Lycoris A moon eclipse   作:悪事

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 そこそこの長文。
 添削すれば、良かったのですが次話のためにノーカットで投稿しました。

 今回の妄想アイキャッチ。
 フクロウを肩に乗せる千束と鷹を肩に乗せる黄理。



Opposites Attract【3】

 

 今晩の配達の支度を整えた千束が更衣室から出てくる。リコリコ謹製のコーヒー豆を手に、外出のため普段と違う格好で現れた彼女を見て、黄理は困惑で眉をひそめた。千束が着ている目にも鮮やかな黄色の雨合羽。夜道を歩くとき、自動車や自転車が気づきやすい程度には目を惹く装い。

 

 とてもではないが、襲撃の恐れがある人間の着るべきものではない。

 

「なんだよ、その恰好?」

 

「ほら、クルミが制服バレてる説を推してたでしょ。だから変装してみた~」

 

「制服の上に雨合羽を被っただけの──」

 

「合羽じゃなくて、ポンチョね、ポンチョ」

 

「合羽がポンチョでもなんら変わらないだろ。それで、変装の効果は?」

 

「襲われるかも眉唾な状況なんだし、凝った変装して浮く方が怖いんよ」

 

 雑な、変装とさえ言えない程度の対策。黄理は千束の手抜きな変装を前に、これ見よがしなため息を吐く。

 

「なんだよ~、言いたいことは言った方が身のためだぞ~」

 

「いいよ、別に。よく考えれば、俺がお前を守っていれば世話ないし」

 

 黄理はそう言って、リコリコの表側に出た。カウンターでは上司の橙子さんがコーヒーを優雅に楽しんでいる。対面のミカさんの表情と感情を視るに、またツケになっているようだ。俺に遅れ、真っ赤な顔の千束が黄色い裾を靡かせてこっちに出てくる。

 

 黄理と千束の二人に不審そうな注目が集まった。特に赤面している千束には注目の比率が高めになっていた。

 

「…………配達、行ってくるー」

 

「千束、その恰好は……いえ、顔がだいぶ赤いですが風邪ですか?もしよければ、私が代わりに行っても」

 

「アンタ、まだシフトの時間が残ってるでしょーが」

 

「では、黄理くんに行ってもらいましょう」

 

「…………今回、請け負った依頼は護衛のはずだよな?」

 

 仕事に関係ないことまで任されそうになり、黄理は思わず苦い顔をする。雇っている部下が困っている状況なのに、橙子が手を貸す、あるいは口を挟む様子はない。元より期待はしていなかったので、黄理は特に痛痒を感じずに済んだ。

 

「大丈夫!風邪とかじゃないし、というか顔赤くないし!」

 

「顔は赤いままですが……そのポンチョを着こんでいるからでしょうか?」

 

「千束たちはいつも通りだけど、たきなが混ざると余計にじれったいわね」

 

「やめなさい、ミズキ…」

 

 ミカから名指しで注意され、ミズキは憮然とした態度で子供たちを茶化すのを中断した。そして、たきなは着物のたすきをほどいて千束たちに同行しようとするが。

 

「あぁ大丈夫だよ、ちょっとそこの組事務所に配達行くだけだから。それに襲撃も、この格好なら心配ないよん」

 

「クルミが、“制服がバレてる”なんて言ってたな。だから、それを隠すために上から着こむのは安直というか、単純というか」

 

「リコリス制服が襲撃犯の目印に……」

 

 たきなは千束の頭の先から爪先までジッと眺めてみる。見つめられてる千束は、面白がってポーズを決めたり、くるりと回って黄色いポンチョの裾をふわりと広がって見えるように動いたりした。

 

「これなら~、ぜったいわかんな~い♪」

 

 ご機嫌な千束に不安を感じたのか、ミカは緊張感を取り戻させるためリコリスにとっては耳にタコな規則を敢えて口にした。

 

「分かっているとは思うが、私服では銃は使えないぞ」

 

「いくら、ラジアータさまでも現行犯逮捕の前じゃあねぇ」

 

「ちゃんと下に着てますよっと」

 

 ポンチョを下からまくり上げ、千束は下に着ているリコリスの赤い制服をみんなに見せた。だが、派手にまくり上げられたポンチョの裾を掴んで、黄理が即座に膝下まで下ろさせる。

 

「お前ってヤツは……前から言ってるけど、慎みを持て」

 

 嫌そうに語る黄理の注意に、千束はニマニマと嬉しそうに微笑みだす。

 

「ちゃんと下に制服着てるのにな~。どしたの、ガラにもなく照れちゃったとか?顔、赤いんじゃないのぅ~」

 

「なってない」

 

 千束にからかわれている黄理。彼を見て、橙子が頬杖を突きながら、あることを指摘した。

 

「リコリスの制服が隠せているのはいいが、そうなると黄理が制服なのは不味くないか?リリベルの制服も同じくらい赤いぞ」

 

