怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「ミオリネ・レンブラン。お前は何を考えている」
威厳のある声でデリング総裁が威圧を掛けるが、普段からダブスタクソ親父と啖呵を切るミオリネGTは恐れない。
「では、折角のインキュベーションパーティーですから私からも演目を。簡単に申せばガンダムを超えるMSを作り出します」
「馬鹿なっ!」
「そんなものが!」
「あり得ないわ!」「無理よ!」「正気?」「うほ」
「……と、お父様の企業グループの重鎮の皆様は仰ってらっしゃいますが、これらをどうご覧になりますか、『総裁』?」
「私はガンダムを禁止したが、ガンダムを超えるMSを禁止した覚えはない」
「生命倫理問題でしたっけ? それが禁忌でそこさえ無ければガンダムでも宜しいのでは? まぁ、ガンダム目指してたらガンダムの範疇に収まってしまってつまらないですからね。ガンダムを超えるという目標を持たなければガンダムに並び立つMSにもならないでしょう。
いえいえ、サリウス老。御社は別ですよ、【まだ】負けてませんから。【まだ】ベネリットグループ御三家全てがエアリアルに負けてダルマにされた訳ではありません。【まだ】です。
でも──もしもグラスレー社の最新機体までエアリアルに無残に負けたとしたら? ベネリットグループの軍需部門は今まで何を開発していたのでしょうか──
これは私の仮説です。詳しい数字は私も記憶しておりませんので、皆様どうぞ間違いがあればご指摘ください。
現在、MSは主に地球圏での暴動鎮圧任務が主体で、対MS戦というものは殆ど行われておらず、そも経済格差によりアーシアンはMSの開発すら覚束ない状況です。既にMSは過剰戦力となり調達数は常に納品計画数を下回る……これが基本的なムーブメントです。
ヴィムCEO、如何ですか?」
「……確かに流れとしてはそうだ。そこで弊社ではハイ・ローミックスのハイ側に注力して高額高機能機の開発と受注を狙っている」
「ありがとうございます。で、高機能機のセールスは堅調ですか? ディランザで良いとか、ディランザの価格引き下げ要求は?」
「──っ!……その為のダリルバルデだ」
「売れないと思いますよ。アーシアンのデモ鎮圧ならディランザでも十分でしょうし。
端的に申し上げて、アーシアンが弱過ぎるからMSの様な高性能機は要らないのです。そこでヴァーチカルマーケティングをする意味が私には分かりません。
総裁にお聞きしたいんですが、なぜMS開発を統合してライン共有、同型機の水平展開を目指さないのですか? MS開発を一本化しない意味が分からない……」
(この辺は筆者も分からない。アーシアンとスペーシアンで仮に戦争になったとしても、戦力格差から不正規戦・非対称戦にならざるを得ず、MS同士の戦闘ではなく対MSロケット弾とか中距離投射兵器とMSの戦いになるよーな……?)
「競争原理は兵器開発に欠かせん」
「あら、総裁? 競争原理が働いた結果、グループ外企業に需要を蚕食されてるのは予期した、受け入れるべき損出だったんですか?」
「グループ外企業の躍進はMS以外の戦闘兵器需要の掘り起こしに成功したからで、ベネリットグループのMSシェア減少とは無関係だ」
「近代戦兵器の開発企業総裁とは思えぬお言葉ですね。つまりMS以外の需要喚起に失敗して、そこから戦闘システム群の構築を『されてしまった』のではありませんか?
──何故ベネリットグループの最新鋭MSはエアリアルに決闘で負けてしまうのでしょうか? エアリアルの様な機体がベネリットグループ外から出て来る可能性は?」
確かに……
水星の採掘屋が作ったんだもんなぁ……
「スレッタ、そもエアリアルは水星で何をしてたの? 水星人の悪いMSと決闘してたんだっけ?」
「そんなことないです! 何年も前から水星で事故やトラブルのレスキューしてただけです! エアリアルは人を殺すロボットじゃありません!」
「そうだよね、エアリアルはただ突っ立ってアーシアンを脅すMSじゃなく、過酷な水星でみんなを助ける為に開発された機体よね……ある意味では戦場より厳しい条件下で戦い続けて来たのよね……」
「戦争が優しい環境だと?!」
「大自然は条約の批准や協定結んでくれませんから。人道的な配慮や捕虜の待遇気にしませんよ? それと……ペイル社のCEOの皆さんはウチの花婿の謙遜を真に受けていましたが、スレッタはこの歳でMS操縦経験6〜7年のベテランパイロット。大自然相手に人命救助というミッションを何年も続けてきた。アスティカシア学園にはそんな経験積んだパイロットなんていない。本当に生死を掛けた、手加減無しの戦いに身を置いてきたスレッタよ?
