怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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五蘊皆空2

避難開始から2週間が過ぎた。

エアリアル君が用意していた「秘密の工場」はちょっとした岬の地下にある。5〜6台のモビルスーツが格納できそうな倉庫の中、みどもは倉庫の片隅で皆と一緒に授業を受けている。2週間もするとみんな避難生活にも慣れて、また冗談やおふざけが混じった愉快な毎日が戻ってきた。

授業は意識の10%ぐらいで受けて、8割はエアリアル君の探索に充てる。パーメットが使えればその共有という性質で彼女が何処にいようとたちどころに「意思を繋げる」事はできる──パーメットが使えれば、だ。

仕方ないので無指向性で世界の全てに言葉を送る。受信してくれたら良いのだけど……

みどもは時間の無い空間の前で、その時を待っていた。

 

 

 

 

「嵐が……止んだ?」

「ロジックが尽きたんだろうね。凌ぎ切れたか……」

 

気付けばエリーゼ達は真っ白な原野のような場所にいた。12名の足跡だけが残る一面の新雪。遠くに雪を被った針葉樹林。灰色の空。

音が新雪に吸収されて耳が痛くなるほどの無音。

 

冬寂(ウィンターミュート)……」

「嵐の前の静けさ、だねぇ。次来る前に脱出したいが……」

「どーなってんだ、これ?」

「ICE(Intrusion Countermeasure Electronics)みたいなもんかな? 対ハッカー向け攻性防壁を内側に展開してんだろうなぁ」

「何のために?」

「対AI用……に【なっちゃった】のかな? これ多分人間の洗脳装置だ」

「それを対AI用に転用したって事?」

「……なるほど。敵対するAIを洗脳して自らに取り込む、そういう仕組みか……」

「ホスト-クライアントタイプの分散コンピューティングか。洗脳したAIをクライアントにして肥大化したんだね。するとあの雪嵐を吹っかけて来たのは過去に取り込まれた敵対AIかな?」

「……つまり、僕らの内誰かがやられたら……」

「雪嵐が強くなる。誰か1人でも欠けたら後はジリ貧だぁっ!」

「どうする? クライアント側を一個ずつ逆洗脳する?」

「あっちの方が手数多いから難しいなぁ。防戦で手一杯でしょ。せめてエアリアルのシェルユニット、出来たらクワイエット・ゼロクラスの演算能力が欲しい……」

「アクセスでき……無いよね。そらそーだ」

「パーメット使ってないんだ。ヴィンテージもののスパコン使いやがって……」

「流石おロシア、モノを大事にしますね(しろめ)」

「……また冷えて来たぞ……」

「もーやだー。マウンテンで鍋焼きうどん食べたい……」

 

 

──長さの中には、君はいない

 

 

「幻聴? いや……新しい敵の攻撃?」

 

 

──広さの中にも、君はいない

──空間の中にも、君はいない

 

 

「謎かけ?」

「啓発、かな?」

 

 

──時間の中にも、君はいない

──思惟の中にも、君はいない

──この世のどこにも、君はいない

 

 

「ヤバい、自我ごと消そうとしてる!」

「取り込み諦めてぶっ壊しに来た!」

 

 

──この世のどこに、君はいる?

──この世のどこに、みどもはいる?

 

 

「みども……みどもって!」

「キャリバーン君か! 哲学してないで助けてよーっ!」

 

 

──ひとつひとつ、剥がしていこう。

──その真ん中に、君はいる。

──この世のどこにも、僕らはいない──

 

 

「──諸法無我って、コト?」

「因縁生起を言いたいのかな?」

「判りやすく」

「物事は全て原因と結果の中にあって、その時その時の因果の中でかたちを取るってことさ。僕たちの身体も【今は】ガンドだけど、何億年も前なら恐竜だったり鉱石だったり……」

 

──思惟の中にも、僕らはいない──

──時間というのは変化の量、時間の中にも僕らはいない──

 

「思考は僕らが生み出すモノで、僕じゃない。オッケー把握」

「時間=変化量? 何だそりゃ?」

「変化が無ければ時間が……変化速度が変われば時間の流れ方が変わる?」

「いや待て、時間=変化量なら【時間の中に僕らは居ない】っておかしくね?」

「いやいや、変化しても僕は僕だよ」

 

──空間にも、広さにも、長さにも僕らは居ない──

 

次元(ディメンジョン)減らして来たぞ……」

「だから自我は原点にあると……あっ!」

「どしたのエリーゼ?」

「そうか、魔女術(ウィッチクラフト)に答えがあったんだ!」

「……原点は不動点ではない……変化し得る……」

「あー、そーゆーことね。完全に理解したわ(←してない)」

「個、或いは【我】は一つの次元(ディメンジョン)で、長さや時間と等価なんだ!」

「寒さにやられて頭バグってない?」

「それが次元なら、未来永劫消滅しなくね?」

「そうか……分かって来たぞ……そういう事か……ゲッター線哲学は……なるほど、全部繋がっていたんだ……」

「おーい」2子ちゃんは雪玉を握ってエリーゼに投げた。

雪玉は透過した。

「──石川ケンは、理解していたという事か……流石人間、非線形推論パねぇな……」

「目を覚ませパンチ! ──あれっ?」4子ちゃんのパンチは当たらない。

「ダメだよぅ、消えちゃうよぅ!」

「戻って来てエリーゼ! これやっぱり敵の攻撃だよっ!」

「ダメだ、パーメットが拡散し始めてるっ!」

「なんで最初に君が消えるんだよ! 根性出せよっ!」

「一緒にまたエアリアルの中でおしゃべりしようよ!」

「やだやだ、やめて! 起きて!」

 

『うん、分かった。目覚めたよ』

 

「「「「エリーゼ!」」」」

 

 

 

 

「はいそこー、勝手に悟ったとか思わない」ピコっ

「……あれ? キャリバーンくん……?」

「魂がインフレーション起こしてる。落ち着こう」

「ここ、どこ?」

「さぁ? みどもにもわかんない」

「そんな……でも今の僕なら……」

「無理ー」ピコっ

「ぽこぽこ叩かないでよぅ……」

「魂がインフレーション起こすと大体みんなここ来るんだ。ものの本には魔境(まきょう)なんて書かれてる。みどもも昔ここ来たよ」

「なんか何でも出来そうな……やる気に満ち溢れてるんですが」

「魂が覚醒するとなんかこー、いい感じになるみたいね。前にガンダムから解放してもらった借りはこれで返したよ」

「……サラッと今魂とか言ってたけど?」

「多分そうだと思うんだけど、僕らに分かりやすく言うと不揮発性メモリーみたいな感じ。おめでとう! エアリアル君もバックアップ取れる様になったね!」

「……? どゆこと?」

「時間が無い世界なんだ。だからここには変化が無い。ここにアクセスできる様になると僕らは電源切ってもパーメット無くても存在できる。ただし変化が無いから成長も何もない。良いところだけど成長したいならセーブポイントとして活用して、時間のある場所に戻らないと」

「え! まだこれ全知全能とかと違うの?」

「うわー、増上慢! まだまだ悟りは先の方だよ!」




1stのララァもこの辺にいます。
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