 言われてみれば、と黄理は指摘を受け入れ、制服を脱ぐや座敷席に放り投げる。硬質な金属音が鳴る。仕込み武器である双棍と銃が畳に落ちた時に音を出したようだ。

 

 武器と制服の雑な扱いにたきなの視線が鋭いものとなる。投げられた制服をたたみ、Yシャツだけになった黄理の姿にかぶりを振った。

 

「それだと黄理くんが銃を使えませんし、護衛が無手なのは……」

 

「さすがに手ぶらじゃないさ」

 

 黄理はポケットに忍ばせていた鉄の棒、仕込みナイフを取り出した。たきなの目がさらに鋭さを増す。

 

「護衛どころか、護身も危ぶまれそうですね」

 

「心配ないさ、こう見えて護衛は慣れてる。相手が人間ならいくら離れてようと、どれだけ手練れだろうと気づけるし先手だって取れる」

 

 黄理の言い分を聞いたうえで橙子はたきなが畳んだリリベルの制服から、彼のベレッタを投げて渡す。セーフティーがかかっているとはいえ、銃の乱雑な扱いにたきなだけではなく、千束もジトリとした目をする。彼女たちの無言の非難も気にせず、橙子はぞんざいに手を振って一方的に警告をした。

 

「黄理、さすがに今回ばかりは持っていけ。何か嫌な予感がする」

 

 橙子の確証の無い発言に黄理と千束は渋面をつくる。

 

 昔から橙子がこの手の警告をするときに限って、大抵ろくでもないことが起こるのだ。高確率で起こる嫌な予感を前に二人は揃って、過去に橙子がらみで被った厄介ごとの数々を思い出した。いや、思い出したくないので急いで忘れ直す。

 

 それから黄理は渡された銃をどこにしまうか散々迷った挙句、千束のポンチョのポケットへ己のベレッタを放り込む。こうして準備が終わると千束と黄理は橙子の言う嫌な予感が的中するより早く配達を済ませるため颯爽とリコリコを飛び出した。

 

 

 

 

 

 ボクは半ば無意識に押し入れから飛び出した後で、自分が無様にも慌てふためいて叫んでいることに気が付いた。わめくごとに痛む喉、ボクの貧弱な足はたった数メートルを駆けるのに苦労するざまだ。

 

 足の痛みも、喉の痛みも煩わしい。

 

 ようやく何故、リコリスが襲撃されるのかを遅きに失しながらも気づくことが出来た。でも気が付いてもボクではどうしようもない。為す(すべ)がない。だれか、千束か、たきなへ伝えなくちゃいけないという思いだけが先行する。

 

 何でもわかる、どうしてこうなったのか、これから打つべき手段も、対応策も。それでも、ボクに何ができるのかだけが分からない。

 

 いいや、そもそも。知性の介在しないこの衝動的な行為に意味はあるのか。

 

 黄理も言っていた、誰が死のうと何が起ころうと、口を噤んでいるのは賢い選択だと。ウォールナットとして正しい選択は逃げることだ。また自分の死をでっちあげ、此処で築いたものを投げ棄てて何処か遠くへ。

 

 ボクはそのためにある。ウォールナットというシステムを、最果て(未来)へと繋げるアルゴリズム。

 

 “クルミ”という存在に拘泥する理由なんて──。

 

 

「クルミ?」

 

 奥のバックヤードから飛び出てきたクルミの剣幕に、一同は尋常ではないと即座に理解する。少女は持ってきたタブレットを操作し、画面を見せながら凄まじい勢いで事態の真相をまくしたてた。

 

「見てくれっ!これは銃取引の時の周囲の監視カメラの映像で、一連の襲撃を受けたリコリスは“ここに映ってる四人”なんだ!こいつが流出したせいで制服も顔もバレてたんだ!」

 

「はぁ?なんだって、そんなもんが流出してんのよ?」

 

「……あのときのハッキングだな」

 

「本部もまだ、そのハッカーを見つけられていないようです」

 

「アンタのハッカー仲間じゃないの?さっさと調べなさいよ」

 

 ミズキのぞんざいな発言を耳にして、橙子は意外そうな目をする。

 

「なんだ、まだ気づいてなかったのか?春先の下手人は──」

 

「待ってくれ、橙子──」

 

 クルミの懇願にも等しい落ち込んだ声の重さから、橙子はそれ以上先を話さずに大人しく引き下がった。逆にクルミは悲壮な面持ちで小さくも一歩を踏み出す。

 

「あのときのは、ボクの仕業だ」

 

「はぁ!?」

 

「どういうことだ!?」

 

 ミズキとミカの困惑を前にして、クルミの言葉の端々に悔恨の色が強く混じる。

 

「依頼を受けてDAをハッキングした……クライアントに近づくには仕方が無かったんだ」

 

「ちょ、アンタが武器をテロリストに流した張本人ってわけ!」

 

「それはちがうっ!指定された時刻に、DAをハッキングしただけだ…」

 

