怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「なんで直してくれないのっ!」
「え? スレッタさん? どゆこと?」
「ガンさんエアリアルの腕! 何で直してないのっ!」
「僕、シン・セーの社員で、スレッタに雇われた訳じゃないよ?」
「お母さんの部下なんでしょ?!」
「うん、直すなって指示来てる。今エアリアルはスレッタの持ち物なんだから、スレッタが誰かに頼んで修理してもらわなければいけないね?」
「ガンさんお願い!」
「はい、修理依頼書はこれ。見積もりは作ってあるよ……10万ぐらいかな……」
「じゅっ……じゅうまん……」
「あ、米ドルねUSD」
まぁ、そんなもんだ。僕一人で作業したら時間も掛かるし金も掛かる。何しろ戦闘機械を装甲からばっさり両断だからね。機構部分や装甲、駆動系……正直この金額は破格に安い……僕の工賃入ってるのかな?
見積もり見ながらすごすごとスレッタ姉さんは戻って行った。米ドルは(地球圏がかなり弱体化してるので)意外と安いのだが、10万USDはちょっといい車が買えて、割と給与の良い20代エンジニアの年収ぐらいの感覚である。無論スレッタの貯金で足りる金額ではない。(筆者注 5〜600万ぐらい)
これ自体はジャブみたいなものだ。僕たちとしては先ず学生たちに交渉をして欲しい。値切るなり、スポンサード契約をさせるなり。彼らもあと10年せずに大人になるのだ。大人との交渉ごとには慣れておいて損はない。
直ぐにミオリネさんが飛んできた。かなりご立腹のご様子。
「シン・セーは何考えてるの? スレッタとエアリアルは学園のホルダー倒してるのよ、ホルダーを!」
「……それが当社にどんなメリットをもたらすんですかねぇ……」分かりやすく頭をかきながらミオリネちゃんに問いかける。
「宣伝効果あるじゃない!」
ここで改めて椅子を回してミオリネちゃんの顔を正面から見据える。
「で、その広告効果は
「っ!……そういう事……っ! 分かったわよ!」
頭良いな、この子! 「企画書持って来い」を一発で理解したぞ! 僕は満足を示す為に口の端を軽く引き上げた。
「ポイントはエスカッシャン……ガンビットという新型ドローンテクノロジーです。機体はある意味どうでも宜しい。あれは売り物じゃないので。エスカッシャンにはTMの商標表示をお忘れなく。カタログ、要ります?」
ミオリネちゃんは拍子抜けした顔をしている。意地悪してた訳じゃ無いんですよ、親だから子供だからでやる話じゃないんですわ。MSの運用は経済活動として回さなきゃいかんのです。莫大なコストが掛かるシステムの運用を愛用の自転車程度に考えてはいけない。
翌日、ミオリネちゃんは地球寮の面子を引き連れ企画書と、稟議書と、エスカッシャン宣伝広告プラン、エアリアル運用プラン……呆れる程の文書を携えて僕の前に現れた。決闘一勝で20万USD、動画編集して宣伝動画作成……やるな経営戦略科!
「どうかしら? これでご満足?」
「ミオリネ・レンブランさん。貴方は今何処の所属としてシン・セー社員に対峙しているのですか? レンブラン家の権威を前提にしてますか? ならばお父様の添状の一つも頂けます?」
「っ!……よ、宜しくご査証お願い致します」
「ガンさん、ちょっと!」
「スレッタ・マーキュリーさん。貴方もですよ。貴方は今シン・セーの社長の娘としてではなく、地球寮の一員として僕と話をしなきゃならない。お母様からもその様に申しつかっているんです。勿論社長を含む経営側からも、ビジネスとして対処しろと言われています。そして、皆んな皆さんに期待はしているんです」
僕は立ち上がり、地球寮の皆の顔を一つ一つ見つめていく。
「大人はいつも若者に期待するんです。そして期待が良く裏切られる事も知っています。だからこそ、僕は貴方たちを過剰に優遇したり、甘やかさない。期待に応じることが出来る事実を僕に見せて欲しい。優秀なスタッフですよと社に報告してボーナスたんまり貰える様にして欲しい」
「分かるわー、そりゃそうだよな。銭は必要だ」
「私たちでエアリアルを運用しろって事よね」
「マーキュリーさん、機体余り壊さないでね……」
「あー、技術支援だけは無償でやる事にはなってます。機体構造自体は『さほど』難しくは無いです。汎用品多用してますしね。ただ、ソフトウェア周りはかなり先進的なんで、開発エンジニアである僕の方で最大限バックアップします。特にAI周りはMSというよりガンドだから脳医学とか思考制御関係のプログラム知識必要なんで」
「えー……それってつまり……」
「インターン制度ですね。学校からも単位として認められますし、僕から入社推薦出来ますよ。ちょっと特殊な分野なんでプログラム系はMSよりも義肢分野になるかも知れませんが」
こうして
基礎は叩き込まれているが、まだまだ安全第一は十分に頭に入って無い。やはり学生にはまだまだ「目の前で酷いことが起きないから」ピンと来ない物なんだろう。意外かもしれないが、そこだけはスレッタ姉さんが1番良く知っていた。
学生たちはシェルユニットの価格を聞いてひっくり返り、ダリルバルデくんへの最後の攻撃がシェルユニットを傷付けたら破産していたという事を理解した。
追記:6話展開の前振りである事は賢明なる読者諸兄には解説不要であろう(白土メソッド)