リコリコに新たなバイトが二名ほど加わった。
春川フキに乙女サクラ。
その二人は千束やたきなと同じ制服を着ていることから、同じ学校の生徒なのだろうと常連の間で知られていくのに時間はかからず、速やかに周知されていく。
フキは喫茶店でのバイトという不慣れな業務に勤しみ、はじめは違和感があったものの一週間たらずでリコリコに慣れていった。まぁ、常連の阿部さんをリコリスに協力している刑事と勘違いして、千束やたきなを慌てさせたりしたが、その辺りはなぁなぁで済ませることができた。
サクラも店に来た頃はたきなと若干、気まずそうな空気をしていたが、事前にセカンドリコリスのエリカとヒバナから話を聞いていたことと、リコリコの平穏なノリに流され、すっかり険がほぐされている。
新たな労働力が増えたことでフロアの作業効率は上昇。元より常連やふらりと物珍しさで立ち入る数少ない新規で、どうにか保っているような来客数の喫茶店。特に客を増やすアイディアもなしに、労働力だけが増えるとどうなるか?
答えは単純、やることがなくて暇を持て余した人員が出てくる。
「は~、こうして昼時にのんびりとできるって、最高の贅沢よねぇ」
「売るほど暇があんなら、外に出て客を捕まえてこい」
「ミズキさんを一人で外に出すのですか……なんらかの法に引っかかることはありませんよね?」
「ふーえー法とか?」
「そりゃどういう意味かしら♪」
「満面の笑顔なのに青筋が浮き出てるッス。これじゃあ、お客さんが寄るどころか泣いて逃げ出しますって」
「も~、お巡りさんが寄ってきそうな顔しちゃってさー」
「フッ、がきんちょたちは全く分かってないわね。元来、美しさってのは罪なものよ!」
フキが手持ちのスマホに110の三桁を入れ、千束が真顔で頷く。マジで通報される勢いにミズキは、血相かえて飛び掛かっていった。
「こらこら、お前たち。少ないとはいえお客さんの前なんだ。きちんと仕事をしてくれよ?」
ミカの言葉に聞いて、フキやたきなが背筋を伸ばすが、千束やミズキは弛んだテンションのまま、呑気にしている。この状況で常連の漫画家、伊藤さんはぱたぱたと手を振って、気にしていないという素振りをする。
「いいんですよ、ミカさん!こういう賑やかなのが楽しいんですから!フキちゃんもサクラちゃんも千束ちゃんたちと同じくらいいい子ですし」
「よりにもよって、
「は~ん、何を言ってますか、フキなんてまだまだ未熟。営業スマイルも未修得のひよっこに千束さんクラスはまだ早い!というわけで抜き打ちチェ~ック!フキ~、スマイルいっちょ!」
フキは千束を見て、バカにするように鼻で笑った。千束が腕まくりをして、飛び掛かる助走距離を取り始めたところ、取り成すようにミカが微笑みを浮かべた。
「そうだな、仕事ぶりは申し分ないんだ。表情を柔らかにできれば、もっと素晴らしくなる」
ミカの満面の微笑みを間近で見たことで赤面し、フキの渋面もはにかむくらいの笑みに変わってしまう。
「せ、先生まで……」
恥ずかしがりながらの微笑に、伊藤は無言でグーサインを出す。笑顔のフキを褒める流れは千束たちに続く。
「ナイス、スマ〜イル!」
「ナイススマイル?」
「あ~、ナイススマイルっす!」
たきな、サクラの新旧相棒の賞賛に、フキは笑顔を引っ込めて拳を握りこむ。
「てめぇら、あとで覚えてろ……」
やがて、締め切りを抱えた伊藤さんが店を出る間際、今度のボドゲ大会の話が持ち上がる。フキ、サクラが働き始めてから最初になるボドゲ大会。いっぱい賑やかなものにしようと、千束や伊藤さんたちが意気込んでいるところ、たきなは冷静に自分のスケジュールを申告する。
「その日、日本語学校のバイトがあるので私は不参加で」
「え~、ちょこっとくらいならい~じゃ~ん!?」
「ちょこっとも無理です」
「つーか、仕事中に遊びの予定を入れようとすんなよ」
「じゃあフキ、君に決めたっ!」
「勝手に決めんな!」
互いに一歩も引かない交渉のすえ、最終的にフキは先生のお誘いにあっけなく陥落。ヘトヘトになった千束が休憩時間で店の裏手に行く途中。無造作においてあった先生のスマホにタイミングよく通知が入る。
