破壊王の双子には兄が居るらしい。 作:なにぬねの
サリーかフレデリカがいいなぁ、とかなんとか戯言です。お気になさらず。
地底湖にてダンジョンが見つかった日から数日。メイプル、サリー、カイの三人でいる時はそのログイン中の時間の殆どを地底湖探索や釣りに費やしていた。サリーが潜っている間、カイはサリーの邪魔にならない範囲で探索や釣りを、メイプルは飽きたら外に寝っ転がって【挑発】を使ったり、カイに水上歩行をせがんでいたりした。最も、その
カイ達はログイン時間を無理やり合わせているわけではないので、当然彼もこの数日間ソロの時はレベリングに励んでいる。プレイ日数のまだ浅い二人はともかく、初期勢であるカイとも成れば必要経験値も大幅に増えるので、こまめな精鋭狩りは欠かせないのだ。まあ、昨晩は徹夜でサリーのスキル集めに連れ回されたらしいが。
「ぷはぁっ......!はぁ......はぁっ......何分潜ってた?」
先程まで水中を悠々と泳いでいたサリーが帰ってくる。
「す、凄いよ!40分!!」
「確か【水泳】と【潜水】どっちもⅩになったんだろ?俺もそれ以降上がんないし......やっぱそれが限界かな」
「うーん...片道20分で奥まで辿り着けないと溺死か......]
スキルによる限界値が二人の頭を悩ませる。
「じゃあじゃあ!20分経ったら私かカイがメッセージ送るのはどう?」
「ナイスアイデアメイプル!!じゃあふたりとも、お願いしていい?」
サリーは眉を下げ、二人に頼む。当然そんな事を断る理由など二人にはないため、二人は彼女に鼓舞をする。
「任せといて!充分に潜ってきてね!」
「良い戦果を期待してるぞ」
「行ってきます!」
仲間二人の心地よい返事に口角を上げたサリーは、勢いよく飛び込んでそのまま湖底の横穴へ向かっていった。
「行ったな。さて、俺たちは何してる?」
「うーん...。カイ達のおかげで鱗はもう大丈夫そうだから......あ!これ街で買ってきたんだ!!」
そう言ってメイプルが出したのは、真夏の海によく似合うファンシーな色合いの浮き輪であった。
「おー......なるほどね、俺が泳いで引っ張れば良いのか」
「そう!だからお願いします!!!」
「しゃーないな」
サリーがいない間、基本的にカイの話し相手はメイプルだけである。もちろんそれはお互い様だが。なので、カイはもう十分すぎるくらい彼女の奔放さと無邪気さを知っていたのだ。よってカイの中でのメイプルの立ち位置はもうほぼ妹的存在。しかし彼の
40分後、サリーが二人の元へ戻ってくる。
「はぁっ......はぁっ......」
肩で息をしている彼女にメイプルは声をかけた。
「どうだった?」
「何本にも道別れしてて......今日はあと一回で止める。どれくらい深いか分からないし」
「そうか。じゃあまた通知送っとくな」
その言葉を聞き終えたサリーは再び水の中へ戻っていった。
一方、メイプルの方は水遊びはもう飽きたようなので外で昼寝兼スキル探し、カイは意外とハマってしまった釣りと水中探索を始めていた。
「おっ、レア素材。後でイズんとこ持ってくか」
そして更に40分後。戻ってきた彼女は先程見せていた疲労感など1ミリもない様子だった。
「ボス部屋!見つけたっ......はぁ......はぁ......」
サリーはカイ、メイプルのそれぞれとハイタッチをする。
「私はちょっと休憩したらボス部屋に突っ込む!二人は?」
「私は、今日はそろそろログアウトかな」
「俺はまだ大丈夫」
「そっか。ごめんね、付き合わせちゃって」
「気にしてないよ!」
「フレンドは助け合いだろ」
そんな言葉に彼女は顔を綻ばす。
その後メイプルは「頑張って勝ってね!」と残しログアウトしていった。
