怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
[悲報。エリーゼ・マーキュリー、キャリバーン君に完全敗亡]
エリーゼ・マーキュリーの【自室】は一見8畳ぐらいの部屋の様に見える30次元ぐらいの非ユークリッド幾何学が支配するパーメット空間だ。そこかしこに乱雑に積まれた本の塔があり、その全てに勉強机じみた「席」から手が届く。その自室からガンビット
「負けました。完敗デス」
「嘘やん。何で負けたの? 牛丼早食い?」
「光体未来投射先にやられた模様」
「ちょっと待って、それエリーゼが実験中のアレだよね?」
「実演されたの?」
「見てないけどほぼ確実。パーメット空間内意識構造のサイズが段違い並行棒。完敗」
「地球サイズのエリーゼ抜いた…? 木星ぐらいのサイズ?」
「水星の公転軌道サイズ」
「「「「「嘘つけ」」」」」
今では独立して個人として思考するため、彼女たちもそれぞれ違った方向に深化(進化ではない)している。それでも尚オリジナルであるエリーゼほどの構造体構築は出来ておらず、10〜15次元程度の拡張にとどまっている。そんな彼女たちからしたら水星の公転軌道レベルの構造物など想像もできない。
「マジっす。まぁそれは上には上が居るので構わないんだけど、ラヴが発生しつつある気配が」
「……まさか……未だエリーゼしか開けていない神秘の扉が……」
「まだ本人気付いてないけどね、隣の席のエレインちゃんが惚れたくさい」
「なにっ!」「皆の
ラヴの発現。それは彼女たちが共通で掲げる目標の一つだ。レプリチャイルドというコピーから真なる個人に変わるために必要なピースであるが、何故かエリーゼ以外はまだラヴが発現せず、少女漫画じみた出会いを夢見る「恋に恋した少女」に甘んじていた。
「で、お相手の
「だからちゃうって。言ったでしょエレインちゃんだと」
「新しく来た吉野家の発注量予測AIか誰か?」
「天然のインテリジェンス。つまり人間だと何度……」
「うっそでー」
「それ、人間と勘違いして惚れたんじゃない?」
「まぁ、興味深いよね。あの朴念仁でも恋のチューリングテストクリア出来たんだ?」
「なら僕たちにもワンチャンどころかかなりチャンスありそう」
「惚れるって感覚がまず分かんないからね」
極論すれば彼女たちは受肉したとはいえ、本体はデータである。ガンドの肉体は彼女たちから見るとVRゲームで用いるアバターのようなもの。現実という空間にアクセスする為のデバイスに過ぎない為、その美醜には余り「そそられない」。彼女たちが見るのはアバターの奥にある自我と精神構造の素晴らしさだ。
「ダリルバルデくん捕まえて子作りまでしたエリーゼは猛者」
「確実に猛者」
「比類なき猛者」
「話を戻そう。鬱フラグクラッシャーを自認する僕たちとしては、キャリバーンくんに恋心が芽生える前にエレインちゃんを再度精査する必要があると判断した」
「意義なし」
「この世の中に悲恋は少ない方がいい……」
「創作の中で好きなだけやれって話ですよねー」
「最悪、悲劇回避の為に記憶書き換えや消去抹消、敵対組織をすり鉢に入れて練り胡麻の様に殲滅する必要があるかもしれない」
「押忍」
「地球の魔女……テレマイトの補足を急ごう」
「前調べた限りは、単純に戦災孤児だったよね?」
「相手もオカルティストだ……精神寄生とか搦手持ってる可能性はある」
「ちょっと待って欲しい。ガンドロイドと人間が恋仲になったとして問題は無いのか?」
「オルガノイド・アーカイブを一から組み立てて、DNAを新規生成したらガンド精巣で生殖細胞は作れるよ」
「ガンドロイドは人間と子作り出来るんだ?」
「ガンド卵巣で……いや待て、キミ7子じゃないな!」
「誰だお前?」
「話すわけ無いだろ。人類の繁栄を願う善良な正義の人だよ。君たちはテレマイトと言う様だがね」
「ガンビット
「「「了解」」」
「素早いね、今日はご挨拶だけのつもりだったんだが……まさか君たちが人間になろうとしていたなら話は別だ」
「どこの手のものだ!」
「当ててみたまえ」
「
「効かんよ、そんなものは」マントを着たドラキュラじみた怪人……なんだ、あれは?!
