連中の事前策に乗る必要はないのではないか? 連中の企みは貴国と自国の民を対立、レーナ姫とシャルルの命だぞ」

 

 レーナとシャルルの安全を考慮すれば確かに無理に連中の策を逆手に取る必要は無いが、リーシャの身柄の安全も絶対だ。そうでもしなければ国家がテロリストにも等しい邪神教団の行動を阻止できなかったことになる。

 魔王アルディアの人質によって各国家の行動が大幅に制限され、三年も民に苦難と暗雲を強いることになった。

 そして七月二十四日にレーナの依頼を請たスヴェンによって魔王アルディアが救出されたが、まだリーシャが邪神教団に囚われたまま。

 オルゼア王はあらゆる可能性を模索、思考し最適な最善手を二つ考案した。

 一つは特殊作戦部隊による隠密行動、邪神教団の拠点に潜入させリーシャを救出する方法。

 もう一つは先程まで協議していたレーナとシャルルの偽りの見合い、そこにスヴェンを組み込むことで邪神教団の討伐を計る。

 尤もそうしてしまえばレーナとシャルルの安全は、エルリア魔法騎士団の小隊とシルフィード騎士団の小隊に任せる他にない。

 何方も確実とは言い切れない。ならいっそのこと二つの策を合わせるべきか。

 オルゼア王は意を決した眼差しでカトルバス森王に顔を向ける。

 

「長く思案していたようだが、その様子では結論が出たようだな」

 

「……あぁ、作戦を変更。リーシャの捜索及び救出を特殊作戦部隊に任せ、スヴェンには邪神教団の遊撃を。レーナとシャルル王子には護衛部隊を付け偽りの見合いをしてもらう」

 

「救出作戦を進行させつつ邪神教団の眼がレーナ姫とシャルルに向けさせ、そこにスヴェンという異界人に混乱させると」

 

「うむ、理解が早くて助かる」

 

「スヴェンというと此度の魔王救出を果たした功労者だったか……オルゼア王は彼に期待しているかね?」

 

「彼は我々の疑念に対し、結果を齎すことで答えたのだ。ならば我々は多少なりにスヴェンに期待しても良いだろう」

 

「そなたがそう言うのなら信じるとしよう。……そういえばあの者は気配に敏感で隠し通路に居たわたしの存在を察知していたな」

 

「うむ、恐らくレーナも気付いているようだが敢えて何も訊ねてはこぬな」

 

「非公式の来訪でなければレーナ姫とアルディアにあいさつをしたいが……10月の連盟会議に取っておくとしよう」

 

「それが良かろう……」

 

 リーシャの救出作戦は決まった。あとは部隊編成を済ませレーナに事の詳細を伝えるだけ。

 そして見合い会場の準備とスヴェンに依頼すれば準備は整うが--果たしてスヴェンは依頼を請けるかどうか。

 策を練ったが、そもそも彼にも都合が有る。そこに遅れて気が付いたオルゼア王は自身の衰えに息を吐く。

 

「……ふむ、話は変わるがスヴェンに付いては様子を見ながらになるか」

 

「そう言えば何やら商売を始めたようだったな。確か、護衛を受け持つだったか」

 

 正確には依頼を出せば要人の救出もやると彼は語り、実際に書類の備考欄にも自身の可能な範囲でなら要人救出、警護、討伐依頼及び邪神教団絡みの依頼は護衛問わず請けると記載されていた。

 

「あぁ、護衛の他にも討伐依頼も請けると書類に明記していたな」

 

「なるほど、スヴェンが依頼で不在という可能性も有ったか」

 

 カルトバス森王の言葉にオルゼア王は眼を瞑った。スヴェンの件を抜きにしてもレーナ達の入国は公的な手続きが完了するまで動くことは叶わない。

 現在ミルディル森林国は混乱の渦中に有り手続き完了にはしばし時を要するだろう。

 手続き完了が先か、特殊作戦部隊による邪神教団の隠れ家発見が先か。

 オルゼア王がそう思案すると執務室に近付く足音に気付き、

 

「友よ、来客のようだ」

 

 カルトバス森王に退出を促す。

 

「あぁ、先にそなたの寝室で待つよ」

 

 彼は隠し通路を使い執務室から退出し、入れ替わるようにレーナがノック音と共に執務室を訪れたのだった。

 

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