ヤバいぞぉ……洒落になってないぞコレぇ…………あー……確認しておいて本当に正解だった。マジで危なかった。
ってことはアレか?あの時の俺は邪神からの何かを感じ取って、そんで狂ってたのか?
健忘症になっていたってことなら記憶が無いことも頷ける。
…………ってなると、だ。
「あー……その『いあ』の後に何て言ってたのか分かります?」
「いや、そこはあんまり良く聞き取れなかった。ごめんね?戦闘中だったし」
「いえ、それもそうですよね……」
ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………まぁ、そうだよなぁ……
これは、どうしたものか…………
全員にエルダーサインでも配っておくか?神話技能を振れば多分作れると思うし。
あー、いや、それはそれでなぁ………持ち帰ったら神格どもがなぁ…………
「えぇい!さっきから一体何なのかね!ちゃっちゃと本題を言ってしまいなさいよ!」
「……………………」
……それは山々なんだが……これって話したらダメなヤツじゃないか?
知ること自体は多分大丈夫なんだろうけど、カルデアに居る神格連中がどう反応するかが不安すぎる。
ここはどうにかして主格をはぐらかしつつ【説得】か?
………………いや、その前にもっと確実な方法があったな。
「そうですね。では、皆さんにお願いしたいことが一つ」
「お願い?」
「俺を今すぐに消してください。出来るだけ跡形もなく消し飛ばす感じで」
「「「「『はぁ!?』」」」」
正解は多分これだ。カルナさんを失ったばかりで戦力的には厳しいものがあるが、一度の失敗も許されないこの状況で下手に爆弾を抱え込むとかリスクでしかない。だったら消えるのが一番だ。死ぬのは怖いが、それで世界が救えるならまだ安いだろう。
「ちょっ、え!?なんで!?ダメだよ!?」
「早まるな斥候!カルナが去った今、これ以上戦力を削るわけにはいかぬのだぞ!?」
そりゃあ反対されるよな、うん。知ってた。
でも、俺を生かして不安要素を抱え続けるよりは良いと思う。
一応対策法もあるにはあるが、それでも無いに越したことはない。何てったってクトゥルフだ。
「ふむ……それは、先程の『あるだけ』の切り札に関連していることかね?」
「はい」
『少し、説明をお願いしてもいいかい?』
「これについては、情報を話すことができません」
『……それは、そもそも話すことができないのか、単純に話したくないのか、どっちかな?』
「後者です」
『…………一栗君。少し外で待っていてくれるかい?ラーマ君は一栗君を見張ってて。今からちょっとここで話し合うから』
まぁ、流石にすぐに決められるわけないよな。
向こうからしたら本当に何が何だかわからないんだし。
じゃあ、外で待ってるとしましょうかね。出来れば俺を消す方向で行ってくれると有難いんだけど……まぁ、難しいかなぁ……
□
『結論から言おう。無理だ』
あー、まぁ、そうなるか。
やっぱりアレだよな。哪吒さんを蘇生したのがちょっと強すぎたよな。
うーん……まぁ仕方ないな、これは。
『やはり、アルジュナやアシュヴァッターマン、哪吒を含む神将達という強力な敵を確認できているのに、大切な戦力であるキミを手放すわけにはいかない。しかも今はカルナというコチラの主力を失っている上に、キミはサーヴァントに対する蘇生の術も持っている。キミがいたら勝てたのにキミがいなかったから負けた、なんてことになることは確実に防ぎたい。申し訳ないが、現状維持でいかせてもらう』
「了解しました。であれば、他にお願いしたいことを言ってもよろしいでしょうか?」
『いいけど、キミを幽閉するとかであれば受け付けないよ』
「いえ、ただ、俺が同じような状況に陥った時は、即座に俺を殺すか、それが難しそうであれば目を閉じ、耳を塞ぎ、何か別のこと……そうですね、明日の夕食のことをずっと考えて欲しいです」
「ほう?」
『うん、わかった。立香ちゃんも、それなら大丈夫だね?』
「大丈夫!」
「はい。お願いします」
俺が死ねないなら正直これしかないと思う。
見ない聞かない知らない分からない以上の対策はあの邪神どもには無い。
逆に知らないと対策のしようがないってヤツもいると言えばいるが、まぁ少数派だしな。
『よし、話もまとまったところでそろそろ探索を始めようか』
「はい!マシュ・キリエライト、出動します!」
まぁ、不安は残るが……もうどうにでもなれの精神で頑張るか。
□
「こ、これは……」
……マジか。外の風景だけは会議中に見ていたが……まさか町までこんなことになってるとは。
建物は全部直ってるし、人が溢れてるし、何より活気がすごい。
いや、どうなってるんだコレ?
