怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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宇宙空間にも慣性質量はありまぁす!


ランドヴェーッティル

無重力空間でも物体には質量があり、慣性は働いている。故に1トンの物を動かす為にはそれなりに力が必要であるし、動かした物を止める為には動かした時と同じ力が必要になる。作用反作用の法則だ。

 

例えば地球上で何か構造物を作る場合、輸送機関に組み立て作業者が運ぶことが出来る「単位」に組み立てる物を分解して運ぶ。鉄骨はクレーンで動かすし、トラックで運搬する。そしてトラックで運ぶ関係上道を通れるサイズに限定される。

宇宙ではこの運搬上の制限が極めて少なく、かなり巨大なモジュール化したパーツを組み立てることで効率的な作業が出来るのだが……作業員の身体も巨大化する必要があった。そしてそれはいわゆるパワードスーツサイズから段々と要請に応じて巨大化し、最終的には18mの巨人サイズになる。

 

エレイン「なんで人型になったの?」

キャリバーン「人型じゃないとその新しい形に慣れなきゃいけないからじゃない?」

 

フレームとその力は重量物を運ぶ為に十分堅牢で、稀にぶつかるデブリの直撃にも耐性があり、搭乗する作業員が長時間の作業を行える様に十分な空気を搭載している……スペース労働安全衛生法による「最大連続6時間稼働でき、4時間毎に1時間の休憩で4時間分の充電と空気ボンベの交換が可能」というレギュレーションに合わせて行った結果、18mサイズで釣り合いが取れたのだ。

 

この様にしてMSのサイズが定まると躯体工事(構造物の大まかな形を作る工事)は十倍以上の高速化を遂げた。フロントやプラントが信じられない速度で増えたのもこの為だ。

宇宙開発の基本サイズがMSによって基準化すると、軌道エレベーターの様な宇宙主導の建築もMSによる十倍基準に合わせられて行く。いつしか軌道エレベーターの周りには必ず「巨人」がいる様になり、それは世界樹の下に集う巨人族の様に見えた、らしい。

 

その巨人が、軍事転用された。

 

既にお気付きの方もおられるかと思うが、スペースデブリの直撃に耐える防弾装甲というものはとんでもなく堅牢なのだ。

 

 

【スペースデブリ】

衝突時、大体相対速度は秒速10kmほどだとか。一般的なライフルが秒速1kmほどなので運動エネルギー(速度の2乗に比例)はなんと100倍。当然ただ硬いだけでは防御不能である為、多層スペースドアーマーや複合装甲化して防御する。秒速10kmというのは光学兵器を除けば現実世界における如何なる加害手段よりも高速だ。(10km/s = マッハ29……宇宙には大気がないからアホの様な速度が出せてしまう)

 

 

更に申せば秒速10kmで飛来する極小の物体──それがスペースデブリだ──を回避または防御する為に、MSはパーメットを利用した極めて広域を探知し得る極めて高解像度のセンシング能力がある。これはMSの目の高さから見た水平線(40kmぐらい)まで遅延なく探知可能で、特に高速飛翔物に強い。戦車のレーダー半径が3kmで射程が3km程度なのは戦車が極めて車高が低く、戦車の敵が敵戦車だからだ。また、衛星を使ったデータリンクは宇宙開発公団や宇宙議会に掌握されており軍事利用不能。逆にMSという宇宙側機械は宇宙から地上を観察出来る……

ただし、完全無敵ではない。

雲の下を飛ぶ戦闘機からのミサイル攻撃(射程100km)には極めて脆弱で、運用には対空防御システムの随伴が必要ではある。ただ、単騎作戦行動能力というものは軍事ではさほど重要視されず、MSは装甲化された物見櫓としては極めて優秀で、更に申せば対ドローン攻撃機やドローン戦車の駆逐には向いている。いわば人工衛星の軍事利用が不可能な環境下での地上戦早期警戒管制機として機能可能であった。

 

このMSを加えた軍事システムはネオ・ペイガニズムが微妙に流行りつつあった西側諸国でランドヴェーッティルと呼ばれ、MSはその中の丘の巨人(ベルグリシ)の名を得る。いつしか地球の民は宇宙関係の技術を北欧神話系の名前にすることを常とする様になった。軌道エレベーターを世界樹(ユグドラシル)と呼んだり、セイズやらガンドやらヴァナディースだのフォールクヴァングだの。じゃあいつか世界はラグナロクで滅びるのか。(まぁ、地球の民からすると世界大戦化した第二次ドローン戦争が当にラグナロクという終末戦争に見えたのだけど)

 

 

【ランドヴェーッティル】

ヨーロッパでキリスト教が広まる以前に信じられていた「特定の土地を守る自然の精霊」の一群を指す言葉。日本における土地神に近いか? 人間が住む前から何らかの力により支配域の豊穣と繁栄を守ってきた存在で、シャーマニズムの一形態と見ることもできる。

 

 

これが面白くないのがキリスト教側である。何故か最新テクノロジーが彼らから見て異教異端である北欧神話やペイガニズムの単語で埋め尽くされていく。天に昇るならヤコブの梯子だし、人々を守る巨人はエンジェルではいかんのか? 更に軌道エレベーター開発時点で「そんな低軌道には神はいらっしゃいません」と断じられてバベルの塔であり傲慢だ!の主張が退けられたのも尾を引いている。更に言えば世界共通記年法がキリスト教由来の西暦からアドステラと「宇宙開発起点での記述」に変わったのも「キリスト教の影響力が低下した」と捉えられた。(まぁ、日本みたいに2種類の年号が並立しただけだ)

 

こうして、いつの間にか互いに力尽きて終わった第二次ドローン戦争の後、キリスト教はレコンキスタを掲げて世界宗教に返り咲くべく活動を再開した。特に倫理面での優越を取ろうと各地で暗躍。カーギルが諜報までやる様になり、MS開発協議会が発足したり、ドローンの軍事利用が禁止されたり。

MSが軍事組織の一部ではなく、それだけで完結可能な多機能化(マルチロール)を進め、軍事がMS主体になったのも上記の様な理由からだ。その過程でランドヴェーッティルという言葉やベルグリシという概念は消えて行く。そして本作作中時間における「今」、A.S.120年代もこの様な流れの中でレコンキスタが続けられている。




ヴァナディース事変に繋ぐならこういう流れにしないと不自然かなと。一回北欧神話やペイガニズムが流行らんと「どっからその語が出てきたのか」分からないもの。
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