【本編完結】BETA転生   作:鈴木颯手

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第六話「彼等彼女等」

 あ号標的が開いた門の付近には東西南北4つの国が存在している。北はロア=グレキア連合王国、南にはヴァルト盟約同盟、西にはサンマグノリア共和国、東にはレギオンの生みの親であるギアーデ帝国が存在していた。しかし、ギアーデ帝国は無人機レギオンを開発すると周辺諸国に侵攻を開始。その圧倒的戦力で滅ぼそうとしたがギアーデ帝国内で革命が発生。連邦へと変わったことでレギオンの侵攻は止まると思われた。

 しかし、レギオンは自分たちで考え行動するようにより、ギアーデ連邦にさえ攻撃するようになった。各国はそんなレギオンに対して協調しながら戦闘を繰り広げていたが一国だけ、レギオンの支配領域に囲まれたために独自に動き出した国があった。

 それがサンマグノリア共和国である。この国は様々な人種が住む国であったが開戦後は白系種(アルバ)と呼ばれる白髪が特徴的なサンマグノリア共和国に古くから住む人種を残しそれ以外の全ての有色人種を最前線に追いやった。そして彼らを共和国85区の外の存在、86(エイティシックス)として蔑み、自分たちの暮らしを支えさせる肉壁として扱い始めたのである。

 そんな彼らエイティシックスはレギオンとの戦争に駆り出され、着実にその数を減らしながら終わりの見えない戦争を続けていた。共和国への愛着も忠誠心もなく、ただ敵を倒すために。

 

「最近、レギオンの数がだいぶ減ってきているよな」

 

 そんな中にあってエイティシックス最強と謳われる部隊がある。東部戦線第一戦区第一防衛部隊“スピアヘッド”である。彼らは様々な戦線を生き残りレギオンを狩ってきた英雄に等しい人物達であり、共和国が誇る精鋭であった。とはいえそんな彼らは一度隊員が補充されると全滅するまで補充されることはない。その理由は残酷であるが今は関係のない話であり割愛する。

 

「敵の戦術かな?」

「諦めた。と考えたいところだけど……」

「相手はレギオンだしそんなわけないだろうなぁ」

 

 “スピアヘッド”の面々が考えるのは最近のレギオンの不可思議な動きである。これまでは毎日のように攻撃が繰り返されてきたが目に見えてその襲撃、数が減ってきているのである。時には戦車型(レーヴェ)が存在しないときや斥候型(アーマイゼ)しか存在しないときもある。長距離砲兵型(スコルピオン)に至っては一切姿を見せなくなり、戦闘がやりやすくなっていた。

 しかし、明らかにわかるレギオンの不可解な動きは疑問と不安をあおる結果となっており、隊員たちの中には中々眠れない者まで出始めていた。

 

「シン。最近は声も聞こえないのか?」

「ああ。羊飼いどころか黒羊さえ全く見えなくなってるな」

 

 シン、と呼ばれたスピアヘッドの隊長は簡潔にそう返した。彼には特殊な力としてレギオンの声を聴くことが出来る。それはとある機体にのみ限られるのだがスピアヘッドはこのシンの能力のおかげで敵の接近を察知する事が出来ており、戦闘しない日は気楽に過ごすことが出来ていた。

 

「大規模侵攻の前触れか? それとも他国が戦線を押し上げているからそちらに兵を回しているとか?」

「それが可能かはわからないけどな。少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは確実だろう」

「俺らより優先するべき対象……。そいつらには悪いがそのままレギオンの目を引きついていてくれるとありがたいんだけどなぁ」

 

 第二小隊の小隊長を務めるライデン・シュガは希望的観測ながらそのような願いを口にするが同時に不可能だろうと感じていた。サンマグノリア共和国にいるレギオンの総数が半分以下になっている時点でそれだけ膨大なレギオンに狙われていることを意味しており、とてもではないがそれだけの数のレギオンを相手にできる存在がいるとは思えなかったのだ。

 

「他国の事は知らないが大なり小なりレギオンとの戦争で疲弊しているはずだ。今起こっていることがあり得ない話だ」

「つまり、これはレギオンによる大規模侵攻の前兆の可能性が高いな」

「声の数からしてサンマグノリア共和国じゃないのは確かだ」

 

