傭兵、異世界に召喚される   作:藤咲晃

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27-3.気紛れか?

 スヴェン達は花畑空間を抜け、そこから地下三階の海底空間に進んでいた。

 悠々と海中を泳ぐ魚とモンスターにアドラ達が身構え、魚が身体を通過した事に安堵の息を漏らす。

 

「なんだ幻影かよ」

 

 汗を拭う若い坑夫を横目にスヴェンは魚とモンスターに視線を向けた。

 本物のモンスターが紛れても違和感は無いが、モンスターなら構わずこちらに襲いかかる。

 ただの脅し目的の魔法なのかーー進むに連れて時の悪魔の目的がますます判らなくなる。

 巻き戻りの魔法陣に対しては村人を近付かせず、解除させないように使い魔擬きに妨害させていたというのに。

 上層の花畑空間といいこれでは単なるテーマパークだ。

 時の悪魔の目的に悩むスヴェンを他所にモンスターに視線を向けたルーピンが、

 

「3年ぶりにモンスターを見たけど、外のモンスターは相変わらずかな?」

 

 現在のモンスターについて訊ねてきた。

 スヴェンは最近遭遇した周囲のモンスターに指示を与える新種を浮かべながらルーピン達に告げる。

 

「統率を取り指揮するモンスターが出現したな」

 

「それはまた厄介な状況になったね。それともそんなモンスターが出現してしまう程に大地が傷付いたのかな?」

 

 確かに新種のモンスターが出現したのはミルディル森林国の事件後だ。

 復活した邪神眷属の手でユグドラ空洞が地下から穿たれ、守護結界は砕けユグドラ空洞には大穴が。

 その結果モンスターが大量発生する事態に陥りミルディル森林国は一時期火災に見舞われ国民が避難を余儀なくされた。

 

「色々あってユグドラ空洞が崩壊したが、新種と遭遇したのはエルリア国内でだ」

 

「大地が何処で傷付いたのかは重要じゃないよ。重要なのは傷付いたという事実さ」

 

 歩きながら話すルーピンにスヴェンはため息を吐く。

 

「迷惑な話だな」

 

 実際に何処かの国が大地を傷付けないように気を遣った所で、何処かの馬鹿が大破壊を行えば星が新たなモンスターを生み出す。これほど迷惑な話は早々無いだろう。

 

「迷惑で済むなら良いけど、モンスターによっては一国を滅ぼすからねぇ。それに今までは対応が比較的容易かったけど新種で事情が変わるかも」

 

「指揮官の存在は馬鹿にできねぇからな」

 

 ただ人を殺すためだけに襲い来るモンスターの群れ、統率を取り効率的な人を襲うモンスターの群れとでは被害が違い過ぎる。

 何よりも各国の騎士団が取る指揮や部隊運用を模倣し始めたのなら各国が受ける被害は増すだろう。

 

「スヴェンならそういう手合いが相手ならどうするんだ?」

 

 アドラの質問にスヴェンは即答する。

 

「真っ先に頭を潰す」

 

「シンプルな解答ありがとよ……まあ、オレ達坑夫が考えても仕方なねえよな」

 

 モンスターの対策などエルリア魔法騎士団の仕事だ。それに対して彼ら坑夫は武具に必要な鉱石を採掘し市場に流すことで騎士団と経済を支える。

 簡素な仕組みを浮かべたスヴェンは海底空間に現れた気配にガンバスターを引き抜く。

 立ち止まる坑夫達を背に、スヴェンは気配が現れた方向に視線を向けながら警戒を浮かべる。

 確かに感じる気配、しかし魔力の気配はボヤけているようで感じ辛い。

 

「使い魔擬きか?」

 

「それじゃあスヴェンの出番だね」

 

 使い魔擬きを討伐して先に進む。単純な作業だが、スヴェンの肌に迸る感覚が警鐘を鳴らす。

 時の悪魔も使い魔擬きも村人とルーピンを害する気は無いが、どうにも嫌な予感がしてならない。

 スヴェンは真っ直ぐ見詰めれば、使い魔擬きがこちらに駆け出す姿が映り込む。

 同時に背後に複数の気配が現れ、スヴェンは前方の使い魔擬きに対して衝撃波を放ち、すぐさま背後に振り向く。 

 アドラ達に近付く使い魔擬きにスヴェンが飛び出すように駆け出すとーー突如空間な裂け目から現れた魔法の鎖がスヴェンに巻き付く。

 

「チッ!」

 

 スヴェンは無様に拘束された自身の失態に舌打ち。

 拘束を解除しようと駆け寄るアドラ達とルーピンに魔力の流れを察知したスヴェンが叫ぶ。

 

「近付くな!」

 

 瞬間、スヴェンは足元に出現した裂け目に身体が落下ーースヴェンはルーピン達を襲う魔法陣を最後に裂け目に飲み込まれた。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 地面に放り出される身体、熱気を帯びた空気にスヴェンは眉を歪める。

 

「此処は鉱山の最奥か?」

 

 壁の穴から噴き出る星の魔力を含んだマグマ、地を流れるマグマ。そして壁に露出したダイヤモンドの原石や鉱石と側に置かれたツルハシが、此処は目指していた鉱山の最奥だと告げる。

 なぜわざわざスヴェンだけを此処に転移させたのか。時の悪魔の目的に疑問を宿す中、拘束していた魔法の鎖が消えて身体に自由が戻る。

 

「……アドラ達は無事なのか?」

 

 最後に眼にしたのは、ルーピン達を襲う魔法陣だ。

 あれが自分と彼らを引き離すための魔法なら無事だろう。だが、排除を目的とした魔法ならルーピンを信じる他に無い。

 スヴェンは立ち上がり、膨大な魔力の気配にため息を吐く。

 魔力は目と鼻の先に有る洞窟から放たれているが、時の歪みさえ視認できるほどに空間が歪んでいる。

 この先に目的の時の悪魔が居ることは間違いない。スヴェンは無言でガンバスターを片手に洞窟へ進む。

 時の悪魔を討伐し、エンケリア村を解放させミアの依頼を果たす為に。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 外の新鮮な空気と穏やかな風にルーピンは自身の眼を疑う。

 

「外に放り出されたというか?」

 

 目の前に映る光景は紛れも無くエンケリア村だ。そして背後には鉱山の入り口が。

 ルーピンは辺りを見渡し、困惑を浮かべるも無事のアドラ達にひとまず安堵の息を吐く。

 しかし今回の件で頼み綱のスヴェンと分断されてしまったのは痛い。

 今からでもどうにかしてスヴェンと合流できないものか。

 ルーピンは鉱山の入り口に近付き、そして異変に気付く。

 

「これは……そんな」

 

 時の歪みが邪魔をして鉱山の立ち入りを拒む。

 完全に侵入する方法を失ったルーピンは真っ直ぐ歪んだ空間を見詰め、

 

「……仕方ない後はスヴェンに任せよう」

 

 自身の命運を含めた全てをスヴェンに委ねるように、ルーピンは濁った空を見上げた。

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