傭兵、異世界に召喚される   作:藤咲晃

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第二十七章 時を統べる悪魔
27-1.坑道の痕跡


 エンケリア村の鉱山探索に入ったスヴェンとルーピンは、アドラと坑夫達を先頭に坑道を進んでいた。

 壁に眼を向ければ露出した鉱石や原石、地面にはトロッコを走らせるためのレールが敷かれているが肝心のトロッコの姿が見えない。

 採択した鉱石を効率よく運搬する上でトロッコは欠かせない存在だが、入り口にそれが無いとなると何処かで停まっているのか。

 疑問を浮かべるスヴェンに若い坑夫が確かめるように、

 

「時獄に閉じ込めれる直前までトロッコは入り口に有りましたよね?」

 

 鉱山長のアドラに訊ねていた。

 

「あぁ、出口に金鉱石を積んだトロッコを走らせたのは間違いない。それはお前達も目撃してたろ?」

 

 アドラの問い掛けに若い坑夫達が頷く。

 しかし目撃者多数の中で肝心のトロッコの姿が見えない。

 これは単に時の悪魔がトロッコに乗って接近される事を防ぐために移動させたか。

 スヴェンは消えたトロッコの件を気に留めながら。

 

「此処から最下層の最奥までどれくらいかかる?」

 

「徒歩で進むなら最短ルートを進んでも2日はかかるな」

 

「2日か、ユグドラ空洞といい地下空間ってのは随分広いな」

 

「そりゃあお前さん、エンケリア鉱山はエルリアの経済を支える一角だ。鉱物資源が潤沢であれば有るほど鉱山内部も広大になるのさ」

 

 アドラの話に理解を示したスヴェンの隣で若い坑夫がぼやく。

 

「目指すべきは最深部……はぁ〜最下層なんてマグマが流れて熱いのに」

 

 最下層のマグマ、そこで採掘出来る鉱物資源と言えば研磨に使われるダイヤモンドが浮かぶ。

 デウス・ウェポンのアーカイブでは既に天然は枯渇し存在しないことが記されているがーー宝石のダイヤモンドは町で見かけねぇな。

 少なくともエルリア城下町で見かける貴婦人などは宝石のダイヤモンドを身に付けず、夜晶石や紅晶石を加工した装飾品を身に付けている方が多い。

 宝石としてダイヤモンドはあまり価値が無いのかもしれない。

 ついそんな推測が頭に浮かんでしまったが、今は時の悪魔がマグマの近くに居る可能性に留意すべきだ。

 

「マグマが流れる最下層に時の悪魔が居る可能性が高いか?」

 

「おう、マグマに流れる星の魔力の輝きは良いもんだぞ。いくら悪魔でもあの光景は眺めてて飽きないだろ」

 

 何を呑気な。そんな出掛けた言葉をスヴェンはぐっと呑み込む。

 もしも時の悪魔の目的がマグマを通して噴き出る星の魔力を得るためだとしたら。

 三年もエンケリア村を時獄に封じ込める理由としては、何者にも邪魔されない空間で好き放題できる。だが逆に言えばほぼ無敵に等しい時の悪魔が星の魔力を得て何するかと問われれば、やはり首を傾げざるおえない。

 これも臆病ゆえに考え過ぎか。時の悪魔と星の魔力に関して考え込むスヴェンに察したのか、

 

「悪魔にも星の魔力を操ることはできないから悪用される可能性は低いよ」

 

 ルーピンがスヴェンの杞憂を晴らすように答えた。

 星の魔力が時の悪魔に利用される可能性が低い。それだけ判れば幾ばくか杞憂も晴れるがやはり疑問が尽きることは無い。

 

「まあ、目的はともかく戦闘時は足元注意だな」

 

「その心配も無いぞ。マグマ溜まりに落ちないように結界魔法で足場を作って有る」

 

「そいつは安心だな」

 

 魔法が解ければ落ちることには変わりないが、それは考えても仕方ないことだが同時にこうも考えれるーー時の悪魔が結界の足場が無いマグマの上で待ち構えている可能性だ。

 その時は最後の一発を撃つか、地形を利用するほかに打つ手が限られる。

 歩きながら思考するスヴェンは背後に視線を感じ取り、

 

「……?」

 

 振り返って注意深く辺りを見渡してもそこには、坑道を支える木造と天井から吊るされたランタン。横の岩、壁に剥き出しの鉱石しか無かった。

 視線と気配を感じたのはほんの一瞬だ。透明化の魔法か天使のように特殊な魔法を使っているのか、それとも単なる勘違いか。

 足を止めたスヴェンに気付いたアドラが、

 

「何か居たのか」

 

 警戒しながらこちらに駆け寄る。

 無鉄砲に近付かないアドラに感心を浮かべながらスヴェンは告げた。

 

「視線と気配はしたが……勘違いだったらしい」

 

「あぁ、視線ならたぶんコイツだ」

 

 そう言ってアドラが指笛を鳴らすと岩から顔が浮かび上がり、ソレはこちらを見上げた。

 岩の塊の肉体、これはゴーレムと呼ばれる魔法による創造物の一種だろうか? しかし目の前のゴーレムは両脚が破損したのか、あるいは砕かれたのか立てずにこちらを見上げるばかり。

 

「有事に備えてゴーレムを配備してるんだが……足が破壊されてるな」

 

 動けないゴーレムはどこか悲しげな眼でアドラを見上げるが、彼にはどうにも出来ないのかゆっくりと首を横に振った。

 喋れないゴーレムは諦めたような周囲と同化し眼を閉じる。

 

「無くなったトロッコ、両脚を破壊されたゴーレムか。コイツは時の悪魔の仕業か」

 

「トロッコは移動手段を奪うため、ゴーレムは後を追わせないためってことだろうね」

 

「あー、やっぱ何かしら仕掛けられてもおかしくはねぇか」

 

「魔力の流れについてなら若い連中と警戒してはいるが、今のところそれらしい気配は感じないな」

 

「魔力を使わない罠も在る。アンタらの職場に不法占拠者が居る以上、警戒は怠らねえ方がいい」

 

 スヴェン達はゴーレムをその場に残し、罠を警戒しながら坑道を進んだ。

 上下に降下する魔道リフトを使い地下二階に進みーーそこで一行は我が眼を疑うことに。

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