破壊王の双子には兄が居るらしい。 作:なにぬねの
ご了承の上お読みください。
穏やかな昼下がり。午後イチの授業中にくあ、と大きなあくびをする生徒が一人いた。
浅霧魁―――それがこの男の名前である。
成績優秀、品行方正、しかしコミュ力も忘れない。その上顔面も良ときたものだから(中性的な顔つきのため、本人的には微妙)、普通は僻み妬みの格好の餌食となるだろう。しかしそうならないのはやはり彼の人当たりの良さ故であった。若干、「敵に回したら怖いから」という理由も含まれているようではあるが。
普段なかなか彼がしないその気怠げな態度に周囲の人間が注目する中、魁は考え事をしていた。
(はやく帰ってNWOがしたい。)
じつはこの男、これだけ生真面目にすまして振る舞っているが根っからのゲーマーであり、今日珍しくあくびを漏らしたのも、本日発売のVRMMO「New World Online」を手に入れるために早朝から店頭に並んでいたためである。もちろん徹ゲー後の状態のまま。今日くらいは徹夜をやめておけばよかったと絶賛後悔中である。
そんなこんなで授業をやりすごし、帰宅の時間となった。すばやく荷物をまとめた魁は学校を飛び出した。とたん、顔が緩む。
「つっかれたぁ。ガチで寝ると思ったわ、あぶねー。」
いまので彼がどれだけ猫を被っていたかがわかるだろう。そういうことだ。学校のみんなは騙されているんだと、彼の友人はいつもため息をつく。まあその話はおいておこう。
家につき、早めの風呂と夕飯を済ませた魁は初期設定をはじめながら独り言をこぼす。
「いや〜、今日課題なくてよかったわ〜。っと接続完了かな。じゃあ、はじめるか」
慣れた手付きでVRゴーグルをつけると、魁はベッドに寝転んだまま意識をゲームに飛ばした。
目を開けると、そこはすでに電脳世界の中。とはいっても最初なので多分ここは設定等をするための場であった。
「えーっとなになに、プレイヤーネームか...。いつもどおりそのまま【カイ】でいいか。よし、決定っ、次は......」
撚ることも何もせず、ゴーイング・マイ・ウェイ。性格がでるものである。
流れるように目を通した次の項目には「武器選択」と書かれていた。
「やっぱファンタジー特有の魔法使いか?いや、刀も厨二心的に捨てがたい....。サポーターもいいけどやっぱり攻撃職のが面白そうだしなぁ。うーん......」
長考しているうちに、カイの頭の中では段々と希望が絞られていく。そして、
「よし、やっぱり剣士にするか!」
ジョブの中でも王道の【片手剣】を選んだカイは、次項目であったステータスの振り分けに取り掛かる。
「となると必要不可欠になるのはSTRとAGI、強いスキルとかもぶっ放したいしMPとINTにも振っとくか。うーん、流石に攻撃は剣で受け流せたりするはずだしVITとHPはとりあえずいいとして、DEXは軽く振っておこう。完璧っ、じゃあこれではじめるか!」
再び目の前の景色が切り替わる。するとそこはすでにファンタジーの要素が溢れるような街の中であった。
「おおっ!すげーー!こんな感じなのか〜。あっそうだ、ステータス!」
自身を包み込むこの環境に興奮しつつ、カイはステータス画面を開く。
カイ
Lv1
HP 40/40
MP 25/25
STR 40(+25)
VIT 0
AGI 30
DEX 20
INT 10
頭装備 (空欄)
体装備 (空欄)
右手装備 初心者の剣 【STR+25】
左手装備 (装備不可)
足装備 (空欄)
靴装備 (空欄)
装飾品 (空欄)
(空欄)
(空欄)
スキル
なし
「うん、多分特にミスはないはず。」
そう言いカイは画面を閉じる。
街を歩くものの殆どが初期装備であるが、それは当たり前のことであり、カイは少しまだ味気ないなと感じた。
ある程度操作の確認をしたところで、カイはLv上げのためにフィールドへ向かう。
西の方へ進んでいくと、モンスターの代表でもあるゴブリンに会敵した。
「ゴブリンか、よかった物理攻撃通りそうで。よし、せーのっっ」
先手必勝とばかりに駆け出し、軽い跳躍を経て斬りつける。他ゲーで築いたプレイヤースキルは当然このゲームでも発揮できるようで、カイは安堵の表情を顔に灯していた。
ゴブリンが消滅したあと、ゲーム特有の通知音が流れた。