普通なら、見逃してしまうような一瞬の点灯、文字列の表示。けれど、錦木千束はその一瞬を見逃さない。
“千束の件で話がある”
追記されていた“Bar forbidden”というとこまで見てしまった千束は、休憩明けから心ここにあらずな調子だ。
結局、千束はその日のシフトを上の空でやりおおせる。そんないつもと違う様子に、閉店後に店を訪れた七夜黄理は思わず声をかけた。
「どうした、千束?なんか、いつも以上に変だぞ」
「──変とかゆ~な」
「いつも変なんだから、誤差よ、誤差。……ぷっは~!」
「ミズキさんは店で晩酌してることを疑問に思うべきじゃないか?」
「それは昼間、フキに突っ込まれてるからもうい~の」
「なんの解決にもなってない時点でダメだと思う」
黄理の呆れた声にたきな、フキが同意するが、それよりも此処まで言われて千束の反応がないことに周囲もまた疑問を生じさせた。ちょうど、奥から様々な調べものをしていたクルミが寝ぼけ眼をこすってくる。
一応、フキ、サクラにはPMC時代の戦友の娘であり、リコリコの情報処理を一部、任せているという話を通していた。はじめ、フキはクルミの能力面や部外者にリコリスのことを知らせていいのかと気を張っていたが、クルミの電子処理能力の高さと先生からのお墨付きでひとまずは追及を避けるスタンスを取っている。
サクラはそもそも深掘りしようという気もなく、若すぎるがオペレーターとしての腕は確かという点だけを把握するのみ。目をしぱしぱさせたクルミも千束の反応を怪訝に思ったようで。
「なんだい、昼間から唸ったりしてたが、まだ様子が変なのか?」
「……う~ん、せんせーは?」
フロアに出ずっぱりだったミズキ、フキ、サクラ、たきなは揃って首を傾げる。黄理はそもそも店に入った時点で先生を見ていないため、答えようがない。すると、思わぬことに店の奥でのんびりしていたクルミが先生の行く先を知っていたのである。
「ミカなら、さっき買い出しに行ってたぞ。その時、ボクに欲しいものないか、聞いてきたからよく覚えてる」
「まてぇい、ちみっ子。オメー、まさかおっさんになんか頼んでないだろうな?」
「別にそこまで値の張るものは頼んでないぞ」
「なんで、そのときに私らを呼ばないのよ!」
ミズキのつまらぬ慟哭に黄理は彼女の手元を指さす。
「酒でも頼まれると思ったからじゃないか?」
「ウッ……」
「図星でしたか」
「禁酒しろ、酔っ払い」
「やー、これはごもっととしか言えないッス」
たきな、フキ、サクラたちの追撃を受け、言葉に詰まったミズキは矛先そのものをどうにかしようと、物思いにふける千束をからかうことにした。
「それよか、なになに千束ちゃまはおっさんがもう恋ちぃのかな~?」
誰がどう見ても明らかなほどの論点ずらし。酔っ払い故に恥もかき捨てた大人げなさ。千束以外の周囲の目が冷めていく。
そして、ようやく無言状態の千束が顔を上げるや。
「──みんな、よく聞いてください。リコリコ、閉店のピンチです!」
決め顔で彼女は面倒そうな別の話を始めた。
ミカのスマホにあった通知の内容、それを聞いてようやく黄理たちは千束がどうして変な様子だったのかを理解できた。いや、理解を示すことは難しそうだったが。
千束の思いの丈を全て聞き届け、フキはしかめっ面で悪態を零す。
「勝手に先生のスマホを覗いてんじゃねーよ」
「こっわ、千束のいるとこじゃ、迂闊にスマホも開けないわー」
「だって見えちゃったんだから、しょ~がないでしょ~」
「千束のことだし、単なる勘違いだろ?」
「わたしのことって前置きはどぅーゆー意味なのかな?」
千束が黄理の頭をぽかぽかと叩いていると、たきなは低めなテンションで千束たちを見た。
「つまり、目が良すぎる人たちは余計なものまで見てしまうということでいいんですね?」
「待ってくれ、さすがに千束と一緒にされるのは不本意だ」
「あー!また言った~!」
大きな胸を押しつける勢いで千束が黄理を絞め落としにかかる。黄理が頸動脈を極められる直前、クルミが思い出したように口を挟んだ。
「余計なもの……あー、たきなのパンツとか?」
