まだ『くにはちぶ』の漫画を集めてないのに思いつきと勢いで書いた短編です。
前に殺人者による『くにはちぶ』を書きましたが、今回はオカルトによる大災害バージョン。
ちなみに対象者本人はオカルト事情は何も知らない設定。
ある事情で激ヤバなオカルトを抱えているので、『くにはちぶ』に選ばれて『くにはちぶ』という法律関係者が軒並み被害を受けるという展開です。
踏のキャラは想像で書いたので、台詞や行動は捏造です。
親族としてオリキャラもいたりします。
それでもOKって方だけどうぞ。
『くにはちぶ』原作をまだ持っていないのに。
オカルトによって『くにはちぶ』という法律自体が崩壊する展開です。
踏をはじめ法律関係者が軒並み不幸になります。
残酷な描写、痛い怪我の表現があります。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
『無作為選出対象者無視法』。
通称くにはちぶ制度という法案があった。
簡単に説明すると対象者として選ばれた人物を1年間何があろうと無視し続けることを国民全員に強制させるというものだ。
対象者に向けて話しかけることはもちろん何かしら手を出すこともすべて違反となり違反者は逮捕される。対象者の親兄弟であろうと友人であろうと老若男女であろうと違反者は逮捕される。サービス業や道路を走行している運転手も漏れずである。つまり道路や線路に対象者が飛び出しても無視せずブレーキをかけず走行しないといけないのだ。その結果対象者が死亡してもだ。
そのため出勤客が溢れる電車の駅で大人数の目の前で電車の前に身を投げて命を落とした対象者がいたほどだ。
『また失敗か』
法案を作った現総理大臣は、無視されることに耐えられずに命を絶った対象者の事故現場に来てそう吐き捨てた。
そうして次の対象者となる人間を選別し直し、再び狂った法を稼働させる。
それがいつまで続くのだろう。それが何度繰り返されるのだろう。先が見えない。先を見ようとしない思考停止しているといえる狂った法が現実化している今の世に。
踏み込んではいけない地雷と知らずに、法という名の不届き者が乗り込んでしまう。
その年の新学期。とある中学校の2年生の教室にパリッとした堅物なスーツの人間達が教師達と共に入って来た。
そして強面のスーツの男が教卓の前で『無作為選出対象者無視法』の対象者についての説明と、その説明後に今日から法の執行を告げた。
驚き目を見開く生徒達が、慌てて対象者となった生徒を見た。
その男子生徒は、キョトンとした顔をしていて他の生徒に比べてあまり重く受け止めていない印象がある様子だった。
骨太で大柄な体格だが、下がり眉毛で温厚そうな顔立ちもありいかにも大人しくて優しそうな印象のある少年だ。実際この少年は他の生徒達からその温かな雰囲気のおかげでとても好かれている。しかしその好かれる温厚さはパズルのピースのように合わない相手には合わないため、嫌ってくる相手にはとことん嫌われた。
監督官である男、踏は対象者となった少年についてのデータを書類にて目を通している。
彼の名前は、『柱羽アラシ(はしらばあらし)』。14歳。神社を守る一族の次男。長兄が継ぐ予定なので次男の彼は跡取りではない。
好かれる相手には好かれるが嫌われる相手にはとことん嫌われるという少年だということだが、状況認識能力が乏しいのだろうと教卓の前から彼の様子を見ていてそう思った。今までの対象者もその周囲も大なり小なり突然降りかかった『くちはちぶ』という厄にパニックになったり絶望した顔をしたりするが、あの様子では自分の置かれた状況を理解していなさそうだ。
「………そっか…。質問して良いですか?」
くちはちぶ対象者となった柱羽アラシが挙手した。
「質問を許可する。」
「期間は1年間ですよね?」
「そうだ。1年が終われば対象者ではなくなる。」
「分かりました。今日からなんですよね?」
「その通りだ。」
「そっか…。せっかくの新学期で新しいクラスなのに…、寂しいけど、1年後にいっぱい仲良く出来るようになりたいなぁ。」
