カルデアに探索者が召喚されました   作:POTROT

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必要な犠牲

 さて、今現在、我々はものすごい勢いで全力疾走しながらシャドウボーダーへ逃げている最中なわけなんだが……

 いや、すごいなこの体。さっぱり疲れない。

 宝具の時とかは結構疲れるんだけど、やっぱりあれとこれとじゃ運動量が違うのかね?

 まぁ、でも……

 

「はっ、はっ……はぁっ……!」

 

 立香ちゃんがヤバそうなんだよなぁ……俺も普通の人間のままだったらこんなになってたのかね。まぁ、俺だったらそもそもこんなに走らずに『門』を作るが。

 しかし、このままじゃ拙いよな。どうするか……

 

「マスター!私が抱えて走ります!!」

 

 あ、マシュちゃんが担いだ。……お米様抱っこで。

 ……いや、すごいなマシュちゃん。あんな重そうな盾に追加で人間も……あぁ、違う。女性の重さはA4用紙1枚分だった。

 だったら速さが全然落ちてないのも頷けるな。うん。マシュちゃんが手慣れてるってのもあるんだろうが。

 

「ご、合流地点はまだっスかぁ!?」

「くっ……これだけ距離を離しているというのに、後方のアルジュナの気配は強まるばかりだぞ……!今まで様々な強敵と戦って来た余でも、ここまでは無かった……あの霊基、尋常ではない!!」

「…………」

 

 ラーマ君がなんか言ってるけど、俺何故かその……気配?感じないんだよね。

 マジで何でかわからないけど。

 うーん……何でだろ……うッ!!?

 ……なんだ?何だ今のは?何かの光……いや、力の波動ってやつか?

 

「……!!!」

「ああ、あああ……駄目っス、これ駄目っス、マジでゾクゾクしたっス!ヤバいっスよぉ……!」

「私も……分かります。分かってしまいました!回避を、絶対に回避をしなくてはならない、何かです……!」

「来る! 喰らえば 確定で 死ぬ!」

「もしかして何も感じてないの自分だけだったりします!?」

 

 え?アレ?俺マジで何も感じてないんだけど。

 なんか力の波動的なのが来たなーくらいにしか思えんのだけど。

 アレェ……?何かがあるのか?俺に?何だ?

 ………………いやあったわ。心当たりも超あったわ。

 いや、でも、それだと……俺がヤバいんじゃねぇか?大丈夫なのか?

 ……ッと。

 

『おっまたせー!既にハッチは全開だ!速やかに乗り込みたまえ!』

「了解です!!」

 

 よし来た!乗り込めー!!

 まず立香ちゃん!次マシュちゃん!そんでペペロンチーノ!からの俺ら!

 カルナさんはハッチが塞がりそうだから最後ね!

 

『全員乗ったね!?ハッチ閉鎖ー!』

「たすか、った……?」

 

 立香ちゃんがすごい安心してるが……

 大丈夫なのか?これ。俺としてはまだ何にも解決してないように思えてならんぞ。いや、ただの俺の杞憂ってんならむしろそっちの方が良いんだがな?

 

「ハハ、ハハハ!間に合うではないか!ホームズめ、顔芸などしてビビらせおって!」

「え“」

 

 マジで?ホームズさんが?“あの”ホームズさんが?

 …………いや、割と拙いヤツじゃね?ソレ。

 あの人、多分こういう場面で演技とかそんな無意味な事はしない主義だぞ?

 

「まだだ!まだ事態を切り抜けたわけではない!」

 

 ホラ、やっぱり。

 

「問題は虚数潜航の準備だ!」

「何ぃ!?」

 

 虚数潜航 is 何!?

