怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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ソフィとノレアは過去データ検索ならプルさえいたら楽勝と考えていた。


書類(データ)を探せ

【旧シン・セー開発公社本部ビル、地下資料室】

 

「ここよ」

ちょっとした図書館ぐらいのサイズの部屋に、林の様に立ち並ぶ棚、棚、棚。シン・セー開発公社のデータの山! 何故かそれがディスクに焼かれて棚に納められている。

「……え?」

「──サーバ保存じゃないんですか?」

「発電施設のフル稼働を止める前にね、データを全部バックアップしたのよ……先代の発案でね」

「なんでそんな……」

「ああ、こりゃデータ飛ぶなって予感したのね。電磁波シールドの出力落としたらそうもなるわ。5万枚ぐらいあるって聞いてる。お役所ってデータ集めるの好きだから……」

 

シン・セー開発公社は元々金星フロント──当時は内惑星系フロントという名前だったが──が設立した水星圏開拓を目的とした公的組織である。まだ企業が国に保護されていた時代の話だ。その為水星の古いデータはかつて役所代わりをしていたシン・セーにも残されていた。

 

「これ、バックアップがここにあるの不味くない?」

「渡そうとはしたのよ。でも保存場所無いって断られて、逆にお金払うから保管してって……」プロスペラも頭を抱えている。

「プルちゃん、これカーギルで引き取れないかしら?」

「え? ちょっと即決は……」

 

例の待避壕?の資料がないか役所に行ったら、水星開発関係の古い資料はシン・セーにあるはずとたらい回しにされ、シン・セーに来たら大昔の資料含めて全部死蔵されていたと。この山から目的のもの探すのか……

 

「そもそも、このディスク一体何? パーメットディスクですらないじゃん? 読み出せるの?」

「ライターあるからそれで読み出せるわよ。USB5.0規格だけど」

「何それ?」

「有線通信規格よ。そっちにそれ繋げる端末あるわ、確か」

「そっからネット繋げばいっか」

「無理よ。その端末パーメットネットワーク繋がらないから。その端末からこっちのホストに繋いで、このコンバータ挟んでパーメットネットに繋ぐの」

 

現代版に翻訳すると、記録媒体がZIPディスクで接続がパラレルケーブル(昔のプリンタケーブル)で、パラレルポート持ってるPCには10Base-Tのネットワークカードが刺さっててRJ45コネクタなし(同軸ケーブルによるバス型トポロジー)、同じ10Base-Tで繋がるホストにはRJ45コネクタ付いてるのでそこからハブに繋いで、そのハブの光ポートからようやく主流のネットワークに接続できる……そんな感じだ。

 

「パーメットが流行る前からのデータなのよねぇ」

 

先の「現代版翻訳」大体日本だと30年前の話だ。50年前だと下手すればコンピュータにデータ読ませるのにパンチカードを使っていた。アドステラ世界では驚異的に互換性が維持されていると言って良い。

 

 

 

 

「パーメットが利用され始めるより前のデータだと……?」

「はい」

「こんなの」

「ゆ……UV(紫外線) Disk…… 60年以上前のデバイスだぞそれ」

「これ5万枚読み込ませるの私たちだけじゃ無理。現地バイト使っていいですか?」

「なんかラベルとか無いのか?」

「剥がれてますね。床に大量に落ちてました」

 

【ラベル剥がれ】

案外シール系は乾燥して剥がれるぞ(経験談)

 

「……ホワイトドワーフの技術者にも尋ねてみてくれ」

 

 

【ホワイトドワーフ号内、ラブリーエンジェル改装デッキ】

 

「……なんだって?」

「万単位の古いディスクがあるんですけど、それ効率的に読み出すにはどうしたらいいですか?」

「できたら安く」

「──可能なら早く」

(わん)さん辺りなら何か知ってるかな? まて、地図書いてやる」

 

 