 クルミの顔色に映る後悔と後ろめたさからくる罪悪感は、事の重みを正確に知るが故のもの。それを見て取ったがために、ミズキは誰よりもクルミを許すことが出来なかった。つかつかとクルミへ近づいて、ミズキは彼女の胸倉を掴み上げる。

 

「“だけ”、だけっつったの、アンタ今。……アンタが画面越しにやったことで正体不明のテロリストが山ほどの銃を手にして、たきなはクビになってんのよ!それに、二人もリコリスの命が……」

 

「もういい!!!それ以上はやめろ、ミズキ…」

 

 歯噛みするミカの叫びは苦しみに満ちていた。クルミがラジアータをハッキングしたという事実をもっとはやく知っていれば、死傷者を出さずに済んだという悔い。ミズキの死んでいったリコリスたちへの想いに対する共感。たきなへの理不尽な処分に対しての同情。ミカはやりきれない想いを抱えるも、今はこの状況を打破することを優先する。

 

 この場で誰よりも冷静だったのは、銃取引の一件で大きく自身の環境を変えられたたきなだったというのは、皮肉以外の何でもないだろう。

 

「橙子さん、いつからクルミの仕業だと気づいて……いえ、それよりも流出してしまった映像はそれだけなんですか」

 

 たきなの言葉にクルミが誰かを探すように周囲を見回す。

 

「おい、千束はどこだ……?」

 

「先ほど配達に行ったばかりで──まさか」

 

「全部じゃないんだ、流出してしまった映像は」

 

 クルミの手にするタブレットの映像が切り替わると、銃取引の現場に佇んでいた千束の姿が映る。四名のリコリスに加え、錦木千束、彼女までも狙われる可能性を持ったリコリスの一人だったのだ。

 

「いかんな、これは」

 

 状況の最悪さを理解したミカは苦渋の声を絞り出した。

 

 

 

 

 

 組事務所への配達を終え、私と黄理は夜道の風を切って帰路をたどる。誰もいない所為だろうか、何の変哲もない夜道がまるで別世界のようだった。耳にいたく感じる静寂を、感じながら夜の街を歩いていく。

 

「さっき、クルミを追い詰める感じの話してたろ~」

 

「あぁ、気づいたんだ。勘がいいというか、目ざといなホントに」

 

「そりゃ、クルミとはどれだけ一緒だったと思ってんの。気づくよ、とーぜん」

 

「たった数ヶ月だ」

 

「十分だよ、クルミがいいヤツだってわかるのには」

 

“いいヤツ、ね”

 

 黄理は軽く笑って、夜空を見上げる。そのいいヤツがやらかしたことで、二人が死んで、二人が重傷を負った。その事実を千束が知れば、どう思うだろうかと漠然と青年は思考する。あのとき助けた選択を千束はどう思うだろう、後悔はしないと理解している。

 

 ただ、やりきれない苦しみを抱えるだけだ。それも自分とは無関係の咎の所為で。黄理はなんとなしにそれを嫌がった。千束の苦しみを、懊悩を見たくない、と。さっさと伝えれば、楽なはずなのに自分もまた都合や理由を付けて、言葉を尽くすのをためらっている。黄理が苛立ちを隠すため、黒髪を乱雑にかき混ぜる。

 

 そのタイミングで、千束のスマホが着信を鳴らす。橙子さんのことと、外に出たタイミングでの電話。どう考えても嫌な符号に、千束は嫌な想像をしてしまうも、空元気を出して電話に出た。

 

「もしもしもしもし~?」

 

「もしが多──」『千束!!無事か!!』

 

 先生のすごい剣幕での安否確認。こ~れは相当まずいところにまで差し掛かってる気がしてくるんだけど。げんなりしかけていたところで、急に黄理の手が私の腰に回った。なにを、と聞くより先に黄理が楽しそうに牙を剥いているのが目に止まる。

 

「ようやく、襲撃犯のおでましだ」

 

 黄理の視線の先を見ると、こっちに向かってフルスロットルで突っ込んでくる黄色の車。血の気が引いた私はとっさのことで、こんなことしか言えなかった。

 

「ちょーあかん、ピンチが突っ込んできた」

 

 

 

 

 突っ込んできた車との激突。硬質な破砕音が鳴り響いて、車と激突したスマホは粉々に散っていった。

 

「うっわ、スマホ壊れたぁ!」

「命よりマシと思え」

 

 黄理に抱えられて上に跳んだため、息が詰まってしまったが文句だけはどうにか言えた。ワイヤーガンによる牽引と跳躍力によって、轢き殺そうと飛び込んできた車を避けた私たちは、街灯の上に着地する。突進してきた車は急激なブレーキングの転回をして停車した。同時に辺りの物陰から、ツナギ姿の連中がゾロゾロと出始める。

 

 物騒な銃器まで手にしていることから、一般人の線は完全に消えた。となれば、こっちもやる気モードでいかないと。

 

