怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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うむ、困った事になりましたね……


退院のカタチ

【夜半、サナトリウム内】

「ゆっくりな。静かに」

「無念だ……また、助けられ無かった」

 

病院というのは、案外死人が出る所である。長期入院している親族でも見舞いに行けば知る事になるが、先週いた爺さんが今週は【退院】しているなどしょっちゅうだ。

何某かの不具合を抱えているから病院に行くのだし、その症状が重いから入院する。そして治れば退院するし、治らず残った時間を我が家で過ごしたければ退院するし、治療の甲斐なく死んでしまっても退院する。

 

これは如何なる入院施設でも例外なく起きている。西洋医学だろうと東洋医学だろうと疑似科学医学であろうと変わりはない。統計的に見れば差異は当然あるだろうが、統計的に有意な数字を取れるほど家族親族が多い人間などいるはずも無く……大衆は医者や病院を自分の親族家族を救えなかったと言うだけでヤブ医者と罵り、【運良く】救われたらどんな医者であろうと名医扱いする。

 

先にも書いたが、ハイパー・ホリスティック医療を用いるこのサナトリウムは誠実で献身的な職員によって運営されており、彼らは死者を出した時にまるで家族を失った時の様に消沈する。筆者の父は難病に罹患して20年近く入退院や通院を繰り返し、最後はガンで亡くなったのだが……余命1ヶ月宣告を受けた際に、1番ボロ泣きしたのは主治医であった。私も老母も余命宣告の驚きが大き過ぎて泣くどころではなかったのたが、主治医は自分が見逃した、殺してしまった(いや、救えなかっただけなんですが)とおいおい泣いた。余りに泣き過ぎるから説明その他は上長の教授が担当したが、死んでしまうもののこの病院で本当に良かったと思ったものだった。

 

医療従事者は、いつも誰かの為に「負けられない戦い」を続け、偶にそれでも負けてしまう。辛い商売だ。

 

 

ストレッチャーで裏口へと、1人の職員と博士が死者を運ぶ。サナトリウム暮らしが長い者はその僅かな音だけで仔細を察し、布団を被って死者の魂の平穏を祈る。

それがここの日常なのだ。重ねて申し上げるが、これはアドステラの時代の病院でもままある事で、特別酷い事ではない。

ではない、のだが……

 

「大口叩いてたら、セカンドオピニオンは聞かせられないものねぇ」

「だっ……誰だ君は!」

「仮面の教師、プロスペラ・マーキュリー」

「ガンド医療開発者、ベルメリア・ウィンストンよ」

「手術施設も検査機器も十分ではない施設で、重病患者を引き受けるのは感心しないわね」

「お前たちに何が分かる! 彼はこの私とハイパー・ホリスティック医療を信じて当院の門を叩いたのだ! その全幅の信頼に「大学病院行け」なんて口が裂けても言えん!」

「いや、言いなさいよ。私の治療では無理だ、腕のいい医者を探せって。患者の命を最優先にするなら……出来るはずよ」

「仕方ないですよ先輩。もうこの人……気付いてないけど患者の命より自分の名声大切にしてますもん」

 

『仕方なかったのよぉ!』の達人、ベルメリアは割と酷い事を言う。貴女も割と博士と同類では?

 

「ヒトには信仰の自由がある……彼らが選んだんだ!」

「宗教ならね、でも貴方たち……医者でしょ?」

「その死体、どうするのかしら? フロントの入出記録調べて驚いたわ……6人ほど辻褄が合わない」ベルメリアが珍しく鋭い目で睨む。

「大体見当付くわ。水星の廃鉱山に捨ててるでしょ?」

 

私もシン・セーに潜り込んでスレッタ狙うエージェントはそうやって始末したし、とは言えぬプロスペラであった。

 

「あっ……それで!」

そう、水星のパーメット鉱床採掘権はカーギル資本の企業が取得した。そして妙に新しい死体が複数見つかってシン・セーに照会が来たのである。(プロスペラは自分たちがやった分もこいつらの所為にしてしまおう等と邪悪な事を考えていた)

 

待ってくれ。この話の中にまともな人が1人もいない(大問題)

 

「紹介状ぐらい書いたってバチは当たらない……でも、ホリスティック系で最優と名高い貴方には他の腕の良い医者とのコネクションが無い。学閥からもパージされてるでしょ?」

非標準医療の弱点である。通常の医学界の通説とムッチャクチャな違う処置をしていると……

 

1.代替医療ではダメで、標準医療したら改善したと噂が立つ

2.下手したら薬事法違反や医師法違反がバレる

3.医療過誤で告訴のリスク

 

ガンド医療……ガンダムに用いられてしまったし、多くの場合単純な義肢技術と「一般には思われている」ガンドであるが、実は症例が少なく目立たないだけで移植系の医療現場からは大歓迎されている。人体内の臓器を適合や免疫気にせず置換できると言うのは魔法の様なテクノロジーなのだ。若き日のエルノラ・サマヤが人体の大部分を損傷したのに移植順番待ちもせず、迅速に回復出来たのはガンドのおかげである。そしてそのガンドの縁も、カルド博士が多数の医学者や医療従事者と紡いだ絆があったからこそ結ばれた……

「医者を含む科学者は、決して1人じゃない。皆の知恵と知識で課題に取り組んでいる。何故その輪に加われないんですか!」

「加わろうとしたとも! 何本も論文を書いた! 学会へも参加した! しかし私に与えられるのは侮蔑で温かい手ではなかった!」

 

まぁ、実際学会でトンチキな話をする事自体は可能である。大体無視されるが。論文だって書けば一応掲載される事もある。権威のある雑誌などではしっかり査読されて、内容がしょぼければリジェクトされるが。

 

「……単純に実効性が余りに低いからとか、再現性がまるで無いとかじゃないの? 普通は体裁整ってたら多少は問い合わせが……」

事実、プロスペラ名義で書いた群体制御におけるAIとシェルユニットの応用だとか、自律運動兵器の運用におけるニューラルネットワーク(以下略)なんかは各所から問い合わせが来たし、論文も結構被引用数が多い。(本作ではプロスペラはテストパイロットであっただけでは無く、BMIとかAIを活用した制御系の研究者)

 

「誰も解っちゃくれない! 私を信じてくれるのは私の治療で救われたり、科学が取りこぼした人々だけだった! どうして彼らを裏切る事が出来る! ガンドだって……」




登場人物全員MADとは……
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