破壊王の双子には兄が居るらしい。   作:なにぬねの

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前回からまた間が空き申し訳ないです......。気兼ねなく執筆出来る時間が欲しい......。
評価してくださった方々ありがとうございました!バーが赤くなったとき「え??」ってなりました。うれしす


第四回イベントが来たらしい。《前編》

 

 「よーし、やるぞー!!」

 

 そんな底抜けに明るい掛け声に応じて、とある集団は鬨の声を上げた。

 要塞少女を筆頭としたそのメンバーの中に居たカイは、己の小妹たちの肩に添えている両腕にグッと力を込める。

 今日は、今日のために、各々は日々研鑽に励んできた。

 

 

 ――――――第四回イベント。『ギルド対抗戦』が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「こっちは水場と休憩スペースになり得そうな小部屋しかなかったな」

 

 「じゃあやっぱり地上へのルートは一本だけだね」

 

 「一応少数ギルドに組み込まれるからな」

 

 転移させられた小さめの洞窟を各々隅々まで確認し、報告し合う。クロムが言ったように九人で構成される【楓の木】は少人数ギルドに組み分けられるため、比較的防衛がしやすい作りの拠点となっていた。

 

 「じゃあ私達は攻撃に」

 

 「ああ、防衛はメイプルが居る限りそうそうヤバくはならないだろ」

 

 「予定通り行くか」

 

 事前の打ち合わせに習ってサリー、カイ、クロム、それにカスミの四人の今の役割は攻撃組。

 飛び出した彼らは周りを警戒しつつも、身の隠せる森に颯爽と向かっていった。

 そして、それを見送るものが五名。先のメンバー以外のメイプル、マイ、ユイ、カナデ、イズは防衛組。もっと正確に言えばカナデとイズは拠点のバックアップなどを含めたサポートに回る位置づけであるが。

 

 「......大丈夫かな。練習はしてきたけど」

 

 「大丈夫だよお姉ちゃん!お兄ちゃんたちも頑張ってるんだし、メイプルさん達も居るから!」

 

 そんな会話を交わすのは先程身内である兄が攻撃組として拠点をでていった双子たち。彼女らにとってはイベントは初参加の代物であるため、他のメンバー達よりも緊張の色が読み取れる。並のプレイヤーならワンパンの威力を放てるとしてもだ。なんとも笑い話である。

 

 「とりあえず、四人がオーブを持って帰るのを待ちましょう」

 

 イズの声掛けに他四人も頷くのであった。

 

 

 

 

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 「んじゃ、作戦通りで」

 

 「うん。じゃあ軽く様子見てくるよ」

 

 そう言ってサリーは木々を身軽に渡っていく。

 作戦は彼女によっておびき寄せられた小グループを一人残してキルし、その最後の一人をも利用して目的地に案内してもらう、というものであった。

 「相変わらずゲームに関する頭の回転がエグい」とカイは声を漏らすが、有効打であることに変わりはないので勿論承諾している。

 

 「お、おい!待てっ!!」

 

 遠くから近づくその声に三人は目を合わせ、持ち場につく。

 声の主達がその場に近づき、「これが罠だ」と気づく頃には三本の刃物が既に戦場で舞っていた。

 鉈は己が宿敵と言わんばかりに首を断ち、刀には致命傷となるような大振りを食らう。自身の腹に剣が生えた光景を見た者たちも同様に、一瞬のうちにしてグループの半数以上の人数がやられていた。

 

「撤退よ......っあ」

 

 そして四人目。後ろからの【ファイアボール】に敢え無くバランスを崩され、刃物が降りかかる。

 

 「行こうか、サリー」

 

 「分かった。急ごう」

 

 逃げた一人を追うために、カイとサリーが飛び出す。先程こそ隠密系の動きが求められたためカイは待ち伏せに徹したが、ただ追うとなれば話は別。青と黒の衣装は暗がりの多い森林によく溶け込んだ。

 

 「二人はマーカーを追って来るんだよな?」

 

 「そう、これならAGIの差を気にする必要もないしね」

 

