怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「リック大尉……」
夜半にノレアが地球寮隣のVBアスティカシア駐屯所を訪ねて来た。何やら重い表情で。
「元一尉だ。お茶だとカフェインで眠れなくなるな。麦茶でいーかー?」シバは素早くレオニダスのフルーツゼリーを取りに行った。
【一尉】
元陸自なので。世界一般では大尉(キャプテン)である。
「明日のランブルリング……テロ計画があったわ……もうやらないかもしれないけど……」
「知ってるー。シャディクの計画だろ? あれまだ生きてる臭いねー」
「──手は、打ったの?」
「──これは内緒だぞ。愛宕の天狗様がお怒りだ」
「え?」
「もうダメだ、打つ手無し。まぁ事故に気をつけて」
「多分ルブリスが奪われてガンヴォルヴァが……っ」
「……マイムマイムでも踊るのか? 壮観だな」
「あのー、僕いるコト、忘れてない?」テントの外から僕が顔を出す。ここの所地の文すら任せて貰えず、一生懸命作業に没頭してました。
「終わったよ。で、なに……マイムマイム? またこれから残業するの、勘弁してよ……」
「と、この様に我々にはガンドに詳しいガンさんがいる」
「ルブリスからガンド外して、リンク宣言すると高圧電流流れる様に細工しといたからもう乗らないでね」
「警備は?」
「めんどくさいからハロに同軸テーザー持たせたのテキトーに配置した」
「流石に罠だと勘付かないかな?」
「天狗様がよしなにするでしょ」
「オッズは?」
「ガンダム2枚の地球寮が2.8で最低。まぁ妥当だね。次にジェタークだけど、奴が帰って来るかもしれない」
「間に合ったの?」
「ラウダ君は倒れた(笑)」
「だからか。今の地球寮で倍率3倍近いとかあり得んもんなぁ」
【ジェターク寮にて】
「ダリルバルデのメンテナンスを最優先だ! ペトラはラウダ機の指揮を取れ! 今夜は徹夜だ! 覚悟しろ!」
カミルの裂帛の指示が格納庫に響く。ジェターク寮は今燃えに燃えていた。
「兄さん済まない、不在の内に僕が会社を……」
「いや、いいんだ。俺は会社を継がない」
「そんな……兄さん!」
「情けない顔をするなラウダ。現寮長なんだろ……俺は、頂上を目指す!」
「ぇ?」
「お前がジェタークを導き、俺がお前たちを含めたベネリットグループを導く。俺は地球で己の天命を見つけた。手伝ってくれるか、ラウダ?」
「……グエル先輩! シャトルが何か運んできたのだ!」
「受け入れてくれ。明日の祝勝会の差し入れだ。腹が減ってはって言うからな!」
【寮長室】
「ラウダ、フェルシー。耳を貸せ」
「どうしたんだ兄さん」「のだ?」
「盗聴があるかもしらん、用心しろ。手短に言うと明日テロがある」
「……そんな、ここはベネリットグループの……」「のだぁ!」
「あの日俺はクエタの近くにいた。グループ内の動きがテロリストにバレてるって、どういう事だ?」
「……グループの中に内通者がいる?」「のだ?」
「俺やラウダではない。残るはエランかシャディク、または彼らの側近クラス……」
異母兄の迷いない信頼にラウダは涙を溢しそうになった。兄を差し置きCEOの座を簒奪したこの僕を!(倒産しそうな会社の経営なんて誰もやりたがらないのだ……)
兄を見つけ出す事すら出来なかったこの無能の僕を!(宇宙議会連合とか方々に頭下げて探偵や興信所も会社傾きかねないほど動員したのだ!)
「地球で俺たちをバックアップしてくれるスポンサーにも会った。彼らの話ではベネリットグループを解体したがっている奴がいるらしい。一連のテロはその前哨戦。デリング総裁が倒れ、俺たちの父さんが居ない今……」
「サリウス老が危ない?」「じゃあ黒幕はペイルなのだ?」
「敵は判らんが敵の目的は分かった……後は吐かせればいい」
グエルは血が滲むほど拳を握り込んだ。
「フェルシーとラウダは校長閲覧席を固めろ。俺もダリルバルデで守備に就く。あくまで皆んなにはランブルリングで勝ちに行くと思わせろ」
「水星女は、兄さん?」「のだ?」
「後で話を付けに行く。共闘だ」
「でも兄さん、水星女の周りにはエランがいる、危険だ!」「のだ!」
「じゃあ、トマトハウスで待ち合わせるか。あそこならスレッタとミオリネしか来ないだろ」
「流石兄さん、名案だ!」「のだぁ!」
「フェルシー、ペトラとラウダを連れて連絡を頼む。
「「了解!(なのだ!)」」
【夜のトマトハウス前】
「良く来たなミオリネ、いや今はガンダム社CEO様か」
(兄さん! 共闘の申し出じゃなかったのか!)ラウダは内心の驚きを隠す為に髪の毛をネジネジした。いつもの癖である。
「なによあんた、テント王子は辞めたの?」この一言で目を逸らせたグエルの視線をミオリネは追った。彼はハウスの手すりを親指と小指を除く3つ指で押していた。このサインは……
「みみみミオリネさん、落ち着いて……」久しぶりに見るスレッタは相変わらずタヌタヌしていた。ミオリネは珍しく神経質に指遊びをしている。親指で薬指の上の節を3回、中節を2回、下節を3回。そして強い意志を持った目で射すくめる様にグエルを見据える。
「あんた、分かってやってるの?」
「分かった上さ。明日俺たちは卑怯な戦い方を許さん。正々堂々と勝負だ!」
(? ……のだ?)フェルシーは困惑した。
「正々堂々、いい言葉ね。あんたがそんな事言うとは思わなかった」
「口を慎めチビ女ぁ!」「ラウダさん!」
「ふふふ……おっかしぃー」「ミオリネ……さん?」
「ここであんたと握手する羽目になるとはね」
「あの時は正直済まなかった。あちこち歩き回って漸く俺も天命を見つけた」
「正々堂々ね、了解」「ああ、頼む。何なら俺がお前の重荷を背負ったっていい」
「何が何だか全く判らないのだ……」
「なんで二人ともニコニコしてんですかねぇ」
「敵と握手できる兄さんが尊すぎる……」
「やっぱりカッコいいよね、ラウダ!」
符牒を知らない人間は全く良く判らない会話であった。
符牒の件は八咫烏の前書き辺りに書いた気がする。
【正々堂々と勝負】
八咫烏のサイン確認語にこう切り出した場合、それは「共闘により敵を殲滅する」の意になる。他にも「カラスが多い(敵諜報機関が周りにいる)」など、幾つか存在する模様。