サリウスCEO、決闘頑張ってくださいね。貴方の義息子が戦うのは、そんな水星で命懸けの戦いをして彼女を守る為に非常識なまでのチューニングを施された機体なんです。勝てると思えます?」
「いや、そんな、ワタシ別に変な事してません! ミッションも30分超える様な事あまりありませんでしたし……」
「ちょっと待ってスレッタ? エアリアルって採掘場とかで待機してるの?」
「へ? フロント基地に置いてましたけど……」
「水星の衛星軌道上から30分で水星表面採掘場の人助けてフロントに戻ったの?」
「え? 頑張れば6分ぐらいで帰れますよ? ゆっくり飛んでたらエアリアルごと太陽に焼かれちゃいます」
何だそれ? ロケットか?
化け物だ……
……勝てる訳ねぇ……
「エアリアル、か……」
「想定が違うのです。いつまでもガンダムガンダムとやっている間に、水星ではそんなものでは話にならない脅威を相手に戦いが続いていた。その結果としてベネリットグループはエアリアルに負け続けている。軍用が何より難しく、高度で洗練されているという前提を疑えなかったのがベネリットグループの失敗なのではないでしょうか」
「水星の採掘屋だから作ることが出来た、MSであると」
「ベネリットグループが学ぶべき叡智が詰まった機体です。北風がヴァイキングを作った様に、水星の過酷な環境がエアリアルを育てたのです」
「ならばエアリアルを解析して……」
「無理でしょうね。エアリアルみたいな凄い機体は開発したシン・セーだってもっと欲しい筈。作れるのであればさっさと2号機3号機建造するでしょ。なのにそうではない。スレッタは何年もエアリアルと戦っているのにまだ量産されていない! まぁ、されてたらベネリットグループ内の序列はとっくに変わってる訳ですが」
「量産できないのでは商品価値はないぞ、ミオリネ」
「話を全く聞いていなかったのですかクソ親父! エアリアルとかガンダムとか「同じものを作ろう、コピーしよう」って発想だからシェア下がるのよ! なんでここで「エアリアルを越えよう!」って言えないの?
ガンダムを越えよう、エアリアルを超えよう! 私たちは過酷な世界を見ていなかった、MSはもっともっと強く速くならなければならなかった! 宇宙は広く、我々はもっともっと励まなければ「ならなかった」
その遠く険しい目標の為に、先ずは我が社御三家の最新鋭MSはエアリアルで刻みます。完膚なきまでに叩き潰して我々は目を覚さなければなりません。
その様な理想とエアリアルを超える為の基礎資料の取得、また或いはエアリアルの解析を行って「超ガンダム」のノウハウ開発する企業……株式会社ガンダム設立は如何ですか?」
「出来るのか?」
「ここまで話してご理解頂けないなら、ガンダム怖いガンダム怖いと毛布被って震えてて下さい。出来るのかではなく、やらなきゃいけないんです。そういう物を目指して過酷な環境でテストを繰り返し、必要ならデチューンして軍用にでもしたらいい。本当の力が必要とされる場所はそんなところでは無い……だからあなた方はエアリアルに負け続けたのに、何故それに気付けないのですか? そんなんだからシェア落とすのよ!」
軍需産業がイケイケだったのは冷戦構造があった頃までで、大規模戦争が「経済的に成立しにくい」時代に移行してからは軍事費はめっちゃ下がって来てるんですわ。軍事で結構大手になる会社も、世界的な民間企業の間では売上的に結構しょぼいのが実情で……軍需比率下げて行かないとベネリットグループはやがて凋落すると思うですよ。
なお、市場規模的には軍需より医療の方がパイがデカいので、本編の株式会社ガンダムの事業方針はそんなに間違ってない。ウチの方では宇宙開発方面に舵切って、そこから民需転用を目指しますが。どー考えたって戦車や自走砲よりクレーンやダンプの方が売りやすいし儲けやすい。戦車作って儲かるなら三菱は今頃トヨタ抜いてる。