…………まぁ、はい。
あの微妙な空気のままカルナさんが帰ってきて出発となってしまいましたよ。ええ。
いや、そのね、立香ちゃんもマシュさんも普段通りにしてるんだけどね。
うん、絶対無理してます。
英霊3人は平気だけどあの二人は絶対無理してます。
だって纏う空気が若干どんよりしてるんだもん。
この小学校、中学校と地獄のような環境(人間関係的な意味で)を生き抜いてきた俺だからこそわかる。
あの二人は今“合唱コンクール本番で思いっきり音外した人“の空気を纏ってる。
気にしてない風を装いながらも内心で滅茶苦茶ビクビクしてる感じ。
うん、原因は確実に俺のアレだよなぁ……
むしろそれ以外であってもらったら困る。
まぁ、とりあえず、こういう時はあんまり露骨にならない程度にケアするしかない。
あといつも以上に地雷への警戒。
普通の人の地雷も割とヤバいんだから、今の立香ちゃんの地雷を踏んだら確実にとんでもないことになる。
下手打ってヒステリックorパニック。錯乱して……なんてなったら目も当てられない。
具体的には俺らの世界が詰む。
……はぁ……言っててまた思ったが、本当に背負い込んでるモンが重すぎるんだよなぁ、マジで。
なんだよ世界の存亡とか人類の存続とかって。
普通の少女がおおよそ抱え切れるモンじゃねぇぞ。
まぁ、だから英霊様達とかスタッフさん達とかが支えてたんだろうが……
うーん……あークソ。しくじったなぁ……
「ちゃんとやっての失敗だったらOK」っての伝えそびれたんだよなぁ……
それで余計圧かかっちゃって崩れちゃいました〜……なんて洒落にならんぞ。
「アーシャさんが教えてくれた山はこの辺りですね」
あ、もう着いた感じか。
やっぱり考え事しながら歩くと早いな。
いや、何を山道で考え事しながら歩いてるんだよって感じなんだけどさ。
「ぱっと見……おらんな。よし、出番だぞ斥候!」
「はい。【目星】【聞き耳】あと【オカルト】」
念のためオカルトも振っておこう。
大丈夫だ。確か15くらいあったからな。
『【目星】90≧52……成功。【聞き耳】60≧25……成功【オカルト】15≧18……失敗』
っダァ! 惜しい!! でも失敗前提で振った感じあるからファンブルじゃないだけOK!!
…………で、うん。特にわからん、な。
「自分にわかる範囲では特になさそうな感じですね。少し探索してみましょう」
『サーヴァント反応も検知されない。それに一栗君が特に何もないと言っているということだから、つまりそう言う事なのだろうが……何か感じ取れた者はいるかな?』
「かすかな神気を感じる……気がする。断言はできん」
「同意だ。全くのはずれということもないだろう。斥候の言う通り探索してみよう」
お、おおう。俺、ここにきてすぐなのに随分信頼されてるなぁ……
いや、ありがたいし嬉しいんだが、一応結構な確率で失敗するし、5%でヤバいことになっちゃうんだよなぁ、俺。
「おーい! 誰かいないかー! シータもいないかー! 余だぞー!」
「どなたかいませんかー!」
「フォウフォーウ! フォーウ!」
……いや、その捜索法はちょっと拙いんじゃない?
相手が敵なのか味方なのかわからない以上、もうちょっと静かに探した方がいいんじゃ……
もし敵だったらこっちの位置を晒すことになっちゃうぞ?
「ふむ、埒が開かんな。ある程度手分けして調べるとしよう」
「了解。 ボクは 風火輪で 飛行可能。 空から 捜索する」
「え!? ちょっ、待っ!?」
それは、それはアカン! 戻っ、戻って……あぁもう行っちまったよ!!
「……アレ、大丈夫?」
「何、やつも物語に謳われる英雄。心配いらんだろう」
「えっと……一栗さんが何かを叫んでおられましたが?」
あぁうん。叫んだよ。もう意味ないけどね。
「いえ、ただ単独行動はやめておいた方が良いと思っただけですので……」
うん、実際は「やめておいた方がいい」じゃなくて「絶対にやるな」なんだけどね?