クルミの無造作な発言に、おや、とフキ、サクラが千束たちを見つめる。すかさず、たきながクルミの頭頂部をお盆で叩いたことが真実の裏付けみたいになってしまった。
「えっ、千束さんも黄理さんもパンツ見たんスか?どういう流れ、経緯で?」
「何処にいてもバカやってるな、とは思ったが此処までとは」
フキたちの勘違いをどうにか解きたいところだが、今はズレた話の軌道修正を優先しようと、千束はメールの送り主に焦点を当てる。
「やっぱり、楠木さんが裏で手を回してるんだよ。東京支部も壊れちゃったし、人手も減ったしで戦力増強に私をDAに連れ戻す計画と見たね」
「お前だけはいらん。来たら速攻で
「はぁー↑!?」
「辛辣ッスねー」
フキに煽られてる千束に、たきなは不貞腐れた素振りで口を尖らせた。
「いいじゃないですか、千束はDAに必要にされているようで」
「あ~ん、そういうんじゃないんだよ、たきな~!」
たきなに泣きつく格好をしてる千束の姿に、クルミは不思議そうな顔をする。
「千束の所属が、どうしてリコリコの存続に関わるんだ?」
クルミの当然といえば当然の問いにミズキが応じる。
「この店って、一応はリコリスの支部なんだけど、千束のアホみたいな実績とかで保ってる部分が多いのよ。だから階級的に同じファーストリコリスが入ってきても同じように続けられるかっていうと、ね?」
「また、千束は滅茶苦茶な……」
「待った、さすがに待ってほしいっ!この中に私よりもしっちゃかめっちゃかをやらかす人が紛れてるのに、私だけその評価はいただけない!」
千束の抗弁に、みんなの視線が一人の青年に集中する。
「──えっ、俺?」
七夜黄理、リリベルにおいて最強と呼ばれる青年。
サクラはフキから錦木千束と同等の実力とだけ聞かされていたが、店にいるときの彼はあまりに隙だらけで容易に仕留められそうなほどにしか思えなかったのだ。
一方、黄理と幼少から親交のあるたきなは千束の話とこれまでの交流から知っていた。実力は無論、限定的とはいえ七夜黄理はリリベルの統率権を持ち、トップである虎杖司令から特に目をかけられた例外的な存在。リコリコに来る前や来てからも、七夜黄理の関わった事件の規模や難易度は想像を絶している。
黄理の実力を推し量ろうとする重い空気になりかけたところで、部外者にして暗殺者の実力を深くイメージすることのできないクルミが水をかける。
「どっちも東京支部を襲撃した連中を取り逃がしちゃいるがな」
“あだっ”、すかさずたきなの抱えていたお盆がクルミの頭に直撃した。重い雰囲気の払拭を狙ったとはいえ、その話題は色々と問題が大きい。
「すまん……失言だった」
「ハイハイ、堅苦しい話は別として、リコリコが潰れちゃったら困るでしょー、みんなも」
「いや、私たちは別の配属先に行くだけだから」
「まぁ、他の拠点もいっぱいですし、何処に飛ばされるかが不安ってだけッスかね」
フキ、サクラはまだいい方だが、他の面子はそうもいかない。
「わたしは確実に養成所に戻されそうです……」
「ボクもまだせんぷ、いや、リコリコが閉店するのは……」
「わたしも男との出会いが……」
「最初から無いって言うのは
「全部口に出てるよ、黄理?」
ミズキのアイアンクローを黄理がさばいている間に、クルミは“先生および楠木司令(たぶん)の会談場所”と思われるバーの詳細を調べ出す。
「“Bar forbidden”、通常の検索エンジンに引っかからないのを見るに、ふらりと立ち寄れる店じゃないな。会員限定か、一見お断りみたいに徹底してるのかね。っと、見つけた」
「さっすが仕事が早いわねぇ。どれどれ、ほぅ、会員制のバーか……」
「おまえら、先生のプライベートを詮索すんのは……」
「フキは気になんないの~、先生の密会相手?」
千束の囁きにたぶらかされ、フキは真剣な目でパソコンを睨みつける方に移ってしまった。この場において中立というか、特に関心を持たないサクラはボドゲ大会で出るゲームのルールブックを読むために離脱。
たきなたちの話はさらに具体性を増して進行していく。
「このお店、私たちで入店できるのでしょうか?」
「そこはまぁ、コンピューターの人にお任せで」
「できるのか?」
