月姫Rにあった黒鍵の説明のように存分に宇宙ネコになってください
“脅すため威嚇射撃する”
消音器によって大部分が軽減された発砲音が路地裏に響く。硝煙が立ち上り、空薬莢が鈴のように軽やかな音を立てて地面を転がる。銃弾は威嚇射撃として最大効果を出し、目の前の大人びた少年の頬を薄く裂いた。
当てる気はなかった。顔の横を撃つつもりだったが思っていたよりも上手くいきすぎた。
少年は撃たれたはずなのに、平静を保ったままだ。まるで当たらないと言うことが予めわかっていたみたいに。動揺一つ見せない姿が、あまりにも泰然としていて何故か腹立たしい。
「あなたは爆弾事件にどのように関係しているのですか。氏名出身、犯罪歴、それとリコリスを知っている理由、全て話してもらいます。さもないと撃ちますよ」
流石の少年もこのタイミングで“もう既に撃ってるじゃないか”と茶化すわけにはいかない。そうすれば、今度の照準は額のど真ん中だ。確実に命を奪う箇所を打ち抜きに来るだろう。
謎の少年こと七夜黄理は困った表情で腰に手を当てた。もし、彼女が殺しにかかってきた場合、うっかり殺し返してしまう恐れがある。それはなんというか、やりにくいというか気分が悪い。この少女とは確かに初対面だが、どうも顔がかつて過去に置き去りにしてきた怖がりの妹に似通っている。
魔に対する感受性が鋭すぎるあまり、この世の何ものも恐れていた小さな妹。
性格は思い切り真逆だが。顔を見せ合っていた時点で暗殺者としての七夜黄理には、彼女を殺すという選択肢は無くなっていた。
「同じDAのエージェントにご挨拶だね、まったく」
「DAのエージェント?嘘をつかないでください。リコリスは女性だけ、まさか貴方は自分が女だとでも?」
彼はどこからどう見ても男性だ。女性に見間違えるなんてありえない。
「勘弁してくれ。生憎と生まれたときから男で通してる。此処に来て命ほしさに性別を騙るほど情けない真似はしないさ」
そこまで言って少年は立ち位置を少しだけ変えた。銃の照準を頭部に固定する。もし不審な動きをしたら、即座に射殺するために。
「少女だけで構成された実働部隊があるんだ。ならその逆も然り……そうは考えないか?」
「……正式名称は?」
「
彼の言い様は、どこか他人事めいていて組織の一員らしくない。話の真偽はこの場で証明不能、信じるに値するか。そこまで考えてから私はリリベルという単語が何を表しているのかを理解した。
「リリ、ベル……スズランですね?」
「毒がある花ってところまでリコリスと同じだね」
少年は軽快に話しかけてくるが、こちらは銃を構えたまま油断無く間合いを保つ。
「DAにそんな別組織があるなんて講義でも聞いたことがありません」
「サードリコリスにはそこまでの情報開示されてないんじゃない?」
「銃を向けられてることを忘れているのですか、あなた?」
苛立ちを通り越した感情を込めて脅しを行う。冷静に応対しようとしたが、やっぱりこのやたらと大人びた少年にからかわれるのはなんだか我慢できない。この少年の言動や態度から総括して、年齢不相応というのが印象に残る。それ以上に腹立たしいというのが先に来ているわけだが。
「もしそれが本当だとして、京都支部に連絡を取れば貴方の素性はきちんと確認を取れるのですね?」
「リリベルを知っている上の人間ならね。まぁ、今回の予知爆破事件の解決のために俺が放り込まれたわけだが、たぶんいい顔されないな。DA上層部の命令とは言え、京都支部の顔を潰しているわけだしな」
「予知?爆破事件……どういうことでしょうか?」
「あれ、知らなかったのかい?参ったな……今回の事件の概要、サードまでは情報を開示されてなかったのかな」
「知ってることを全部喋りなさい」
ただの一般人ではないと思ってはいた。それでも、私が考えていた以上の情報が得られる。もしかすると事件のかなり深い内情まで知ることができるのではないか。一介のサードリコリスに過ぎない自分には重すぎる情報。でも、それを手に事件解決に貢献できれば昇格だって可能性があるかもしれない。