単独行動は超がつくほど危険だってこと、理解していらっしゃる?
一人の探索と二人の探索の差は、天と地程の差の倍はあるんだぞ?
まぁ確かに効率がいいのは否定しないが、それを差し引いても余りあるくらいのデメリットが存在する。
というか効率以外にいい点が何一つ見つからない。
何より「帰ってこない」可能性が結構デカいってのが怖い。
さらにエグいのはこっちが「帰ってこない」ことすらわからないことだ。
帰らない人間を待ち続けてタイムリミット……なんてのも十分有り得る。
「む。どうやら、こちらはこちらでやるべきことができたようだ」
『神が潜む山、ともなれば魔物の一匹や二匹、いるよねぇ。手っ取り早く片付けて捜索に戻ってほしいなー☆』
ウザッ。
って、おぉう!? いつの間にか囲まれてる!?
「よーし! 戦闘開始! じゃあまず孔明を召喚! で、前はカルナさんと一栗さん! 横からくるのをラーマとマシュ!!」
「「「「了解!!」」」」
「ハァ……次はアレか……」
お疲れ様です本当に。
『アーティファクトの効果によりNPを100獲得します』
「まず一栗さん『目星』から宝具!」
『【目星】……自動成功。【クリティカル】50≧76……失敗。特殊技能【連続攻撃】……【クリティカル】12回判定中4回成功。相性変更効果によりダメージ2倍です』
うーん……また猪残したなぁ……
やっぱり火力が結構落ちてるんだろうなぁ……
「孔明! ……OK! 第二波! カルナさんと孔明、スキル全部! 孔明はカルナさんにね!」
「はぁ…………」
いやホント大丈夫ですかアンタ。
そろそろ休暇とか申請……できないのか、此処……
……で、カルナさんが全部焼き尽くして終わりですか。
まぁ、カリどもに比べたらまだ全然余裕だな。
「OK、じゃあ孔明は帰っていいよ。二人は横で戦ってる方に加勢してきてね」
「「了解」」
よし、あとは仕上げかな?
でもここで油断したら普通に足掬われるからな。
しっかりと最後まで気を抜かずにね。
□□□□
『敵性反応は全て処理したかね?』
「はい、何事もなく。
……ん? おるてなうす?
一体それは……ってあー、なんか語り始めたー……
聞いてる限り、その装備の話かな?
……今更だけどその装備、なんか整備士の趣向が結構混じってない?
胸元と鼠蹊部が結構大胆に……まぁ、戦えてるし、いっか。
「これがオーガにヘヴィウエポンというヤツですね!」
うん、なんか綺麗に締めくくった感じ出してるけど、ちょっと間違ってるからね?
「正しいが、正しくない」
ほら、カルナさんもこう言ってる。
……え? 金時さんが? ……じゃあいいや。
「すまん。俺が言ったのはそちらではなく、敵の処理の方だ」
は?
「敵は確かに片付けた。だが。敵かどうかわからぬものは……」
え? マジ?
「あそこだ」
ッ!?
真横を一瞬で通り抜けるの心臓に悪いんでやめてもらえませんかねぇ!
「出てこい」
……あ、なんか出てき……た……
う、おぉ。
スゲェ。なんか、スゲェ。
なんて言うんだろ……体のバランスが凄まじいレベルで整ってる。
こう、人間が美しいって感じる理想型そのもの……ん?
……ニャルか!!
眼前で岩ぶっ壊されて笑ってやがる!! 確定だ!!
先手必勝!! 死ね!!
『【Buster】……自動成功……相手が回避を成功させました』
「ちょっ!?」
「チィッ!!」
クソが!! しっかり避けやがって!! 邪神なら邪神らしく正面から受け止めろよ!!
えぇい! とにかく殺す!! 立香ちゃんが魅了されたら終わりだ!!