ホワイトドワーフ号居住区、クワンタ外区3丁目。

2層に分けられた生活ブロックのうち、内側は倉庫、外側は生活圏に当てられている。現代で言うアーケード商店街の様な天井の低い道路2本の両側に画一的な「家」が立ち並ぶ近代的な構造とは裏腹に、(まばら)にある商店の店先にはガラクタが山と積まれていた。

 

「なんだこれ」

「ここ、ゴミ売ってんの?」

「ここはジャンク街だからな」

「──すいません、王大人を探しているんですが」

「王さんならそこの角曲がってコンビニの前のケバブ屋の2階だ。データサルベージでも頼むのかい?」

「ねえねえ、なんでこんなガラクタ売ってるの?」プルがつまみ上げた基板には、破裂して液漏れしたコンデンサと焦げたMOSFETが乗っている。これショートしてない?

「パーツ取り用さ。もう生産してない細かい部品はぶっ壊れた基板から剥ぎ取ってニコイチ再生するのさ。案外いい商売になる」

「新しくしちゃえばいいのに……」

「300年ぐらい前からそうらしいぞ。その時金を渋って機器の更新しないと、故障起きてから交換しようと思った時に大枚叩く羽目になる。まぁワザとぼったくってるんだがね。ケツ叩かないとみんな新しいもの買わないからな」

 

「すいませーん、王さんいらっしゃいますかー?」

謝光臨(シェイコゥンリ)、どしました。おばあちゃんのアルバムでも壊れたか?」

「古い円盤の読み込みしたいんですけど……」

「円盤? レコードからMO、DVDと色々あるけどどれね?」プルもソフィもノレアも全て聞いたことの無い規格だ。

「これなんですけど……」

「UVね、10分ぐらいでコンバートするよ。PMD(パーメットディスク)でイイカ?」

「いや、これと同じのが5万枚」

 

哎呀(アイヤー)……5万……5万…… 哎呀……」

 

王さんは放心していた。1枚10分の作業を5万回。500,000分は大体10ヶ月に相当する。

「ちょとまつね…… 喂你好,李先生,我有一个很好的……」

「──あの、何がどうなってます?」

「5万枚人力でやるのは阿保ネ。機構(システム)組んで自動化するヨ」

 

「5万枚……阿保ある」

「リーダーが4台しか無い。どする?」

「あ、ウチにも1台あります」プル、挙手して発言。

「ロボアームでディスク入れ替えは出来るから、後は固定して流し込めたらいい。確か大漁エレクトロに昔の銀行系バックアップマシンの……」

「端末は……」

「ホストは……」

「──とりあえず現場見てもらいます?」

 

「わぁ……」「あいやー……」

「動態保存されてるの初めて見たネ……」

「そんなに古いの?」

「……王先生、USBって何時頃まで使われてタか?」

「小さい頃使った記憶はあるよ。小学生の頃だから……50年以上昔ヨ」

「プロスペラ先生、この機械まだ要るか?」

「……データコンバートしてPMDとかでバックアップし直したら不要だけど……」

「代金がわりにこれ寄越すある」「これ、普通なら博物館にあるものアル」

 

まぁ、こんなことしてるからホワイトドワーフがジャンクまみれになるのであるが。

 

 

ともあれ、翌日から古いガンド義肢より遥かに古臭い産業機器のロボットアームや端末や電源安定化装置や昇圧機や……が持ち込まれ、地下資料室の一角は町工場の様になった。システム構築は3日、5万枚のディスクを読み込んでPMDにすると、それはたった3枚になってしまった。




【たった3枚】
現実世界の3.5インチフロッピーが1.44MB、Blu-rayが2層で50GB。Blu-ray Discはフロッピーディスク3万4000枚分の容量を持つ。こう考えるとペビ・コロンボは開発当時は最新機器を入れてたんだなぁと言うことが分かる。

ホワイトドワーフ電脳組は船内屋探ししてリーダーのジャンクを18台発掘し、6台を動作可能状態にレストアした模様。こういうものは探せば案外見つかるものだ。
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