怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「はじめまして、キャリバン・メルクリウスさん」
「初めまして、ジョン・スミスさん。そんな役所の名前記入例みたいな名前の方がいらっしゃるとは思いませんでした」
「はっはっは、そりゃそうでしょう。偽名ですから」
「なるほど偽名かー──……なんですと?」
「お互い様、お互い様。ガンド天狗さん」
──なんで?!
「面白い反応するんですね。我々は貴方を宇宙人か幽霊か妖怪か、はたまたフェアリーかと考えているんですが、実際のところどうなんです?」
「酷いなぁ、僕は確かにガンド比率の高い……」
「100%近い、いや100%ではないかと」
「何故、その様に?」
「簡単にいうと、レディ・プロスペラが調達した武器をそのまま天狗が振り回していたからです。それ以前もスレッタ・マーキュリーの近辺でしかガンド天狗は出没していない。何故でしょう?」
「水星タヌキがポンポコ大変身で……」
「スレッタさんは天狗と同時に出現していますね?」
「それを言うなら僕だって……」
「同時に見かけられた事はありませんな。いや、天狗さん、別に貴方を捕まえに来た訳じゃない。ガンド天狗というガンドに詳しい貴方にどうしても聴きたい事がある。その為の確認なんです。私はジョージ・マクミラン。カーギル情報統括局主席分析官、まぁスパイみたいなものです。そしてデリング氏の義理の兄でノートレット・レンブランの実兄、ミオリネの伯父です」
「信じないと思うんだけどなぁ……笑わないで下さいよ」
「惑星エルドラから来たエイリアンでも驚きませんよ」
「型式XVX-016 シン・セー開発公社資産管理番号106-000254 エアリアルと申しますが……」
「そりゃスレッタさんのMSでしょ?」
「そのエアリアルの対人コミュニケーション用特殊ガンビット、それが僕というか、貴方が見ているのは僕が動かしている子機で、貴方は子機経由で僕と会話してる訳ですよ」
「……こりゃ驚いたな」
「コーヒーとお茶。どちらが?」はいはい、狂人認定ですよねーと僕はお茶の準備を始めた。レオニダスのフルーツゼリーまだあったかな?
「本当に驚いたな!」
「よく信じましたね、こんな話」
「話が繋がったからね、プロスペラ氏がやけにエアリアルに固執した理由がわかった。君が居たからか!」
「なんか嫌な予感がするんですが」
「いやぁ、助かった」
「激しく嫌な予感がするんですがっ!」
「まだそんなこと言ってるんですか、社長は!」
僕はこの100話近い「ガンド天狗」の話の中で語られてきた「ガンドに関して僕が知っている部分」を洗いざらい喋った。ジョージ氏はそれを片っ端から頭に入れてうんうんうなづいている。
「疑わないんですか? 裏取りはしなくても?」
「これまでの不明点が一気に話が通る様になった。もちろん君が誤解している可能性もあるから全部信じている訳ではないが……辻褄は合ってる」
「僕は僕自身が信じられないのに」
いやぁ、ニカちゃんのメシにガム吐き捨てたタワケにお仕置きする天狗の話がどう拗れたら、こんなSFじみた話になるんだか! いつの間にか普通にSFになってるのナンデ?
「奇遇だね、私も私とは一体なんなんだと偶に悩むよ」
「では本題ですが、社長が見ているのは多分これです……(モニタポチー)ガンビッツ
(((((はぁーい!)))))
(こんちゃーっす)
(はじめましてー)
(なんか緊張するな……)
「これは……私も見られている?」
「視覚共有しましたからね。ガンビットをコントロールする為に簡略化してコピペした擬似人格です。私の自我も……」
(ぺこり)淡い青色のワンピース姿のタヌキ眉少女が頭を下げる。
「なんで小さい女の子に?」
「元々僕は彼女のイマジナリー妹としてのロールを求められてたんですが、11歳ぐらいから彼女の社会性が育ってイマジナリー妹を必要しなくなったんですな。だから僕の形は彼女が僕たちを見失った時点で固定されてしまったんですよ。生体コード云々はこのイメージ作る為の種データの事ではないかと」
「これは、レディ・プロスペラには……」
「一応僕だけは見えてる筈です。水星からアス高来る時に弄りましたから」
「もう一度だけ聞くが、これは君でエリーちゃんではないんだね?」
「エリーに出会う前から僕は僕で居ましたからね。そこから連続して思惟を続けてますから、間違い無く僕は僕です。逆に言うとならば僕がどこから来たかは分かりません」
「大丈夫」ジョージは朗らかに笑った「何百年も我々人類も問い続けて来たが、まだ結論出てないやつだよ」
【D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?】
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」ゴーギャンの絵画に残された一文。
「いや、僕はエアリアルだってプロスペラ社長知ってますよ?」
「私見を述べていいかい? 形に引っ張られたんじゃないかな? 君はエアリアルだが中に別のエリーがいると……」
「いや待って……(ピポパ)……ああ、チュチュちゃん? プルをちょっと僕の所連れて来て」
「プルって……?」
「あのガンビッツ淑女のNo.6です。実験で
「外って……?」
「ここ」僕は指で地面を指差した。
【イマジナリー妹】
一種のイマジナリー・コンパニオン。子供が生み出す空想上のお友だち。統計的にひとりっ子や長子が作り出しやすく、女児の方が生み出す傾向が強い。大人がしつけの方便として「ぬいぐるみちゃんが可哀想でしょう?」などとやるとごく稀に無機物に人格を認めたり、生育過程で孤独な状況が続くと生み出すとも。
いずれもやがて「それ」は空想上の産物だと子供も理解して、通常は消えていくか忘れ去られる。社会性を獲得して孤独が解消されるからだ。(本作ゆりかごの星編でもスレッタが10歳ぐらいから周りに受け入れられ始めた描写をしている) 天狗が出てくる割には真面目に本編考察している筆者が「考察をベースに」話を組んでるから、本作の背後には本分量に匹敵する設定考察が隠されている。いや本当マジで!
本作では彼女が見出したイマジナリーフレンドが実際「ルブリスの中にいた僕」と重なり合い、「ルブリスの中にいた僕」は求めに応じてエリクトの中にあった想像上の妹の姿を作り出して彼女と接した。