 シンやライデンはそう結論付け、いずれ訪れるであろうどうしようもない状況の前に今の平和なひと時を享受するのだった。レギオンの大規模侵攻を受ければどのような国でも一溜りもないだろう。そうなれば戦線が減った分レギオンが有利となり、ほかの戦線が圧迫される。そして耐え切れなくなったところから崩壊し、人類はなし崩し的に敗北するだろう。

 しかし、流石のシンもレギオンが全ての戦線から引き抜いて対応するほどの勢力が突如として発生した、という事実に気づくことはなかった。その結果、サンマグノリア共和国がその存在に気付くのは当分先のことになるのだった。

 

 

 

 

 

-“ノゥ・フェイス”より“シュヴァルツ01”に告ぐ。貴官はこれより隊を率いてサンマグノリア共和国戦線に迎え

-“シュヴァルツ01”より“ノゥ・フェイス”。我々は現在ギアーデ連邦軍の後方基地を襲撃中である。即時対応は難しい

-“ノゥ・フェイス”より“シュヴァルツ01”。それは理解している。後方基地襲撃は中止し、新たな命令を最優先で実行せよ

-“シュヴァルツ01”より“ノゥ・フェイス”。了解した。これより移動する

 

 あれから、どれほどの時間が経過したのだろうか? 私を殺してくれる存在は現れなかった。共にレギオンとなった同志たちも全員健在だ。

 何故だ? あれほど苛烈に攻めているのに何故誰も殺してくれないんだ。そのせいでギアーデ連邦の防衛線はガタガタになってしまっているのだぞ。今回の後方基地襲撃がうまくいけばギアーデ連邦は本土を守るために盾にしていた戦闘属領全てを陥落する結果となっていただろう。

 しかしサンマグノリア共和国、か……。そこには私を殺してくれる人間がいるのだろうか……。いや、どうせいないだろう。ギアーデ連邦がダメだったのだ。サンマグノリア共和国にそんな奴がいるとも思えない。それに、最近はBETAの勢いが増していると聞く。死ぬのであればやつ等の手で……、だろう。

 

-アアアアアアアア!!!! 中佐! 中佐! 中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐中佐!!!!

-“シュヴァルツ01”! “シュヴァルツ06”の()()()()発作が起こりました!

-こちら“シュヴァルツ01”。全員通信を切れ。こうなっては我々では抑えきれない

-了解

 

 ああ、またか。私はカメラを通して外の様子を確認する。私より少し前を行く近接猟兵型(グラウヴォルフ)が不審な動きをしている。人間で例えるなら頭を両手で抑えながら体を振って暴れているという言葉がぴったりだ。

 アネット・ホーゼンフェルト。人間の時にはそう呼ばれていた彼女はレギオンとなってから狂ってしまった。とはいえそれはレギオンになったことで絶望したからではない。そんなことは考えられないようになっているからな。ではなぜか? 簡単だ。思い人がいないからだ。

 あの日、私たちが撃墜され殺された作戦にアネットの思い人であるアルフレート・ヴァルテは参加していなかった。そのため、アルフレートがいないことにアネットは大きなストレスを抱えるようになってしまったのだ。

 今ではいるはずのないアルフレートを探して戦場で人間を殺している。アルフレート仕込みの近接戦闘でな。汎用型が装備するロケットランチャーは外し、代わりに対人用の小口径機銃を装備している。

 アルフレートを見つけた場合、彼女は殺したいのだろう。なぜ一緒にいなかったのか、なぜ自分と敵対しているのか、何故こんな姿になっているのか。困惑怒り悲しみ辛み憎しみ。それらすべてを思い人に向けているのだ。正気ではない。まぁ、私たちに正気を保っている物などいない。大半がそんなことさえ出来ないほど感情をあらわにすることはないのだから。せめてアネットが破壊されるときは思い人であるアルフレートの手で壊されることを祈ろう。いずれ、BETAと戦うことになるのだろうから。

 

あ号君の名前に関して

  • 名前なんていらねぇ!
  • 呼びづらいからさっさとつけろや!
  • てめぇに任せられねぇ!変わりにつけてやる
  • あ号君が本名でしょ?何言ってるの?
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