この俺こと
まぁ、魔術師の家系とは言ってもたかだか200年の新参者も新参者。たまたま才能を持って生まれた曽祖父の代に始まったなんていう、正直形だけと言ってもいいゴミみたいな家系で、全然誇れるようなものじゃないんだがな。
兎に角そんな底辺一族なものだから、時計塔とか教会の連中とかと絡むことなど一切なく、この千葉県で一般現代人とほぼ変わらない生活を送ってる。
ただ完全に同じってワケじゃない。まぁ、何だ。ぶっちゃけると俺たちは割と日常的に魔術を使ってるってことだ。
例えばコタツからテレビのリモコンを取るために出るのが面倒な時。風呂で急に本が読みたくなった時、足の小指を角にガンッとした時などには使う。頻度に直すと日に二度か三度くらいか。
いや、マジで便利。一般家庭ではコレが使えないってことに憐れみを覚えてならないね。
で、そんな俺なわけだが、一族の皆からは天才と呼ばれている。
理由は俺の右斜め後ろを常に浮遊しているコイツだ。
『【一栗雄太の部屋】に対して【目星】を使用しますか?』
「ん」
俺は所謂「クトゥルフ神話TRPG」というものが大好きでな。
確か……俺が10歳くらいの時に親父がルールブックと乱数賽を買ってきて一度セッションした時からだったか。
16歳になった今でも毎週末家族でやるくらいには好きだ。
まぁ、もうできるシナリオも殆ど尽きているので、俺がシナリオ自作してKPしているんだがな。
とりあえず俺がクトゥルフが大好きだということを理解してくれると助かる。
そんな俺が12歳の時、何をどう血迷ったのか「現実でもダイスを振りたい!!」と思い立って作ったのがコイツだ。
俺の無いに等しい魔術の才能を駆使しまくって、どうにかこうにか試行錯誤を繰り返し、15歳の時に完成した。
コイツを家族に見せた時の反応は凄かった。凄すぎて今でも鮮明に思い出せる。
特に爺ちゃんなんかもう、「ロンドンに移ってコイツを時計塔に通わせよう!!」とか言い出して大変だった。
まぁ、実際コイツはそのくらい凄いと我ながら思う。
自分でもどこをどうしたらこうなったのかサッパリ分からない、というか覚えてないのだがとにかくスゴイ。
コイツを使うことで、あー……有り体に言っちゃえば「リアルクトゥルフ神話TRPG」が出来る。
例えば今、この瞬間。
俺が少し前に読んで、どこにしまったか忘れた本を探すために【目星】を振ろうとしているわけだ。
クトゥルフ神話TRPGにおいて目星とは万能技能と言っても過言では無いと俺は思っている。
とりめぼ────とりあえず目星。なんて言葉ができるくらいには万能な「ゲーム進行に必要な情報を回収する技能」で、コレを振らないセッションは殆ど無いだろう。
『【目星】90≧54……成功』
「……あ、そこね。OKOK そういやそうだったか」
無機質な音声が流れ終わると共に、俺の脳内に情報が溢れ出る。
御目当ての物は本棚の3段目の右から五番目にあるらしい。此処は普段漫画の棚として使っているのだが……どうやら数日前の俺は元通りの場所に本をしまうことが面倒になってしまったらしい。
……と、つまりこういうことだ。
ダイスの結果をそのまま現実に反映するなんていう、そんな魔術。
まぁ、あまり大したことはない。
別にアニメみたいに火の玉ドーン! 雷ズガーン! なんて出来ない…………いや、やろうと思えば多分、出来ないってこともないんだろうが…………まぁ、普通に使う分にはただ便利なだけの「便利魔術」だ。
だが、一応コレだけでも十分凄いこと……な、ハズ。
正直時計塔とかの事情なんぞ俺はサッパリ知らないから、コレが凄いのか凄くないのかわからん。
さて、じゃあ説明も終わったし、飲み物でも取ってきて──────
「おぉぉぉぉ!! 新しい英霊だ!! 初めまして!!」
「………………………………は、ぁ?」
うーん……これはどういうことだろう。
本を見つけた→飲み物を取りに行こうとした→謎の場所に居た(?)
………うん、拉致かな?
いや、マジで意味がわからん。まぁ、取り敢えずは周囲の状況を確認してみよう。
えーっ、と……なんか、青い。青い光が灯っていて……。
そんで……機械が、スゴイいっぱい……所狭しと並んでるな。
一番近い表現は……儀式部屋とボイラー室が融合した感じってところかな?
ふぅむ……儀式部屋……儀式部屋か。
儀式部屋と言えば儀式。儀式と言えば生贄。そして拉致された俺。…………うん、つまるところ俺は生贄になっちゃうわけだ。
成程成程……うん。うんうん。
……なんでだよ!!!