「話が長くなる。せめて路地裏じゃなくてどこか落ち着けるところに行くってのは?」
彼はこの場を離れたいようだが、それに私が応じるわけがない。むしろ人目に付くところに行けば、銃を向けることができない分、非力な私に不利になる。爆発を間近で受けても無傷で平然する異常な少年と力比べをして勝てると思うほど自分の腕力を過信してはいない。
「此処で問題ありません。早く情報を話してもらいます」
「君、頭が固いとか言われない?」
頭に来た、彼は本当に私の神経を逆なでしてくる。
「“君”ではありません。……ずっと言おうと思っていましたが子供扱いは止めてください。不愉快です!」
「──えっと、うんごめん。それで君の名前は……いや、名乗るならこっちが先の方が良いか。ファーストリリベル、“七夜黄理”だ」
「情報開示もされていないサードリコリス、“井ノ上たきな”です」
「……もしかして怒ってる?」
「怒っていません。そう見えるのでしたら、眼鏡をかけることを推奨します」
眉も口元もひくついて自分が不機嫌であることが自覚できる。ただ、無表情ながら困ったように身じろぎしている彼を見て、少し溜飲が下がった。彼の持っている情報、あと名前を聞くことができて、ようやく主導権を握れた気がしてきた。
あぁでも、呼び方はどうすべきか、七夜と粗雑に呼び捨てにしようか。
……いいや、ずっと子供扱いされた意趣返しをしよう。
「では、説明をしてください。早急にお願いしますね、“黄理くん”?」
「──ああ、よろしく井ノ上ちゃ」
「ちゃん付けしたら撃ちますから」
「……あー、承りました、井ノ上さん?」
カチン。
呼び方に特別拘りがあるわけではない。上司も、同僚も名前だったり名字だったりと好きなように呼んでもらっている。ただ、彼に名字呼びされるのは、何故か妙にムカムカとする。
銃を下ろし、彼を正面から睨み付ける。
「たきな……たきなです」
名前を呼ぶよう七夜黄理へ要求する。態度が偉そうなのはこの際目をつぶる。
でもせめて、呼び方くらいは対等であるようにしようと呼称を明確に指示する。
「えっと……?」
「名前、聞いてなかったんですか?私のことは“たきな”と呼ぶように、いいですね。ちゃんも、さんも不要です。また適当にあしらうような発言もしないでもらいます。大人ぶって、また私を子供扱いしたら許しませんから。分かりましたね、“黄理くん”?」
「あぁ、わかった。じゃあ少し長い説明になるけど、よろしく……たきな」
名前を呼ばれ、真っ直ぐ目線が合わさったことでようやく彼と同じ目線まで立てた気がした。それは不思議と、私自身も分からないことだが妙に浮き足立ってしまいそうになる。それを堪えつつ、私はリリベルというエージェントの少年、七夜黄理と路地裏で誰の目にもとまらぬ秘密の話し合いを始めた。
路地裏の外壁に背中を預けもたれかかった黄理くんはリコリスにとって常識レベルの内容から説明を始めた。
「今回の爆弾事件……詳しく説明しようとすると、まずはラジアータに関する説明から始める必要がある。ラジアータについてはどれくらい知っている?」
「バカにしないでください。サードリコリスといってもラジアータについては当然教えてもらっています。日本全てのインフラ、電子通信に対して最優先権を持つ治安維持情報隠蔽工作AI。リコリスの職務・存在を隠蔽している基幹技術を知らない人なんていませんよ」
「……なら、ラジアータの他にもう一つ……リコリスやリリベルの存在を隠蔽するプロジェクトが存在していたってことは知っている?」
初耳だ、ラジアータの他にもそんな計画があったなんて講義で聞いたこともない。彼が知ってることを、私は知らない。それがたまらなく不愉快になる。もちろん、ファーストとサードで開示される情報に差異があるのは分かってる。ファーストのリコリスなら、特にこんなことを思いはしない。
ただ、目の前の少年と自分にそういった差があることが嫌で仕方ない。
「っぐ、……知り、ません」