シュンッと残念そうに悲しそうに項垂れて寂しさと新学期という新しい生活が無くなることを残念がる姿に、彼を好いている多くの生徒達や教師達が辛そうに顔を歪め、ある者は涙を見せた。なんだか印象的に対象者本人より周囲のダメージが大きいようだ。
「では、チャイムが鳴り次第開始とする。」
「はい! 1年間がんばります!」
オーッ!と自分を鼓舞するように拳をあげてそう叫んだアラシの声と言葉の後に、タイミングを見計らったかのようにチャイムが鳴った。
さて…どこまで持ち堪えるか…。そう監督官の踏は張り付けた冷酷な表情のまま教室をあとにした。
踏が『くにはちぶ』の執行者組織に配備されている車に向かうため校舎から出た直後だった。
いくつか止まっている車の一台のタイヤがパンクし、破裂したタイヤのゴムが待機していたくにはちぶ違反者の逮捕執行者の複数人を襲った。
そのため重軽傷を負った彼らは緊急搬送され、タイヤのパンクについては突然すぎるし調べても人的な悪意がなかったため事故として処理された。
ちなみにこの事故の時、踏はタイヤの破裂にあと数ミリで巻き込まれるところだったため軽く肝が冷えていたりした。
翌日、総理大臣官邸にある手紙が届けられた。
その内容はざっくりまとめると、『悪いことは言わないから、柱羽の次男坊に悪さはしてはいけない』であった。
イタズラにしては奇妙であったが、気にする必要はないと判断され手紙は処分され柱羽アラシのくにはちぶは続けられた。
しかしその日の午前、踏が職場に出勤すると職場にいるはずの職員達が半数いなかった。
昼近くなり出勤してこなかった職員の情報が入る。
来なかった職員達は職員寮に住んでいるのだが、その寮の建物が突然微妙に傾いて扉の開閉ができず異変に管理人が気づくまで閉じ込められていたからだった。更に悪いことに電波状況も悪くて電話もできなかったのだ。
更に悪いことに傾いたことが原因でガス管が割れたらしく、ガス漏れして閉じ込められていた職員の大半がガス中毒で病院に搬送される事態となった。ガス漏れのせいで救助活動が難航したのも中毒症状を悪化させる原因にもなり、くにはちぶの監督の仕事はとんでもない人手不足でかつてないほど狂うこととなった。
スケジュールの大きな狂いと処理しきれない仕事量に目に大きなクマを作った踏が三徹泊まり込みで空いたシフトを埋めるべく頑張り、それでも仕事を残したままだが着替えだけはしてこようと一度自宅に帰ろうとしたが、仕事用の携帯から緊急連絡が入り頭を殴って意識を戻して電話に出た。
内容はざっくりまとめるとこうだ。
国会議員の過半数が、謎の熱病を発症して国会が崩壊寸前&パンデミックの可能性に怖々状態だという。
その後右往左往する政権下の中、病院に搬送された発症者の中で辛うじて意識がある、口がきける状態の者が、ブクブクに水ぶくれした顔と唇でこううわごとを言うのだ。
皆口を揃えて。
『やめないところされる』
と。
何をやめないといけないのかは詳細は不明で、口がきける発症者全員が同じ事を言うのだ。
まるで呪いのようだと、治療を担当している医師や看護師達は青ざめていた。
新たなくにはちぶの対象者選別と、くにはちぶが始まてから1週間程度で詰め詰めの多忙と上も下もメチャクチャパニックにすっかりゲッソリした踏が公園のベンチで缶コーヒーを片手にほんの一時の休憩をしていた時、彼の手に水滴が落ちた。
雨か?っと思いふと空を見上げたとき、彼の右目に写ったのは。
錆びかけた鈍い色のボルトだった。
視界の半分が真っ赤に真っ黒に染まり、右目を押さえて地面に倒れてのたうつ踏の遙か上空を航空機が飛びすぎていく。
疲労と眠気と突然の負傷に混乱する脳に植え付けられるように、どこからか何者かの奇妙で不気味な笑い声が聞こえた気がした。
新たなくにはちぶ執行から、10日後。
「お待ちしておりました。」
白い神主の衣を纏った老人が正座したまま踏に頭を下げた。
客室に通された踏の顔には右目を覆う眼帯があった。
机を挟んで向かい合った二人は、重く張り詰めた空気の中、神主が先に口を開いた。
「先に失礼を承知で言葉を述べさせていただきます。……よくぞ、“10日も耐えられました”ね。」
「すべては…。」
