怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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使い捨てのガンダムパイロットに余計な事を教えるわけもなく……
本来彼女たちは若くして死ぬ筈だった。呪われたガンドアームのコクピットを棺桶にして死ぬ筈だったのである。


ソフィとノレアは大衆である

ソフィとノレアは大衆である。ちょっと度が過ぎているが、無智無学の一般大衆で知識人でも学生でも無い。

だから故にハイパー・ホリスティック医療の学術的な整合性や妥当性を評価する事は出来ず、朝食がベジタリアンであるとか肉がない事に腹を立てた。まるで朝三暮四のサルである。

そして、流石の猿でも仲間や友人に囲まれて社会生活を営んでいたから、眼前の人間が悪意を持つ敵か、善意を持つ味方かぐらいは分かる。肉は食わせてくれないけど、悪い人間じゃなさそうだなというぐらいはなんとなく分かるのだ。なんならイヌネコでもそれぐらいは分かる。

 

「ちっ……しゃーねーな。夜はハンバーグくらい食わせてよ!」

「──量も増やしてください。成長期なので」

 

蹴りつけて、銃を向けたのに老爺はボロボロと泣いて信念を語る……余りの居心地の悪さに2人は引いた。あと、一応医者なんだから私たちよりも頭は良いのだろうという誤解もあった。

そう、誤解である。

学問というものは最先端に近付けば近付くほど専門特化して行き、世間でいう所の「専門バカ」傾向を帯びて行く。一応博士号持ちで医師免許を持っているのだから「その時点では」彼も一定水準の知性や知識を持っていたのだろう。しかしその免許を取るまでの人生と、取った後の人生。後者の方が長いのである。

 

「分かってくれたか、ありがとう、ありがとう。食後は軽く運動をしよう。運動は健康に欠かせないからね!」

 

 

 

【乗馬マシーン】

「……なにこれ?」

「ヨーロッパには古くから乗馬療法というものがあってね……」

それは、スクーターのシート状の椅子に座り、その座面が前後左右に揺れる機械である。何故かニコニコ動画やYouTubeでは女性が騎乗して上半身を激しく揺らす動画が多数投稿されているが、この機械はケロッグ博士が売り出した健康器具の一つである。一部趣味人はケロッグ博士に五体投地で感謝すべきであろう。

「うまにっ! しては! ジャジャ馬! だねっ!」ガッコンガッコン

「──乗馬というより、ロデオでは?」

「運動としては強度が足りないからね、ロデオを参考にして動きを強化した」

「──で、これ効くんですか? 健康に」

「健康になるまで乗るんだよ。健康になる為に」

ノレアは「それはトートロジーなのでは?」と訝しんだ。

 

 

【熱気療法】

「次はサウナはいかがかな?」

「え? サウナあるの?」

「勿論あるとも。当サナトリウムには古今東西体に良いとされるものは大抵置いてある」

「ロウリュ♪ ロウリュ♪」

 

「──で、何ですかこれは?」

「ご家庭用個人サウナだが?」

それは椅子に座った人を首だけ外に出して首から下をカバーで覆った……小型テントの様に見えた。詳しくは各人ググられたし。

「頭を熱し過ぎるのは良くないからね。長時間熱気を浴びる事ができる様に改良したのだよ」

なお、整いなどのご褒美要素はない。彼らは禁欲的なのだ。

「みっ……水風呂……」

「医者としてはお勧め致しかねるね」

「──マジか。オワタ……」

 

 

【電気風呂】

「軽く汗をかいた所でお風呂に入ろうか」

「──ジャグジー? なんか狭い様な?」

「その小さな窪みに身体を入れて浸かるんだ」

「覗くなよジジイ!」

「覗くかっ! このサナトリウム内では性的欲望発散は禁止だ!」

うん、まぁ。それは本当。

 

電気風呂もケロッグ博士が商売にしたものの一つだが、それに先んじてヨーロッパでも流行ったし、日本でも西日本を中心に流行した時期がある。

通電により筋肉が勝手に反応して収縮する。動いているのは自分の筋肉なのに何というか、揉まれてマッサージされている様な感覚を覚える。

 

「お"っ、お"っ、お"っ、お"っ、お"っ、お"っ」

「かっんっでっんっしってっるっ」

「アンペア低いから心配する事はない。聞くの忘れてたがベースメーカーなどは入っておらんよな?」

「さっきっにっきっいってっ!」

 

 

ちょっとネガティブな方面ばかり描写してしまったが、概ねハイパー・ホリスティック医療はこんな感じである。(浣腸話に触れてない辺りでかなり手加減はしてる)

西洋医学に対する懐疑(反目?)とキリスト教プロテスタント系ベースの哲学から始まっているので、耐える、忍ぶ、我慢、節制が割とクローズアップされ気味であり、効くはず、有効なはず、正しいはずが割と多い。そして一部、本当にビミョーではあるが「効いてしまう」部分もあるのが厄介なのだ。プラセボ効果もバカには出来ないし。

ハイパー・ホリスティック医療は中国医学やインド医学も取り入れているので、個々人に合わせた治療を行う。同じ病状に対してアプローチが複数種類あるので「統計的な数字」を出しにくいのだ。(漢方などでは患者の体質を加味して同じ病気でも違う薬が処方される事がある)

意外に思われる方もいらっしゃるかもしれないが、西洋医学ばかりと思われがちな現代日本の大学病院でも漢方薬は普通に処方されている。有効だと判ればなんでも採用するのは西洋医学も同じだ。但し西洋医学では治験をしてデータを揃えなければ認可が降りない。他の医療を取り込みはするが、ベースとなる科学的、統計的、エビデンス重点の視点はブレない。多くの病院が標準医療を選択する理由でもある。

 

 

「なんか、身体が楽になった、ような……?」

「──気持ち的には、悪くない?

 

軽い運動と身体全体の温熱により血流促進。ヘルシーな食事……重篤な症状の病人でもなければ確かにこれでも身体は休まるし、体調も良くなる。変わった事・特別な事を「したのだから」と脳が認知バグを引き起こして、実際感覚的には「良くなった気がする」(個人の感想です)(感じ方には個人差があります)

 

ソフィとノレアは大衆である。科学的な厳密さや精緻な理論とは無縁の世界で生きてきたし、感覚を大切に生きてきた。細かい事は解らない。

ただ日々の生活で人の善意悪意には敏感であったし、他人が自らのために良かれと尽くしてくれる事には感謝を忘れない程度の人間性は残っている。

 

 

そして、若さ故に「善意が必ずしも善行になるとは限らない」なんて事は知らなかった。




カルト宗教でツボや印鑑買わせる奴、あれ信者が悪意を持ってやるからではなく、それで金出す奴が救われると「本気で信じてる」のが厄介なんよ。手かざしにしろ何にせよ、あの人らマジで善意で他人を救おうとしてる。その「剥き出しの善意」を払い除けるのは結構大変。彼らが拠り所とする思想の全否定だ。普通は人の温かな心があればそんな事は出来ない……(筆者は若い時人の心がアレだったんで散々やった)
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