怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

139 / 151
設定開陳回(開き直り)

いや、水星の魔女界隈の2次創作あれこれ読んだ感じ、技術考証などが弱いかな?という部分が散見されたので。いわゆる「設定ガバ」は水星の魔女本編が細かい描写せずにテキトーだから発生した問題なのでみんなに責はない。
汎用イメージがある程度固まってるナーロッパとは異なり、水星の魔女関連ではここが創作上のネックかなーと思う。(同じガンダムでも宇宙世紀に関しては掘り下げが進んでるからある程度共通認識が形成されてるんだけどねぇ)


水星の食卓

水星ペビ・コロンボ23は、50年ぐらい前ならば最新型のフロントであった。激しい太陽風その他から住民を守る高性能シールド、当時としては画期的な1G居住区画(構造の簡略化の為に、最初期のフロントは0.8〜0.9Gで与圧も0.6〜0.8気圧程度。オニール型シリンダーコロニーを参照せよ)、食料生産プラントは加工施設も併設しており、食材は後は調理するだけの状態まで加工して配給された。(スレッタが丸のままのトマトを知らなかった理由でもある)

と、言うか。

最初期は水星、色々と誤解もありめっちゃくちゃ移住希望者が少なかったのだ。かなり多くの人々が、採掘という言葉から水星地表面に居住するのだと誤解していたし、地球には戻れないと思う人もいた。

この誤謬を払拭する為に、そして安全性を担保する為にかなり贅沢な作りになって「いた」(過去形)のである。

 

パーメット好況で人口が2万人を超えた頃は、住民も「案外悪くない」と水星生活を謳歌していた。ゆりかごの星で語られていた様な停電はなく、空気や重力も地球と変わりないレベルであり、バイオスフィアとして完成していた。贅沢な事に山や林が作られて人々の憩いの場となっていたし、この頃はエレカ(電動自動車)やスクーターの利用もできた。電磁波シールドが完璧だったからだ。

が、人口激減により発電施設の部分的閉鎖が始まると……環境は一変した。電磁波シールドは人口が半減したからと言って出力を半分には出来ないのだ。しかし電力需給の関係で発電量維持もできず、太陽風が強く吹く時だけシールド出力を上げて、通常時は出力下げて電池に蓄電し……と、健気な対策をしたところで焼け石に水。空気循環頻度は減り(住民減少により大きな問題にはならなかった)、擬似重力は段階的に0.6Gまで低下(スレッタの身長がデカくなった理由)、電池容量は劣化によりどんどん低下して更新もままならず、電磁波障害は頻発するわ、停電は頻発するわ、電子記録はしょっちゅう飛んで消えるわで──夢の生活圏だった水星ペビ・コロンボは急速に文化退行を起こした。

 

そして、本題。食である。

 

低重力と電磁波の影響を鑑み、ペビ・コロンボでは宇宙開発最初期に開発された機能性簡易食料「チューブ飯」を一定頻度で摂取する様求められた。低重力環境ではカルシウムが溶出しやすく、骨格筋が目減りしがちなのだ。また、電磁波が強いのでガンが発生しやすくなった。

結論から申せば、水星圏で子育てをすると低重力なのにカルシウムモリモリの食事と栄養バランスの良いチューブ飯によりやたら身長が高い子供になりやすく、電磁波の継続的照射により若年者がガンに罹患しやすい。(多分本編のエリクトの死因も若年性白血病などのガンではないかと愚考する)

 

水星から子供が居なくなる訳である。

 

本作「ガンド天狗」世界では、免疫力が極めて高く自然治癒能力がずば抜けていたスレッタ・マーキュリーはスクスクと成長して高身長女子となった。ただ、食に関してはチューブ飯頻度が高く、高齢者が多いシン・セー本社社食で老人が好む食事を摂り続けた為に、煮物や漬物を好む傾向が強い。また、育ち盛りの10歳時に水星圏唯一の畜産・水産資源商社が倒産(本作12話、ヤクザ事務所壊滅を参照せよ)、6年程度ヴィーガンとしての生活を強いられた。

チューブ飯に冷奴、湯豆腐、厚揚げ、がんもどき。肉が食えぬが故に食卓には大豆加工品が良く並び、週に一度はチリコンカーンだ。

 

 

【チリコンカーン】

西部劇でよく出てくる豆スープ。レッドキドニーなど複数の豆を挽肉とトマト、玉ねぎ、チリパウダーなどで煮込んだもの。いつでもどこでもチリコンカーンを食わされたので、西部劇では定番の「もう見たくもない食い飽きた料理」として描写される。

尚、水星チリコンカンは肉まで大豆の代用肉。この世の地獄か。

 

 

肉の無い西部劇。ジョン・ウェインは幸せであった。彼にはまだ肉があったからだ。ポールニューマンも水星チリコンカンには涙するであろう。大盛りラーヌードルを美味そうに食うスレッタを誰が責められるだろう! 水星圏ではマギーブイヨンやコンソメ(の顆粒)は高級嗜好品だ。牛乳も脱脂粉乳が主力である。輸入食材ではなく自給できる野菜類を食わねば僅かばかりの水星圏の富が他のフロントに流出してしまう……なのに他のフロントで生産されたチューブ飯を高頻度で食わねばならぬこの不条理!

 

この世の中には食を楽しむ民族と、食を生命維持の為の雑事と考える2つの民族がいるという。我々日本人は概ね前者で、後者は現代社会のイギリス・ドイツ・アメリカなどプロテスタント比率の高い地域に多い。

必要に迫られて、ではあるが。水星圏は後者だ。本作最初期に他人の飯にガム吐いて捨てた学生がガンド天狗に苛烈な処罰されたのは上記の様な理由からだ。水星では食べることは生きる為の義務的な要素をはらみ、食を粗末にすることは死ぬことである。

 

また、社食を任されたゴドイは代用肉のビーフジャーキーを結構頻繁に食卓に載せた。水星圏の食事では顎の筋力が低下しやすいからだ。酒のつまみには良いが酒を飲まないスレッタには手強い相手だった。

 

 

そして、今。

ナス高の学生は幸せであった。水星移住程なくして巨大工場船、ホワイトドワーフが寄港したからだ。5000人の総員を抱えるホワイトドワーフには当然の如く「長期惑星間航行」を視野に入れて畜産プラントも備えている。そして5000人の食を潤沢に賄えるその設備は200人程度の水星圏の需要をなんとか賄える規模を持っていたのだ。水産資源生産プラントの完成までの1年間、彼らは肉に飢えずに済んだ。

この1年間でホワイトドワーフ相手の商売や水産資源生産プラント従業員の移住も始まり、永らく操業停止していた畜産プラントの再稼働も始まり、鶏と豚の供給も進みつつある。

ようやく、ようやく止まりかけていた水星圏の時間が進み始めた。




水星圏は西部劇のフロンティア(開拓中のど田舎辺境域)に似ていた説。ただし肉は無い。
イメージソースとしては軍艦島(長崎県端島)なんかが参考になると思う。あの島も石炭掘ってた時は東京を上回る人口密度で、最新のコンクリート製高層建築が立ち並ぶ島だったのだ(石炭が石油に取って変わられて一気に寂れた)


本作での設定を他の作者さんは利用したり利用しなかったりして良い。いちいち独自に考えて妥当性を検討するより、ある程度設定固めてシェアワールド化した方が創作しやすいと思うのだが……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。