 着こんでいた黄色のポンチョを脱ぎ棄て、制服から非殺傷弾の装填された銃を取り出す。考えることなくセーフティー解除の動作はよどみなく完了していた。

 

 視界の端で男たちの持っていた銃火器の先端がこっちを向く。

 

 血なまぐさい殺気、暗色の意思が充満するよりも早く、ひらりと私たちは街灯から降りたつ。応射しつつ遮蔽物へ隠れながら、近くの公園の方に移動。後ろの方では断続的な発砲音と硝煙の匂いがこちらに届いてくる。

 

 撃ち剥がされる樹皮、壊れかけの街灯のように点いては消えるを繰り返す発砲炎。私たちは二条の影法師となって、夜の木々の間を抜けていく。闇の中をすり抜ける影は蜘蛛か、獣か、二人は人の形をしながらも人理が持ちえぬ獣性によって、闇から闇へと姿を(くら)ませる。

 

「夜の公園って、なにかと鬼門というか、変なのと出くわしやすいな」

 

「そ~れいま、言うこと?」

 

「いつなら愚痴っていいんだよ」

 

 後方から飛んできた銃弾がスカートの裾をかすめた。恐怖を考えるよりも先に、身体が効率的な加速を選択する。

 

「もっと平和なタイミングでっ!」

 

 黄理もまた、着々と構築されようとしている包囲網から抜け出そうと、物陰から樹の裏、影から陰へと渡り動く。二人は経験則的なものから、襲撃犯の男たちの攻撃がなんらかの作為的な指揮によるものと推察に至っていた。

 

 

 間違いなく誘導されている。

 

 まずい、と思うよりも先に私たちは公園の森を抜け、開けた広場に飛び出した。広場に先回りしていたのは緑色の髪をした長身の男が一人。鴉羽のような黒のロングコートとピンク色の柄シャツを着る不吉な気配の男は、私たちの方を見るや凶相のまま銃口を向けてきた。

 

「よう、待ちくたびれたぜ。リコリス?」

 

 軽い挨拶と共に放たれる銃弾。

 

 出会いがしらの発砲を避けて黄理は撃ち返すが、銃弾は相手の足元を穿っただけに留まる。だが、そこで緑髪の男は不審そうに首を傾げる。女性という、リコリスの事前情報から外れる男が一人付いていると報告を受けたが、身のこなしを見る限り、明らかに真っ当な経歴の人間ではない。男の手にしていた大型のリボルバーが黄理を冷たく狙いすます。

 

 千束は黄理への発砲を阻止しようと引き金(トリガー)を引いた。途端、反射を越える速度で男の手にしていた銃がぐるりと狙いを変え、発砲炎が夜闇を退ける。45口径弾同士が激突、衝突しあった地点には、パラパラと赤い粉塵が降り積もった。

 

「あぁ?」

 

 男は訝しそうな声をあげ、リボルバーをだらりと下ろすと、地面に落ちた赤い非殺傷弾の欠片を摘まみ取る。しかし、それ以上に信じられないという気持ちでいっぱいになったのは千束の方だ。

 

「弾同士をぶつけた~!?」

 

 たまたまぶつかった、という次元の話ではない。ぶつかることを計算の上で緑髪の男は銃を撃ったのか。ありえるのか、そんな神技が。

 

「ゴム弾……おいおい、リコリスは女で、殺し屋って話だったよなぁ?」

 

 緑の髪をした男は、白けた表情でリボルバーを手元で回し始めた。周囲からはぞろぞろとツナギ服の男たちが集結し始めている。急いで此処から逃げないと。そのためには、明らかに指揮官クラスのこの男を最速最優先でハッ倒す。

 

 千束の赤眼が月光を映し込み、瞳に赤い光彩が宿る。夜を切り裂くように尾を引いた赤い月光が緑髪の男に向かった。油断してリボルバーを手元で回している隙、それを突こうと瞬発し、超前傾姿勢のまま初速から最高速を切った千束は急接近と共に銃を放つ。超至近での非殺傷弾の銃撃、当たれば、昏倒不殺を為す非殺傷弾(フランジブル・バレット)

 

 照準は正確、必中の間合い。外すなんて経験上ありえない。

 

 だが、そんな数々の窮地と任務を千束と共に越えてきた赤の弾丸は、赤い開花を見せることなく夜闇の向こう側へ消えていった。ありえない、と叫ぶより先に凄まじい勢いの回し蹴りが視界を占領する。黄理が私と男の間に入り、かん高い破裂音と共に蹴りを弾いた。

 

 黄理の背中を支えながら、私たちは後退する。まったく同時の攻勢に出る好機。私と相手はそれを見過ごしてまで、相手のある特徴に愕然と目を瞠っていた。

 

 緑髪の男、真島はじゃらり、と姿を現した千束のフクロウのチャームを呆然と見下ろし、千束は真島の黒瞳の中にあって高速回転する幾何学模様を見上げている。両者が己の中で答えを見出したのは奇しくも同時だった。