 でも虚数って聞いたことあるな。塾の先生がなんか言ってた。存在しない数字がなんとかかんとか。

 うん、まぁ、高一(ほぼ中三)の俺にそんな大学とかその辺の数学の理解は無理だ。そもそも知識すら無い。

 

「ふむ……できるだけ準備はしていたが……駄目だ。足りない。5秒……いや、それ以下だが……それでも足りない!」

「そん、な……!」

 

 っていうかまず、俺があんまり事態を把握しきれてないんだけど、何から逃げようとしてるの?これ。

 あれか?あのアルジュナの溜めてたヤツ。ヤバいってのはわかるが……そんな必死になる程ヤバいヤツだったのか?

 

『待て!待て待て待て!今、霊体化して外に行ったのは誰だ!?』

 

 ッ!?マジで!?

 えー……ラーマ哪吒ガネーシャは居る……カルナさんが居ない!?

 

「先ほどの『波』……理解はできないが、感じた。世界は一度滅び、創り変えられる。それに巻き込まれれば消える……事実だろう」

 

 もうあんな遠くに……ってか今そんな状況だったの!?

 いや、確かにあの少女、「一回全部死んでまた生き返る」的なこと言ってたけど!!

 

「マスター。お前を消されるわけにはいかない。ならば俺はすべきことをするのみだ」

『カルナ……まさか!?』

「5秒か。任せておけ。俺の全てを焼べて輝く日輪は……ヤツとて一息に飲み込めはしまい。それは、ヤツが俺という存在に改めて気付く5秒となろう」

 

 いや、それって、おまっ、捨て身じゃねぇか!?

 拙い!それは拙い!カルナさんは拙い!ここでカルナさんに退場されると戦闘がキツい!!

 なんか……なんか無いか!?

 

「ちょっ、駄目っしょ、それは駄目っしょ!?ねぇ!」

「………………!!!」

 

 GM!GM!なんか無いのか!?

 

『【クトゥルフ神話技能:神格の召喚(ヨグ=ソトース)】を行いますか?』

 

 誰がするか!!本末転倒じゃねぇか!?

 じゃあ門の創造は!門の創造はどうなんだ!?

 

『成功した場合、防御が消失するため確実に間に合いませんが、それでも使用しますか?』

 

 こっちも本末転倒じゃねぇか!!

 しない!!

 

「おい斥候!何か打つ手は無いのか!?」

「あるにはありますが!」

「あるんっスか!?」

「あるだけです!やれば最悪カルデアが機能不全に陥ります!」

「何ぃ!?えぇい却下だ却下!!絶対に使おうとするんじゃないぞ!!」

 

 そりゃあ使わないよ!

 マジのガチの最終手段だよ!!

 

「他に手は無い。そちらは潜航の準備を進めろ」

 

 いやいやいやいや。待て、マジで待て。待ってくれ。

 いや……うぅぅぅぅぅ…………何か……いや、もう、無い……

 俺がこの場にて取れる行動は……もう割に合わない賭け以外に無い……!!

 

「………………ホームズ!」

「やっている!もう少しだ!」

 

 立香ちゃん……!

 

「そうだ。マスター。それでいい。これが俺の望みだ、気に病む必要はない」

「よく言ったわ!しっかり席に座りなさい!」

「余に……余に、何の断りもなく……その独断専行、許すまじ、猛省せよ、カルナよ……!偉大なりし施しの英雄に、偽りがなさすぎるであろうが……!えぇい!あとは任せよ!」

「感謝する」

 

 ……ああクソ、必要な犠牲!必要な犠牲だった!

 もう今後は俺らだけで何とかせにゃならん!

 

「急速潜航準備、最終段階!カウントダウン開始……」

「や、奴の攻撃は……」

「答える時間が惜しいほどすぐですよ!」

 

 マジで!マジで頼むぞカルナさん!

 アンタが頑張ってくれないと最悪邪神なんだからな!?

 

「待って、待って、駄目、待って……」

 

 う、お、ガネーシャさん……

 ああクソ!下手に手段を残していると罪悪感が半端ない!!