「お、ランクアップ。」
ゴブリンはしっかりカイの糧になっていたようだ。
その後もコツを掴んだカイはモンスターをバタバタと斬り伏せていく。身につけたPSやもともとの身体能力が高いため、一時間後にはLv7となっていた。
「えっと手に入れたスキルが、【片手剣の心得Ⅰ】【体術Ⅰ】【攻撃逸し】【跳躍Ⅰ】まあどれも基本的なものだろうな」
カイの言う通りそれらはすべて基礎的なスキルで、一定のアクションを起こせば誰でも取れるようなものだった。
「んー、今日はあと少しやったら切り上げるか。」
そう言いながら森を奥の方へ進んでいくと、一匹の蟻のモンスターを見つけた。蟻と言っても中型犬くらいはあるが。
「きっしょ...。さっさと倒したろ」
幸いまだ気づかれていなかったのでカイはそのまま突っ込む。死界に回り込み、刺突。
ダメージは通るがあいにく一発で葬りきれなかった。僅かなHPを残した蟻に、もう一度襲いかかろうとしたとき―――
『キイイイイイイィィィィィィ』
蟻が絶叫した。
反撃はしてこなかったため、カイの持つ片手剣にそのまま屠られた。だが、カイの中で先程のきかかいな叫び声が木霊する。
(攻撃...?いや、こっちは何もなっていない。モンスターとしての咆哮、ただのシステムか?いや、違う。あれはもっとこう.......)
「仲間を呼ぶ声、か」
カイの導き出した答えに正解と言うように、周囲の茂みから先程の蟻がでてくる。それも何十匹と。
「これは死にゲーか?鬼畜だろ......。でも、さっきよりよっぽど燃えるよ。」
一匹の咆哮を皮切りに、戦闘が始まる。
本気を出さねば死ぬ。たかがゲームだと揶揄するものはここにはいなかった。
切っては薙ぎ倒し、切っては薙ぎ倒し、立ち回りを常に考えながら状況を捌く。それでもカイにダメージがでないのは偏に彼の
そして最後の一匹に刃を傾け、戦闘は終わる。
「うあーっっ、疲れた......。」
彼の勝利を告げるように通知音が鳴り響く。
「みっつLvアップ...。みっつ?もうちょいあってもよくね?お、スキルが。【挑発】と......【四面楚歌】?」
【四面楚歌】
半径15メートル内に敵がいれば居るほどステータスが補正される。
一体につき各ステータス+10%
<取得条件>
20体以上の敵のヘイトを集め、一定時間内にノーダメージでそれらの敵を倒しき る。アイテム使用不可。
「こーれは...結構強いんでは?」
否、結構ではなく超の間違いである。周りに敵が十体居るだけでステータスはすべて二倍なのだ。弱いわけがない。
「ここまで来ると素直に喜んでいいのかわかんねーけど......まあいっか!強くなれるし!つかそろそろログアウトだな...」
カイは伸びをしてメニューを操作し、ログアウトする。
ベッドで目を覚ました魁は時計を見て、まだ11時台なのを確認する。少しのどが渇いたので部屋をでた。
キッチンに入ると、自分より小柄な人影を見つける。
「まだ起きてたのか?ゆい。」
「あっ、お兄ちゃん!ううん、もう寝るところだよ。まいはもうベッドに入ってる」
自身の二人いる妹のうちの片割れであるゆいはこちらを見つけると花が咲いたかのように微笑む。魁はつい顔を綻ばせながらも軽く、そうかと返事をした。
水を飲んだあと、ゆいを送り届けるために部屋まで行くと、先にベッドに入っていた姉の方のまいと目が合う。
「あれ、お兄ちゃんもうゲーム終わったの?」
「ああ、結構楽しかったぞ。」
いいなあ、と二人は口を揃えて言う。二人にはまだゲームをプレイする許可が降りてないらしい。時間も時間なので軽くなだめたが、うちの両親のことなら許可が降りるのはそう遠くはないだろう。
おやすみを告げると魁は自室に戻る。「やっぱりうちの妹たちが一番だな」と考えているあたり、シスコンなのだろう。
ベッドに寝転び、電気を消す。
「割と楽しかったし、今回のは長続きしそうだな。あっ、ネッ友にも話しておくか。」
魁が寝るには早い時間だが、流石に今朝のことが体は堪えたのだろう。
つぶやきを残し、彼の意識は段々と薄れていった。
いかがでしたか?
主人公かってに名字「浅霧」にしました。てなるとマイユイもそうなっちゃうんですよね...。ご都合設定ばかりですので、本当にご了承ください......。