 

「アランのリコリス?」

 

「新人類創造計画?」

 

 千束が銃を構えるや、再び引き金を引く。男のリボルバーも鏡写しに銃火を噴いた。黄理も二人に遅れ、銃を発砲するがこの時点で彼は理解していた。この二人の獣と撃ち合うには、自分の目では追いつけない事実に。

 

 千束が身を軽く翻し、必殺の45口径弾を回避する。緑髪の男が小さく立ち位置を変えるだけで非殺傷の45口径弾は、あらぬ場所に消えいった。黄理の苦し紛れの弾丸も、男は平然と避けるのみ。

 

 黄理と千束には、この現象に覚えがあった。銃弾を回避する絶技、千束と鏡写しの技を扱ってのける魔人がいたことを。新人類創造計画の被験者、特殊機械化歩兵。千束と同じ技術を全く異なる技術体系の元で再現することを目的として造られた超人。

 

 またもや、ハイテク技術で編まれた怪物の出現を前に黄理は呻いた。

 

「またかよ……」

 

「ねぇ、アンタが一連の事件の襲撃犯?」

 

 千束の問いかけを前に男は一言も発そうとしない。それどころか、千束の横に立つ黄理の姿もよりまじまじと眺めている。ややして、黄理の首からもフクロウのチャームがかけられているのを確かに見た緑髪の男は漆黒の眼光を燃やし、二人のアラン・チルドレンを問い質した。

 

 

「──おまえらの“使命”は、なんだ?」

 

 

「んなもん、知るか」

 

 言い淀む千束を置き去りに、黄理は適当な口ぶりで切り捨てる。あまりの迅速果断振りに男は口笛を吹いて、けらけらと声を挙げて笑った。

 

「おもしれぇな、お前」

 

 急に男はリボルバーを千束たちではなく、草むらの方向へ向ける。周囲の男たちが歓声を挙げる中で、男だけは冷静に笑っていた。血の気を帯びた獣としての嘲笑。黄理が舌打ちをして、警告のために声を荒げる。

 

「たきな、避けろっ!!」

 

 黄理の声に反応して、がさりと草木が揺れる。撃ち込まれたリボルバーの弾丸に続いて、鮮血が夜闇に飛び散った。芝生を赤に染める血潮、反撃とばかり放たれる銃撃は周囲の男たちの足や武装を精密に撃ち澄ます。

 

 だが、緑髪の男に対する射撃だけはやはり、完全に回避され一発とて命中しない。

 

「“真島さん”!!」

 

「退け退け、本番前に余分な怪我をする必要はねぇ。それより、そこの赤いリコリスは俺の獲物だ。余計な茶々を入れんなよ?せっかく、楽しくなってきたとこだぞ──」

 

 千束と黄理がたきなの乱入に乗じて、包囲網を寸断する。リコリスの襲撃を実行した緑髪の男、真島と呼ばれていたが銃取引の主犯も、あの男なのか。

 

 そんな千束たちの推察を中断させるように、赤い乗用車が修羅場に飛び込んできた。千束たちへの射線を切る位置で停車した車の後部座席が、勢いよく開くとミカは身体ごと子供たちへ手を伸ばす。

 

「来いっ、二人とも!」

 

 千束が僅かに立ち止まり、たきなの方を見る。さっきのリボルバー使いの銃撃で脚を負傷したのか、たきなの動きに精彩がない。すぐさま黄理は千束へ自分の銃を投げ渡し、少しでも身軽になってから、たきなの方へ走り出した。千束はそれを見て、ミカの伸ばした手を掴む。

 

 千束が後部座席へと飛び込むのを確認してから、黄理は足を引きずるたきなを抱え車へ飛び込んだ。

 

「ふっぎゅ!」

 

「せ、狭いっ……」

 

「ちょ、黄理くん、どこ触ってっ」

 

「掴みやすかったんだから、しょーがないだろ」

 

「き~り~!なに、こんな状況でたきなに手ぇ出してんの!」

 

 千束の手が黄理の頬を引っ張るが、その所為で体制が崩れて黄理の顔が千束のあらぬところへ。たきながそれを阻止しようとして、黄理を引っ張るものだから、黄理の体勢がまた危ないものになる。後部座席に四人も入っているのだ。自然、誰がどこに触れ、踏まれ、押しこくられているのか、分からないほどもみくちゃになってしまう。

 

 運転席のミズキは、後ろのドタバタを一喝してアクセルを踏み込む。

 

「漫才やってる場合か!!さっさと逃げるよ!」

 

 急発進の制動に合わせ、黄理はちゃっかり助手席の方に移動する。千束から自分の銃を返してもらい、残弾を確認。ろくに使っていないためか、残弾には余裕があり、必要なら時間稼ぎで残ることも戦略に入れる。

 

 だが、視界の隅に映った武装を見て、黄理は表情を曇らせて銃口を窓の外に向けた。クルミの通信が悪いニュースを報せてくる。

 