 だが駄目だ!無理だ!あの人が犠牲になる以外はないんだ!

 

「さて……アルジュナよ……俺には、お前を穿ちたい衝動があるが……今は、その時ではない。俺は、マスターのサーヴァントだ」

 

 光った!来る!!

 

「故に、俺が選ぶのは槍ではなく……」

 

 光の柱が立ち上って……膨張!速い!!

 

「見よ、これこそが太陽神より与えられし、我が鎧と耳輪の輝き。だが、知るがいい。俺自身が命の光輝と化したならば、この黄金はもはや俺を守ものではない。それはただ……俺という日輪がここにあるというだけだ……日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』!!!

 

 うおっ!?眩しッ!?

 っ……ふ、防いでる!防げてる!!

 早く!早くしろ!!急げ!!!

 

「話に聞く防御型宝具の……強制励起か!だが、しかし、それでも……っ!」

「カルナさぁぁぁぁぁぁぁぁんッッ!!!」

 

 …………ッッッ!!

 クソが……クソが……ッ!!

 ……そうだ!そうだGMッ!!応急手当はどうなんだ!?

 すぐにこっちに戻ってくれば……

 

『不可能です』

 

 ああ知ってたよ!知ってたよ畜生!!

 クソッ!そうだよ!無理だって分かってて聞いたよ!

 

「ああ……俺が知っているらしい者よ。不思議なことに、確信がある。俺とお前は、きっとどこかで逢うだろう。だから……そんな顔をするな。マスターを頼む」

「っ…………!」

「よし!シャドウ・ボーダー、現実退去!虚数潜航……ゼロセイル!敢行!!」

 

 ッ!!

 ぐおっ、きっつい…………!

 頼む……!間に合ってくれ……!!

 

 

 □

 

 

 

 …………揺れが、収まった……な。

 

「間に、合っ、た……?」

「……やれやれ、間一髪だ。失ったものは大きいが……なんとか、絶対に守るべきものだけは守りきれた」

 

 ……そうだな……

 だがなぁ……失ったものがなぁ……

 

「太陽神の力が込められた無敵の鎧といえども、立っている世界そのものが砕けてしまってはな……むしろ、よくあれだけの時間保たせたものだ」

「……我々は、もうサーヴァントを一騎、失ってしまったわけか」

「冷たいようだが、過去だけに目を向けては先に進めない。得たものについて語ろう」

 

 ……あァ~…………ドが付くほどの正論だ。

 そうだ。整理だ。整理をしよう。あの一瞬で色々と確定した情報と、新たに得られた情報があった。

 そして……個人的に確認しておきたいこともある。

 

「潜る寸前に観測できたあの光の波は、信じられないほどに圧倒的で馬鹿げた魔力量だった。この異聞帯全域を破壊すると言われれば、なるほどそれに足るだろう、と納得してしまうぐらいにはね……あれは決して一人の英雄が持っていていい力ではない。けれど────」

「事実そうなっている、と」

「その通りだとも。つまり、そこには理由があるはずだ。ヒントはある。証言はあった。最後の神、インド全ての神格の統合。今は、その答えに最も近いと思われる人物に話を聞くのが先決だろう……問うべきことは簡単だ。一体、彼は何なのか?」

「OK、お話タイムと行きましょう。世界の裏側ツアー、なんて珍しい体験をさせてもらってるんだもの。それぐらいのお礼はしなくちゃね?」

 

 ……ん?世界の裏側……?

