怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
金星航宙管理センターは、到着予定の統一航空機製造会社所属工場船とコンタクトを取っていた。
「──救援の必要は、無いと?」
「腐ってもこちらは工場船だ。規模は小さいが航行装置の自力修復ぐらいは出来る。それに……こんなメガストラクチャーを牽引できる程のトラッカーを頼んだらウチは破産してしまうよ」
「しかし……まぁこの航路は混雑もしていないから良いか」
「積載食料も幸いかなり積み込んでいるからな。補給の際にはよろしく頼むよ。そちらのフロントでラザニアを食べる日を楽しみにしている」
工場船は、航行中は許諾を受けた工程以外の工場操業が禁止されている。高い生産能力を有した工場船は出航時には存在しなかった砲塔やミサイルを航行中に生産して装備する事が出来てしまう……この為必ず監査官が同乗しているのだが、船舶の故障となれば話は別だ。流石に人道的にも自前修理は許可される特例がある。
古めかしい鍵による物理的解除と監査官の生体認証。時間にして15分程度で工場の設備に精気が宿り始める。
「船長、スラスターの復旧と軌道修正にどれぐらいの日数が必要か教えてくれ。報告を上げなきゃいかん」
「3〜4日ってところだろう。お役目ご苦労様です……そして、さようなら」
船長の義手が監査官の首を容易くへし折る。作戦開始だ。
「総員! 作戦行動開始だ。これから当艦は水星ペビ・コロンボを急襲して独立を宣言する。全速で水星に向かいホワイトドワーフを制圧! 到着する頃には彼らがペビを「我々」のために最新艤装に交換してくれているはずだ。現在水星圏に抗戦可能兵力はない。高々300人の住人だ、1日で制圧して建国宣言だ!」
「「「ウラー! ウラー! ウラー!!」」」
宇宙は広い。いや本当に広い。
だからこそ軍事力の展開には相応の時間が掛かり、水星の様な僻地に兵隊を展開するには金星からでも最短12時間掛かる。今は公転周期の関係で水星に最速到達可能な金星フロントでも1週間は掛かるだろう。
最大のネックは物質転送などという魔法を使い熟す魔女たちだが、運良く魔女たちは昨日【シベリア送り】になったという。場合によっては1ヶ月程度の時間稼ぎやMSによる強襲もあり得たが……今回はついてる。
荒事がなければこちらの「作業」は至極簡単。後は政治屋の仕事だ。
【ナスティカシア学園寮、調理室】
ゴドイはひたすらジャガイモを剥いていた。使い込まれたジャガイモ皮剥き機が何回目かのサボタージュを始めたからだ。いつものスイッチングレギュレータ焼損。はらぺこのガキどもに食わせるためには仕方がない。愛用のキッチンナイフで手際良く皮を剥き……
トゥルルルル
ゴドイの端末が着信を告げる。少佐からだ。
「どうした? 火星にタコでも攻めてきたか?」
「残念ながら襲われるのは水星だ」
「面白い冗談だな。どこの物好きがこんなど田舎欲しがるんだ?」
「旧ロの亡霊だ。今統一航空機製造会社管籍の工場船が航法申請外れて水星に向かったと連絡が入った」
「狙うならもっとマシな場所狙えばいいものを……」
「今後マシになるから手を出したんだろうな。リゾート開発の話聞いたぞ?」
「何年先になることやら」
「とりあえず人数はカーギルが手配した
「まぁ、ペビの居住設備が整えられたら養えなくはない数だな……本気で言っているのか、少佐?」
「相手が正気かは分からんが──本気ではあるだろうな」
「──天狗頼りになるか……アイツぐらいしかアテになる奴は居ないな……」
「それについても教えておかなきゃならん事がある。カーギルが囲った例の分析官──機能停止したらしいぞ。今AMESの諜報ユニットが大混乱に陥ってる」
【ナス校】
突如自習となったので、当然ながら子供たちは遊びに興じている。大体自習=ドッヂボールか駄弁りの時間はASの時代でも同じであった。
「パイルダー! オーン!」
今彼らが夢中になっているのはドローン使ったマジンガーZごっこ?だ。何のことは無い、友人の頭にドローンを着陸させるだけの遊びなんだが、上手く着陸させて椅子から立ち上がりガッツポーズを取るのが案外難しい。
「次俺、次オレ!」
「ミハイルはジェットスクランダーやるからやだ!」
この年頃の男子はバカをやる。それを女子が「男子ってガキね」と呆れた顔で眺めて、ポケーと物思いに耽る……というか寝てる? 美男子キャリバーン君いいよね……と恋バナに花を咲かせるのがいつもの流れなんであるがっ!
「みどももパイルダーオンやっていい?」
「おっ……ぉぅ……」
教室に激震が走った。あの動く置物キャリバーンがバカに混じって来た!
「きゃ……キャリ君なんか変なもの食べた?」
「太陽風に吹かれて風邪でもひいた?」
「ちょっと男子ぃーキャリバーン君にバカ
キャリバーン君はそんなことしない。
それほど長い付き合いではないが、級友達からは「寝ぼけてはいるけど、キャリバーンは学級委員ポジ」と信頼されていた。まさか、まさかパイルダーオンとかやりたがるとは……
「キャリバーンだって遊びたい時ぐらいあるだろうよ! イメージ的にはリバーシとかチェスって感じだとは思うけど!」
「前にやったら100%負けたからもうやらないけどな!」
「ドローン触った事は?」
「触った事はないけど使い方は知ってる。従姉妹が得意なんだ」
「あ、あのオタねぇちゃん?」
「オタ、とは……」ポケー
「あ、寝た」「正常だな」「オタねぇさんドローンで遊ぶんだ?」
当代随一の
「──上手いよ、同時11体制御できる」
「うわ、今日は再起動早い!」
「こんなのおかしいよ!」
「──変、かな?」
「私はいいと思う……」
「エリーゼに注意されたんだ。みんなと生きて行くようにしなさいって」
「あのねぇちゃん、やっぱよくわかんねぇな」
「同時11体制御できるって事は──」
「──11機ドローン持ってるという事ですね(名推理)」
「よーっし、ねぇちゃんから借りて空中戦やろうぜ! 空中戦!」
自習だって言うのに、子どもたちはゾロゾロと寮を間借りしてるエリーゼの部屋に向かった。
あらゆるアニメや漫画に精通し、やたらオタコンテンツを推してくるエリーゼ・マーキュリーは子供たちからオタねぇさん扱いされている。彼女はそれでスレッタ育てたのだから、そりゃそうもなろうと言う話だ。
宇宙だから移動に阿保ほど時間がかかり、状況により「動向掴めても間に合わない」というアイデアは朝日ソノラマ版クルーズチェイサー・ブラスティーから借用。あれは宇宙の広さを感じられて良い。