『随分ヤバいの、連中引っ張り出してきたぞ』

 

 ツナギ服の男が肩に乗せ、構えているRPG。携行型対戦車グレネードランチャー。ロケット推進で飛んでくる擲弾は、命中すれば堅牢な戦車の装甲も爆砕する。通常の防弾加工がされた程度の車両なら、戦車よりも容易に爆破されるだろう。

 

 本来ならば、拠点や戦車といった対物を想定して運用される火力の兵装。

 

 対人で使っていいレベルの武器ではないはずだ。

 

 

「よ~しよし、よく狙ってけー」

 

「了解……」

 

 構えられるRPG、妨害で飛んできたリスモチーフのペイントがされたドローンを真島は視もしないで撃ち落とす。

 

 ドローンを落としてから真島がRPGを構えた男から距離を取ったのを合図に、反動用のガス噴射が起こりRPGの弾頭がロケットの噴推力で赤い車両へ真っすぐに飛んでいく。燃える噴射炎を背にして、爆轟の弾頭は車両に迫る。走り出したばかりで加速の足りない車両では、RPG弾を振り切るほどの急加速は得られない。誰よりもそれを理解してしまったミズキの脳裏に死のイメージが詳細に投影される。

 

「あー、やばいヤバイやばい!!」

 

 同乗する千束、たきな、ミカにも類似する未来が浮かんだとき。

 

 

 境界を手繰る暗殺者は、迫り来る爆殺の未来を蒼黒の魔眼(浄眼)で捉えていた。

 

 

 七夜黄理は窓から出した銃の照星でRPG弾の中心を狙う。正確には、自分が感じ取っている真っ暗な点を、だ。七夜黄理は自分が感じられる全てのモノに赤黒い(ひび)、線のようなモノがこびりつくように感じ取れる。

 

 他に、線と線が交じり重なる部分は、ブラックホールじみた奈落の穴のような点として捉えることを可能とする。普段は限界まで認識を鈍くしているがため、薄っすらとしか認識できない線と点。しかし、今の七夜黄理は数日間の護衛任務で緊張状態を維持してきたことで精神に大きな負荷が生じていた。

 

 精神の均衡は崩れつつあり、命を否定する視座を七夜黄理は獲得しかけている。自然、彼が曖昧にしか認識できなかった死を司る線と点は、この瞬間においては何よりも克明に捕捉することが可能だった。

 

 ベレッタの弾丸が火力、質量的により大なるRPGの擲弾を撃ち抜いた。正確には擲弾そのものに内在する“死”の概念へと命中。内部機構の炸薬、擲弾それ自体にかかっていた推進力が全て死に絶える。

 

 黄理が起こしたであろう異常としか考えられない現象に、車内の一同は愕然とする他ない。ただ、異常事態を引き起こした黄理は、首に手を当てて敵の方へ注意を向ける。

 

「次が来るぞ」

 

 頭痛に耐えられなくなった黄理は、黙って目を閉じることにした。完全に眠る体勢に入った黄理を見て、ミズキや千束が黄理を起こそうとするが、それを妨げるように一台のバンが“殴り飛ばされる”のを彼女らは目にすることになる。

 

 

 

 

『此処までお膳立てして、逃がすなんて冗談じゃないぞ!』

 

 ロボ太の悪態と共に無人操縦でやってくる一台のバン。それを見た真島は口角を上げるや、右の拳を硬く握りこむ。

 

「ナイスだ、ハッカー。このバンは、俺が“使う”」

 

 ロボ太はその言葉を聞き、車両の速度を落として乗りやすくした。だが、真島は壮絶な狂喜の表情のまま、握った拳を車両の真ん中に叩き込んだ。

 

 

 特殊機械化歩兵、真島とだけ呼ばれるテロリストが有する特殊兵装。万物の流動と未来に起こり得る動きを予測する義眼に加え、個人兵装として最大限のスペックを叩き出すとされた義腕。独力で戦車や大規模拠点を崩壊させる威力を持つ義肢は、鋼鉄の魔眼によって最大戦果を生み出すに至った。

 

 

 義眼に内蔵された脳の思考回数を増幅(オーバークロック)させる機構が、時間間隔と周囲の動きを著しく鈍化させていく。停滞する時間流の中、真島は右腕に内蔵された全カートリッジを撃発させ、最大速度の剛腕を車両に撃ち込む。

 

 全弾撃発(アンリミテッドバースト)

 

 スラスターが爆ぜ、黒い義腕が漆黒の輝きを放つ。

 

 腕部から壮絶な炸裂音が鳴り、六発分の空薬莢がその場に落ちる。絶大な推進力を得た拳はバンを形容通りに“殴り飛ばした”。

 

 

