破壊王の双子には兄が居るらしい。   作:なにぬねの

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兄と妹の奇跡的な邂逅らしい。

 

 それはもちろんカイにとっては願ってもないことで、

 

 

 いつその時が来るのかと待ちわびていた。

 

 

 彼にとってこの世で一番愛情を注いできたのであろう二人。

 

 

 彼女らが姿を表したのは、彼が気を抜いていたときでもあった。

 

 

 歓喜に打ち震えないはずがない。しかし彼の言葉を少し代弁させてもらおう。

 

 

 

 

 「もう少し心臓に優しい出会いが良かったな!!!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 プレイヤーからの期待が溢れんばかりとなった第三層。多くのものが既に足を踏み入れたその地に、カイ達【楓の木】も進出を果たしていた。

 実はこの階層に来るまでのダンジョンでギルマスもといメイプル以外のメンバーが彼女の変貌っぷりを見て口が閉じなくなった事もあったが、それは割愛させていただこう。

 

 「人が空を飛んでる......?」

 

 その言葉が誰によって呟かれたものかは最早重要ではなく、新しいシステムやクエスト、世界観などに彼ら彼女らは心を踊らせた。

 その次の日、カイは偶然クロムとログイン時間が重なったこともあって二人でメイプルの元へ赴いている。

 目当ての黒髪の少女の隣には、彼女の親友であるサリーもいた。

 

 「ふたりとも、今朝来た運営からの通知見たか?」

 

 メイプルとサリーはどちらともまだメールボックスは開いていないらしく、ふるふると頭を横に振ったあと確認していた。

 内容は時期に来る第四回イベントについて。カイが先日考察していたとおりそれはギルド対抗戦なるものだった。

 

 「時間加速があるらしい。当日欠員が出る可能性を考えるとギルドメンバーを増やすのも......まあ、アリだと思う」

 

 クロムは補足するように言葉を発したあと、ちらりとメイプルの方を見る。

 彼の言うことは決して間違ってはいないため、大方彼女の反応を伺っているのだろう。

 もちろん彼女を含めサリーもすぐに賛同した。今ここには居ない他のメンバーはもう既にそのことについて頷いた様子を見せたらしい。

 

 「俺のフレンドは大半がもうギルド加入してるし、クロムは?」

 

 「知り合いを呼ぶことは出来るが......ギルドマスターに任せるべきだからな」

 

 もともと聖剣のメンバーと自ギルドのメンツとしかフレンドになっていないカイはもちろん、クロムももとより無理を通すつもりはなかった。

 悩むメイプルに、サリーは「それなら、」と新メンバーの勧誘を明日やらないかと提案する。

 

 「カイも来る?」

 

 そう彼女らにカイは問われるが、「明日バ先で新作作るから」と断っていた。そのかわり店内で気になる会話を聞いたら顔を覚えておくつもりらしい。

 その言葉に一同は頷き、今日のところは一度解散となった。

 

 

 翌日。特に新メンバー関係の進展などないままカイは接客及び新作開発を行っていた。

 現に今も「もう少し甘みあったほうが良いか......」などと呟いている。因みにその言葉の真実は「もう少し甘みあったほうが(マイもユイも好みだと思うし比率変えて)良いか......」である。一ミリのブレもない男であった。

 

 泡だて、盛りつけ、ときに炙り。ちょうどゲーム内時間で言う所の正午を過ぎたあたりにカラン、と店内に入店のベルの音が響いた。

 日中の明るいうちに探索を進めようとするプレイヤーも多いのかこの時間帯は客足が他の時間帯に比べ少ない。ちょうど自身の手は空き、店長は手が離せなさそうと判断したカイはドアの方にメニューを持ちながら向かう。

 

 「いらっしゃいませ、何名様d......」

 

 「あっ、カイー!四名でー!!」

 

 彼のよく知るギルマスは、白髪と黒髪の少女を連れてやってきていた。彼女らにカイと何か関係があるとはつゆ知らずに。

 

 「「「マイにユイ!?!?/お兄ちゃん!?!?」」」

 

 少しの静寂。数秒後に響いたのはほか二人の「え?」という気の抜けた声であった。

 

 

 

 

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 「ほんとにメイプルすげえわ......」

 

 「こんな偶然があるとはねえ〜!」

 

 あの後色々とごたついた彼らは、店長の計らいにより休みとなったカイとともにケーキを口に運びながら会話を交わしている。

 溺愛する妹たちに会えた彼は嬉しい反面とてつもないほどの驚愕の色を浮かべた。それに対し今回の言わば仕掛け人(無自覚)に当たるメイプルはいつも道理のテンションである。

 なお、この時点でカイにとって二人がギルドに入ることは確定の様だ。

 

 「武器は大槌で、二人は極振りなんだよね?」

 

 「はい!私もお姉ちゃんもSTR極振りです」

 

