怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「……え? 何とおっしゃいました? レディ・プロスペラ?」
「水星圏の人口問題、ガンドロイド水増しで対応しましょって言ったんだけど……? そんなに難しいかしら?」
「いや、その……住人水増しして、水星町長にでもなる……とか?」ジョージも流石に混乱している。
「そんなことしなくても、水星でシン・セーの社長したら町長なんかより政治力掴めるのよ?」
水星圏におけるシン・セー開発公社の立ち位置は、豊田市におけるトヨタ以上の感覚だ。シン・セー以外の企業は田舎の雑貨屋クラスの経営基盤しか持たないし、シン・セーからの税収が水星を支えて来たのは間違いの無い事実である。
「だから未だにラグランジュ1への完全移行が捗らないのよね……移転話出た時町長さん土下座してたわ」
「話を元に戻しますが、人口300人ちょいの水星にガンドロイド100体入植させるって……住人の1/4がガンドロイドって換算になるんですよ? 正気ですか?」
「水星は余所者排斥感情が強いの。まぁ廃れていった時期に犯罪者やゴロツキが増えた
タダでさえ移住希望者が少ないのに、住民から塩対応されたらどうなるかなんて……結果見えてるじゃない。実際ナスティカシアの子供達もビミョーな嫌がらせ受けてる」
嫌がらせのレベルはかなり低い。すれ違う時に舌打ちされるとか、スガキヤ入ると他の客がゾロゾロ出て行くとか。あと、なんかやたら注目されたり。
「田舎で排他的とは救えませんな」
「なので、まず政治的な圧力かけられるシン・セーの社員として余所者を入れて、蔑視感情を潰します。具体的に一定のボリューム持った余所者のおかげで町が発展したのを受け入れてもらう……要はこれから迎え入れる入植者を馴染ませる前段としてガンドロイドを使う。そういう事よ」
「水星特有の電磁波とか、本当に大丈夫ですか? なんか昔のSFだとAIが反乱起こす奴じゃないですか、それ」
「想像力が豊か過ぎ。キャリバン・メルクリウスで10年実証試験済よ」
「あー、エリーゼか。そういやエリーゼは10年水星で人間に混じって生活してたんだよなぁ……彼女がガンドロイドなの、偶に私も忘れてますなぁ」
「入植者が順調に増えたら、ガンドロイド達はカーギル辺りに転職させてもいい。欲しいでしょ、ガンドロイド」
「ええ、高待遇約束しますよ。正直エリーゼになんと切り出して良いものか分からなくて躊躇してたんですが……」
「とりあえず2万人規模まで住人を増やしたい。それぐらいの規模が有れば金星圏との定期航路も維持できるし、物流維持できる。水星が経済的に自立するにはそれぐらいのボリュームが必要になるわ」
「どの程度のスパンでそれやります?」
「私の目が黒い内に。スレッタ達がおばあちゃんになる前に」
「30年計画か……」
「そちらも水星圏マリンリゾート計画で労働力必要でしょ? 運用いつから始めるつもり?」
「来年には養殖試験始めますよ。リゾート部は10年掛からないぐらいかなぁ」
「じゃあ、急がなきゃ。インフラ関係はミオリネさんが宇宙議会連合口説いてくれた。5年で設備更新と休眠中だった食料生産プラントの再稼働が始まるわ」
「聞いています。こちらにも話が来てます」
「急がないとね」
「分かりました、こちらも予算回す様根回しします。とりあえず10体で宜しいですか?」
「もう13体作っちゃった(テヘペロ) 残り88体分、よろしくね」
「あら伯父様。ご機嫌よう」
「ミオリネ、君だな……ガンドロイド13体分の義体渡したの!」
「義肢生産工場のテストショットよ。ウチとしてもマスプロダクション前のQCに丁度いいし」
「話さず勝手に突き進む辺りはデリングそっくりだな。一言相談してくれたってバチは当たらないだろ?」
「カーギルの監視を抜けるかどうかも確かめたかったの。カーギルにバレないなら101体ガンさん計画立てても何処にもバレない……あれ見てAIだケイ素生命体だなんて騒ぐ人居ないと思うけどね」
まぁ、水星の吉野家でネギ抜きダクダクの牛丼貪る工事現場の職人さんがAIだと思う人は居ないだろう。大変良い食いっぷりだ。
【大変良い食いっぷり】
ガンさん時代に普及したガンド義肢は、ATP代謝系のエネルギー供給……読者が寝そうなので簡略化して話すと、人間と同じように飯食ってエネルギーに転換できる仕組みを備えている。また、フルガンドロイドの場合はタンパク質を殆ど必要としない為に肉を食う必要性は殆どない(糖類や炭水化物である程度動ける)のだが、一応飢餓時の予備エネルギーとしてタンパク質や脂質を蓄える事自体は出来る。彼らは太ったり痩せたり出来ない事とトレードオフで限界状態でのサバイバルが低いのだ。
大食いなのは単にエネルギー変換効率が低いってだけ。エリーゼに採用されている高効率腸管で人体の9割まで変換吸収効率が向上した。
「アラクネ側にも内通者置いたのか?」
「シン・セーの専務ヘッドハンティングさせたのは気付かな……いや、きっとエリーゼが隠したのね」
「あ。」
「やるなぁ、エリーゼ。注意した方がいいわよ、伯父様」
「ぐっ……グレーエージェント秘の運用考え直した方がいいかなぁ」
勿論エリーゼにも言い分はある。【敵】が例えカーギル内部にまで諜報網を伸ばしてきても、カーギルですら知り得ない情報は掴めない。だから「知らない部分」を操作して誤解による情報コントロールを行う……
マリンリゾート設備の中に分かりやすくモビルスーツ生産設備を用意し、水星と言うパーメット鉱床の採掘権をカーギルが手中にする。また、物資の移動を魔法で実現可能……勘の鋭い人間ならこう考えるかもしれない、【カーギルはガンダムを量産している】と。
実際、そんな馬鹿な真似しなくても覇権は取れるしカーギルは世界征服など目指していない。ただ、ありもしないものを有ると仮定して勝手に恐れてくれるのは大変助かる。AMESやっているから絶対にカーギルがその様なことをする訳が無いのだが、カーギルが穀物流通を意図的にストップさせたら水爆落とすより効率的に人を殺せてしまうのだ。
逆に言えば、カーギルが機能不全に陥れば宇宙規模で世界が飢える──彼らもまた、失敗できない作戦に従事し続けているのである。
インフラ屋さんは大事にしないといけませんなぁ。
尚、エリーゼは「ズゴック、いいよね……」からMS開発機能を持たせた模様。彼女はガンダムエアリアルと全く違う技術ツリーの機体に恋心を抱きがちなのだ。ダリルバルデとか。