おしゃべりな"個性"   作:非単一三角形

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 四月馬鹿回(エイプリルフールネタ)です(前置き)。

 前々から一度は書いてみたかった、などと供述しており……深く考えるのは厳禁なのです。


 ……でも書き上げた後で気付いたんですが、これヒロアカ二次で良いんだろうか?
 オリキャラしか居ないし。時系列も原作終了後だし。そこにも捏造盛り盛りだし。
 まあ書いちゃったもんはしょうがないということで、それでも良ければご査収くださいませ。



A-p あ、ふーるずでいな奇縁事務所

 

 

 ―――自分の目に映っているモノが、他の人には見えていない。

 それが、見えているのは、()()()()

 それが、見えるのは、()()()()()

 それが、見えると言い張るのは、()()()()()―――

 

 物心ついて間もない4歳の頃から、わたしの目に映っていた世界。

 

 たとえ、本棚の後ろから誰かがこっちを見ていても。

 たとえ、机の下から背筋が凍るような声が響いていたとしても。

 たとえ、友人の背中に青白い手が……()()()()張り付いていたとしても。

 

 それらは決して口にしてはいけない事なのだと、幼いわたしは少しずつ理解していった。

 変化していく周囲の態度や向けられる視線、両親の反応から、否応もなく。

 

 

 これが、わたしの"個性"なんだ、と。

 主張する言葉に返ってきたのは少しの憐憫と、ゆるやかな排斥。

 

 既存の『超常』一切に観測されなかった『彼ら』は、宿()()()()()()"個性"を求める幼子の妄想に片付けられてしまったのだと、今のわたしは知っている。

 

 

 ―――お願いだから『普通』になって。

 

 

 視線に滲ませ、言外に含めて、浴びせられる種々の否定に諾々と頷いて。

 視える世界から覗き返してくる有形無形のナニカには、視えていない振りを必死に貫きながら。

 

 身を縮めて、息を潜めて、求められる『普通』に自分を押し込めて。

 凶悪な(ヴィラン)の手で社会が『壊れた』あの事件すらも、わたしの目に映る世界に変化は無くて。

 

 結局は同じ。何も変わることなんてない。

 肌で温めた諦念に浸っていたわたしを、日の光の下へと引きずり出してくれたのは───

 

 

 

 

《やっはろー!! 今日も元気ですかい、えぶりわーん(Everyone)!?》

 

 

 

 

「…………ええ、元気です。お帰りはあちらからになります、どうぞ───

 ───『干渉』!? お客さんをいきなり追い出しちゃ駄目だよ!?」

 

 開口一番、高らかに響いた呼び掛け(コール)に、手慣れた塩対応、からの慌てたような一人芝居。

 入室一秒で吹き荒れた混沌を、されど渦中の人物は、()()()()()()()()で楽し気に受け流す。

 

 

《おや、お呼びでない? お呼びでないね? こりゃまた失礼いたしました! ハイ、せーのっ》

「…………やりませんよ? 流石に。……毎度お騒がせいたします、一方(ひとほ)さん」

 

 ()()()()()()でふわりと、けらけら笑いながら宙に浮かぶ黒髪の女学生。

 その様子を「仕方ないなぁ」と柔らかく見上げつつ、菓子折片手に眉を下げる若草髪の少女。

 

 百人百様の超常社会に於いてなお、相応に人目を惹くだろう二人組の訪問者。

 馴染みの寸劇に溜め息一つ。表情を()()()()()事務員は、やれやれと肩を竦めて迎え入れる。

 

 

「い、いえいえこちらこそ───お久し振りです、柚子(ユズ)さん。それから……雨巫(レイン)さんも」

 

 

 

 

 表向き───と書いては語弊が大き過ぎる、新興ヒーロー事務所が抱える()()

 より正確には、とある()()()から所属事務員へと委託された、潜められし()()が一つ。

 

 代を重ね、因子を重ね、次第に多種多様千姿万態になりゆく人々の"個性"。

 物理・質量保存則からの逸脱すら希少性の薄れつつある"個"の力に、警鐘は静かに鳴り響く。

 

 

「───"個性"『市子(イタコ)』……その後の経過はどうかしら? ()()()()()の安定は見ての通りとして質の悪い霊ばかりを引き寄せる性質については()()が効いた……筈なんだけどねえ」

《何かね、その目は? 私が良くないモノだと言いたいのかね? まあ、否定はしないがな!》

 

「「《しないんだ……》」ええ、結果的には困ってませんので……はい」

 

 

