破壊王の双子には兄が居るらしい。 作:なにぬねの
めちゃめちゃやる気でます!!
『それで?もうそろそろ第一回のイベントだっけ?』
「ああ。バトルロイヤル形式らしい」
カイの部屋は現在、話し声が響いていた。
電話口の相手はカイが数年前にゲームで出会い、仲良くなった相手。所謂ネッ友と言うやつである。
『あ~...、いいなあ。私も早くやりたいよ』
「まあまあ、テスト終わったらゲーム解禁されるんだろ―――
―――理沙。」
その名の少女は電話越しでも分かる程の歯がゆさを見せていた。その様子を感じ取った魁はくすりと笑うが。
『私がログインできる頃にはもうイベントは終わってるかあ。残念』
「そしたら俺先輩じゃん。レベリング頑張っておこう」
『うー...。すぐ追いついてやるんだから!』
この二人、ホラゲを除けばどんなゲームでも同じような高成績を残すのだ。つまりはお互い良き
『あ、そういえば私の友達もNWO始めたんだよね』
「へー、その子ゲーム好きなの?」
『いや、私がおすすめし通した』
(それは最早押し売りなのでは......?)
彼女の押しの強さを知っている魁はそう思ったが、口には出さない。
「じゃあ俺もその子に会えるかなー。インしたら紹介よろ」
『了解。じゃあそろそろ勉強戻るから切るね?』
「おう。あっ、そうだ忘れてた」
魁はいい忘れていたことを思い出したのか理沙を止める。
『どうしたの?』
「あのさ、今度新作のゾンb『やんないからっっ!!』
「......やっぱだめか」
もう一度言っておこう。仲はいいのである。
それから数日後、ついに第一回イベントの日となった。やはり皆楽しみにしていたのか広場に集まる人の数は尋常じゃない。
カイは周りを気にしながらもステータスの最終確認を始める。
カイ
Lv38
HP 40/40(+100)
MP 85/85(+50)
STR 195(+70)
VIT 0
AGI 145(+75)
DEX 60(+10)
INT 65(+30)
頭装備 猛者の象徴Ⅹ 【DEX+10 MP+10】
体装備 御影の上衣 【STR+20 MP+40】【破壊不可】【賢者の秘法】
右手装備 導星の一閃 【STR+50 AGI+25】【破壊不可】【十二星座の加護】
左手装備 (装備不可)
足装備 玉屑の洋袴 【AGI+30 INT+30】【破壊不可】【雪獄の罪人】【宿雪】
靴装備 宵闇のブーツⅧ 【AGI+20】
装飾品 黒の手套Ⅶ 【HP+100】
(空欄)
(空欄)
スキル
【片手剣の心得Ⅳ】【体術Ⅲ】【攻撃逸し】【跳躍Ⅱ】【四面楚歌】【パワーオーラ】【MP強化小】【MP回復速度強化中】【MPカット小】【魔法威力強化中】【水泳Ⅳ】【潜水Ⅳ】【投擲】【しのび足Ⅱ】【気配察知Ⅰ】【遠見】【氷雪喰らい】【魔法の心得Ⅲ】【ファイアボール】【ウォーターボール】【ウィンドカッター】【ダークボール】【サンドカッター】【ファイアウォール】【ウォーターウォール】【ウィンドウォール】【リフレッシュ】【ヒール】【炎弾】【水弾】【光線】【火魔法Ⅲ】【水魔法Ⅲ】【風魔法Ⅱ】【光魔法Ⅲ】【闇魔法Ⅰ】【土魔法Ⅰ】
装飾の枠を一つ取った黒いグローブはイズに依頼し、作ってもらったものである。火、水、光の魔法は先日Ⅲまで伸びたので【炎弾】【水弾】【光線】が使えるようになった。因みに
メニューを手早く閉じると視界の右端にメイプルを見つける。声をかけようとしたが、それは運営からのアナウンスによって止まった。
小型のドラゴンのような形をしたNWOの公式キャラクターがルールを説明し始める。
新たなフィールドで競い合い、敵撃破数、自身の撃破数、与ダメ、被ダメの4つの観点から点数を算出するらしい。イベントの形式はすでに発表されていたため想定から大幅に逸れることはなかった。
(死んでも即ゲームオーバーじゃないのは助かるな)
むしろイージーだとカイは考える。普通の人ならば大法螺であったりもするが、彼の場合は態度に相応の実力のついたものだった。
そうして考え頃をしているうちについにカウントダウンが始まり、人々の待ちきれないと言わんばかりの期待感がより膨らむ。
「それではー!3!2!1!スタートどらー!!!」
カイが飛ばされたところは、広く果てしなく感じるような荒野だった。
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【NWO】イベント観戦席その3
241
やっぱ優勝はペインか?ゲーム内最高レベルだし無双してる
242
あれはやばい
動きが人間やめてるw
243
でもやっぱ順当に勝ちを重ねていくのはよく聞く名前ばっかだな
244
トッププレイヤーが強いのはそりゃ当然よ
245
あ、王子写った って え??
