競馬無知のTSウマ娘、なんか走るのが速いモブ達に絡まれる   作:だすと

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キリの良いところで切ったら短くなりました。


ドッペルゲンガー

「……少しお時間よろしいでしょうか。サンサーラブレッドさん、あなたもしかして……昨日どなたかと担当契約をされましたか……?」

 

 翌日の昼休み。

 授業の片付けをしていると、隣のお嬢様モブが周囲に聞こえないように小さく耳打ちしてきた。向こうが俺の馬耳に口を近付けようとすると自動的にこっちの顔に胸が当たりそうになるので「んほ^〜ふわりと漂う女の子の匂いたまんね^〜」と言いたくなるが、残念ながら今の俺は同性。

 俺自身が青少年の教育によろしくない色香を発している事もあって何も感じないのである。バナージ、悲しいね……

 

「……私、見ちゃったんですの。昨日の放課後に、あなたが校舎外れのベンチで殿方と……その……い、い、イチャイチャされていたのを……!」

「……?」

「腕に寄りかかって……とても自然体で……まるで何年も一緒にいる関係のように見えましたわ。でもお相手は新人のトレーナーのようでしたし……あ、昔に知り合った殿方と再会されたとか……!? ろ、ロマンチックですわ……!」

 

 ?????

 ハハァ……(失笑)

 

 お嬢様が何やら顔を紅くしているが、とんだ妄言である。

 知り合いから『男性恐怖症ピットブル』『トレーナー嫌いトレーニー』『パワーラックの妖精』『常に不機嫌そうなウマ娘ランキング一位』『ケンカ売りの少女』『虚無ライブ』『歩く軽犯罪』と言われていた俺が、男とイチャイチャしてただぁ? そんな訳ないじゃんアゼルバイジャン(声に出したい日本語)。ありえん(笑)。

 

 俺はこの体に宿っている本能ちゃんのおかげ(せい)で男が近付くと自動的に警戒レベルが上昇するので、そんな存在に気付かない訳がないのだ。3メートル以内に居れば肌がピリついてくるレベルである。つまり、このお嬢様が見たのは別人で間違いない。

 Q.E.D. 証明終了

 

「すみません、長々と見るつもりは無かったのですけど、少し驚いてしまって。……お、応援していますわ!」

 

 胸の前で手をグッと握って何故か俺を鼓舞したお隣さんは、妙な誤解をしたまま教室から出ていった。その仕草は可愛らしいが、言っている事は何一つ理解できないのが強い。反論すらさせないとか無敵やん。やっぱし怖いスね勘違いキャラは。

 

 そうか……隣のお嬢様モブは勘違いキャラでもあったのか。二週目にして新しい属性追加とかナカナカヤルジャナイ。まるで不人気キャラへのテコ入れみたいだぁ(失礼)。

 俺にも何か追加でキャラ付けしてもらえませんかね。足が速いだけのモブなんてこの学園には大勢いるんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

「鶏肉追加のU-LLサイズ、サラダセットのお客様、お待たせしましたー!」

 

 『俺が男とイチャついている』という存在しないものを見たというお隣さんの頭を心配しながらも話が気になった俺は、カフェテリアでサンドイッチと珈琲を購入して校舎外れへと足を向けた。

 この季節はわざわざ外で昼食をとるウマ娘も少なく、人影はまるで無い。

 

(ここでそんな光景を見た、ねぇ……)

 

 巨大なチキンサンドに齧りつきながら考える。普通に考えればお隣モブの勘違いで間違いないのだが、この世界はファンタジーやメルヘン、果にはSF要素までもが合わさって一袋100円で設定詰め込み放題の世界だ。そんな中でオカルト要素だけを認めない訳にはいかず、幽霊やドッペルゲンガーが居たとしても何ら不思議な事ではない。

 そう、幽霊やドッペルゲンガー。察しの良い者であれば言わずとも解るだろう。これが今回の問題を解決する鍵だ。

 

「サラダにプチトマト入ってるじゃん……」

 

 正面に座ってきた男がサラダ容器の蓋を開け、肩を落としながら呟く。

 馬鹿め。カフェテリアのテイクアウト用サラダには漏れなくプチトマトが入っているのだ。俺も最初は全く同じミスをして落ち込んだものだが、ウマ娘になって味覚が変わったのか今では普通に食べられるようになった。

 

 無言で俺のサラダにプチトマトを放り込んでくる男を視界から外し、オカルト説について考えてみる。

 これはかなり有力な説だ。ドッペルゲンガー的なノリで『もう一人の俺』とかいうふざけた存在がいるのなら、そいつが男と一緒にいるだけで確かに周りは勘違いしてしまうだろう。

 なにせトレセン学園の生徒は体力旺盛な思春期女子。俺の本能ちゃんのようなレアケースもあるが、基本的には異性に興味のあるお年頃なのだ。誰かが少しでも男と一緒にいたら、恋愛や肉欲と結び付けてしまうのも仕方がない。かわいいね♡

 

 あぁ^〜どうせ二周目するなら男トレーナーになりたかった。そしてこの男女比のイカれた学園で、美人のウマ娘達に囲まれながら楽しくレースに出て走り回って…………あれ? 

 もしかしてウマ娘じゃないと走ってもあんまり楽しくなかったりする? なら今のままでいいや(即断)。

 走っても大して楽しくないとか人間はハズレ種族だってハッキリわかんだね(洗脳済)。ポニョ、ウマ娘になるー!

 

「デカ過ぎんだろ……」

 

 男が5段組みのハンバーガーを見て絶望している。

 馬鹿め。カフェテリアのテイクアウトは注文時に何度も少食アピールしないとキングサイズが出てくるのだ。胸に新人丸出しのピカピカトレーナーバッジを付けていれば尚更である。

 

 男のハンバーガーを上から2段分奪い取って胃に収めた俺は、あらぬ疑いの原因となっている自分の幻影を取り押さえるために自販機の影で張り込みを開始した。

 




なにやってんだこいつら……(呆れ)



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