「……む、面倒なヤツが来たな」
え?……あっ、町長じゃん。
やべ、また追い出される前に逃げた方が……
「アア、これはこれは!あなた達、ご無事でしたか。それは良かった、いやあ良かった!まさに神の思し召しでしょう。全ては何の咎もなく世界は穏やかに……ああ、いえ、まずは謝罪ですね。火急の時とはいえ、あの時はあんなに酷い言葉をかけてしまいました。償いにはならないでしょうが、これからはあなた達の無事も祈らせていただきます。どうか、この町の人々を嫌いにならないでくださいね」
ん?おや?え?
ちょっ、【心理学】!【心理学】!
『【心理学】90≧25…‥成功』
心の底からそう言ってるなぁ……え?何?手の平返しエグ男?
……あー……もしかして、ユガが巡ると人の心も穏やかにリセットされるのか?
一回死んでってことだし、あり得ないわけじゃないよな。
「余は、お前達の神を信じぬ背徳の徒ではなかったのか?」
「何をおっしゃいます。ここにいるということは、あなた方も私達と共に苦難を乗り越えた証明。仲間、友人、家族です」
…………ふぅむ…………なるほど?
つまり、神に消されてないなら友達ってことか。
まぁ、俺たちは神の裁きを回避しただけなんだがな。
「まぁ、クリタ・ユガは幸福のユガだからね。基本、誰しもが善良な人柄になるわ。勿論、そうじゃない人もいるでしょうけど」
「……チッ、またお前らか」
おっ、この随分と無遠慮な舌打ちはお父さんじゃん。ってことは……
「あっ、おねえちゃんたち!びっくり!」
幼女も平気そうだな。流石に犬は家で休養中か。
振れるようであればもう一回【応急手当】……ああいや、もう流石に【医学】か。
俺【医学】は取ってないからなぁ……勉強すれば多分使えるようにはなるだろうが、まぁ今は無理だな。
「あの犬、ヴィハーンさんは元気ですか?足を怪我されてたでしょう。姿が見えませんが……」
いや、流石に家で
「ヴィハーンって……だぁれ?」
はぁッ!?
待て、待て待て待て待て待て!
【心理学】だ【心理学】ぅ!!
『【心理学】90≧93……失敗』
……分からない……まさか失敗したか!?
ええいクソ、こんな時に限って……!
「……え?アーシャ、さん?」
「ちょっとごめんなさい。私たち、今急ぎの用事があってね。失礼させてもらうわよ」
え?ペペロンチーノさん……うお!?速っや!?
ヤバいヤバいヤバい!人が結構多いから見失う!急げ急げ!