246
え、今何が起きた?
247
何あの動き 頭おかしいやろ
248
全部攻撃弾くか避けるか受け流してない?まだ被ダメ0かよ
249
つかやっぱ顔整ってんな
250
顔にしか目がいかん
251
と思ったらなんか凄いの撃ってね!?
252
ドーム?プラネタリウムか?
253
やっぱかっけえなおい
254
イケメンはやることもスマートだな
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数分前に戻し、バトルフィールドに目を向けよう。
荒野にいたカイは時間は有限とばかりに動き出し、かかってきた、見つけたプレイヤーをバッサバッサと斬り伏せていた。おかげでMPはいくらスキルを撃っても変わりない。
「賢者さまさまだなっと」
カイはこのバトルスタイルを可能にした例のスキルに感謝し、そうつぶやいた。
暫くフィールドを駆け巡りながらキル数を稼いでいく。もちろん今のところは被ダメは0であり、カイ自身も重畳の滑り出しと感じていた。
走っている途中、10人ほどのパーティーがカイの前に現れた。
(あー、このイベントパーティー組めたんだっけ)
カイが一人だと気づくと、敵のリーダーであろう一人の男は威勢よく言葉を投げる。
「はっ、兄ちゃんも一人か。随分きれいな顔してるけど、頂いたぜっ!!」
男は剣で切りつけようとする。が、カイの手腕によってそれは流されてしまった。
「「【ファイアボール】【ウィンドカッター】!」」
カイに向かって火球と風の刃が飛んでくる。
(ふむ、魔法使いが2〜3人か。装備から見た時、重装も同じくらいいたから後衛を先にやるのは得策ではないか......)
勝利の確信が持てたように感じた相手は、一瞬攻撃の手を緩めてしまう。
瞬間、カイはパーティーの中心に陣取った。
「【十二星座の加護】」
展開されたドームは全員を容赦なく包み込み、混乱に導く。視界が暗闇に染まる、逃げたくとも自身の動きが明らかに遅くなる。どれもが恐怖を煽る要素となった。
「リンチなんて舐めた真似してくれてんじゃん。まあ別に倒せなくはないんだけど、ちょっと面倒かなそういうの」
カイのステータスは【四面楚歌】で大幅補正されている。有り体に言えばカイは様子見同然と手を抜いていたのだ。
周りに聞こえるようにそう呟いたカイは、剣を構え疾走の準備をする。
「ま、上でも見てなよ。さっさと終わらすから」
カイの牙にかかった彼らは、目の前が白く染まった後、初期位置にてひどく後悔した。標的を間違えた、と。
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255
やべえ ドーム消えて中見えたと思ったら王子以外消えてるってどゆこと
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王子のおかしい所その1 攻撃を全て弾く 魔法は避けるか対の属性ぶつけてる 150人弱潰して被ダメ0
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なんか当たり前のように弾くんだよなあ 攻撃速度とか走力からしてAGIがメインっぽくないのに
258
その2 スキル多分使いまくってるはずなのにMP切れない
その3 バフの底が尽きない
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エフェクトでてるし何かしらやってんのは確かなんだが...
259
王子自強型かあ
260
でもあの大盾よりマシっぽくね?