「一栗さん! 止まってください!!」
「一栗さん止まって! まずは話を聞こう!!」
「違う!! 駄目だ!! コイツは駄目だ!! 俺が時間を稼ぐ!! 今のうちに逃げッ……!?」
「止まれ。マスターの命令だ」
クッ……どうする?
首元に槍。正面にニャル……負傷覚悟で突っ込むか?
「ああもう、ビックリしちゃったわ。まぁ、音がしたからって不用意に近づいちゃったコッチも悪いんだけど……」
「あなたは……ペペロンチーノさん!!」
…………は?
「ハァイ、お久しぶりマシュちゃん」
…………え?
□□□□
「いや本当に申し訳ございませんでした」
「あーら、そんなに気にしなくて良いのよー? さっきも言ったけど、不用意に出てきちゃったこっちが悪いんだし、マスターの安全を第一に考える、サーヴァントとしての最善の行動だと思うわ。立香ちゃんも良いサーヴァントを持ったわねー?」
「うちの自慢のサーヴァントの一人です!!」
うん、はい。結論から言うと人違いでした。
【クトゥルフ神話技能】も振って確認したので間違い無いと思います。
えー、こちら、スカンジナビア・ペペロンチーノさん。
現カルデアの敵、クリプターの一員らしい。でもなんか訳アリっぽい。
まぁ、とりあえず人違いで殺しにかかったことを謝りました。はい。
「あ、そうだった。忘れてた、私、一つ忠告があったんだったわ」
ん?
「私とお喋りするのもいいけど、今はまず、ここにいない子のことを気にした方がいいんじゃない? ってコト」
「っ、それは、どういう……?」
『これは……気をつけてくれ、皆! 何かが降ってくる!!』
降ってくる……上か!?
『サーヴァントだ! 一騎はさっき別れた哪吒だけど……正直、バイタル的には相当まずい反応になってる! そしてもう一騎は、これは……これは!?』
ッダァ! クソ、強引にでも止めておくべきだったかァ!!
ヤバい、ヤバいぞ。今回、俺やらかしまくってるぞ……
「く……はっ……」
……ッ! 急いで【応急手当】を振らんと……!
「失敗 油断 不覚……主に 謝罪を……なんて、事……ただ……敗れるだけなら まだ 良かったのに……主……ごめん、なさい……」
「ああっ……!」
ヤバい、消えた……
クソ……GM。今からどんくらい応急手当は受け付けられる?
『この山から撤退しない限り可能です』
OK、じゃあ戦闘してからでも全然間に合うな。
土埃が晴れて……って、え? アレ? 哪吒さん? 消えてない?
……いや、明らかに色が違う。
偽物か、クーフーリンさんみたいに同一人物が召喚されてるのか、殺した相手の姿になれるのか……
どちらにせよ敵に違いはないな。
『カルデアの哪吒は消滅した……あれは恐らく別側面の哪吒であり、この異聞帯に属する、敵だ』
「報告/個人的な運動の終了。以降は神の将としての役目に戻る。それ即ち、敵の排除……実行開始」
まぁ、そうなるわな……やるか。
「報告だ。あの長身の男の姿が、いつの間にか見えなくなっている」
「いまはその時ではなかろう。ひとまずはこちらだ……来るぞ! 皆の者! 気持ちは分かるが、頭を切り替えろ!」
「ッ……戦闘開始!!」
『外魔導的知識結集書本』
ランク:EX 種別:対人〜対界宝具
レンジ:1〜∞ 最大補足:∞
一栗雄太のを構成する人員の外なる魔導の知識を集約し、束ねた一冊の本。普段はGMが情報として保有しており、一栗雄太から魔術の使用申請が届いた場合に実体化する。これ一冊あるだけで無数の外なる魔術を行使できる。螺湮城教本とは違い魔力の補充こそないものの、それ以外の面では完全に上位互換であり、その気になれば森羅万象一切合切ありとあらゆる存在の命運を握る白痴の王すら呼び出すことが可能で、故にその最大補足は無限。
なお、これを一栗雄太以外が持つと即座に発狂するため、発狂の内容によっては全てが滅ぶ。
感想と評価、くれ(懇願)