『いっ君いっ君!』
モップを叩き出した後、糞兎が通信を入れてきた。
「なんだよ」
『見てほしいのがあるの』
そう言って、糞兎が映像を流す。
『この……地獄からの使いなんて言うつもり!?』
見たことないISを纏った金髪女が忌々し気に言う。
『『使いじゃねぇ(ない)!』』
それに答えるのは二人の男。
片方は黒髪黒目でフィーネと同じ灰色の肌。
グレーのチュニックの上から黒い革ジャンを羽織り、
黒いコットンパンツに黒長ブーツを履き、
両手にはマグナム銃を思わせる魔導銃が一丁づつ。
もう片方は茶髪で茶目、どこかの学生服らしいブレザーを纏い、
その上にクロークを羽織っている。
右手には白く両刃の刃渡り40cm程の短剣。
左手には反りのついた、青みが掛かった銀色の
こちらも刃渡り40cmぐらいある短剣。
『『俺(僕)達が、地獄だ!』』
どう見てもあの二人だ。
「なんでお師匠様がいらっしゃるんだか」
『え?師匠?』
「黒髪の
茶髪の
どっちも俺に戦い方と冒険者としての技術を教えてくれた師匠だ」
ロアさんはエリン出身の
明久さんは俺と同じ地球(とは言っても平行世界だが)出身、
どちらも超一流の冒険者で、その実力は指折りレベル。
妖魔が裸足で泣きながら逃げ出し、魔族が
恐怖のあまり青ざめると言われ、付いた二つ名は[地獄コンビ]。
そんな二人に俺は冒険者としての基本を三日で叩き込まれたわけだ。
『いっ君が強い理由、分かった気がする』
「それだけじゃないぜ」
確かにあの二人が理由の一つではある。
俺自身、今でも目標にしている人達だ……だが。
「俺が[冒険者]っていう生き方を知ったのはあの二人に会ったから
つまりただの偶然だ、だがその生き方を選んだのは紛れもない俺の意志だ
どん底でひねて燻ってた自分を変えるためにな」
周りが能無しの付属品としか見てくれなくて、自分にそれを
何とかする力も覚悟もなくていじけていた俺は、
最初地底の世界に来た、当時の自分そのものと言える場所に。
そこであの二人とフィーネに出会い、自分の手で道を切り開くことを知った。
そのまま地底を飛び出し、何度挫折し死にかけようが、
構うことなく全力疾走し続けた。
途中でいろんな人に出会った、色んなことを知った。
モノクロに見えてた世界が、眩しいほど美しく見えた。
「冒険者になって、俺は初めて[自分自身]って物を手に入れた
[織斑]のままだったら燻ってるだけのクソガキか
言いなりの人形で終わってただろうさ
だから俺は冒険者であることをやめない、誰が何と言おうとな
自分の意志で選んだから、自分の力で切り開いた道だから
誰にも曲げさせはしねぇ、それぐらいなら死んだほうがましさ」
__________________________
「…そう、わかったよ」
そう言って、私はムーンラビットの通信を切った。
あ、地獄コンビの方のは完全に壊されてるね、気づかれてたか。
「もう必要ないのだな……私は……」
ちーちゃんが膝を付き項垂れてる。
自分が一切必要とされてなかったのを、ようやく理解したらしい。
「ちーちゃん、いっ君はね、昔からちーちゃんの弟であることが
嫌で嫌でたまらなかったんだって、[自分自身]として見てもらえないから」
「…………」
「でも、それを変えられない自分がもっと嫌で
それでも前に進む方法を学んで今のいっ君があるの
[織斑]の名前はもう邪魔でしかないんだろうね、改名用の書類書いてたし」
もしかしたら[家族]として繋がっていられたかもしれないと思う。
いっ君は自力でまだ見ぬ先を目指すことを最重要視していたけど、
深く繋がっている人達を大切に思っていたのは事実だから。
でもちーちゃんは[繋がっている]ことだけに満足して
自分の理想だけを押し付け、本人が何を考えているのか見ようとせず
あまつさえ[自分の世界]という檻に閉じ込めようとした。