彼が無表情で助かった、もし笑いながら言われていたなら発砲していたところだ。しかし、ラジアータの他にもう一つ、似たような計画があったというのはかなり気になる。
「そんな悔しそうにしなくても。大体、上層部の判断で不採用になった代物だ。知らなくても無理はないし、知っていても役に立つ知識ではない、はずだったんだけどね」
「ラジアータと同様の技術ということですか?」
「隠蔽工作という意味合いでは。……ただ、それを行う手順が少し異なっていた。ラジアータはSNS等の電子通信を監視・改竄することに特化している。それは事件が終わった後でリコリスやリリベルたちの痕跡の抹消に対応するということだ」
ラジアータの特性など既に知ってはいるが、前提情報の確認は大事なモノだと自分に言い聞かせて彼の説明に耳を傾けた。肝心なのは、これからなのだと黄理くんは咳払いをして話を続ける。
「もう一つの計画はそれの先を行くことを目指していた。後手ではなく先手。事前に全ての事件事案に対し、高精度の状況予測を立てることで解決・隠蔽のプロセスを事件発生前に行うことが可能、とされたシステムだった」
「ちょっと待ってください。その話はおかしいです。その説明ではもう一つの計画というモノはラジアータよりも優秀じゃないですか。だったら何でその計画は不採用となり、ラジアータが採用されたんですか?」
彼は少し思い出すように腕を組んで、事の経緯を順を追って語る。真面目な表情で細められた目は僅かに蒼い眼光が煌めいて綺麗だなと、視線が寄りそうになるが目を背けて意識を話の内容に集中させた。
「最初はラジアータを押し退けてそのシステムが運用されていたらしい。ただ、使い始めるといくつかの欠陥があることが判明した。高度な予測システムには正確な情報が多数必要だ。でもテロリストの情報を全て集めることはできないし、現場の状況だって刻一刻と変わっていく。そういう変わったり更新されていく情報を常に適切に処理し、コンピューターに打ち込み続けられるほどDAの情報解析班は人材豊富じゃなかった」
「理解しかねますね。確かに運用していく上で取り扱いが困難なのは理解しました。でもそれなら、ラジアータと並行して運用すればいいだけの話では?ラジアータがSNSから情報を集め、もう一つのシステムが事件の予測を行えば欠陥は埋められるはずです」
「それも検討されたらしいけど、上層部はそれを却下した。理由は大きく分けて二つ、隠蔽工作手段を一本化して管理しやすくしたかった。それともう一つは、最悪の欠陥が見つかったからだ」
最悪の欠陥、重々しく語られた言葉は、あまりにも不吉な気配を滲ませていた。
「それは、一体……?」
「テロリストには、詳細な個々人の技能に関する情報、銃の命中率とか訓練の評価情報なんてないだろ。でも、独立組織とは言え国家に属しているDAにはそれが存在する。あぁ、端的に言おうか。もしシステムがハッキングされ、DAのデータを用いてテロの成功予測をされた場合、阻止不可能なテロ活動が発生するという問題提起がされたらしい。もう一つのシステムは未来予測に機能の大半を使っているから、ハッキングされる可能性はラジアータよりも高い。つまり十分に起こりうる未来だった」
確かに納得できる論法だ。
テロリストには個人の詳細なデータ管理ノウハウはない。けれど、DAはリコリスたちのデータの集積知で以て組織を運営している。皮肉なことに治安維持のためのシステムが、最も治安維持の脅威になるなんて。
「絶対に阻止できないテロ……」
「それでも同時運用すべきと言う声はあったけど、上層部は危険性の高いシステムの運用を認めず、電子情報の隠蔽を主に行うラジアータが正式採用となった。ラジアータには高度なハッキング対策がされていたことも採用の後押しになったらしいけどね」
「じゃあ、使われなくなったシステムのその後は?」
