怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】   作:PureFighter00

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騒がしい遭難者

ようやく……ようやくアスティカシア高等専門学園まで辿り着いた。水星からローカル航路で金星軌道まで行き、金星から定期便で月の大宇宙港に向かい、そこから学園の定期便で……

水星からね、学園への直行便なんて無いんですよ(涙) そもそも水星にはそれほど人は居ない。居ないから産業が成り立たず若い人は職を求めて他の宙域に引っ越したり出稼ぎに行き、そこで子を産み、育て、死んで行く。

結果的に水星圏へは最低限の物資輸送船しか来ないし、たまたま航路の途中で近くを通った旅客船へ小型船で乗り込むとか、輸送船の倉庫借りて近くの旅客駅まで行くしかない。水星に比べればまだ栄えてる金星軌道でも月行きの定期便は数週間に一度しか来ない。乗り換えにも宿取ってしばらく滞在しないといけない。まるで西遊記だ。どうも世間では誰でも宇宙船持ってて水星からアスティカシアまで直行便で行けると思い込んでる人が多いが(残念なことにスレッタ姉さんもこのクチだった!) キャプテンハーロックやクィーンエメラルダスは例外だから、例外!

 

アスティカシアの所有する定期便はそんな中ではかなり上質な宇宙船だ。流石セレブ高! モビルスーツの輸送も可能な大型船で、ラウンジや食堂、そして重力区画まである!(これは通常長距離豪華客船にしか搭載されてない!)

まぁ、僕らは節約のために持ち込んだチューブ飯を吸ってる訳ですが。居住区画も安い無重力エリアだ。健気にも我らがスレッタ姉さんは節約のためと言ってまた狸穴(まみあな)に籠っている。問題集正答率は60〜75%といったところでまずまずの数値にはなっている(した)

およそこの一年、乗り換え時を除きガンダムエアリアルを動かさない平穏な日々が続いたからか、ここに来てスレッタはしきりに「慣らし運転しなくていいかな?」「たまには動かさないと関節錆びつかないかな?」とガンダムエアリアルを動かす機会を窺っている。

惑星間移動時はほーんと全くなーんにも無い空間ばかりだし、たまに航路上に障害物が出ても船の砲で除去してしまうからMS出す機会はない。しかし流石ラグランジュポイント周辺は栄えていて、窓から眺めているだけでもワクワクする。宙域で働くモビルクラフトやモビルスーツを見ていたらたまらなくなって来たという事だろう。スレッタ姉さんはトランペットが欲しい少年の様に窓に張り付き宇宙を見ていた。

 

そんなスレッタ姉さんだからか、そんなスレッタの性格を完璧に把握しているプロスペラ母さんの仕込みだからか、スレッタは学園の宇宙港まであと少しというところで「遭難者」を発見した。一応シナリオ上は見落とした場合に僕がコクピット内のモニターでアラート出す予定だったのだが、アラート出すまでもなく彼女は宇宙服着てプカプカ浮かんでる「彼女」を見た。

慌ててガンダムエアリアルを動かし、輸送用のロック機構を破壊した為にプロスペラ母さんは余計な散財をする事になる。予め船員には内通者が搭乗していたが、流石に物損はフォローのしようがない。

学園の船から飛び出して、遭難者を見たポイントに向かう。必要なら座標を「センサーで見つけたフリをして」示すことも出来たのだが……子ダヌキ知覚と子ダヌキ空間把握は水星での訓練により研ぎ澄まされていて、彼女は宇宙に浮かぶ遭難者を難なく捕まえた。普通は遭難者側がビーコンで知らせたり、センサーで探知しないと見つからない筈なのに……

 

あー、あー。なんか必死に手を振ってる。事情を知る僕にはその姿が「バス停でバスを待つ学生が、行き先の違うバスが来て『私そのバスじゃなく他のバス乗るので!』と運転手にサインを送る姿」に見える訳だが、「事情を知らない」スレッタさんは酸素が切れてもがいてる様に見えたらしい。

案の定怒られた。責任とってよね!と。

事情を知らないスレッタ姉さんは目を白黒させていた。

 

いやぁ、お母さんの先読みは凄いなぁ(棒)

 

彼女はミオリネ・レンブラン。何故か地球に行きたがるアスティカシア学園の理事長の娘。1年時から密航や宇宙船強奪など、様々な手段で学園から逃げ出そうとしているワルである。その類稀な知性を脱出に全振りしている為に接触は簡単だった。唆して周辺宙域でランデブーし、そのまま地球まで運びますよと連絡したら、割と簡単に応じてくれた。

まぁ、割と近くを輸送船が通るのだが、宇宙空間に浮かぶ人というのは「宇宙空間では距離感がバグる」という事もあり、発見しづらいのである。

 

 

【宇宙空間では距離感がバグる】

空気が無いので空気遠近法が作用せず、見えたものとの距離感が掴みにくいのである。また、大気が無いので星々が良く見えて、宇宙服を着た小さな存在は人間は距離により星の中に紛れ込んでしまう……だからみつかりゃしませんてというミオリネへの説明は「実際そうなのだから」疑いなく受け入れられた。ランデブーポイントの座標が僕たちに知らされているとは思わないし、まさか僕もスレッタが目視で見つけるとは思わなかった。

 

 

いやー、もうね(苦笑) めっちゃくちゃギャンギャン言われましたわ、僕も。ていうか宥めに来た副船長や航路管制、見るもの触るもの全てにギャンギャン。こりゃ犬か猫だ。

でも仕方ないよね。見た目というか、見つけてしまえば遭難者にしか見えないし。冷静な副船長の指摘を受けてとりあえず船はアスティカシアの港に到着。実に騒がしい遭難者だった。

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