「偽造はわけないが──」
女性陣のテンションの圧に青年は一人、置いていかれている。黄理は嘆息しながら、話がどう転ぶのかだけは聞くことを決めたのだった。
リコリコの閉店という緊急性の高いワードに乗せられたが、クルミも店の情報を調べるにつれ、冷静さを取り戻していく。
「なぁ、こんな洒落た店で仕事の話なんてするか?ただの逢引なんてオチじゃあ」
「……店長と司令が愛人関係にあると?」
千束、フキ、ミズキの三名が同時に吹き出す。まさか、そんな。
あの鉄の女司令に限って──。
「いや、それはない。無いことだけは確実だ。というか、お前の口から“愛人”なんて単語が出るとは──」
「たきなが言うと面白すぎるって~」
「緊張感ないの分かってっけど……なんか、興奮する!」
「黄理くん、この反応は一体?」
「俺の処理能力を余裕で越えるから、振らないでくれると助かる」
たきなの疑問に、黄理は明言を避けることを選んだ。考えなしに口を開くと、女性陣から総叩きに逢いかねない。大人しく口を閉じた黄理に対し、クルミはミカと楠木司令なる相手の色恋沙汰の可能性も取り上げる。
「いや、でも有り得る可能性ではあるだろ?」
「「「ないないない」」」
「そこまで言うか、でも万に一つくらいは」
「「「ないないないないない」」」
息もぴったりに千束たちが首を横に振っていると、ひっそりと一人の男性が物陰から現れた。気配を殺し、近づいていた男性に最初に気づいた黄理は無言のまま静かに会釈する。
「──こんばんは諸君。なにやら興味深い話をしているようだが、どういった内容か聞いてもよいかね?」
「虎杖さん……偉い人なのに、そうホイホイ出てくると威厳が目減りすると思う」
「なったら、なったで親しみやすくなるだろう?」
呆れる黄理をよそに千束、たきなは軽く会釈して、というか千束は肩まで組んで気さくに話を始めている。虎杖と初遭遇をしたフキ、サクラは目を点にして唖然としている。リリベルの指揮系統について彼女たちはミカより事前に聞かされていた。リコリスの全指揮を行う司令として楠木と呼ばれる女性がいるように、リリベルにも全体の指揮を担う男性、虎杖と呼ばれる人物がいると。
ミカは二人に虎杖がリコリコの常連であることを伝えていたが、まさかこのようなタイミングで出てくるとは彼も考えつきもしなかったろう。
呆然とする新人店員二人を見ながらも微笑みを絶やさない虎杖司令はリコリコ閉店のピンチ(仮)の話について、意気揚々と参加するのであった。
今晩の襲撃計画のため、車内に雌伏する無法者たち。
血と暴力の気配を纏う獣たちの中には、先日、リコリスの支部を襲撃した真島の姿もあった。
車内で待機し、退屈していた真島の機嫌を取ろうとロボ太が遠く離れた
『この間の赤いリコリスに関係ありそうな情報を見つけたぞ~』
「……ふーん、言ってみ」
『こ、コイツ…………非殺傷弾を使って戦うヤツの記録、とまではいかないが噂をダークウェブで拾ったんだ。“電波塔事件”はさすがに知ってるだろ~?』
ロボ太の知識をひけらかそうとする声を聞き流していた真島は、特に隠そうとも思っていなかった電波塔事件の内情の一端を気楽に曝露した。
「知ってるも何も、折ったの、俺だしな」
『──え?待って、どゆこと?』
「そんで、噂の中身は?」
ロボ太の葛藤と混乱を気にも留めず、真島は話の続きをせっついた。
『あ、あー、一般には明かされていない極秘情報なんだが、テロリストはたった二人に制圧された、らしい』
「当事者に極秘もなにもねぇだろ~。ってか、二人ってとこまではホントだが、あの時はちっこいのが……」
真島の脳裏をよぎる、赤い眼光と蒼黒の凶眼。鮮烈に刻まれた恐怖がにじり寄り、鎌首をもたげた。圧倒的な畏怖と心胆を震え上がらせる絶対の格。戦火を危なげなく振り切り、立ちはだかる者を容易く制圧する二つの魔影。
点と点が繋がった。
「────ハッ、そっか、アイツらかっ!」
『な、なんだよ?……まぁ、ここまで説明しといてなんだが、どうにも嘘くさいな。こういうのは尾ひれがついたり、誇張されて伝わるものだから、話半分で聞いといてくれ』