枷を引きちぎり、檻を食い破るのが冒険者だから無駄だったけど。
そもそもいっ君話し合う気さえ無かったみたいだしね。
「そして命がけの旅の中で、いっ君とフィーちゃんは力を合わせて
困難を突き破ってきた、だからあの二人の絆は切れない
箒ちゃんが割り込めるような隙間なんて無かったんだろうね」
座り込んだままの箒ちゃんがうつむいている。
「箒ちゃんもそう、思い通りにならないとすぐに癇癪起こして
力尽くで従わせようとして、普段嫌ってるくせに
都合のいい時だけは頼る、いっ君が一番嫌いな人種だよ」
自分達で道を作ることを尊ぶ人種だからね。
せめて友達ぐらいにはなれることを願ってるよ。
その前にISの無断使用の罰則受けないとね、庇いきれないし。
___________________________
「妙な物があるな」
ロアが自分で撃ち落とした物を拾う。
ウサギの形をした丸い機械だ、どうやら偵察ロボらしい。
「まあ気にしなくていいんじゃない?敵意なかったし」
僕は周りを見渡す。
遺跡を通じてこの世界に来た途端に、ISなんていう物を纏った連中に襲撃された。
絶対の自信があったらしいけど、魔族や古代兵器とかに比べると
全然大したことはない、僕らの世界ではほとんど活躍できないだろう。
「あいえすとかいうのがあるなら、ここはイチカの世界じゃねぇか?」
「あ、そういえば」
元の世界に戻ったって聞いたから、居るかもね。
「まあでも、会う必要ないけどね」
それは同意見だ、最後に会った時にはもう一人前だった。
後は相応の経験と自信があれば僕達の領域に届くんだ。
手を出して成長を邪魔するのはよくないよね、息子みたいなものだし。
「同意見だ」
「え?ロアは会うべきなんじゃない?義息子なんだし」
地底の女王、エルトリーゼ・アタナシア・シエル・エガタニアに
夜這いかけられてできちゃった娘がフィーネリアで、
その恋人というか夫なんだから、ロアにとっては義息子でいいよね。
「人の黒歴史をほじくるな」
やめよう、これ以上は間違いなく撃たれる。
__________________________________
「ようやく能無しとモップの件が片付いたな」
何時にもなくイチカがすっきりとした表情を浮かべる。
足枷になっていた物の内七割ぐらいが片付いたのだから当然かもしれない。
「で、これからどうするの?」
エリンに戻るのもよし、こっちで宇宙開発するもよしだけど。
「こっちで宇宙開発やるさ、そっちの方が冒険者らしいじゃねぇか」
「フフ、そう言うと思った」
すると急に、イチカが真剣な表情を浮かべる。
「でも、すぐやることは決まってる」
そう言って、イチカは懐から小箱を取り出して私に渡す。
「開けてみろ」
中身は……ッ!
エメラルドとは少し違う深緑色の宝石が使われた指輪。
これってもしかして。
「ペリドットっていう宝石でな、宝石言葉は[夫婦の幸福]」
「こ、これ…婚約指輪……つまり……」
イチカがこれ以上ないくらい真剣だ。
「俺と夫婦になってくれフィーネ!」
本気だ……思わず泣いてしまった。
「え!?え!?嫌だった!?」
「違うの………嬉しくて…止まらないの」
私の望み、それが今叶ったのだから。
一人じゃなかった、だから歩き出せた。
二人だった、だから強くなれた。
二人三脚なら、どこまでだって歩いて行ける、
これまでも、そしてこれからも。
この続きはまた、どこかで………
これにてこのお話はおしまいとなります。
こんな駄作、しかも私が運転免許習得等で
やたらと投稿が遅れるというダメダメな状態に皆様よく
お付き合いいただき、誠にありがとうございました。
この後はMSの方に集中いたしますが、
落ち着けばこれの続編や一夏TS・アンチオリ兄など
いろいろやってみたいアイデアがたくさんあります。
まあそれは置いておいて、皆様、本当にありがとうございました。