怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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たった3枚の僅かなデータ。
しかしそれは……


太古の(データ)

世の中にはインターネットで検索すれば凡ゆる物が見つかると考えてる人がいます。確かに今は大体のデータが電子記録化されており、機密文書でもなければ大抵のデータはネットに転がっているのだけど……

例えば日本では、インターネットが流行り出すのが1990年代中盤。何故かと言うとWindows95までコンピュータをネットに繋ぐにはOS/2などのホストを用意してコンピュータ用OSだけではなく、ネットワークOSを組み込まなければならなかったからだ。そしてインターネットに日本語の知識が大量に保管され始めたのがその頃だから、1990年代にコンピュータに慣れ親しんだ人が「興味を持った事柄」以降の事象についてはネットを検索すると色々なデータが見つかる。集合知は素晴らしい。

しかし……それ以前の、その当時のネット民が興味を持たなかった微妙に古い時代のデータというものは案外データが残っていない。

一例を挙げよう。筆者の父方の祖父は札幌競輪関係者だった。そこで筆者は父が10歳の時に死んだという祖父がどんな人間だったか興味を持ち、札幌競輪について調べたりした事があるが……当然そんなデータはネット上には無いのだ!(昭和24年〜33年までしか運営されていない。祖父死亡が昭和30〜31年ごろ)

また、団塊世代が青年の頃にバスコン映画というバースコントロール(出産抑制)を目的としたエロ映画があったらしいが、古い時代のエロコンテンツは低俗として公的記録に残り辛い。これもその存在を知る世代がネットにアクセスしてデータを残していないので、図書館はしごして本当に僅かに残る資料を読み解かねば「存在に気付く事すら出来ない」

 

まぁ、存在に気付けないからこそ「ネットに全てがある」などと思えるのだろうが、それは明らかな誤謬だ──ソフィとノレアが見つけ出したものは、水星圏の歴史地層に埋もれていた、化石化したデータの海だった。

 

 

 

「結構あるねぇ……謎遺跡」

「なんでこれ埋もれてたんだろう?」

 

新規の穴が掘られなかったからである。

【パーメット鉱床探索】はかなり昔から行われていた。最初の記録はアドステラ前の西暦(B.S.)の時代。でも、何故パーメットの性質が明らかにされたA.S.48年【以前】にわざわざ水星まで来て「パーメット鉱床」を探したのだろう?

A.S.48年からは鉱床探索が活発になるが、モノがあっても「昼間」は作業が出来ない事と、決して昼が訪れないチャオモンフ周辺だけでもそこそこ潤沢に採掘出来た事などから鉱床探索は下火になっていった様だ。

試掘跡は後に鉄やニッケルなどの採掘場に変わり、「昼間」の高温を利用した金属精錬が始まると──水星の長い「夜」の時間に資材射出用電磁カタパルトの建造が始まる。そしてその電磁カタパルト建造中に有力なパーメット鉱床が見つかるとそこに新たなパーメット採掘場が生まれる。何故か、都合よく。

「そんだけ水星のあちこちにパーメット埋まってるんじゃね?」

「──だったらもっとチャオモンフ近くに採掘場できるんじゃない?」

「実際チャオモンフ近くしか今掘ってないけど、最盛期は水星赤道採掘場の方が採掘量多いね。まぁ輸送楽だから当たり前か」

 

「で、謎遺跡だけど……A.S.20年ごろに送られた無人探査機が有人探索の前準備で作ったけど、廃棄されたって記録あった。なさ?って組織が水星探索計画してたみたい」

「20年ごろって、月開発時代か」

「シャクルトン市が建築中じゃないかなぁ」

「シャクルトンが23年着工だね。第一層完成が28年」

「──宇宙開発費用が随分少なかった時代だから、リソース集中したのかしら?」

 

A.S.元年はモルディブ近くのメガフロートに軌道エレベーターが完成した年だ。キリスト教カルトはバベルの塔だ、神の(おそ)れを知らぬと猛抗議したらしいが、「神はそんな低軌道におられません」の名セリフで批判は消えた。デブリだらけの宙域に神様がいてたまるか。

軌道エレベーター完成により飛躍的に宇宙開発が容易になり、人類が太陽系の各所に探査機を飛ばした時代だ。B.S.時代の宇宙開発協定により宇宙開発は国家という枠組みを超えた宇宙開発公団が主導するのだが、ほぼ手付かずだった宇宙開発最初期は軌道エレベーター建設の数倍の予算を要し……地球圏では「宇宙開発みたいな夢物語ではなく、我々の生活に予算を割け」と大規模な抗議運動が起きたと史書にある。

批判に晒された宇宙開発公団は慌てて月面に居住可能月面基地を作り「Fly you to the Moon」のキャッチコピーで月面旅行キャンペーンを張り……これが【歴史としての宇宙開発史】だ。

 

「随分ガメつく儲けたらしいよー」

「スペーシアンが金に汚いのはその頃からか」

「宇宙生まれの生粋のスペーシアンが生まれたの、30年代入ってからだよ」

 

スペーシアンという言葉自体も実は宇宙開発公団の造語だ。最先端医療で無痛分娩、これでお子様もスペーシアン!と、国籍を「宇宙」にするキャンペーンで高所得者層を釣り、超国家組織だからと宇宙国籍ならどこに行ってもビザ不要と言い出した。これで宇宙籍の人間が爆増したのである。しかも、比率としては高所得者層が多い。

そして充分な量の国民を集めた後に……宇宙開発公団は「宇宙議会」として独立した(A.S.40年)

 

その後、第一次ドローン戦争が起きる。噂では宇宙議会が裏で手を引いたなどの陰謀論が囁かれているが、宇宙議会は軌道エレベーター防衛しかせずに戦争参加していない。この暴力的な「消費」により地球上の国家は疲弊。国家サービスの一部を私企業(但し、上場企業に限られる)に委託する「企業行政法」が成立。

 

 

人類の歴史はこの時期地球地表で動いて行き、宇宙は蚊帳の外であった。戦争を避ける為に宇宙国籍を持つ者は本格的に生活圏を宇宙に移す。こうして人類の富の5割が宇宙に移動したのがA.S.52年3月5日。地球の史家はこの日を「転換日(the day of conversion)」と呼ぶ──この激動期に宇宙で何が行われていたか。たった3枚のデータはその一部を記録している。




宇宙開発やる奴は3種類。
宇宙にロマンを感じる浪漫派。頭が良過ぎて人類を案じ過ぎる心配派。好奇心が高過ぎるお子様派で、そのいずれもが他の2つの性質を少なからず持っている。これほど厄介な連中が悪事を考え始めると厄介である。
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