 アレか。この虚数潜航ってのがそうなのか。

 これ世界の裏側なのか……うわ、なんだアレ。凄い極彩色。ウボさんみたいな感じがする。

 

「コレは流石にアナタたちもわかっていると思うけど。彼、アルジュナこそがこのインド異聞帯の核。この世界が剪定事象となった原因よ。そうねぇ……さっきのホームズちゃんの疑問に絡めて言うなら」

 

 うわぁ、ホームズがすごい顔してる。

 流石にホームズにちゃん呼ばわりはキツいものがあったか。

 

「カレがあれだけの力を持つような歴史になったから剪定事象とされた……ということね」

「具体的には何が起こったの?」

「ほとんど予想の話だけどね?まず、彼が力を手に入れた時代は、正確にはわからないわ。遥か過去として、でもおそらく、『マハーバーラタ』の時代よ。そこで描かれた大戦争が終結した前後に、何かが起こった。彼がインド神性を全て手に入れるような何かが」

「……本当、なのですか」

 

 心理学……は、リスクが高いか。

 ここでファンブったら何が起こるかわかったもんじゃない。

 

「逆説的な説得力もある。世界を創り変えるなど、そのくらいの背景がなければとても不可能な事象だ。……しかし、何故そんなことが?」

「これも想像だけど、私は段階的に神性の獲得が起こったと考えるわ。最も可能性が高い推測として────

 

 

 □

 

 

 はい、ペペロンチーノさんの推論の要点をまとめると、こう。

 

 ・アルジュナは最初にクリシュナの中にあるヴィシュヌの力を獲得した

 ・そこから芋づる式に他の神性も獲得していった

 ・最終的にシヴァ、ブラフマー、インドラも統合して、ああなった

 ・色々ごっちゃになりすぎてアルジュナは全然アルジュナじゃない存在になっちゃった

 

 で、次の議題として挙がったのが、ペペロンチーノさんは何だ?というもの。

 今現在所長がペペロンチーノさんに詰り寄ってます。

 えー、こちらも要点を纏めさせてもらうと、

 

 ・アシュバ君を召喚したペペさん

 ・神アルジュナを慎重にコントロールしようとしたペペさん

 ・そこに突然やってきた異性の神の使徒の陰陽師

 ・神アルジュナ暴走開始

 ・アシュバ君奪われちゃった!!

 ・あっもうこれ無理。隠れよ!!

 

 と、こんな感じだそうです。

 そんで、この世界のユガはユガじゃないということの説明もしてもらってます。

 なんでも、ユガが早まっているのは、『裁き』とやらをやるため、とのこと。

 ホームズさん的には大体推論は出たらしいんだが、まだ確定はしてないから話したくないらしい。

 

『実数域の観測結果がようやく安定した、潜航からの浮上が可能だ。あまり長時間の潜航は不具合が出るかもしれない。ペペロンチーノの説明はともかくとして、安全面からもそろそろ浮上するべきだと思うんだけど、どうだろう?』

「む……そういうことなら、仕方あるまい。だが警戒は厳にせよ!!」

『りょうかーい、と』

「浮上後、私達は外に出て大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫よ、ユガが巡った直後にアルジュナが手を出してくることはないわ」

「ああ、すみません。ちょっとだけ確認したいことと話したいことがあるので、少しここに残ってくれませんか?」

「……? はい、了解しました」

 

 流石にこれだけは全員が確実に聞ける時に話しておかなくちゃならんことがあってな……

 これを確認しておかないと最悪が……な。

 

『さて、そろそろだ……シャドウ・ボーダー、浮上する!しっかり掴まっていたまえ!!』

 

 

 □

 

 おっ、終わったか。

 流石に二度目は慣れたかな?

 

「これは……外の雰囲気が……一変しています……」

『うん、早速外の探索をお願いしたいところだけど、一栗君。何かあるのかい?』

「はい、少し……質問なんですが、俺があのアルジュナと遭遇した時、俺は何をしていましたか?」

 

 正直これが気になって気になって仕方がない。

 マジで嫌な予感がする。絶対に何かある。

 

「えーっとねぇ……確か、ずっと何か言ってたよ?よく聞き取れなかったけど、『ふんにゃらかんにゃら、いあ、いあ、なんとかかんとか』って」

 

 …………………マジか。

 

 

 

 

 





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