『あなたは突然の転移に仰天した。SANチェックです。0/1d3 99≧78……成功』
「え! 何ソレ!!」
うおう、気付かなかった。誰だコイツ。
あ、美少女だ。可愛い。まるで太陽のような明るい橙色に金の瞳。うん、イイ。
じゃなくて。
「あの……すみません」
「んえ?」
「此処は、一体何処なのでしょうか?」
こっちに振り向く美少女……あーもうクッソ。本当に美少女だなぁオイ。
ズルいぞマジで。なんでお前らみたいなのはこう、いちいち可愛いんだ。
「あ、もしかしてイリヤちゃんとかと同じ感じかな?」
誰だイリヤちゃん。
もしかして同じような拉致被害者か。拉致被害者なのか。
そんな可愛い顔して犯罪者なのかお前。北なのか。
「じゃあ…………んんっ、此処は【人理継続保障機関フィニス・カルデア】!! 私は人類最後のマスター、藤丸立香!! お願い!! どうか、あなたも地球を取り戻すために力を貸して!!」
…………………………………ああ、成程。分かったぞ。
どうやら、俺はとんでもない話に巻き込まれたらしい。
□
…………ヤベェ。
何がヤベェって、色々ヤベェ。
まずこの……何ちゃら機関『【知識】を使用しますか?』しない、えー……こと、カルデア。
なんか、この世界は今、真っ白に漂白されてるらしくて、なんかこう、違う星の神様が色々とやろうとしてるらしい。
それをなんとかしよう! というのがこの機関の今の目的で、その為の戦力補充として俺が呼ばれた、とのこと。
此処まで聞いてまず俺が思ったことはこうだ。
……いや、クトゥルフやん。それ、クトゥルフやん。
これは俺の役割ですわ。このリアルクトゥルフ神話TRPG男一栗さんがズバッとヌルッと解決して差し上げましょう、と。
まぁ、最初は、最初だけはこう思ってたんだ。
だが、そんな気持ちはその後に続いた話で軽々と吹き飛んだ。
……此処さぁ、なんか本物のアーサー王とか、ガチモンの源頼光とか、果ては実物のヘラクレスなんか居るらしいんよ。
いや、俺、要る? ってなったよね。
いや、いらないじゃん。
別にソイツ等だけでいいじゃん。
俺ってば足手纏いもいいところじゃん。
なんかもう、帰りたい。
ただひたすらに物凄く帰りたい。
「【アイデア】」
『自動失敗です』
「俺、門の創造って出来ない?」
『【クトゥルフ神話技能】を取得しているため、使用、及び帰還は可能ですが今現在において使う意味はありません。MPを無駄遣いしても良いのならば【クトゥルフ神話技能:門の創造】を使用しますか?』
「いや、いい」
いつの間に獲得してたんだクトゥルフ神話技能。
まぁなんかのルルブ書いてる時にでも多分取ったんだろ。知らんけど。
しかし、門の創造でも無理…………あークソ、他に打つ手は…………いや、その前にどこか落ち着くところを探さなければ。この廊下考え事に向いてなさ過ぎる、マジで。
ちょっと考えに入ると「初めまして」って声かけられて、こっちも挨拶するんだが全員が有名人過ぎる。んでもってその衝撃で考えてたことがぶっ飛ぶ。
俺本物のアキレウスさんと握手しちゃったよ。握力マジでエグかった(大興奮)
他にもジャンヌ・ダルクさんとかね。
うん、まぁ、何。とりあえず超デカかったよね。
そりゃあ魔女認定もされちゃいますよ、あんなの。
目線がそっちに行かないようにするのマジで大変だったもん。
しかも声良いし、優しいし。最高かよカルデア。
でもあんな人を最前線に送ったりするんだよね。
最低かよカルデア。ついでに中世フランス。
「あら? 新入りの方かしら? 初めまして」
「あっ、こちらこそ初めまして。この度召喚されました一栗雄太と申します」
んお、今度は金髪の美少女。
あ〜、良いですね〜。でもこの子も只人じゃないんですよね〜。
なんか額に鍵穴ありますけど何ですかソレ。
もしかしてかの有名な邪神、ヨグ=ソトースさんと関係あったりします?
まぁそんなわけないでしょうけどね。
『あなたは全にして一、一にして全。次元の狭間に住まいし門の鍵たる埒外の存在と邂逅した。SAN値減少1d100です 1d100→97……【クトゥルフ神話不感症】を発症しているので本来ならばSAN減少半減、ですがハウスルールを適用するためSAN減少は0です』
…………マジで?
主人公のSANがMAXな理由→家族でやってたセッションクリア時に主人公もクリア判定もらっててめっちゃボーナス入ってた。元々は80。普通に高い。
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