怪傑! ガンド天狗!!!【一回完結】【アディショナルタイム】 作:PureFighter00
「……本当にクワイエット・ゼロは完成するのだろうな?」
クワイエット・ゼロの巨大な本体の底に改修装備を外されたエアリアルが運ばれて行く様を眺めながら、プロスペラは力強く断言する。
「はい、間違いなく」
そりゃそうだ、完成するまで開発延期したらいい。シン・セーでやってたら株主総会が荒れに荒れて解任動議されちゃうけど、総裁肝入りならこちらは安泰……相変わらずレディ・プロスペラは碌でもないことを考えていた。
「そちらにも情報は入っているだろう? テロリストがまた動き出している。まさかとは思うが、そちらがクワイエット・ゼロを占有するべく手引きしている訳ではあるまいな?」
デリング氏、かなりの役者だ。彼は家の中でのカカァ天下を気取られぬ様に社内では厳格な人格を演じ続けている。実際にはミオリネに「クソ親父」と罵倒される度に書斎に籠り、ノートレットの写真を前に「なんで君に似ちゃったかなぁ」と涙で割ったバランタインの12年を舐める性格であるというのに……! 社内での強気剛腕ロールプレイング経験が活きたな。
「今更裏切りは許さんぞ」
クワっと目力を入れてプロスペラを威圧。そしてさりげなくテロリストの攻撃がありそうと擦り込ませる。勿論スレッタは陸さん達にお願いして
「複数経路から同じ情報が入ってきたら用心しろ」スレッタがアス高で学んだ情報戦の基本だ。こちらに都合の良い情報には飛び付かない……スレッタも学園で決闘ばかりしていた訳ではない(いや、かなりしてた!) ちゃんと勉学に"も"勤しんでいたのだ。
「今はジェターク社も汚名返上に燃えて増員してますし、まさか……」
まぁ、「まさか」が起きるのである。【僕たちが作って行くストーリー】では。プラント・クエタは予定時刻通りにぐらりと揺れる。
「どうした、何が起きたラジャン!」
ラジャンは何か端末で慌てて連絡している……「何だと! ガンヴォルヴァが24機?! 馬鹿な!」
迫真の演技と言って良いだろう。
「隔壁降ろせ! 訓練通りだ。ドミニコス隊は対魔女装備で迎撃せよ! 2度も3度もクエタを破壊させる……うわーっ!」
館内放送中のケナンジをソフィとノレアが後ろから二人がかりで蹴り飛ばした。指示を出したのはどうもノホホンとした演技をするケナンジを慮ったスレッタである。腹が邪魔で受け身を取り損ねたケナンジが尻をさする。
「この前の様に分断されては敵わん。ゼロのコンソールルームに急ぐぞ!」
たんたんタヌキの葉っぱ劇場の開幕だ。
「いいよぉー、ガンさん! 連続爆破!」スレッタがノリノリでメガホンを振り回して指示を出す。ケナンジはやれやれという顔だ。
僕はレトロなトグルスイッチをバババババと跳ね上げた。修復中のクエタを破壊しない程度、シールドの強度計算をして爆薬を調整している。
万が一に備えて司令室のモニターにはガンヴォルヴァ24機とルブリスが飛び回る「僕たちが編集した映像が」映されている。監督のこだわりだ。
「大迫力だな、これ」
「なんか本当の戦闘みたい……きゃっ!」
ティルがリリッケを支える。ガンヴォルヴァ達の攻撃プランはスレッタがラウダやフェルシー、グエルと相談しながら練ったものをケナンジが手直しした。
「まさか俺がクエタ攻めのプラン練るとはなぁ……」
「いい訓練になったでしょ?」
確かに、軍人というものは自軍が攻められた時の反抗プランの作戦を作りもする。しかしガンヴォルヴァ24機にガンダム2機はやりすぎだ! そんな戦力をこの宙域に展開できるのはベネットグループぐらいのもんだ! 前提がおかしいって!