 サリーの少々面接チックな質問に、妹の方のユイがハキハキと答える。

 その後もメイプルが極振りの成功者なことに二人が驚いたり、二人が極振りに決めた理由など穏やかの雰囲気のまま会話は進んでいった。

 双子がなにか答えるたびに兄のほうが瀕死なのは最早言わずもがなである。サリーの方はもうそれが何によって引き起こる発作なのか察していた。

 

 「どうかな、カイはともかくサリーもこの二人入れていいよね?」

 

 「うん。問題ないかな」

 

 テーブル下で彼はガッツポーズを決める。だがやはり妹たちにはそんなもの悟られたくないのかすぐに切り替えていた。

 

 「じゃあ俺たちが今居る三層まで来てもらったほうが良いよな」

 

 「そうだね。早速行こうか」

 

 「「はい!!って、ええ?!?!」」

 

 まさか自分たちの他三人でダンジョンに行くとは微塵も思っていなかったユイとマイは案の定驚きの音を上げた。

 

 

 一行はまず二層進出用のダンジョンに潜る。道中のモンスターはメイプルは【悪食】を温存したり二人の事を守るためにも基本サリーとカイによって倒されていった。

 そして特に時間もかからずボス部屋へ入室。いつの日かメイプル、サリー、カイによって葬られた鹿型のモンスターがそこに待ち構えていた。

 

 「うう......死んじゃったらごめんなさい......」

 

 「私達HPも低いし......」

 

 ユイとマイは情けなさそうに、申し訳無さそうに三人に声をかける。だが帰ってきたのは安堵を覚えさせるような言葉と鋼鉄の加護を与える純光であった。

 もちろん、その光によってこちらにダメージが入らなくなったと分かったとき、二人はまたしても驚愕していた。その時の顔つきにメイプルとサリーは双子の兄を重ね、やはり兄妹なのだなと思ったのは余談である。

 

 「じゃあカイ行くよ。メイプル、二人はよろしくね」

 

 「もっちろん!いってらっしゃーい!!」

 

 カイもサリーに返事を返し、二人は目の前の敵へ疾走していく。その後ろで「二人で大丈夫なんですか?!」などと双子が騒ぐが、スイッチの入った二人には聞こえていない。

 

 「俺にも見せ場ちょーだいね、サリー。【リフレクト】【獅子の矜持】!クロ!【閃光】【薙ぎ払い】!」

 

 「取れるものならね!朧!【影分身】!」

 

 カイは飛んできた魔法攻撃を蹴り返し、増強されたSTRを用いてその巨体をパートナーとともに切り裂いていく。

 サリーは神業とも取れる回避術で頭部付近までものの数秒でたどり着き、例の林檎のギミックなどを解除していく。その際に使った【影分身】にカイは一瞬目を引かれたがすぐに思考を元に戻す。

 作戦などない。声掛けもほぼない。彼らの連携はこのNWOに来る前からのものであってそれはもちろん一朝一夕で手に入るようなものでもない。

 

 双子は刮目した。兄の戦い様に。サリーの技に。そして何より―――彼ら二人の見事なる提携姿に。

 嫉妬をした。なぜ自分たちの兄とそんなにも息があっているのかと。なぜ同じ血を分かつ私達のようにお互いがわかりあえているのかと。

 

 だがそれ以上に羨望の意を持った。あんなふうになりたい、私もあれくらい貢献したい。いわば憧憬。非常に純粋な。

 このとき二人には、一つの目標ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「というわけで、一層から連れてきたマイちゃんとユイちゃんです!」

 

 「妹たちをよろしくなー」

 

 異次元を見せつけられた双子は恐縮しまくり、ホームで出迎えた者たちは新たに投与される情報に数秒フリーズを強いられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 双子が新たに加入し数日間。【楓の木】は主にマイユイのレベリングや育成と平行に期間限定ドロップの【スイカ】を集めている。

 これは一定数集めるとギルドメンバーのSTR、AGI、INTのステータスが上がるらしく、皆塵積の思いでノルマに向けて進めていた。

 

 「まじこれほど大盾にしとけば良かったと思ったのは初めてだわ」

 

 「メイプルと大盾はもう別で考えたほうが良いけどね」

 

 「二人に会いたい......」

 

 マイとユイのレベリングは基本二人へのダメージを抑えられるメイプルが引く受けており、サリーが最低限の立ち回りや小技、カイがゲーム内の知識全般ということで、一番三人の中では双子への接触数が少ないのだ。

 既に予期せぬ彼のシスコンをカミングアウトされた周りは苦笑を漏らしていた。

 

 「そういやカナデは?」

 

 「なにやら最近図書館に入り浸っているらしい。カナデらしいといえばそうなのだが......」

 

 クロムの疑問にカスミが答える。後半言い淀んでいるのは、単にこのギルドメンバーの異色さ異端さを考慮していてのことだろう。「どのタイミングで強化されてんだか......」とクロムは他人事のように言うが、実際彼もすでにその異常組に足を突っ込んでいるのだ。カスミから見て説得力がないのだ。

 

 

 第四回イベントまで後少しである。

 




今回少し短めです。ごめんなさい......。
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