…………うぅん……これは、正直なところかなり拙いな。
早速カルナさんが抜けた影響が如実に出てる。今の俺らじゃあ攻撃の手数と範囲が貧弱すぎて、立香ちゃんの方に流れて行く量が多くなってしまう。
ってかそう考えるとどんだけヤバかったんだよあの人……やっぱりインドはヤバいわ。
まぁ、だがそんな問題があるからと言って俺が何かできると言う訳でもなし。一応グレネードがあるにはあるが、二発限定だから慎重に使いたい。
『【Buster】……自動成功。【ダメージ】4000d3……4101。【クリティカル】50≧20……成功。クラス相性によりダメージ1.5倍』
『【幸運】80≧89……失敗』
っと、これで全滅かな?……えーと……うん、周りに獣の影は一つも見えない。完全に全滅だな。
で、立香ちゃんは……無事。味方も……無事と。OKOK。上々上々。とりあえず新たな問題の発生はナシ。
いやぁ良かった。もうこの色々とあり過ぎな状況で新たな問題が出てこられたら流石に死ぬ。
……無いよな?大丈夫だよな?一応念には念を入れて周囲の索敵とかやっとくか?
「おーい!一栗さーん!」
む、立香ちゃんの声……だが別に切羽詰まった感じでは無いな。
……うん、見た感じも何かヤバいことがあったって訳では無さそう。
「何かありましたか?」
「いや、今からぺぺさんと協力することになったから、大丈夫かなって」
え、いやそんな確認とか取らなくても別に…………あー……いや、これは、アレですね。初対面の時にいきなり殴りかかったヤツが拙かった感じですね。
やらかしたなぁ……ってかそうじゃん。俺に関する騒動もあったし、今の俺って皆からの結構信頼度低いんじゃん。
うぅん……これを早いうちになんとかせんと、後になって面倒になる可能性が出てくるなぁ……。これは好感度を稼ぐことが急務になってくるか……まぁいざとなったら【信用】振るが。
「あぁ、はい。別に全然大丈夫ですよ。あの時はちょっと人違いだったってだけですので」
「うん!良かった良かった!」
うっ、屈託のない笑顔が眩しい……
…………でもこの笑顔があんな感じに曇るんだよなぁ……何だろう、『曇らせたい』って言ってる人の気持ちがちょっと理解できたかもしれん。
「さて!彼も了承してくれたことだし、それじゃあ具体的にどう彼をぶっ倒すかっていう話だけど!正直今のところ全然わかんないのよねー!アハハハハハハ!!」
うぅん、詰んでる癖にテンション馬鹿高いなこの人。
まぁ気持ちは分からんでもない。人間どうしようもない時はテンションが高くなる。自暴自棄とも言う。
「笑い事ではない。余の宝具も簡単に弾かれた。理屈を理解した今ならわかるが、アレは技術でも魔術でもない単純な存在強度によるもの。ただヤツは単純に『そういうもの』なのだ」
「同感 文字通り 住んでる次元 違う 此方の 攻撃 いずれも 無効果」
「存在そのものがチート臭い!じゃあどうするんスか!?」
「正直、カルナちゃんがいなくなっちゃったから戦力は逃げたときより激減してるわね。ガネーシャちゃんがいくら頑張っても彼の埋め合わせにはならないでしょ。一人だけ未知数なのが居るけど」
俺の方を見ながら言うな、と言いたいところだが事実として未知数だから何にも言えねぇ。
だって神格召喚なんて形勢逆転どころかボードごとひっくり返す、ルール無用のぶっ壊れ技使えるしな、俺。その後どうなるかはマジで知らないけど。
とりあえず何かしら反応しといて、後は方向性の誘導だけしとくか。これ以上突っ込まれて更に信頼失うとかは避けたい。
「それに関しては自分でも自分の底がわからないので何とも言えませんが、とりあえずこれ以上は確実に何かしらの代償が発生します。新しい戦力を補充する方向で行った方が良いでしょう」
『確かに、他にもはぐれサーヴァントがいないとも限らない。上手く見つけられれば最も手っ取り早い戦力補強になる』
『ガネーシャのような存在が他にいるのなら、町にいる誰かが情報を持っているかもしれないね。もう一度、町に戻って話を聞いてみることにしようじゃないか』