 ───『世代を経るごとに強く、そして誰もコントロールできなくなる』

 

 ───『世界は少女たった一人の気持ちで変えられてしまう』

 

 囁かれてきた『論説』が報道を通し、万人に『実感』を叩きつけた日は世間の記憶にも新しく。

 

 悪意の無い人的過誤(ヒューマンエラー)で、或いは赤子の癇癪で、呆気なく根底から崩れかねない『"個性"社会』。

 口の端に上がる機会は未だ僅かに、されど燻ぶる『危機感』の、此処は密やかな受け止め皿。

 

「……貴女も()()()会えていたら【面会】も可能だったんでしょうけど。"個性"『幽霊(仮)』、こちらもあれから特に問題は起きていない……ということで良いのかしら?」

《んやぁ、むしろシックリ来るから好きよ『幽霊(仮)(カッコカリ)』。というか、事前に分かってたとしても「じゃあ死のう」とはならなかっただろうし。結果良ければなんとやらってね》

 

 危険に過ぎる性質から忌避排斥の対象になった"個性"持ち。

 あるいは条件不明、詳細不明な"個性"を理由に偏見差別の対象にされてきた、被害者達。

 

 建前の道徳、画一的な心理相談(カウンセリング)などでは()()()()()()()すら見えない"個性(彼ら)"の為に。

 それが声無き声に『声』を与える力を期待され、獄を出された『彼女』に与えられた大義名分。

 

 

「相変わらず本当に前向きよねえ。未練とか残してそうな見た目に反して───『市子』の彼女と一緒に見つかってなかったら不可視不可触の潜在(ヴィラン)として危険視対象筆頭だったらしいのにね」

《……え、今なんかだいぶ不穏なこと口走らなかった?》

 

「《気のせいでは?》」

《ほな気のせいか~》

「えぇ……? それで良いんですか、レイン」

 

 過日、一国を沈めかけた『彼ら』でさえ、かつてはそうして弾き出された『幼子』だった事実。

 長らく被せていた『蓋の裏』を直視せざるを得なくなった者達が急遽作り上げた其処は、現代の駆け込み寺さながら『戦後』の世にひっそりと根を張り始めていて。

 

 

「こちらの活躍も小耳には挟みますが……やはりお忙しいみたいですね」

「ええ、まあ……予後観察を含めると少なからず、かしら。少し前にも、やり方次第で雨巫さん(幽霊)に近い事が出来てしまうと判明した"個性"の持ち主も見つかったりしたし……」

《ほほう、キャラ被りの危機とな? それは一大事やな!》

 

「そうは言ってねえよ───こほん。『魂鳥』改め"個性"『割魂(さきみたま)』だったね。『面会』してみて初めて分かったことだったけど、()()()()も結構気にしてるみたいだったかな」

「成程……それではその人も、()()()()()()()になるんでしょうか?」

 

「それは───どうかしらね。付き添いで来ていた幼馴染と一緒にヒーローを目指すと言ってたしあるとしてもゆくゆくは、になるんじゃないかしら」

 

 将来における危険性───それ即ち、良くも悪くも社会を動かしうる強大な"個"にして可能性。

 早期発見を整えつつあるそれらに対し、変化を恐れて『摘み取る』のか、あるいは野放し厳禁を承知で『未来』に期待を寄せるのか───かつて一度、己の未来を投げ捨てた筈だった『彼女』はその皮肉極まる裁定係(役回り)を、しかし二心もそこそこに快く受け入れることを選んだ。

 

 

「そっちこそ活躍振りは公安(うえ)を通して聞いてるわよ? 見えも触れもしない幽霊による監視社会。いやはやまったく───正直言って、夏の怪談話なんて目じゃない恐ろしさですよね」

《いやあ、それほどでもあるぜよ、はっはっはー》

「……褒め、られてるのかどうなのか。まあ、今の平和を維持できるならそれが第一ですからね」

 

 かつてとは異なる、『躓いても立ち上がれる社会』の実現を目指して。

 打ち棄てられた彼ら彼女らに、『手を差し伸べる』ことが当たり前になる世の中を夢見て。

 

 表舞台で脚光を浴びるヒーロー達から一線を引いたそこは、さながら『舞台裏』の戦場。

 真黒な淀みと悍ましき血生臭さが微かに残るその場所で、それでも『彼女』は見出された同僚と共に泰然と微笑み合う。

 

 

「……ナガンさんも現場復帰してくれないかって逐一ラブコールを受け取ってるらしいんだけど。もうちょっと税金で食える贅沢を堪能させてもらう、とかなんとか言ってて……こっちは出所から間も置かずに働き始めたっていうのに、わるい大人だわ、まったく」