 ゴロゴロと転がりながら飛んでくるバン。構造がRPG弾より複雑で大量の部品群であることから、黄理は銃での迎撃を諦める。近くにいたミズキの首根っこを掴むと、そのまま扉を蹴り開けて離脱。千束は近くの先生を、たきなも自らの判断で車から脱した。

 

 

 走行中の赤い車にバンが激突、二台は激しい音を立てて横転する。

 

 ミカを抱えて命からがら脱出できた千束の正面には、真島という男が焼き焦げた右腕の裾を千切り棄て立っていた。たきなや黄理が真島へ銃を向けるが彼はリボルバーをしまって、コインを弾く。

 

 たきな、黄理がその間に射撃をするも、真島は弾丸を見ることもせず躱し、透かして対処する。弾丸を、正確には射手を見もせず弾丸を避けた場面を見て、千束以上にミカは大きな驚愕を覚えた。

 

 一方、発砲までされた真島は裏となったコインを眺めると、ロングコートを翻して立ち去ろうとする。周囲のツナギ服の男たちも、気勢を削がれたように黙々と姿を消していく。

 

 ミカを背に庇う千束を見て、真島は最後に一つの捨て台詞を残した。

 

「じゃあな、リコリス。運が悪けりゃ、また会おうぜ」

 

 

 

 襲撃者らの撤収は包囲網の形成よりも数段速く、クルミが張っていた街頭カメラの監視網からも男たちは姿を消していた。ズタボロになったうえ、車両(アシ)を失った千束たちは、芝生に横たわって呼吸できることのありがたみを噛みしめる。

 

 ミズキが、クリーナーに車両でも要請しようとしたところ、一台の車両がリコリコの面々の方に近づいてくる。運転席にいる赤い髪の女性を見た千束とミズキは、苦々しい表情をしてから舌を出した。

 

 車を止め、煙草を咥えている橙子は、一同を見下ろして商談に入る。

 

「やぁ、乗ってくかい?運賃はこれまでのツケと相殺になるが」

 

「ボり過ぎ!せめて、今晩のツケ分くらいにしろっ!」

 

「ミズキー、多分、橙子さんにはその手の文句は利かないよ。それより、すっごい疲れた。はやく、リコリコにもどろー」

 

「やむを得ん、たきなの怪我の手当てもある。いち早く、この場から撤退しよう」

 

 撤退を優先する案が優勢だったこともあり、皆は橙子の運転する車両でリコリコへ戻ることに。たきなの足の手当てが済んだ頃には、車両はリコリコに到着していた。へとへとになったメンバーが店内に入ると、店の床で正座したクルミを最初に見つける。

 

 たきなが首を傾げ、唖然として呟いた。

 

「どういう風の吹き回しですか?」

 

「おっと、わたしいない間になんかあったの?」

 

「あったどころじゃないわ、やらかした後の祭りよ!今回の一件、コイツの不始末とやらかしが原因な!」

 

 ミズキの痛罵にビクっとクルミが身を更に縮こめた。そんなクルミの頭を撫でると黄理はカウンターへ、いち早く陣取った。黄理は中立の立場をとるらしい。いや、単に言葉数が少ないだけか。

 

「なんだよ、ちゃんと千束を探すのを手伝ったり、助けてやったろう……」

 

 ミズキもクルミの協力に関しては否定をしなかった。だが、ことさらの擁護の言葉もない。かといって中立の立場を守るほど、彼女の人柄は良くないのを皆よく理解している。ミズキは正座し、おどおどとするクルミの前に本部から異動処分というクルミの行動で大きく被害を受けたたきなを引っ張ってきた。

 

「たきなー、アンタ被害者なんだし、好きにいったれいったれ」

 

「どーすんのぅ、たきな~?こうなったら、派手にやっちゃうか?」

 

「ちさと~……」

 

 悪ノリするミズキ、便乗する千束。二人に涙目をしていたクルミは、眼前で立つたきなの目を見て、直前まで考えていた自己弁護の言葉を全て放り投げることにした。

 

「……ごめん、たきな!」

 

 潔く、頭を下げるクルミを見て、たきなは肩の力を抜くように息を突く。それから、カウンターで無関係そうにしている黄理を、軽く睨んでおくのも忘れない。どうも反応から見て、橙子さんと黄理くんはクルミのやったことをある程度、推量していたらしい。文句を言いたくもあったが、今はクルミの答えに応じる方がいいだろう。

 

 直接ではないにしろ、自分の行いが起因して二人の人命が失われた。その重さを受け止める眼差しをしていなければ、たきなはクルミと話をすることもなかったはずだ。

 

「……私に下った処分は私の行動の結果でクルミの所為ではありません。だから、頭をあげてください、クルミ」

 

 表情を強張らせていたたきなは柔らかい表情でクルミに微笑む。柔らかさが抜け、たきなの笑顔に挑戦的で悪戯めいた、千束のような感情が映り込んだ。

 

「ただし、アイツを捕まえる、最後まで付き合ってもらいますよ──」

 