「噂の半分でも事実に追いつかねぇよ……まさか、あの時の二人組とは。こいつは運命、いや……腐れ縁か」
真島がかつての景色に浸っていると、パソコンに挿されていたUSB端末のダウンロードが完了したらしい。真島はロボットのストラップの付いたそれを摘まみ上げる。
「なんだって、こんなおもちゃを直接、挿しにいく必要があんだよ?」
『おもちゃって……アジトでも説明したろ?DAのシステムは規格外のAIが制御してるんだけど、入り口を物理的な手段で内側に用意しとかないと、アクセスするだけでこっちがパクられるわけ。そっちも困るだろ、とどめを刺そうとしてるリコリスから報復で逆転される、なんてのはさ』
「なんだっていいが、遠くからちょちょいとやれねぇのかよ」
“世界一のハッカーなんだろ?”、自尊心をくすぐる様に真島は言葉を並べる。反応はかなり分かりやすく返ってきた。
『これを作れるのはボクだけなんだぞっ!DAのAIに仕掛けることのできるヤツなんて、この世界にもう一人だっていやしないんだ~!それを成し遂げれば、ボクこそがトップハッカーとして広く──』
「分かった分かった、このおもちゃにはお前さんの夢がかかってるわけね」
耳を滑るだけの自尊に満ちたロボ太のセリフを真島は途中で切る。真島の反応に不満げではあっても、ひとまずは口よりも明確な行動による証明をしようとハッカーの少年は気分を変えたらしい。
『ふん、ボクにできないことは、世界の誰にもできやしないと思ってくれ』
「頼もしいこって。で、コイツを署長のパソコンに挿してくるだけでいいんだな?後からおまけでやることが増えたりしねぇな?」
『ああ、署長クラスの人間なら間違いない……というか、挿すところまで行けるかが一番の難易度だろ。とにかく、成功さえすれば君の計画を達成するのに必要な第一歩は完了する』
一歩目で夢が叶うなんて、インドア派はお手軽なこって。まぁ、ハッカーと俺の狙う獲物は同じなわけだ。
それなら野暮な指摘はせず、お互い気分よく仕事を片付けよう。
「俺たちの、だろ?とりあえず、荒事を済ませている間に通信ジャミング、逃走経路の確保。とちるなよ?」
車を出て、冷えた夜の外気を思い切り吸い込んだ。瞬時に神経が鋭くなり、思考は荒事に最適化されていく。そして、ロボ太のやる気を焚きつけるリップサービスを一つ、インカムに告げる。
「頼んだぜ、トップハッカー?」
『────はっ!五分で終わらせろよ~!』
「さぁて、五分もかかるかね」
インカムを二度、叩く。遠方のビルで
周囲にDAの連中の姿は確認されず。依然として問題なし。
真島の計画は誰に妨害されることなく進行していく。事前にリコリスの拠点を潰していたこと、そして機能が生きているリリベル側のラジアータがロボ太の仕込んだダミーの危険予測を拾ってしまっていること。
全てが後手に回り、避けようのない悲劇が今宵、始まる。
機関銃や大型の銃火器を抱えた配下を引き連れ、真島は警察署へと進軍する。署の前で、見張り役として立つ警官が、真島たちを温和な声で呼び止める。
「君たち、警察にそういうおもちゃはいかんよ?」
人間は思い込みによって事実を正しく認識できない動物だと、かつて室戸菫から聞き及んだことを真島は思い出す。先入観、あるいはルーチン、思考停止はおっかないものだと考えながら、真島はマテバリボルバーと似通った大口径の大型リボルバーを警官に向けた。
銃口が下方に付いた特徴的なフォルムと漆黒の銃身は、事実としてそこに存在するにも関わらず、ひどく現実味だけが欠けている。
警官は、殺意すらにじませた無法者らに愛想笑いを浮かべており──。
真島は嗤った。
「じゃあちょっと遊んでもらおうか……おもちゃで良ければ?」
一発の銃声が夜に溶ける。
真島と向かい合っていた警官は、最期の瞬間まで眼前の男が自分に死を運びに来た者であると考えもせず、骸を晒すのだった。
祝、FGOまほよコラボ!!
洋館の三人組が個人的に、男女トリオの理想形だと思っております。いつか、まほよ勢も書いてみたい。本編を書き終えてからですが。
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