《ああー、あの人かぁ。昔のひっどい顔して()()()()()()()()()()()()に比べれば断然楽しそうに生きてらっしゃるよねぇ》

 

「そうそう良い顔で…………え、待って? 貴女いつから見ていたの? 狙撃(それ)知ってるってことは少なくとも収監前……」

「……まさか、()()()()とのアレとか目撃してたり……しませんよね?」

 

 

《───なんのことかさっぱりわかりませんが、壁に耳あり障子に目ありって良い言葉ですよね。生憎と死人に口は無かったわけですが。いえ、なんのことだかさっぱりわかりませんがね?》

 

 

「…………今後も彼女から目を離さないでくださいね、柚子さん」

「…………早くも眩暈がしてきましたけど頑張ります、はい」

 

 

 微笑み合うのだ、泰然と。……泰然と。

 

 それもまた『手を差し伸べ続ける彼ら』に近くありたいと願った『彼女達』の選択なのだから。

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───今、再びの『刃禅(面会)』を希望致します店主殿ぉ!!」

「…………私は事務員です。『刃禅』と書いて『面会』と読まないで下さい。そして何度探しても貴女の中に【袖白雪】さんは御不在です。お帰り下さい」

 

 

「毎度ながら綺亜(きあ)ちゃんが本当にすみません……ほら、帰るよ。ここはもっと真面目に"個性"との付き合い方に悩んでる人が来るとこだから、ね?」

「ぬぅっ! まるで私が不真面目な人間のような言い方をするでないわ、たわけ!」

 

「……もう、それ(たわけ)言いたいだけじゃん。キャラぶれてきてるって……」

 

 

《お、おう……『"個性"相談』って、こういうタイプの子も来るんか……濃いなあ》

「悩みの程度としては平和でなによりなのだけどね。あと、ここまでのは稀よ。流石に」

 

「ぬぐぐぐ……だがっ! 華羽(ジジ)の中にはジジが居るではないか!? ずるいよぉ!!」

「……『屍操』がね。むしろボクよりノリノリだったというね。『ついてるだけの女の子』、とかわけわかんないことも言い出すし……いやほんとどうしてこうなった……」

「……だからって『冷体』さんへの更なる無茶振りはやめたげて。既に滅茶苦茶頑張ってるから」

 

 

 

 

 

 

 

「───呼ばれた気がしたのですが、出番ですか?」

「…………いえ、誰も呼んでないと思いますけど───せめて玄関から入ってくれないかしら?」

 

 

《……え、今扉の裏から出てこなかった? そこに()()()()スタンバってたの? 何してんの? あ、でも私もできるな。次の登場時には参考にしようそうしよう》

「ややこしくなるので黙ってましょうね、レイン。あと参考にするなそんなの」

 

「おかしいなあ……出井星子(わたし)も顔を出すべきだよって『553』さんも言ってたのに……」

「……以前もそうだったけど、いったい貴女には何が見えてるの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

《……そろそろ時間なのだけど、表にそれらしい影は見当たらないわね》

「たしか、海外からの相談予約だったよね? 自国ではかなり有名な人なんだっけ」

 

《ええ。以前から嘆願が入っていて、国同士の調整諸々から今日になったらしいわ。指示によると指定された時間に、この本を事務所内に広げておいて欲しいとのことだけど……》

「え、これ……()()?」

 

 

 

 

「───だあむですとろ……私の知ってる赤ずきんと違うのぉ(It's different from what I know)……!」

「《すみません力にはなれないですフィンランドにお帰りください》」

 





 これまでの番外編でちらちら匂わせていた公安肝煎り"個性"相談所ネタ深堀り回。
 本編以降"個性"診断とかカウンセラーとか相当に力入るようになったんやろなって。第二第三の弔くんトガちゃんを生まれさせてはならぬよ。

 相談相手として適当に陰惨な過去持ちオリキャラを考える中、思いついたが四月の閃き。
 そうして生まれましたが作者のヒロアカ二次連載作&短編キャラ達が全員同じ世界線だったらif一部年齢等調整盛り盛り仕立てとなりました次第なのです。
 ……ヒロアカ関係無いのも混じってる? 元はそれ用に作った名前だからセーフです(暴論)。

 振っ切ったバカ話を書くつもりだったのに、わりと真面目な考察寄りになった不具合について。
 四月一日ノリに託けた宣伝回になったかもしれない。思えば色々書いてきたもんだ。

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