261
お前さてはさっきのプラネタリウム見てないだろ
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その前はなんかプレイヤー操って相討ちさせてたぞ
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もう恐怖なんだよなあ
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つか絶対そもそものPS高いだろ
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それな
268
あのバフスキルも不明すぎるしステも一線級とか......
269
おかしいな、俺も初期勢のはずなのに
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カイは荒野を抜け、岩場のエリアに入る。
「げ、足場悪...。早めに抜けるか」
そう呟いた瞬間、自身の脇腹に短剣の鋒が迫っているのを見る。慌てて剣で軌道修正するも、軽く掠ってしまいカイのHPの一割を削った。
ノーダメを維持していたカイはわかりやすくショックを受けるも、目の前の敵に集中する。
(褐色の肌に
事前に得た情報と照らし合わせ、考えていた攻略法を思い出す。
ドレッドとの戦闘は苛烈を極めるものであった。短剣ならではの2つの刃、自身の上を行くAGI、そして一般人より抜きん出たその
(せめて一瞬隙ができれば......よし、いける)
少し考え込んだカイは、すぐさま目を開け行動に移る。
ドレッドの上に、ウォーターボールが撃たれた。頭上に、だ。
「おいおい、どこに撃ってんだよ」と発された言葉は無慈悲にもカイの放った言葉にせき止められた。
「【ファイアボール】!」
頭上の水球を標的とした火球はそのままものの見事に着弾し、大きな破裂音を出して小さな煙幕になりうる水蒸気を出した。
「!?」
動揺し、一瞬の隙を与えてしまったのがいけなかったのだ。ドレッドはカイに接近される。
刃が当たるほどの距離で、カイは発する。
「【雄牛の守り】」
放つスキルはバフであるにもかかわらず、対象はカイではなかった。
「は?ステータスが...チッ」
ドレッドのステータスはAGIが大幅に下がり、代わりにVITが少し上昇していた。
【雄牛の守り】
対象のVIT+30% AGI−25% 効果持続時間は5分。
今回の作戦の味噌は、「味方」ではなく「対象」と書かれていること。事前の確認によりカイはこれが敵にも味方にも当てはまるのを知っていた。
相手のAGIが自分より低くなったと確信したカイは、躊躇なくその刃を振るった。
「終わりだよ」
守りが固くなったとはいえ、その数値はもともと低いから当然バフがあっても十分に攻撃は通る。
ドレッドはあっけなく光に消えていった。
達成感に浸っているカイに、運営からのアナウンスが響く。
「途中経過どらー!現在の上位3名はこちら!!」
2位の項目にカイは自身の名前があるのを見つけ、内心喜ぶ。
(2位か、よっしゃっ)
今からの30分は回を含めた三人を倒すと得られるポイントが増価するらしい。
「んー、じゃああれだしとくか」
カイは周りに誰もいないか【気配察知】で確認した後、岩陰に隠れた。
「【神託の代行者】」
それから終了まで、カイに注目していたすべてのプレイヤーが混乱に陥ったのは言うまでもないだろう。
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「しゅうりょーう!!1位から3位までの順位変動は無しどら〜!」
その声を聞き、納刀したカイは光に包まれていった。
目を開けると、彼は2位と書かれた台の上にいる。即座に状況を判断したカイは冷静になった。
(あ、メイプル3位なのか。......めっちゃ噛んでるしめっちゃどもってる。気をつけよ)
一言を求められていたメイプルはそれはもう盛大にやらかしていた。その様子を多くのプレイヤーに記録されていたことに彼女は気づいていなかったが。
そうこうしているうちに、カイの番になる。
「えーっと、対人戦の感覚を掴めたので重畳です。次は一位を目指します。あと......」
カイはいうかどうか悩んだ末、言葉を続けた。
「......町中で会ったら、仲良くしてくれると嬉しい、かな」
照れ隠しゆえのはにかみはこの上なくカイの美形を引き立てる。このときほぼ全員の人がメイプルに続けてカイも可愛いと判断してしまっていた。因みにこの後結局姫か王子かでスレが過去一盛り上がったのはまた別の話である。
魁はその日、嬉々とした気持ちのままベッドに入った。