「開発は凍結し、主任研究者が謎の失踪を遂げた。だが今になって、その研究者は自分を“ボマー”と称して傭兵たちを集め出したって情報が手に入った。その目撃情報と同時期に未来予測システムを使ったと思われる爆弾事件が京都で頻発するようになった。……今のところボマーと名乗る男が不採用になったシステムを使いDAを攻撃しているというのが上層部の見解だ」
爆弾魔のネーミングセンスに思わず呆れてしまう。
「爆弾魔の名称がボマー、
そこまで言って私が先ほどまで彼に銃を向けていたことを思い出す。一応、彼の言うことを信じるなら彼もリリベルという同じくDAに所属する人間ということになる。そんな彼に私は一発、撃ってしまっている。……いや、あれはあくまで威嚇射撃、当ててないから大丈夫。
黄理くんもそこには触れずに会話の続行を選んだ。
いや、彼の顔からして何か言いたそうだが、知らんぷりをする。
「……そこまではなんとも。システムを不採用にされた腹いせか……それとも研究を凍結されたことを恨んでの犯行か……。どっちに転んでも──」
そう、どちらにしても。
「くだらないですね」
「くだらないだろ」
そういえば、その不採用になったシステムにも特有の名称はあるのだろうか。
此処まで説明を聞くだけに集中しすぎていた所為で、最初に聞くべきことを忘れていた。
「その不採用になったシステムの名称は?」
「複合情報処理演算による状況予測システム、確か正式な名称を“ラプラス”──」
黄理くんがシステムについての説明を終えたところで、一旦会話が途切れる。いや、私が情報を精査する猶予をくれているのかもしれない。情報の量にしても、内容の重要度にしても、全体的に価値が重すぎる。
ラジアータについて知っていたことから、七夜黄理という人間がDAに属していることは間違いない。それに無傷とは言え駅で爆弾の被害を受けている場面に出くわしている。リリベルという存在の話、彼が爆弾事件の解決に動いていること、彼自身は気にくわないがとにかく信じてみよう。
「どうやら、本当に爆弾事件の犯人とは無関係のようですね」
「まだ疑っていたんだ。そんな怪しかった?」
「至近で爆風を受けて、平然と現場から出ていく人間くらいには怪しかったです」
“あと、その蒼黒の瞳も妖しかったです”。
続けて言おうとした言葉は、喉元で止まり口にまで上がってこない。何故なのか、その理由を考えようとしてインカムの音声をずっとミュートにしっぱなしだと思い出した。参った、心配をかけてしまったかもしれない。
インカムのスイッチに触れ、ミュートを解く。長らく通信途絶にしていたので、どんなお小言を受けるかと気分が落ち込むが、新たな情報を得たことを報告してイーブンに持ち込むしかない。
「こちら、たきな。尾行対象と接触し、対象がDAに所属していることが判明。彼を尋問し今回の爆弾事件にまつわる情報も幾つか入手しました」
『あ、ザザザザがった。こら、たきな!いきザザザザ独で尾行するってザザザザザザザザ』
インカムの通信がひどい雑音だらけだ。まともに私の報告が聞こえているのかなと心配になる。距離が離れすぎたせいで電波の調子が悪いのだろうか。DAの正式配備がなんという体たらくだとため息が出る。インカム越しの声はおそらく、バスに乗るとき横にいたサードリコリスの人だろう。
ノイズだらけのインカムともう少し格闘しようとしていたところ、黄理くんが路地裏の奥へ歩いて行こうとするのが視界に入った。
「待ってください、何処に行くんですか」
「何処って、此処じゃないところかな。流石に長居し過ぎた、ぼちぼち動いて犯人を探しに行くとするよ。君も仲間のところへ戻るといい。単独行動の件は、あとで東京支部から京都支部の方に説明してもらえるようかけあってもらうさ。変に誤解させたこちらの落ち度でもあるし、君は危なっかしくてほっとけないから」
黄理くんは東京支部から来ていたなんて新しい情報が出てきた。それと同時に他の疑問が降って湧いてくる。リリベルもリコリス同様に東京支部は憧れの場所なのだろうか?東京ではリコリスとリリベルは協力して治安維持を行っているのか?そもそも爆弾魔の所在に検討があるというのか?
