傭兵、異世界に召喚される   作:藤咲晃

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23-10.鍛錬再開

 温泉上がりに再開させた鍛錬、温泉の効能が影響しているのか身体が非常に軽い。

 それはフィルシスも同じようで繰り出す斬撃の速度がより速く増している。

 フィルシスが一振り振り切るまで0.03秒に対して自身はどう足掻いても0.05秒っと遅い。

 自身が振り抜く刃が遅れて彼女の刃を弾く。鍛錬開始から感じる0.02秒の差にスヴェンは冷静に思考を巡らせる。

 魔力による身体能力を活性化させたとしても差は埋められない。むしろフィルシスの魔力による活性化は自身の比較にならないほど練度が高い。

 差を埋めるどころか広がる一方だ。それに時の悪魔に魔力が通用しない以上、魔力を扱う技術は無意味だ。

 スヴェンはフィルシスの刃を弾き、斬り返しならが事項する。

 ガンバスターの重量、扱う為の筋力は足りている。逆に足りていないのは細かな技量だ。

 眼に意識を集中させ魔力の流れを視覚させる応用でフィルシスの足運び、全身の筋力の動き。それらを読み取れば必要最低で一切の無駄が無い事が判る。

 

「考え事かい?」

 

 思考を読み取られた。悟った時にはスヴェンの身体がガンバスターごと弾き飛ばされ、地に足を付ける瞬間に剣圧が胴体を薙ぎ払った。

 

「がはっ」

 

 身体が地面に倒れる。その前にスヴェンは左腕で身体を支えることで転倒を防ぎ体制を立て直す。

 既に迫るフィルシスの刃にスヴェンはガンバスターの腹部分を盾に防ぐ。

 剣の刃が腹部分のメテオニス合金を削り、不快な音が火花と共に響く。

 ガンバスターに全身の力を込めたフィルシスの刃が重くのしかかる。

 悲鳴の如く金切り音が響く中、スヴェンも腕力でガンバスターを振り抜きフィルシスを弾き飛ばす。

 そして刃を二度、縦と横に振り抜きーー孤月の斬撃を二発放つ。

 だがこれも容易く防がれる。それならばっとスヴェンは地面にガンバスターを叩き込むことで衝撃波を放つ。

 フィルシスは迫る二発の斬撃を巧みな体捌けきで避け、地を走る衝撃波を剣で弾き飛ばす。

 彼女なら確実に対応する。それを理解していたからこそスヴェンはフィルシスの背後に回り込む事で後頭部に銃口を突き付ける。

 

「あぁ、そうか。キミは斬撃よりも速く動けるんだったね」

 

 剣を手に持ったままフィルシスは納得したように答える。

 普通ならこの状態で反撃に移れる者は少ない。ただの銃なら獲物を落とす事で降参と見せかけ、銃を蹴りで弾く事も可能だ。

 だが両刃のガンバスターを蹴り飛ばすには柄か腕を狙わなければならない。

 しかしフィルシスは騎士甲冑を装備しているとは言え、重量などものともせず動く。

 スヴェンが彼女の一挙一動を警戒する中、フィルシスは僅かに左足を上げーーそのまま地面を踏み抜くことで地震を発生させた。

 足元から生じる地震に足を取られたスヴェンがバランスを崩す。

 そこにフィルシスが畳み掛ける様に縦斬りを放つ。

 

「なんのっ!」

 

 体制を崩した状態でガンバスターで刃を受け止め、フィルシスが笑みを浮かべる。

 

「中々決められないなぁ」

 

 簡単に決められてまた負けたら今度はどんな頼み事をされるか分かったものでは無い。

 スヴェンは右腕のガンバスターで防ぎながら左腕を軸にフィルシスに足払いを仕掛ける。

 

「おっと」

 

 だがフィルシスは後方に退がる事で足払いを避ける。お陰で彼女と距離を取ることには成功したが、防戦一方というのも性に合わない。

 スヴェンは内に秘める殺意を解放し、駆け出しながらガンバスターを振り抜く。

 しかし、同じく瞳に殺意を宿したフィルシスの一閃が胴体を薙ぎ払う。

 胴体が寸断され、スヴェンの身体が霞の様に消える。

 フィルシスの左脇からスヴェンがガンバスターを振り抜き、気配を察知した彼女が斬り払う。

 刃と刃が削り合いフィルシスとすれ違う。

 

「いいね!」

 

 闘気と歓喜に満ちた笑みを浮かべるフィルシスにスヴェンは構わず右薙を繰り出し、同時に残像を残してその場から消える。

 分身と共に左右同時に斬撃を飛ばしたスヴェンに対してフィルシスは回転斬りを放つことで残像と分身、斬撃諸共一太刀で掻き消した。

 そこに本体は居ない。彼女が斬ったのは殺意を纏った残像と分身に過ぎない。既に離脱したスヴェンは彼女の頭上から兜割りで奇襲を仕掛ける。

 完全に意表を突いたが、それでも剣でガンバスターを防がれてしまう。

 そして刃は彼女の繰り出す一閃に弾かれ、スヴェンは地面に着地し改めて構え直す。

 魔力を使えればこの状態で魔力を解放することもできるが、それはそれでフィルシスの魔力解放に相殺されるだけ。

 

 ーー攻め手に欠けている。自分に自信を持つ奴は油断するが彼女には一切それが無い。

 

 むしろフィルシス自身が己の強さに満足していないのだ。彼女が何処を目指しているのか判らないが、油断も慢心する事も無い。

 だからこそ強者だ。自身には無い強さをフィルシスは持っているからこそ、鍛錬の一時の間は羨ましく尊敬の念すら浮かぶほどに。

 ふと騒々しい足音と複数の気配にスヴェンとフィルシスは殺気を激らせた。

 視界に映るモンスターの群れ、そこに昆虫系の姿は見られないが邪魔をされるのはつまらない。

 スヴェンはフィルシスと同時にモンスターの群れに駆け出し、

 

「面倒だけど魔力を使わずに蹴散らすよ」

 

 二人は同時にモンスターの群れに刃を繰り出すのだった。

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