「我々もすべてを予見していたわけではありませぬ。ですが、遠からず悪いことが起こるであろうことは想像できました。ですから総理官邸、国会に、警察組織すべて、あらゆる『くにはちぶ』に関わるもの全てに危険を呼びかけてはいたのですが…。」
「あれはあなた方でしたか…。」
踏はくにはちぶ執行後に届いていたが無視されていた警告の手紙などを思い出して口にした。すると神主は頷いた。
「眉唾な不吉を科学を信じる者達は信じないでしょう。それは仕方が無いことではあります。」
「ここまでのことが続けば嫌でも信じざるおえない。……教えていただけるでしょうか? 柱羽アラシの祖父殿。」
柱羽アラシの祖父である神主は、踏の言葉と視線に深く頷いた。
それから語られるのは、柱羽が守る神社に封じられた邪悪な何かについて。
詳細は一族の中でも深い関係者しか知らず、ましてや他者には口外できない存在がいるという。
その存在を封じるため、そして機嫌を取るために、彼らの一族は次男として産まれた男児を人柱として捧げるという血塗られた儀式を歴史の裏で脈々と続けてきたという。
しかし現代に近づくにつれ儀式は形骸化し、いつの間にか人柱の命を奪うほどの厳しい儀式ではなくなった。
簡略化され残酷さが薄れた儀式は、次男坊が3歳を迎えると人柱を捧げるために掘られた穴に両手足を縛った状態で一晩過ごさせるだけという物になっている。
しかしそれでも何も分からない幼い男児にわけも分からないまま土の穴に縛られて一晩も放置されるのは大きな負担があるため、終わった後のケアがものすごいされるそうだ。
そうして儀式で人柱となった一族の次男坊は、神社に封印されている何かの所有品となるがそのことは本人に告げられず秘密とされ、それ以外は普通の人間として人生を送ることとなる。
ただし、っと神主は前置きをした。
「かの者は…、大変心が狭いのです。」
心が狭いということは、自分の所有物への執着がえげつなく、自分の領域に他者を絶対に入れないということ。
特に執着心がもたらす厄は簡単に人命を脅かし、最悪の場合厄を受けた者の周囲をも巻き込む。
過去に人柱となった次男坊を迫害をしたりするなど心身に害を及ぼした行為をした者達が、不幸な余生、あるいは不幸な人生の幕引きをしてしまったという。
アラシの祖父達が把握している限りでは。アラシのことをいじめたりした人間達が……。
・交通事故で進学校への推薦+運動不可に
・若年性アルツハイマー発病
・新築の一軒家+新車が全焼で貧困
・原因不明の味覚障害で味覚消失
・原因不明の病気で失明
・原因不明の内臓の壊死で寝たきり
・旅行先で不注意で四肢切断の大怪我
・工作授業中に突然工作用の機材が暴走し両手の指切断
・家族経営の会社が潰れて路頭に迷う
・部活動の強化合宿中に熊に襲われて顔半分欠損
・狂犬病キャリアのコウモリに噛まれて狂犬病発症
・本命彼女のデート中に急性下痢になり公共の場で漏らしてSNSに拡散される
・階段を踏み外して転落し車椅子
・詐欺に巻き込まれて家族に大迷惑をかけ将来の夢を諦め借金返済のために強制就労
・悪い異性に騙されて身も心も崩壊
・可愛がっていたペットが死亡
・親族が相次いで突然死して天涯孤独の身になる
・ある日突然心神喪失状態に陥り精神病棟に入院、回復の見込み無し
・行方不明(上記の不幸の後に最悪こうなる)
などなど。把握できている限りではそういった不幸に見舞われたというのだ。
踏は言葉を失った。
稀に超がつくほどの不幸体質というほど不幸を引き寄せてしまう不幸の星に生まれたんじゃないかという身の上の人間がいるとかいないとか創作物でも描かれたりもするが、柱羽アラシについては彼に対して害を与えた相手にとんでもないしっぺ返しを本人の知らないところで邪悪な何かが行っているようだ。
そういう意味では守護神のようにも思えるが、性質は遙かに邪悪だ。あくまでも所有物である人柱を傷つけたら倍返しの不幸を与えてきているのだから。その巻き添えをくう加害者の身辺が気の毒だ。
「総理大臣があのようなことになっては、孫へのくにはちぶを続けている場合ではありませんな……。」
「…………………………どうすれば厄を止められるのでしょうか? このままではこの国が……………。」