「さんせーい!それじゃ、早速出発しましょーう!旅は道連れ、善は急げってヤツよね、キャーーー!!ワクワクしちゃーーーう!!!」
うわぁ、うるせぇ……まぁ、だけど下手に暗いよりかはこっちの方がまだ良
「大丈夫、道中の小粋なトークは任せて?退屈なんてさせないから!」
うぅんヤバい、不安すぎる。
□
「まぁ、俺はそれを遠くから見てただけなんですけどね」
「アラー!損しちゃってるわねアナタ!もっとグイグイ行けばクラスの人気者だったのに!」
「いや、それ違う意味での人気者ですよね?」
ヤバい。楽しい。会話が超楽しい。この人トークスキルが尋常じゃない。
なんでもない会話から話題を見出すのが的確すぎる。「髪切った?」から無限の可能性に繋げるあの人並みにスゴい。
だけど、なんか……
「………………」
マシュちゃんがすっごい思い詰めてる。
心理学とか振らないでもわかる。絶対にすっごい思い詰めてる。
ふぅむ、このままでは流石に可哀想だし、それのせいで戦闘に支障をきたしたら大変だ。丁度ぺぺさんの話の相手も哪吒さんに移ったし、信頼度稼ぎついでに話を聞いてみるか。
「あの、マシュさん?」
「えっ、あっ、はい!?」
「大丈夫ですか?何か思い詰めている様子でしたが……」
「い、いえ!なんでもありません!」
まぁ、そうなるわな。そう来るのは分かっていた。
だが、この数々のロールプレイで無駄にトークスキルが上がったこの俺の圧倒的話術にかかれば、その程度の拒絶は容易くいける。
……いける、よな?うん、いけるはず。
「いえ、貴女は今、非常に深刻な悩みを抱えています。無理にでも話してください」
「い、いえ、私は………………え?『無理にでも話す』……?」
「はい。このような状況ではなければ無理に話さなくても結構でしたが、今の我々は正真正銘、人類最後の希望です。下手な悩みを抱えていたせいで戦いに集中できず、そのまま……なんてことになっては遅いですからね。さっさと悩みの種は摘むに限ります。貴女も、立香さんの迷惑にはなりたくないでしょう?……あぁ、自分には話しずらいというのであれば、立香さんに」
さて、どうだ……?これでもダメなら【信用】か【言いくるめ】で行くが。
「そう、ですね……もうすぐ到着ですので、また後で、ということでお願いしてもいいですか?」
「構いませんよ。では、夜営のときにでも」
よし、OK。この調子でドンドン信頼を勝ち取っていこう。
信頼があって悪いことなんて早々無いからな。
□
……いや、吃驚した。まさか町長が知ってるとは思わなかった。でも居はするんだな、カリ相手に戦う人達。
こんな神様絶対主義みたいな世界でそんなことがよく出来るな、とか聞いた時は思ったが、町長が言っていた通り、多分解釈の仕方が違うんだろう。
『神様からの試練だから耐えましょう』派と『神様からの試練だから打ち勝ちましょう』派。やっぱり宗教ってどこもそう言う解釈違いで分裂していくモンなのかね。日本で言うと天台宗と浄土宗とか、ヨーロッパで言うとカトリックとプロテスタントとか。
で、今はまたこの洞窟で夜営中。俺は自分から買って出て、洞窟外の警戒をしている。
カルナさんが今までやっていてくれたが、これからは交代制でするってことになった。
……しかし、こうやっていると、サーヴァントの体って便利なんだなとつくづく思う。寝なくても眠くならない。
だが、それと同時にこんな考えも浮かんできてしまう。『これから一体、俺はどうなってしまうのだろうか』と。
これが終わったらちゃんと千葉県■■■市■■■在住、■■■高校一年■組、野球部所属の一栗雄太に戻れるのだろうか。それとも一生この人間の似姿をした怪物の姿で、ずっとこのカルデアに縛り付けられるのだろうか。
……まぁ、別に戻れなかったとしても、それで世界が救えるのならば安いモンだし、全然構わないのだが。
「……あの、一栗さん、今よろしいですか?」
「ん、ああ。すみません。ちょっと考え事を」
マシュちゃんが俺の隣に座る。
流石に夜営中は休憩時間ということで、装甲を外して、外し…………ん?なんか露出多くね?