「はい、そこでプルちゃん電話!」
「あいっ!」プルは可愛く敬礼してプロスペラの端末に電話を掛けた。
「ねえねえ、押されてるよ! 出口塞がれない内にアーリエル出した方が良くない?」
「えっ……ドミニコスは……」
「ダメだよガンダムにはガンダムじゃなきゃ勝てないよ……スレッタもここには居ないし……」
「社長、これはおかしい。歩兵展開しないところを見ると奴らは……」
「どうして……バレる筈無いじゃない! 機密保持レベルは最高の筈よ!」
「余計な詮索はするな。隠し事というのはいつかは露見するものだ。こうも計画が遅延してはな……」
「そんな!」
「
「総裁! ここにおられましたか! 死守します!」
「状況はそんなに危険なのか? ケナンジは……」
「隊長は……いえ、我々ドミニコスは負けません!」
「精神論では話にならん、損害比は!」
「……残念ながら、敵優勢です。今支援要請を……」
「間に合うか馬鹿者! 正面戦力で押し負けるとは……何故僧院の奴らにこんな戦力が残っているんだ! カーギルは何をしている!」
主席分析官ならエアリアルに「プロスペラにマトモになって欲しい」と言われて熱出して寝込んだ。人間の歴史的敗北は彼の心に酷い爪痕を残したのだ。
「誰か、誰か居るか! 指揮系統は! どうなっている!」
「ゴドイ、もしもの時はスレッタをお願い」
「社長!」
「私が、エアリアルで無人機を沈黙させる」
「何をする気だレディ・プロスペラ?」
「無人兵器がいくら押し寄せようと……エアリアルがいれば制圧できます!」
「データストームはどうする? スレッタくん以外では……」
「──企業秘密です」
「ガンさん、エアリアルはプロスペラさんでも使えるの?」
「基本、無理。お母さんの生体コード入ってないから僕も補佐し切れない。普通に言ってデータストーム喰らう」
「そんなっ……夫婦生活初日から介護とか冗談じゃないわ!」
「そこで私の秘策です! ベルメリアさんどうぞーっ!」
「エアリアルのガンドは今スコア2までしか上がらないわ。そも電気系統のブレーカー落としてコクピット周りとシェルユニットしか電気生きてないし……各種センサーも繋ぎ変えたから……」
「待って、ガンさん準備いい?」
「いつでもいいよ」
「よっ☆」
僕とプルはマイクを構えた。
「何年振りかしら……よろしくね、エリー。力をお母さんに貸して……」
コクピット内で出撃準備をしながらプロスペラは囁く様にエアリアルに語りかけた。しかし……っ
「エリーッテ ダレダ?」ボイスチェンジャーで0.5倍速再生された「僕」の声がコクピット内に響き渡る。
「ガンビッツ、スフィア テンカイ」
「アーイ!」
「っ! ぐっ!」
「あれ……苦しんでるけどパーメット跡が出てない?」
「──どゆことですか、スレッタさん?」
ソフィとノレアの問いにベルメリアが微笑んで答える。「簡単よ、データストームの痛みや苦しみだけ転送したのよ、先輩の脳に」
「いーっ!!」
「割りかし酷いこと笑顔で語るのやめてください」
「データストーム出てないからセーフ」スレッタ、セーフのアクション。
「倫理的にはダブルプレーで2アウトです」ノレア、アウトのポーズ。
今、プロスペラにはパーメットリンク2で得られたエアリアルの視界の他に、ガンビットが展開して得た周囲の状況が概念伝達されている。但しガンビッツが見ているのは皆が作成、編集した「存在しない戦闘風景」なのだが……
「う、嘘よ……」
ごく僅かなドミニコス隊のエースを除き、守備隊は全滅しかかっていた。レーダーによる事前検知もなく、いきなり周辺宙域に26機も敵が現れたら戦域展開すら間に合わない。
「エリー! いう事を聞いて! このままじゃ私たち……」
「ダレダヨ エリーッテ。ソンナヤツハ イナイ」
「ジブンデ サガシテミタラァ?」
「ソウダヨ、コッチニ クレバイイ……」
「「ハチィ?」」
ソフィとノレアが目を剥いて驚く。まぁ普通にリンク8は精神が焼き切れる強度だ。ノレアに至っては脚がガクガク震え出している。
「私とエアリアルなら9も行けると思うよ?」
「でも、先輩だと8は死ぬから2までしか上がらないけどね」
「2までなら平気なの?」
「お兄ちゃんが2までなら平気って言ってました」
「今先輩はエアリアルの中に溶け込んで行ったわ……」
「頼むよ、みんな……」
ここが正念場だ。