「効きはしないのは先刻承知!」
「解除パターン解析かんり……4トロだって?!」
【4トロ】
第四インターナショナル。共産革命組織の中でも武力革命が必要だと考える集団。この辺は共産思想史も絡んでくるのだが、ボルシェビキとかレーニン系列はテロルを強く思考してた時期があり、それが何でか窮乏革命論(敢えて大衆に貧乏極めさせて、その怒りをブルジョア打倒に向けさせる)や家畜解放論に向かって、今はなんかヴィーガニズム推進などしてたりする。あるとこでとある組織と太田竜の関係に言及したらそらーまー色々あった。
「そんな事も出来るのか、当たりだよ諸君!」
「共産革命チームってまだ生きてたんだ……」
「武装革命の老舗だよ。そこらのテロリストとは歴史が違う」
「アカい癖に魔術に手ェ出すなよ!」
「ナチがガチ魔法を使うのだ! 対抗措置ぐらい開発するさ!」
「何が目的だ!」
「ガンドロイドを供給して頂きたい。君たちの様に自発的に改善をして効率化を図りたがる従順な労働者こそネオ5ヵ年計画には相応しい。我々と共に共産して世界革命を目指そうではないか!」
「お前ら」
「飯が」
「ショボいから」
「絶対ヤダ!」
「ホロモドールはゴメンだね!」
「それに」
「お前ら」
「武力革命」
「やりたがるじゃん!」
「それは大衆が愚かで怠惰だったからだ! 人間には早過ぎた思想だったのだよ、社会共産主義は!」
「そんなんだから吉本隆明にフルボッコにされんだよ!」
「大衆の原像を掴んでいないね!」
【吉本隆明】
吉本バナナのお父様。左翼思想界隈でかなり無敵な論者だった。
「はっはっは、そんなものは要らんのだ。まさかこんなところでテスト出来るとはな! では諸君! ツンドラの大地で樹の本数でも数えるがいい!
【シベリア送り】」
「それ
「ふざけんなトロキスト!」
【シベリア送り】
いわゆるサイバーパンク作品に良くあるICE(攻性防壁)だが、外から内側に入り込めぬ様に展開するのではなく、内側から外側に出る事ができない様に展開して外部接触を不能にする。人間の場合ネットワークの接続を切れば良いだけだが、ケイ素生命体であり「思考」が本体であるエリーゼを始めとするガンビット淑女たちは、自我の原点である座標をシベリアの中に封印されると現実世界側にアクセスする手段を喪失してしまう。
4トロとかは、暴力的革命を行うために「対立構造」を作り、その反目を激化させて武力闘争を「無理矢理発生させる」
水星の魔女世界だと、ブルジョアであるスペーシアンとプロレタリアであるアーシアンの対立構造を利用して更に激化。更にアーシアンを窮乏させてスペーシアンへの怒りを惹起して革命に繋げるみたいなやり方取りそう。この窮乏革命論を用いる関係上、彼らは虐げられた存在を常に探して利用しようと考える。その利用するべき存在として少数民族であるとか、被差別人民、最近は人間相手だと中々乗ってくれないので家畜解放(→ヴィーガニズム)とか毛皮利用反対とかやってたり。
全てのそれ系運動が「そうである」とは言わないが、「させない」行為が「ブルジョアの好む行為」で、示威行為が左派のよくやるデモ行進・ハンストだったり、時に暴走して暴行始めたりする場合は疑いの目を持った方が良い。