えぇ………?大丈夫?寒くないのソレ…………?
いや、えぇ?何をどう考えたらそうなったんだ?機動性か?機動性重視なのか?
いや、だとしたら何故インナーに機動性を?って話になる。これ絶対設計者の方が何かしらの意図をもってこういう感じにしたよな?
まぁ俺としてはまぁ…………うん…………良いけど良くないよね、うん。
「えーと、ですね……その……私は、今…………」
「落ち着いて、すぐに言葉にしようとする必要はありません。時間はまだありますし、今のところは敵影も無い」
心って難しいからね。言葉選びは慎重にしないと。
下手に喋っちゃうと上手いこと伝えられなくて逆にストレスが溜まるし、相手としても『?』ってなる。
ちなみにこれ実体験ね。
「はい、ありがとうございます…………そう、ですね………私は今、迷ってるの、だと思います」
「迷っている?」
「はい…………その、クリプターの方……々を、敵として見れない……と言えば、良いのでしょうか……ぺぺさんは、『選択の余地がなかった』とも仰られていました。……それを聞いてから、どうしても………」
成程ね。なんかもう大体わかった気がする。
クリプターって話を聞く限りだと、元々はカルデアにいたマスター候補。だったらマシュちゃんに面識があっても全然おかしくはない、というかそっちの方が自然だろう。
つまるところ『味方だった彼ら』を知っているわけだ。
で、今回ぺぺさんとの接触により、そんな人達はやむを得ない事情のせいで敵に回ってしまっており、別に戦いたくて戦っているわけではないと知ってしまった、と。
……まぁ、こんなところか。
「成程……」
「一栗さん、私は、どうすればいいのでしょうか………」
……うん、まぁ、気持ちはちょっとだけ分かる。
小学校の頃同じクラブチームだった奴が、中学に上がって学区のせいで別の学校に行ってしまって、部活で敵として出てくるってのと同じ感じだよな。いや、単なるスポーツと真っ向からの殺し合いじゃあ全然重みが違うんだが。
まぁ、でもそんな重みのせいでこういう迷いが生まれちゃったんだろうなぁ……うーん……
どうするか。【言いくるめ】振っといた方が良いか?いや、でもなぁ……やっぱりリスクがアレだし、この状況ならまだ振るほどでは……ない、ハズ。
いや、この世界現実だからTRPGと同じように「何かするならダイス振れ」じゃないのが本当にいやらしい。リスクが怖すぎて脳死でダイス振れない。
ハァ…………うーん……いや、うーん、よし、これで行こう。
「そうですね……一番としては『割り切る』事ですが……まぁ、そういう話では無いですよね。少し、着いてきてください」
「え、あ、はい」
少しばかり持ち場を離れることにはなるが、まぁ大丈夫だろう。
えーと、あの人は……いた。
「アラ、どうしたのかしら?マシュちゃんに……一栗くん?だったかしら?」
「おや、まだ起きていられましたか。我々はサーヴァントなので良いですが、貴女は人間。ちゃんと寝た方が良いですよ」
「そこにガチ寝する神霊サーヴァントがいる気がするんだけど……」
「まぁ、彼女はそういう性質ですので」
今気づいたけどマジで寝てるじゃんコイツ。しかもどっから出したその像。
さっきまで持ってなかったよな?
「ところでぺぺさん、一つお願いがあるのですが……」
「ん?どうしたのかしら?」
「いえ、少しだけマシュさんとお話をしていただいてよろしいですか?彼女、あなた方の存在について思い悩んでいるようでして……」
「アラ、気にさせちゃったかしら。ま、丁度良い機会ね。私も彼女と話したいことがあったし」
「では、そういうわけで、マシュさん」
「え、あっ、はい!」
さて、じゃあ俺はさっさと夜番に……
「あ、いいわよ、私がそっちに行くから。貴方も一緒にお話ししましょう?」
「……まぁ、大丈夫ですよ」
「決まりね。じゃあ行くわよ…………貴方にも、聞きたいことがあるし、ね」
なっ………う、うぅん…………どうなるんだ?コレ……
←年始早々色々ありすぎて書く余裕が無かった者
「ORT君と所長と邪神を殴り合いさせようと思ったら邪神が他二人の上位互換すぎて無理だったでござる」
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