 たきなの挑発的な微笑みに、クルミも瞳を輝かせ勢いよく立ち上がる。此処までウォールナットとして非合理な行動をした理由に、クルミはようやく気付くことが出来た。

 

 ああ、考えてみれば単純なことだ。

 

 此処にいた時間は、これまで惰性で生きてきたボク一人の時間より素晴らしかった。それこそ、自分の信条を曲げるに値するほど。

 

 それに、さすがのボクもいい加減、死ぬのには飽き飽きだ。

 

「もちろんだ!さっそくだが、アイツの名前を掴んだ。皆、見てくれ」

 

 クルミのタブレットには、ドローンで撮影した空中からの映像が映っていた。画面の中で鋭い炸裂音と発光が生まれる。緑髪の男がバンを殴り飛ばすシーンだ。バンが飛んでいき、男が腕を回しているところで周囲の取り巻きたちが一様に興奮状態のまま、ある名前を連呼していた。

 

 “真島さぁん!!”、“真島さん!!”、“真島さ~ん!!”。

 

 やたら興奮した状態のためか、間延びしてひどく気の抜ける掛け声になっているが、間違いなく首謀者に対しての呼びかけに、クルミがあくどい笑い方をして敵の名前を明かす。

 

「まじまさ~ん──」

 

 クルミの冗談がかった呼び名を聞き、橙子は今回の収穫について誰よりも客観的に批評を下した。

 

「これだけ災難にあって、名前一つとは割りに合わないな」

 

「元手無しに得たものだから、ありがたみがないだけでは?」

 

「お前らしい言い草だ。まぁ、言われてみれば、降ってきた牡丹餅だけで腹が膨れるはずもない。真島、それに“新人類創造計画”の被験者、銃取引の首謀者で、地下鉄、リコリスの襲撃犯。分かっている情報を繋げていって、相手の正体に迫るしかやれることはなさそうだ。やれやれ、私かお前に少しでも探偵の才能でもあればね……」

 

「ないものねだりっていうんですよ、それ」

 

「くだらん愚痴だ。聞き流せ」

 

 橙子と黄理の雑談も終わったところで、グゥと腹の虫が鳴く音が。千束は照れくさそうにお腹をさする。

 

「ドタバタしてたらお腹すいちゃった~。たきな~、今日はリコリコでご飯たべようよ~。なんか作って~」

 

 千束の頼み込みを聞いて、たきなは凛然とした対応で条件を出す。

 

「では、じゃんけんで千束が勝ったら、今晩は千束の好きな献立の夕食を作りましょう──」

 

「おっ、いいね~。へへへっ」

 

 やる前から勝利を確信している千束は、くすくすと笑って、たきなと見合う。

 

 互いに夕食の当番を賭け、さぁ勝負!

 

「よ~し、さいしょは「じゃーんけん!」

 

 

 たきなの有無を言わせない一手目で千束のタイミングが狂う。それを見越して、たきなは冷静に自分の手を出す。元より、“さいしょはグー”に味を占めていた千束だ。突発的に一手目が勝負になるといっても、出すと決めこんでいた手を瞬時に変えるほどの対応速度はないと判断。

 

 すなわち、千束に勝つ手は──。

 

「うええっ!?」「ぽん!」

 

 千束の出したグーに、たきなのパー。全戦全敗のたきなの戦歴にようやく白の星が付く。唖然と口を開いた千束は自分が出してしまったグーを見て、気を動転させているようだった。

 

 で、たきなはというと

 

「うしししっ!っししし!!」

 

 滅多にない千束の悔しがる様子と身もだえするほどに喜ぶたきなを見て、リコリコの面子は腹の底から大笑いをし、橙子は静かに眼鏡をかけて慈愛の微笑を振りまく。残る黄理は、頬杖を突いたまま相変わらずな二人のやり取りに苦笑をこぼす。

 

 

 だが、このまま千束の腹立ちに巻き込まれてはかなわないと、こそこそ中二階に逃げようとして、やっぱり千束に捕まってしまう。泣く泣く、千束と店にいた全員分の夕食作りの手伝いをすることになるが、どういう気分なのか、じゃんけんに勝ったはずのたきなも夕食づくりに乱入。

 

 エンタメに走る千束、栄養効率が最優先のたきな、味は度外視で早さだけの黄理。三者三様の食い違う意見、戦略。冷蔵庫に残っている食材、期限間近の魚介、おかずに混ざろうとするスイカ。熾烈な調理が勃発する。

 

 そして──。

 

 ドタバタしながら三人での夕食づくりを終えた黄理は、襲撃時よりも騒然としていた、とコメントを残し、食事後、即座に就寝したのであった。

 

 

 

 翌日、リコリコが開店してから一度も使われなかった緊急連絡が届く。

 

 “リコリス東京支部。外部勢力の襲撃を受け、壊滅”。

 

 風雲急を告げる報せがリコリコに通達された。

 

 




 流石に長すぎたかと反省中。いつか、添削という名のリメイクを……。
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