「カイはほんとに良いの?別に他のことがやりたいなら付き合わなくていいからね?」
「え、まだそんなこと思ってたの?」
サリーの遠慮にカイは少々刺々しく返す。しかしその後に綴られた内容は温かみに満ちていた。
「毎回いろんなゲームで助け合ってきたじゃん。昨日だってスキル集めやったし、この後も通知送ったほうが多分いいし」
「あー......」
「ていうか、俺も早く3人でボス戦とかしたいからさ。まあ頑張って強いの手に入れてきてくださいよ」
「!......うん!当たり前!!」
その後ステータスの最終確認を終えたサリーは、彼女を待つのであろうこの地底湖の主の元へ向かった。
数十分後、カイのもとに通知が届く。
『ダンジョン無事クリア!!街まで転移で戻っちゃったからきてくれる?』
その文字を見て、カイは安堵の笑みを漏らした。そもそも彼はサリーの能力をしっかり知っていたためそこまで心配はしてなかったが、ある程度のイレギュラーが起こるNWOでは完全な安心はできなかったのだ。
「っし、んじゃ行くか」
カイは立ち上がり釣具をしまうと洞窟を抜け、地上へ戻る。すっかり慣れたゲーム内特有の「明るいけど熱くならない日差し」を浴びながらカイは街まで全速力で戻っていった。
カイは街につくと彼を待つ人を探す。彼女は先の戦いで得たのであろう装備を身にまとい、カイのことを待っていた。
「お、いた。ダンジョン踏破おつかれ」
「ありがとう。見てこれ、めちゃくちゃいいでしょ。見た目も性能も私好み!ただ靴だけは手に入らなかったんだよね〜」
白と青で形成されたコートとインナーを締める濃紺のショートパンツ。首元からはやや長めな青いマフラーが垂れ下がり、その先端の透明感のある材質は水を連想させるのにぴったりであった。しかし確かに、彼女の足元だけは初心者のそれのままである。
「わー......そのちぐはぐ感なつかし......。俺もそーだったわ」
カイは昔を思い出すように遠くを見つめるが、いかんせんまだ2ヶ月も経ってないのである。めんどくさい懐古厨と言うか先輩風はサリーに軽く流された。
「でさ、カイまだ時間ある?」
「ん?おう。今日はまだな」
「んじゃ、私のブーツ探しにショッピングに付き合ってもらいまーす」
「え、」とカイはサリーに色々と目で訴える、がそれも意味はない。
「私より街は詳しいだろうし、よろしく」
「おま、さっきの謙虚さはどこに......ああいいよ。じゃ、かっこいいやつ探すか」
「そうこなくっちゃ!」
翌日、時間を合わせてログインしたカイ達3人はサリーの新スキルお披露目の後、そのまま二層へ続くダンジョンへと向かっていた。
因みに、スキルを破棄できることについて知らなかったメイプルに対してサリーとカイの二人がため息をついたのは通常通りである。
「ちょっと、絶対メイプルのこと落とさないでよね?!」
「だいじょぶ落ちてもきっとこの子はノーダメージ」
「なんか雑な運び方だなぁ」
サリーも充分すぎるほどダメージを与えられるようになった今、最も合理的だと採用された移動方法はカイがメイプルを小脇に抱え、メイプルは大盾を突き出し、サリーが雑魚敵を蹴散らしていくスタイルであった。これだとカイは何かあった時反対の手にある剣で対応ができ、かつメイプルの【悪食】のついた盾とサリーの小敵へは過剰な殲滅力もあり、常に相当なスピードで移動することが可能になるのだ。まあ当然、これを見たプレイヤーの手によって掲示板はまた動くのだがそれは別の話である。
ともかく、前までとは比べ物にならないスピードで移動した3人はあっという間にダンジョン前につくことが出来た。
「カイってバフ掛けと回復もできるんだっけ?」
サリーにそう問われた彼は肯定の返事をするとともに自身のステータスを確認する。
カイ Lv42
