怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「ジョージ分析官、なんで水産資源養殖プラントの話がレジャー施設建造計画になったか、説明を」
落ち着いた調度の広い会議室。カーギル本社の経営企画会議室だ。今、ジョージ・マクミラン主席分析官は査問を受けている。
「あなたのお仕事は情報分析で経営企画やサービス開発ではないわよね? 流石にこれは職務から逸脱し過ぎているわ」
「それは理解しています。グラン・マ。そもそも本計画は地球温暖化に伴う海水面上昇と、それに伴う島嶼住民の生活地、耕作地減少問題の解決から始まっておりまして……」
余りに楽しそうな計画だからか、カーギル経営陣は機密保持を理由に馬鹿げた規模の予算横領を疑った。今回の計画で計上された予算はカーギル全体の年間投資額の2%を10年続けるという莫大な金額だった。
「簡単に申せば、我々も海を舐めていました。水産資源の大規模養殖はテラフォーミング並みの惑星改造が必要です。生態系をそのままコピーしなければ成立しない。地球で比較的簡単に水産資源の養殖が可能なのは地球環境という巨大なシステムあってのこと。宇宙で中途半端な養殖場を作っても、それは早晩破綻します。費用対効果が悪過ぎる」
「そこで本計画は凍結も視野に入れて再検討された訳ですが、その過程である発見をしました」
「続けなさい、エリーゼ・マーキュリー」
「海への憧れ、です。我々の計画が莫大な費用を要する様に、海を宇宙に作るのは莫大な予算を必要とします。簡単な話地球に海があるのだからスペーシアンも地球でレジャーを楽しめば良いのですが、戦争シェアリングによりアーシアンの対スペーシアン感情は最悪です」
「いくら興味があっても治安が悪い所でレジャーは無理がある。特に自然環境の中に入り込むのは護衛も相当用意しなければならない……結果として彼らは登山やマリンレジャーに触れぬまま何十年も経過しています」
「……下手に揉め事起こさない為には良い方策よ」
「逆に考えましょう。彼らが積極的に地球でのレジャーを楽しみたいと考えたら、彼らはどんな動きをするでしょう?」
「……ほぅ」
「──彼らは戦争シェアリングで地球の富を吸い上げました。しかし地球というシステムまでは吸い上げる事は出来ない。地球で安全にレジャーを楽しむ為には地球──アーシアンとのある程度の融和が欠かせません」
「宇宙にマリンレジャー施設作る理由にはならないじゃない?」
「食べたことがない料理、なんですよグラン・マ。どれだけ美味い料理でも、食べてみなければ美味さは分かりません。何十年にも渡り彼らはそれを食べずに過ごし、味を忘れてしまったのです」
「わざわざ水星圏という僻地に馬鹿みたいに高額なリゾートを作る。金持ちは来るでしょう。そこまで金がない人間はどうするでしょう?」
「安い地球に向かおうとする、か……」
「安価に提供してはいかんのかね?」
「海の価値を高める作戦です。それを経験する為に馬鹿みたいな対価を払った方が宜しいかと」
「我々の【食の相互依存度を高めて融和】のバリアントです。レジャーを通じて相互依存度を高める。その為にはあの僻地に極上のリゾートを建造して馬鹿みたいな金を巻き上げる必要があります。まぁ、第一弾の水星圏宇宙の海計画が成功したら、若干安めの「月の海」をやってもいいかもしれない」
「先ずは海を体験してもらうこと、次に地球の海が如何に偉大か理解してもらうこと」
「かつて私の妹が進めた計画の発展継承です。アーシアンの持つスペーシアンが触れ得ない宝。宇宙に浮かぶ青い星【地球】、人類生息域の中で最大のバイオスフィア……この力をスペーシアンに再度思い出して頂く」
「──いいわ、進めなさい」
「グラン・マ、よろしいので?」
「条件は付けます」
エリーゼとジョージの顔が強張る。
「水族館とイルカショーを忘れないこと。将来的にはクジラも飼育しなさい。食べたらダメよ」
最高意思決定者は、お茶目にウィンクして見せた。
「ミオリネさんっ! 許可降りたって!」
「オーケィ! 任せなさい!」
宇宙議会連合、スペースワシントンD.C. ズムシティーじみた前衛芸術の城の中で、ミオリネは議会連合副議長と対峙している。
「さぁ、私が押さえた建材どうします? 新たに取り寄せたら輸送費いくら掛かるかしら?」
「インサイダー取引ではないかと思うんですが……」
「違うわ、私は賭けに勝ったのよ……投機ではなく投資。私の婿の地元ですもの」
「で、議会側も投資をしろと?」
「あそこまでボロボロのフロント放置とか、誰も問題視しなかったの?」
「単純に費用対効果です。水星圏の300人救う為の予算で火星や木星の何人を救えるかと。トロッコ問題ですなぁ」
「でも、私が行先決めてしまったわ。シン・セー開発公社はラグランジュ1に拠点移したけど、改めて水星開発に立ち返る……今度は建築部門として、ね」
「ミオリネさん、貴女水星から宇宙議会に参加したらどうですか? 共和党側に席一つ用意させますよ?」
「スレッタに釘刺されてるのよねぇ……」ミオリネは紅茶を一口飲む。
「仕事は他の人にできるだけ任せてくださいって。社長の他に議員なんかしたら、スレッタにまた怒られるわ」
「お母さんが言ってました……
現代ラノベなら田舎でスローライフ展開は必須だって……」
……まぁ、確かに水星ペビ・コロンボはど田舎ではあるのだが。