怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「……これか……」
水星の採掘基地はチャオモンフの様な永久影(地軸の傾きにより絶対太陽に晒されないエリア。水星南極近く)か、赤道上のいくつかのエリアに限定されている。チャオモンフは水星で最初に建築された基地だ。ただ、南極近くという事もあり資源の「出荷」には向かない為、水星地表の「長い夜」の内に赤道上に地下基地を構築して、こちらから荷物類は出荷されている。
水星共和国樹立事件時に起きたテロリスト機の墜落事故。それがたまたま「明け方」のエリアだった為に、調査は水星の日没(地球時間で3ヶ月後)を待たねばならなかった。墜落状況を見る限りマグネティックストームで開いた磁気圏の穴から太陽風の直撃を受け、機体が制御不能になったと推察されるが……
「──墜落後に爆発?」
「墜落で装甲破断して、その後太陽にこんがり焼かれたから動力系が爆発したかな?」
そのモビルスーツは奇妙な壊れ方をしていた。通常MSは損害評価プログラムが大破……もうダメぽ判定になると動力炉を停止して生命維持機構をバッテリー作動させる。運悪く中破より軽い状態で動力部に攻撃が当たらなければ爆発しない様になっているのだ。交戦ではないただの事故で大爆発する様では危なくて使えない。
今回の場合、敵の攻撃を受けた訳でもないのに、しかも激突跡を見る限りギリギリソフトランディングした後に爆発というのは些か妙だ。
「破壊の専門家としてどう? ソフィー姉さん?」
「墜落後に爆発は間違いないね。何かのタイミングで推進剤タンクが膨張爆発、それが生きてた動力炉巻き込んでドカンかな?」
「──でも、推進剤タンクは……これかな? 原型保ってない?」
「写真撮影して可能なら残骸集めて損保屋さんに査定して貰えばいーじゃん。早く民宿戻って鯖煮食べようよプル」
「ティックバラン用意してサルベージ。まぁ週明けだね。あと2機はどの辺落ちたんだっけ?」
「近くのリンクルリッジ(高さ2kmにも及ぶ崖状の線構造)にぶつかってるんじゃないかなぁ?」
「北に10kmか。行くよノレア」
「お?」
「──あら?」
リンクルリッジ近くに擱座したMSがあった。どうやら背部スラスタは全損したものの、爆散はしなかった……
「可哀想になぁ」
「──アーメン」
不時着したのが地球や月だったら良かった。日中の水星は熱と磁場と電磁波渦巻く地獄だ。一気に死ななければ苦痛の果てに死ぬ事になる。
「どこで野垂れ死んだかねぇ」
「足跡あるね」
「──それぐらいは回収してあげよっか」
てくてく歩いて行くと、そこにはリンクルエッジの一部に盛大に突っ込んだMSが。こちらは爆散している。
「仲間助けに向かったが、って感じか」
「死んで屍拾ってもらえるとはテロリスト冥利に尽きるわ」
「あれ? お姉ちゃん! あそこ!」
「? 扉? エアロック臭いな」
「こんなとこに地下採掘基地あった?」
「んー記録には無いけど……水星は記録管理ガバいし……」
「ビームサーベルで穴開けちまうか」
「賛成」
「まあいっか」プルもそろそろ鯖煮定食が気になってきた。
ジュブジュブとビームサーベルが食い込んで行く。
「なんだこれ? 随分厚いな?」
「何重にもシールディングして、更に断熱……こんなに頑丈にしてんだ! 安全第一のシン・セーらしいな」
水星の夜は寒い。暫くすると溶断面も冷めて通り抜け出来る様になる。
「ライト!」「あい」
縦横3mの通路がかなり長く続く。シーリングライトはあるが朽ち果てていた。
「──電源は、そりゃ死んでるか」
「なんかやたら広く無い? 突発的な磁気嵐とかの時の待避壕かな?」
「それなら記録なりなんなり残ってるでしょ」
「ルブリスのセンサーでサクッと調べよ。ダンジョン探索とかしてたら鯖煮が冷えちゃう」
「──そうね、エアとかも用意しなきゃだし……」
「なんだこれ? やたらデカいよ!」
「分かる範囲で2kmぐらい? 地下もある。アリの巣みたい」
「こんな構造物に記録が無いのは怪しいねぇ」
「仕方ないわね」
「──これは不可抗力」
「墜落調査と別モンだしね」
「「「帰ってご飯にしよう」」」
「──という訳です、ジョージ主席」もぐもぐ
「壊さなかったのは高く評価するが、米咀嚼しながら業務報告は……」
「時差の関係でこっちまだ夕方なんです。主席退勤前に報告しとこうと思って」ずずず「急ぎました」ごくん
「ティックバランはホワイトドワーフに作業用のがあるはずだから借りることは出来るが……地表に下ろせるかな?」
「ラヴリーエンジェルで降ろしたらいーじゃん」
「……水星にはラブリーエンジェルを衛星軌道まで上げられるカタパルト無いぞ」
「改修したらいいじゃない。ホワイトドワーフ来てるんだし」
「──仕方ないですよね、経費経費」
「MS懸架して飛べる様にもして欲しいかな」
「有重力下でのランディングギアもね」
「はーぁあっ。採掘始める前に面倒ごとが頻発するなぁ」
「安心してくださいよ、流石の私達も採掘場から遠く離れた廃墟で大破壊はしませんって」
「イマイチ安心できん……」
「お風呂沸きましたよお嬢さん」
カーギル主席調査官の勘は鋭い。
船の改修すると暇な時間が月単位で発生するっていうね……
まぁ、ペビの中での調査もあるんだけど。