 ある程度の確認を終えた後は二人共口は閉ざし、ターゲットの追跡に専念する。

 潜って、飛んで、駆け抜けて。静寂を貫いているはずなのに二人の息は面白いほど合う。

 

 (やっぱり、サリー(理沙)とプレイしてるときが一番のめり込めるんだよなぁ)

 

 カイは思う。己の隣で走る少女について。やはり長年のゲーム仲間の隣は心地が良いのだと。

 息のしやすさに思わず、「ふ」と言う笑みが漏れたが、それは木々の呼吸とともに誰にも聞かれること無く霞んでいった。

 

 

 

 その後、後続できたカスミとクロムと合流した彼らは、自分らと同じであった小規模ギルドに突撃し、見事一つ目のオーブ奪取に成功した。若干戦力差が浮き彫りになりすぎて嬲った感を残したが、まあそれは置いておこう。

 とったオーブを拠点に持ち帰るカスミとクロムに別れを告げたカイはサリーと再度オーブ探しへ繰り出す。

 基本的に小規模、もしくは中規模の守りが薄そうなところ、と危険は冒さなかったため一時間ほど経った現在も二人はゲーム開始時と同じ状態であった。

 

 「お、これは川か......」

 

 あっという間に森を抜け、更に湿地帯を抜けた先には幅、深さともにそこそこの川に出た。

 

 「んー......。ねぇカイ、提案なんだけど」

 

 「どした」

 

 サリーの話した内容は、ここで一度別れ、別々にオーブ回収に向かうこと。そしてその移動方法としてカイはこの川を利用しないかということ。

 

 「俺は水の中のほうが機動力が上がるし、制限時間来たらクロが泳げる、って算段か?」

 

 「そのとおり。見たところここはマップで言う西地点で、この川は南に向かって伸びてるみたい。なら私は反対の北と東探索したほうがいいからね。マップ作成も早まるし」

 

 「そうだな。じゃあそれで行こう」

 

 そう言って彼らは分かれる。サリーは駆け出し、カイは目の前の水に飛び込んだ。

 バシャン、と言う音の後は周囲は淡い青色。いつの間にか真上まで上った日の光もあって随分と幻想的な空間である。

 

 (サリーより多めを目指すか)

 

 いつの間にか宿った友人兼ライバルへの闘志を燃料に、カイは水を勢いよく蹴って前進し始めた。

 

 

 

 

 

 

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 所変わって第四回イベント専用エリア【観戦場】。

 先程どこぞの要塞が長を務めるギルドの防衛戦と言うなの蹂躙を目の当たりにしてしまった彼らは、次はどこで火の手が上がるのかと待ちわび、穴が空くほどモニターを見ていた。

 時折大規模ギルドの戦闘やトップランカーの活躍が流れるたび、会場は盛り上がる。

 そんなとき、一人のプレイヤーが訝しげな声を上げた。

 

 「おい、こんなんアリか......?」

 

 他のものもその声が聞こえたのか、彼の視線の先にあるモニターに目を向ける。

 そこに映されたのは、一人のローブを被った男性プレイヤー。剣を片手に恐らく敵陣のであろうオーブを奪いながら一ギルドを潰していく。

 細剣特有の突きとそれを囮かのように繰り出される斬撃の数々。

 確かに実力者だ。中小規模とはいえ一人で事をすませてしまうのだから。

 

 しかし裏を返せばそれだけ(・・・・)なのだ。彼らはもうその目で獄炎や剣聖、魔王の如く姿をした者たちを見てしまっている。

 

 「そんな特別なやつか?確かにランカーの一人だとは思うが......」

 

 

 

 

 「あいつ、川から飛び出してきたんだ」

 

 証言者の声が響く。声に耳を傾けたせいか場は急に静かになった。

 

 「あのカメラは最初あの辺りの全体を見渡せる位置から徐々に徐々にズームして今の画角になったんだ。その間、川に飛び込むやつなんて誰ひとり居なかった。大体十分弱。最低でもその時間ずっとあいつは水の中に居たんだ」

 

