怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
エロやグロより「良識を否定」に振る筋運びが18禁よのぅ。
「え? 姉さんがMS開発を?」
「地球の建築用MS大手のオックスアースがガンドの思考制御をMSに適用できないかって打診して来てね……ちょっと予算的にウチも厳しいから受けることにした」
「いや……その……何故……」
「建築用MSのオペレーターが足りないんだとさ。確かに直感的な操作が可能なガンドなら建MS2種試験も簡単にこなせるだろうねぇ」
「MSではなく乗り手が足りないのか……確かに盲点だな」
デリングは考えた。確かにMSの運転はMSを用いた実機訓練が「貧しい地球側」では行い難いし、地球上でのMS運転は「設地面積が小さ過ぎる」為に、大変難易度が高い。その難しさを操縦系の簡素化や直感的操作を可能にするUIで補うのは効果的なアプローチだろう。或いはヴァナディースはMS開発の重要なパートナーになる可能性もあるかもな、と。
このデリングの予想は最悪に近い形で現実化する。
「不味いことになったよデリング」
一気に白髪が増えたカルドを見てデリングは驚いた。
「オックスアースが戦闘用MS開発に参入する。異常に操作し易いMSを引っ提げてね」
「いや、でも所詮建築用では……」
「これを見てもらおうか」
そこには見慣れたカペルが模擬戦闘をしているのだが……
「いい動きをしてるな、中々のパイロットだ」
「……それがね、パイロットはオックスアースの新入社員なんだよ」
「元軍人ですか?」
「大卒で、経済学部さ」
「またまた冗談を。アルバイトで建築用MSにでも乗っていた……」
「原チャリの免許すら持ってないそうだよ」
「まさか。運動プログラムを……」
「機体バランス調整はオートマだけどね、あとはガンドの思考制御さ。ハメられたねぇ……これを開発協議会でなんとかダメ出しは出来ないものかね?」
「……難しいな。寧ろこれは各社が欲しがる……そもそも何故MS開発なんかしてるんだ! 義肢技術なら……」
「最後のガンド機能さ、ガンド脳を作る」
「それが何故!」
「脳を模したユニットが小型化出来ないのさ、これは知ってるかい?」
「シェルユニット……ああ、アラクネとIntelが共同開発した……」
「こいつの駆動にジェネレータとMSサイズの実装面積が必要なのさ」
「……まだ、周辺技術が十分ではないと?」
「ソフトは兎も角ハードウェアがね、建築用MSなら用途も合致すると思ってたんだがねぇ」
「ちょっと待ってくれ姉さん。さっきガンド脳と……」
「ああ、そうだよ。ガンド脳」
「脳を機械に置き換えるのか? そんな事が……」
「ドローン戦争の時のセイズの応用だよ。あったろ、そんなの」
「カイロ条約で使用禁止だよ! いや待て、戦闘用MS開発はやりたくないんだな、ヴァナディースとしては?」
「当たり前だろ。義肢開発組織だよウチは!」
「なら、手はある。そのMSにドローン機能を持たせてくれ。それを論拠に開発棄却する」
「……できるのかい?」
「姉さんの懸念は「誰でも戦闘用MSを扱えるのは不味い」なのだろう?」
「ああ、全く操縦経験がない奴が扱えるのは不味いねぇ。また子供兵問題が出る」
「なら、潰してみせる」
【子供兵問題】
例えば方陣敷いて相手をボコボコに殴り倒すローマ時代の会戦では、子供は戦力にならない。非力な子供では身体能力に優る大人に敵わないからだ。しかし武器というものは基本的には「身体能力の差を埋める」ものであり、クロスボウや銃器が出てくると「体格に関係無く」敵を倒せる様になってきてしまう。それまで専業の「兵士や騎士」が主力だった「戦場」が銃器の発生により国民皆兵に向かったり、ライフルさえ撃てればある程度の戦力として【子供も使える】となって来るのは必然ではある。兵器とはそのようなものだ。
水星の魔女本編では「十分操作系が発展した後の」時代だから目立たないが、第二次ドローン戦争直後のMSの運動性能とガンドを操作系に用いたMSの運動性能は正に段違いと言わざるを得ない。
もしヴァナディースがMS開発自体を行っているならば開発協議会側でも難癖をつけ易い。現実世界で三菱がジェット機開発にやたら苦心したのは実の所航空機産業の基準クリアのノウハウが全く無かったからだ。ホンダジェットがうまく行ったのは基準クリアの為に有識者を招聘した部分にある。
建築用ではあるがMS開発を行なっていたオックスアースという「既に開発協議会」参加企業がヴァナディースと協業するなら止めようが無いし、更に軍需をやっていた企業がオックスアースに吸収されたなら、軍需独特の制限ややり方も熟知出来る。
「どうだい、ガンビットは?」
「……圧倒的ですな」
フォールクヴァングにて、軍用ガンド──ガンドアームを否定させる為のネタである「MS搭載型ドローン」の開発は急ピッチで進められた。対空攻撃を掻い潜るミサイルという常識外れの兵器はオックスアースにとって……新規に戦闘用MS開発を手掛け、アーシアンとスペーシアンの技術・戦力格差を埋めようと考えるアーシアン企業にとって大変魅力的だった。しかし……問題もある。ガンビットはパイロットの神経系に多大な負荷を与えてしまうのだ。
「……データストームは克服出来ないのですか」
「ガンビットを使わなければ、つまりリンク深度を2までに制限したら問題は少ないね」カルドは鉄面皮でにべもなく告げる。そもそも軍用にするという計画には反対だが、資本関係で頭を押さえられたから仕方なくやった事だ。
カルドとしては開発費が入りガンド脳が構築できたらそれで良い。軍事技術が民間にフィードバックされて快適な生活を生んだ事例などごまんとある。今やご家庭に1台はあるであろう電子レンジは軍用レーダーから派生したテクノロジーであるし、車のカーナビも元々は軍事技術だ。
「……データストーム対策は本社でも考えていますが……博士、目処はついているのですか?」
「有るとすれば……ルブリス改プランかねぇ?」
重ねて書くが、カルド博士の目的は軍事開発に見せかけたガンド脳開発である。出来たら軍事転用プランは棄却されて民間転用だけ生き延びるのが望ましい。つまりデータストーム発生はカルド博士としては望ましい状態なのである。【是正する気は毛頭無い】
最終的にはパイロットが死にかねないトラブルだ。そんな機械を量産する訳が無い……医療技術開発者であるカルド博士は己の常識に照らしてそう考えていた。
そう、それはカルド博士の常識に過ぎないのであった。
データストーム問題は敢えて未解決にされた。そうすることにより軍事技術化を防ごうとした訳だ。