Lycoris A moon eclipse   作:悪事

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 短いです。



Surprise box

 

 

“戦術武装鞄の機能を使う”

 

 

 

 

 

 最新の電子制御で走る無人車は鎖から解き放たれた猟犬のように私たちへ迫る。

 

 このままでは追いつかれて爆弾の餌食だ。

 

 

 立体駐車場まで、まだまだ遠い。途中で追いつかれる確率の方が上。

 

 

 となると、どこかに逃げるか。いいや、敵は高精度な未来予測を行う爆弾魔。ならば、逃げた先に爆弾があるなんてことになりかねない。回り道をしている猶予は無い以上、車の爆発をやり過ごしながら立体駐車場へ向かう。

 

 

 そのため必要となる道具は、いま私の背中にある!

 

 

 リコリスの技術開発部門が太鼓判を押す戦術武装鞄。年々、多数の改造や機能の撤廃を繰り返し、ようやく全国のリコリス標準装備として支給されたこの鞄には防弾エアバッグ、という特殊機能がある。

 

 弾丸さえ防ぐエアバッグならば、爆風で飛来する車の破片、残骸を防御できる。

 

逃げ切れないというのなら、どうにかして爆弾車の攻撃をやり過ごす。

 

 

 だが、車が直接、突っ込んできてから爆発されたら、さすがに鞄を支えきれない。というか、支えるなんてことになったら、重機並みの膂力のある人間しか生き残れないだろう。どうにか、車の動きを止めなくてはいけない。

 

 

 そのためには狙うべきなのは一点、タイヤ。

 

 

 電子制御されている分、人間の乗っている複雑で有機的な動きではなくパターン化された無機質の走行動作。タイヤを撃ち抜くタイミングは容易に捉えられる。

 

振り返って立ち止まり照準を合わせ発砲。

 

銃弾は正確にタイヤを撃ち抜いて、車が横滑りでこっちにやってくる。

 

 

 やった、これで狙い通り。

 

「鞄のエアバッグを使って爆風を防ぎます!」

 

「それより走れ、車から距離をもっと取らないと!」

 

 

 黄理くんが走りながら、大声で距離を取るよう言ってくるが問題ない。

 

 爆弾の殺傷能力は爆炎や爆風ではない。一緒に飛んでくる破片等の不純物の方が危険なのだ。それさえ防御できていれば致命傷は防げる。横転した車がガードレールにぶつかって停止する。立体駐車場から見ているとすれば、このタイミングで起爆が来る。

 

 

 私はバッグを前に突きだして隠し紐を引いた。車が爆発、爆炎が大通りをなめるように蹂躙する。鞄に仕込まれた火薬が爆ぜて白い風船状のエアバッグが膨張。即席の壁になる。だけど、破片さえ回避できたなら。

 

 

「相手も元はDAの人間だ!こっちの装備性能なんて当然、勘定に入ってる!」

 

 あっ、頭に血が上ってそこまで考えていなかった。

 

 

 

 展開された風船状のエアバッグを鋭利な何かが貫通する。そのまま多数の針、いいや鋲のような物体が私の全身を串刺しにする。フレシェット弾のように車の中にエアバッグを貫通させるための仕掛けを施していた?

 

 そうだ、相手は正確な情報を元手に未来を予測解析する爆弾魔。

 装備性能という人間の手では上昇も減少もしない絶対の法則。

これだけは私の手ではどうにもならない、決まり切った事象。

 

 顔の見えない爆弾魔の悪意にそまった表情が脳裏に浮かぶ。

 

 

 全身には、無数の棘が突き刺さっている。けど、悲鳴を上げる余力も、苦痛を感じるための機能も既に抜け落ちた。ああなんて失態、浅慮の代償はこうして致命の代価を要求する。相手の予測を超えるなら、相手に予想しようのない事柄で勝負をするべきだったのに。

 

 

 出血死なんて悠長な時間は残されていない。

 

全身に突き立った矢により、体が生を諦めるのには十分だ。

 

寒い、寒い寒い。

 

 

 死ぬことは恐ろしくない、けどそれよりも。

 

 あんな爆弾魔に負けることの方が悔しくてたまらない。

 

 

 そんな後悔を抱え、私の生命線はここで途切れていった。

 

 

 

 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『教えて!喫茶リコリコ』

 

 

 井ノ上たきなは、いつものカウンター上で、ひたすらに死んだ目をして風船を膨らませ続けている。これでもか、とリコリコを風船で埋め尽くす勢いで風船に息を吹き込み、カウンターで呆然としていた。

 

「いらっしゃいませ、バッドエンド対策を行う喫茶リコリコのコーナーです。今回は特に深く考えず手元にあった装備を使ってしまったせいでバッドエンドを迎えました。お疲れ様です、では次のコーナーで」

 

 

 

「ちょぉっと待たぁぁぁ!!」

 

「なんですか千束、もうバッドエンドの解説はしましたよ」

 

「おおう、リアクションが薄味。どったのたきな~、テンション低いぞぉ?」

 

 紺のリコリスの制服に身を包んだたきなは、赤い制服に身を包んだ錦木千束に淡泊な反応しか示さない。それもそのはず、今回のバッドエンドは彼女にとって、大分我慢できなかった代物ゆえに。

 

「忘れてください、あの時は鞄を使えばなんとかなると思っていたんです。相手がDAの情報知っていて、正確な未来予想を立てる相手だってことさえ覚えていれば!」

 

「──たきながガチへこみしているから今日のとこは私が今回の死因の解説に入るよ」

 

 錦木千束が説明をしようとするところ、リスの着ぐるみが横から疑問を入れてくる。

 

「というか、今回の死因って、鞄を無理に使おうとしたのがそもそもの問題だろ?」

 

「ふぐっぅ!?」

 

 ギクッとたきなが痙攣する。特殊な装備を気になる彼の前で使ってみたかった、それだけではないし彼女なりの合理性があってのことだが裏目に出ては羞恥で顔も出せないらしい。千束は乙女の情けと言うことでそこには触れずに解説を進行させた。

 

「あぁ、まぁ今回は鞄の出番じゃなかったってだけだね。あそこで使っても爆弾魔にカタログスペックは読まれているわけだし効果は薄いかぁ」

 

「じゃあ、鞄は完全に予備弾倉を取り出すためにしか使えないのか?」

 

「おやぁ、それはどうかな?」

 

「千束。お前自分で、爆弾魔に鞄の性能読まれてるから使えないって言っていただろ?」

 

「早合点はいけない。大切なのは使い方、盾にすることを目的としたものを、それ以外の手段で使う機会がこの先、きちんとあるんだぜ!なので!此処で鞄ちゃんを使うのは、ぐっとガマンの子」

 

「使いどころは別にあると?」

 

 

 ウォールナットが着ぐるみの頭をコテンと傾ける。それにニヒルな笑みを返し、千束は肩を落としたたきなの方へ風船を抱えて近づいた。

 

 

「さてさてそれはどーかなぁ?でもね、此処で使わなかったことにだってちゃんと意味があるんだよ。だから、たきなぁ機嫌直そうよぉぉ。ほら、風船でイッヌつくろー。楽しいぞ~」

 

 

 

 

 

 

 




Bad End Title

びっくり箱の中身はハリネズミ
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