 ヒュ、と誰かが息を飲む声が伝染したように彼らの顔を青く染めていく。

 現在既に【水泳】【潜水】のスキルは知れ渡っていた。勿論所持者も一定数いる。しかし上げる必要がなかったのだ。スキルレベルを。

 更にそれらのスキルには少なからずプレイヤースキルも関わってくる。ならどうなるか。水に潜伏しているやつがいるだなんて思いつくはずがない。合理的ではないから。

 加えて今回の地形。この場で見ていた者たちは分かっているのだが、川沿いには数個ギルドの拠点が置かれている。

 

 最悪のような、最凶のような掛け算。答えなんて嫌でも思いつく。

 

 『川沿いのギルドが軒並みやられる』

 

 更にそれに拍車をかけるあの戦闘力。

 最早あいつは止められないのだと多くの人が分かった頃、その顔が晒され誰もが納得の表情を作る。

 第一回イベント(バトルロイヤル)第二位。【楓の木】所属のカイ。

 人々は彼を【王子】とも、【姫】とも、【暴君】とも呼ぶのだ。

 

 

 

 

 

 

 カイが川をどんぶらこと流れながらプレイヤーを討滅し早数刻。

 彼はその成果であるオーブ五個を手に握りしめながら自陣の拠点に帰っていた。

 

 「「おかえり!お兄ちゃん!」」

 

 双子が満面の笑みで出迎えると、カイも張り詰めていた緊張が解け顔が緩む。

 

 「あ。サリーはいくつ持って帰ってきた?」

 

 「んー、カイは?」

 

 問われた彼女は少し考え込んだ後先手を譲る。その言葉にカイは胸を張って答えた。

 

 「俺ぇ?五個」

 

 少しもったいぶって言ったその言葉は、サリーの望んでたものではないらしく俯きがちに悔しさを浮かべて「一個負けた......」と呟いた。

 それを聞くと彼はニマ、と笑みを浮かべた。

 

 「俺の勝ちね」

 

 「別にこの後大量に稼いでくるから」

 

 「じゃあ楽しみにしとこうかな?」

 

 軽口を叩きながら二人は笑い合う。その光景を周りも温かい目で見守っていた。

 しかし現実に戻ろう。この数時間のうち奪ったオーブは計十個以上。

 

 「そろそろ取り返しに来る時間かもな」

 

 カスミは皆を見渡しながらそう言った。

 するとそれを待っていたかのような足音が洞窟に近づいてくる。

 

 「おっと、噂をすればってやつか」

 

 総勢五十名ほどのプレイヤー。しかし見たところ少数ギルドの連合だろうと誰かが判断した。

 彼らはこちらの状況を確認し、咀嚼した途端目を血走らせる勢いで突撃してくる。しかし対する九人は全く物怖じもしない。

 

 「九人全員で戦うのって初めてだっけ?」

 

 「まあそうかな?イズさんとか」

 

 そんな呑気な会話をしつつ、メイプルはクロムに頼まれ【身捧ぐ慈愛】(いつもの)を展開する。

 カナデが【ヒール】を使い、準備は万全。

 

 「「【ダブルスタンプ】!」」

 

 双子が発する轟音によって、戦いの火蓋は開けられた。

 

 初手で多数の人間が可愛らしい掛け声とともに葬り去られ、それを抜けてきた者は鉈と刀によって切り捨てられる。

 オーブに近づいたものは幾重にも降りかかる爆弾によってやられた。

 それすらも掻い潜ったらお次はカナデ御用達の蔵書によって沈められ、それをダガーが容赦なく襲う。

 先に最早災害レベルの例の双子をやってしまおうかと考えたものには、絶対零度の碧眼が嬲りにかかった。

 

 「くそっ、【ディフェンスブレイク】!」

 

 「【ピアースガード】」

 

 愚かにもその魔境の真ん中に立つ大盾を狙った者は弾き返された。そして大槌に沈められる。

 

 「メイプルかよ......ミスったな」

 

 そのプレイヤーは去り際、しっかりと自身の選択の間違いを身にしみて感じたのであった。

 九人は余裕の勝利を収める。しかし、洞窟の外はいつのまにか暗くなっていた。

 第四回イベント初の夜は、しっとりとした夜闇がフィールド全体を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ただいまー。オーブ二個しか取れんかったよ」