いや、それよりも……。
危なっかしいなんて、また子供扱いして。いい加減、学習して欲しい。私を子供扱いしないでください、と声を荒げそうになったときインカムからノイズ混じりの通信が入ってくる。
『ザザザザたきな。今ザザザザ声って、ザザザ通ザザザかな~ザザザザザザらい?』
もうインカムは合流してからでないと使い物にならないらしい。集中を阻害する雑音を垂れ流すだけ線の切れたイヤホンにも劣る。
インカムの音声を切って、彼に早歩きで近づいて通せんぼするように彼の眼前に立つ。
「えっと、まだ何か?」
「まだ、聞きたいことがあるんです。だから勝手にいなくなられては困ります」
「とは言っても、知ってることはあらかた話したし。これ以上は逆さにしても何にも出てこないよ」
このままでは彼が私の目の届かないところに行ってしまう。このまま彼と別れれば黄理くんと関わることもなく事件はいつの間にか終わってしまうような気がした。なんとなく、それが嫌だった。
「聞きたいことはあります。散々、人のことを子供扱いしましたが、私たち同い年くらいでしょう。黄理くんは今、何歳なんですか」
「それ、爆弾魔と関係ない情報な気が──」
「何歳なんですか」
彼の言葉を無視して、もう一度同じ問いを行う。黄理くんは観念したように息を吐いた。
「七歳になる、来年で八かな。ところでたきなの方は今年で幾つになるんだ」
しまった、聞かなければ良かった。同い年だと思っていたが私の方が年下なんて。
「っ、う、……六、歳です。でも一歳しか違いませんから!それにDAに入った時期が違えば、私の方が先輩ってことになります。私の識別番号はLC3023。これよりも数字が大きかったら、黄理くんの方が後輩なんですよ!」
「──すまない、LBの2000番台なんだ、俺」
墓穴を掘った。掘りすぎてしまった。やれやれ、と少年が肩をすくめているのが非常に絵になる。腹が立つほど。こういう細かな動作で彼が年相応ではない面が見えてくる。それは相対的に自分がまだ未成熟であることを突きつけられているようだ。
「そろそろ質問も打ち止めだ。先を急いでる、あまり一カ所に立ち止まっていてもお互い、得るものは少ないだろ。ここらで別行動といこう」
「えっ?あっぁ、そう、ですか……」
彼は私の横を通り過ぎて、そのまま路地裏の奥へ向かう。このまま彼は都市の闇に潜み爆弾事件を追いかけるのだろう。対して、私はどうなる?仲間のもとへ戻れば、単独行動の件でお叱りを受けるか、情報収集が成功したことで罰が相殺されるか。
それから爆弾事件が解決するまで爆弾の捜索作業に戻され、事件が終わればサードリコリスとしてまた危険人物の排除で日々は過ぎ去っていく。リリベルの少年、七夜黄理とは別の場所で日々を過ごす。
私は京都支部のリコリスで、東京支部から来たという彼とは生きている場所が違う。
だから、彼と離れることは……単に元の日常に戻るだけだ。
別に問題はない。本当にない。
彼は振り返りもせず闇に溶け込み、私とは無関係の所で生きていく。
…………。
立ち去っていく彼を見て、私は────
“合流を優先する”
“彼を追いかける”