「くにはちぶを、孫を害することをやめれば良いのです。かの者の機嫌を損ねることをしなければ良いのです。ただそれだけなのです。」
「……………親族は対象外だと?」
「いいえ。そのようなことはありませぬ。心が狭いのですから人柱の親族であろうとも機嫌を損ねることをすれば容赦はありません。私の大伯母と大伯父が……。あの時のことは今も夢に見ることがあります。」
「そうですか……。」
「厄だけをもたらすのではありません。」
神主は付け足すように言った。
「アラシは特に気に入られておりますゆえ、アラシから信頼され、愛をもらい受けている者達には幸運という呪いをもたらすのです。アラシはとてものんびりしています。人柱の儀の時に、穴の中で泣きも喚きもせず暢気にグーグー寝て過ごしたほどで。その生まれ持ったたくましさをいたく気に入られたようで。」
だから余計にしっぺ返しの厄の強さが歴代人柱の中で段違いになっているのかもしれない。
踏はそれを聞いて、死体復元すら不可能な状態になった『無作為選出対象者無視法』を作った総理大臣のその末路は当たり前だったのだろうかと思った。
「世の中には確かに存在するのです。決して、触れてはいけない、踏み込んではいけない、知ってはいけない領域というものが。」
柱羽の一族が封印し続けているその存在もそのひとつであると。
「此度の『くにはちぶ』の選定については……、まことに運が悪かった、としか言えませんな。」
神主の独り言のようなその言葉に、踏は同意するように頷いた。
神主との対談後、帰路につく途中、踏は柱羽アラシを見つけた。
離れた場所からだが、くにはちぶが無くなったことで彼と仲の良い生徒達と仲良く下校していた。
日本そのものを滅ぼす寸前に追い込んでいる邪悪なものに囲われているとは思えないほど、温かな笑顔と雰囲気を持つ少年とそのことを何も知らない彼に好意的な友人達らしき者達と笑顔でいる。僅か10日程度のくにはちぶとなったが対象となったアラシ自身より周囲の方がやはりダメージが大きかったらしく、その僅か10日間を埋めるように彼に対してスキンシップをしている彼ら。
その後、踏の個人的な興味でアラシの知人の状況を調べた。
すると特に仲の良い友人達や、ガールフレンドなどが軒並み大なり小なり幸運に恵まれており、きっとこのままいけば素晴らしい未来を手にできることが容易に想像できた。そうした親しい者達に囲まれたアラシにもきっと良い未来が待っているだろう。自分のことより他人の幸せを願える人間なのだ。そんな彼を幸せにしたいと思う人間も集まりやすいのかもしれない。実際彼にハートな目を向けている異性は結構いたから。
そういえば人柱になる運命の次男は、親族全員に当てはまるのだろうか?
そのことを聞き忘れたと、踏は少しだけ後悔した。
新たに始まったくにはちぶは、わずか十数日で法律ごと終了した。
日本そのものの存亡が危ぶまれる不幸の連鎖は、くにはちぶの消滅と共にこれ以上起こらなくなり、くにはちぶの強硬派が軒並み再起不能、あるいは行方不明だったり命を無くしたりして社会からいなくなると人々の記憶からもくにはちぶという負の法律自体が消えていき、更になぜか国の歴史にも記されることもなくその法律を作った総理大臣とその支持者達の名前もろとも後世に伝えられることなく当時の記憶を持つ人間がいなくなると永遠に歴史の闇に葬られてしまったのだった。その部分の空白の期間を調べようとする歴史学者がいても、何かしらの不幸に見舞われ正しい歴史が表沙汰になる機会を奪っていった。
殺人の展開を前に書きましたが、オカルトもありかな?っと思いつきで勢いで書きました。
オリ主くんの出番は少ないですが、彼なりに無視される期間を耐えようと頑張ってました。
でも知らないうちに色々世間が騒がしくなって『くにはちぶ』が無くなって1年も頑張らなくて良くなった、もう無視しなくて良くなった、よかったー!って友達や家族と喜びました。
参考にしたのは、とある動画で紹介された『姉をいじめていた奴らが軒並み不幸になっている』という感じの書き込みでした。
オリ主くんを囲っている邪悪な何かの正体は不明です。
一族が詳細を調べようとしても縄張りに入ると怒って何か不幸をもたしてきます。