 

 カイののんびりとした声が発せられる。

 今減税拠点に居るマイとユイ、そしてメイプルは彼の帰りに「おかえり」と応答する。

 サリーは単独で攻撃に。イズ、カスミ、クロムの三人も一緒になって外に繰り出していた。

 

 「あれ?カナデは?」

 

 「ええと、今は防衛大丈夫そうだからオーブ取りに行ったよ」

 

 カイは「そっか」と返しながら自身の稼いできたオーブを自軍のオーブに近づけ、片付けていた。

 彼も一応は攻撃組なのだが、集中疲れをしょっちゅうするようでこうして時偶拠点に帰ってきてた。

 充電とばかりにカイは双子を構い倒す。現在は防衛の方も何事も無いようで穏やかな空気が流れていた。

 

 

 メイプルがサリーからのメッセージを受信するまでは。

 

 

 

 

 「カイっ!サリーを助けて!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 彼は走った。とんでもなく頭を回転させながら。己にAGIバフを掛けながら。

 メッセージの内容は至ってシンプルだからこそ焦りが痛いほど読み取れた。

 『ごめん。多分足止め食らう』普段の彼女ならば送らないであろう、時間が遅くなるだけなんて。

 だから彼も焦った。己の友人を信用していたのだ。なのに危険が起きる可能性があるなんて最初は信じられなかった。

 

 そうこうしているうちにサリーのマーカーが点灯する座標までつく。ドーピングシードとバフによって得た瞬速で着いた場所では、青みがかった銀の兵士たちの中で一対一(・・・)で戦うサリーとフレデリカの姿。

 周りの兵たちは一切手を出していない。しかし我慢しているようにとれた。

 

 (なるほど、そういうことかよペイン......!)

 

 カイはここには居ない彼のライバルの一人に対して悪態をつく。そして―――彼も手出しをしなかった。

 

 

 数分後。苛烈な戦いを極めた二人の少女に決着がつく。

 サリーのダガーだ。その鋭利な刃がフレデリカに近づき、近づき......

 

 

 一人の兵士がサリーに手をあげようとした。

 勿論彼女は避ける。もう片方の者にいたっては目をむき、怒気を孕ませていた。

 

 「ちょっと!手を出しちゃ駄目って「かかれーーーー!!!」

 

 大量の兵士が鬨の声をあげ、それに続いて他の者達もサリーに襲いかかる。

 彼女は疲労困憊であるが、生き残るために応戦しようとした。ダガーを握りしめ、クッと唇を噛む。

 

 

 

 

 「駄目だろう」

 

 一言で言えば恐怖。その場に居たもの全員がその声を聞いて地面に縫い付けられた。

 人の群れを押しのけ、カイはフレデリカの元へ進む。

 

 「フレデリカ。お前は今回個人としてサリーにぶつかった。そうだな?」

 

 「う、うん......」

 

 気まずそうに、バツが悪そうに彼女は答える。

 その言葉に彼は内心安堵を覚えていた。

 

 「ペインに伝えとけ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

  協定は早めに解消(・・・・・・・・)だ」

 

 そう告げ、カイは一度背を向けた軍勢へと向き直る。その手には剣が。隣には漆黒の体皮の一角が居た。

 

 「悪いんだけど、お前らが先に手ぇ出したからな」

 

 巨大な水槽が展開され、其の場に居た兵士全員が飲み込まれる。彼はその水に近づき、潜り込んだ。

 そこからは一瞬。舞うように斬り殺されていく兵士はすべてポリゴンに包まれ、水中に残るは一人と一頭のみ。

 スキルを解除して地上に戻ったカイは、立ち尽くすサリーを無理やり抱きかかえ、再度フレデリカの方を向く。

 

 「フレデリカは今回悪くない。寧ろ俺とペインの約束をギリギリまでなんとか守ろうとしてくれたんだろ?だから、ありがとう」

 

 そう告げたカイは己の腕の中にいる少女への説明は二の次だと、拠点を目指して駆け始める。

 

 

 

 

 

 第四回イベントはまだ、始まったばかりなのだ。

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