□
あの町から離脱したあと、ペペロンチーノからこの世界について幾つか説明を受けた。
この話も結構長くなったので、要点をまとめると。
・このユガは正しいユガではない。あまりにも早すぎる。
・だからカリがこんなに多い
・ユガを歪めることになったのは『異星の神』の使徒に唆されたのと、空想樹のせい
・ユガを早める理由は「世界を完成させる」ため
で、この世界の完成というものなのだが、なんと、世界から不要なものを全て削ぎ落とすことで完全な世界とする、ということらしい。
正直狂ってるとしか思えん。働きアリの法則って知ってるか?と問いたいところだ。
しかも削ぎ落とされたものは「最初からいなかった」ことにされるらしい。
とんだ独裁スイッチだ。まぁ、アレとは違い、マジのガチで消えるのだが。
あと、カリに殺されたり、社会的に不要とされたり、あとアルジュナ本人に不出来とされても消えるらしい。
それによって生じる様々な矛盾も、調整を加えてどうにでもするようだ。
簡単に表現すると、今回のアルジュナがやっていることは、放置してる「どうぶつの森」のデータを一年ごとに一回バックアップ取って消して、バックアップのデータから生えた雑草とか無駄に生えた竹とか嫌いな住民とかを消して、その色々と消し終わったバックアップのデータでゲームを再開する、という感じだ。
所々違うところはあるが、大体同じものだと思ってほしい。
「えーっ!そんなんチートっスよ!チート!ゲーマーの風上にも置けないヤツっス!そんなのゲームやってても全然楽しくないっスよ!」
「楽しさなんてどうでもいいのよ。ただ彼は、それを繰り返して完璧な世界を作り出したいだけ」
「あー……つまり、戦争シミュレーションの初期パラメーターだけ入力して見守るモードで、敵国が攻めてくる様子を見せたらセーブして、チートで改造して、その国が『最初からなかった』ことにしてロード。それを続けて天下統一に近づいていく……みたいな話っしょ?」
おい、なんだそれは。俺よりもわかりやすい例えを出すんじゃあないッ!!
俺はそんな物騒なジャンルはやったことないんだ!精々がシムシティなんだよこっちは!
『ゲームでの例えはともかくとして、つまり、時系列を巻き戻したり、0から再創造しているわけではないんだね』
『だとすると、『死んで生き返った』ではなく、情報として保存され、出力される際に記憶に手を加えられたり消されたりする、と
表現した方が正しいかもしれないな』
『なるほど。それなら宇宙を根本から創造するのと比べたらスケールが落ちる。インドの全神性、さらに空想樹からのリソース的支援があれば、辛うじて可能かもしれないね』
『ふむ、見えてきた。つまり………
……ヤバい、天才2人の話についていけん。専門用語が多すぎる。
……えぇと?在り方が特異点に近くて、今までとは違って過程にあって、それを始めたこと自体が剪定事しょ
『ええい!話が・長いわー!!説明するならするで別にいいが、レポートで簡潔に纏めろ後で暇な時に読む!今重要なのは、我々がアレに巻き込まれれば確実に死ぬということだろうが!』
よし!ナイス所長!
そのレポート後で俺にも見せてくださいね!
『そしてペペロンチーノ!本来ならボーダーで厳重監禁するべき立場のところを、あえて外での行動を許しているのだ!もっと有益な情報を寄越さんか!』
「有益な情報、ねぇ。そんな大作業をしている関係上、アルジュナ本人はあまり動けないってところかしら。あの最後の宝具発動の溜めだけじゃなくて、普段も他のサーヴァントのように活発には活動していないはずよ」
なるほど、だからあの神将どもがいるのか。
よしよし、俺も段々と見えてきたぞ……
『それと、あの聖獣については?』
「あれは自然発生する悪魔カリに対抗するために彼が生み出した手駒。原生の守護獣。このユガではカリはほとんど出ないから、本来は普通の動物みたいにそこらをうろうろしてるだけのものだと思うけど……」
……ん?なんか今すごい言い回しに不自然さを感じたな。
『本来は』ってことは、つまり……
「聖獣!!」
居ますよねすぐそばに!
「私達、やっぱり彼に不要と判断されている見たいね。つまりカリと同等の扱いよ、見つかれば襲われる。当たり前の話よね」
呑気言ってる場合か!!
ええい!やってやるぞオラァ!!
ラスプーチン引けた?(←引けなかった人)
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