HP 40/40(+100)
MP 90/90(+50)
STR 217(+70)
VIT 0
AGI 156(+75)
DEX 70(+10)
INT 80(+30)
頭装備 猛者の象徴Ⅹ 【DEX+10 MP+10】
体装備 御影の上衣 【STR+20 MP+40】【破壊不可】【賢者の秘法】
右手装備 導星の一閃 【STR+50 AGI+25】【破壊不可】【十二星座の加護】
左手装備 (装備不可)
足装備 玉屑の洋袴 【AGI+30 INT+30】【破壊不可】【雪獄の罪人】【宿雪】
靴装備 宵闇のブーツⅧ 【AGI+20】
装飾品 黒の手套Ⅶ 【HP+100】
水巫女のアンクレット 【水面の舞台】
(空欄)
スキル
【片手剣の心得Ⅵ】【体術Ⅳ】【攻撃逸し】【跳躍Ⅱ】【四面楚歌】【パワーオーラ】【MP強化中】【MP回復速度強化中】【MPカット中】【魔法威力強化中】【水泳Ⅹ】【潜水Ⅹ】【投擲】【釣り】【しのび足Ⅱ】【気配察知Ⅱ】【気配遮断Ⅱ】【料理ⅴ】【遠見】【氷雪喰らい】【魔法の心得Ⅲ】【ファイアボール】【ウォーターボール】【ウィンドカッター】【ダークボール】【サンドカッター】【ファイアウォール】【ウォーターウォール】【ウィンドウォール】【サンドウォール】【リフレッシュ】【ヒール】【炎弾】【水弾】【光線】【石弾】【火魔法Ⅲ】【水魔法Ⅲ】【風魔法Ⅱ】【光魔法Ⅲ】【闇魔法Ⅰ】【土魔法Ⅲ】
釣りと水中探索を経て思わぬ収穫であった【気配遮断】を抜かせば順調な成長である。
最終確認を終えると3人は目の前にあった扉からその先へ押し入った。
ボス部屋へと続く通路は比較的狭く、もし通常のパーティならば敵一体に対しいちいち留まって対処するよう仕向けられたようなものだった。しかし、それはあくまで普通のプレイヤー。この3人はいずれもどこかしらが突出した悪い言い方をすれば異常ステータスまたはバトルスタイルのため(主に盾役が)そんなことは敵が突進タイプな限り必要なかった。
「この猪、自分から突進してくるから楽だね」
「らくちんらくちん〜」
「それ、メイプルがいる時限定な」
相手を討ち滅ばさんと突進してくる猪は、無慈悲なくメイプルの自慢の黒盾に収まっていく。
しかし、遠距離攻撃を持つ相手となれば話は別だ。
「わわっ!」
「あー、サリーの情報にあった熊か。どうする?俺やろっか?」
カイは懐に刺していたレイピアを構え、その鋒を光らせる。しかしサリーの囁いた作戦を聞き、その腕を下げた。
メイプルに大盾を構えて立っているように指示すると、彼女は小さく言葉を紡ぐ。次の瞬間、大盾は地面にすっと吸い込まれたように3人の目に写った。しかしそれは相手も同じようでチャンスが出来たとばかりに熊はその大爪を振るう。
「えっ、あれ?!盾ちゃんと持ってって、、ひっ!ひょええええ!!」
しかしもちろんそんな安直な結果にはならない。本来止まるはずのない位置で爪は止まり、【悪食】のエフェクトと共に姿を消す。
「【蜃気楼】の実験は成功かな?」
「し、【蜃気楼】か〜!いきなり大盾が消えてびっくりしたよ」
「意外と綺麗に見えなくなるもんだな。これ対人戦で大活躍じゃね?」
「うん。内容次第だけど次のイベントでも使えそうかなー」
その後も順調に一行は通路を進んでいく。そしてついに、最奥の扉を眼前にした。
開く。その先には大樹がそびえ立っていた。
「それじゃ、作戦通りで!」
「「了解!」」
サリーの掛け声にほか二人も武器を構える。と、同時に目の前の青々と壮大な大樹が鹿のボスに形を変えた。
しかしそれは3人の中では想定内。サリーによる情報収集の賜である。
戦線は鹿の攻撃によって動きだす。しかしその広範囲攻撃はメイプルは持ち前の盾とVITで、サリーはその回避術で、カイは自慢の反射速度と
「メイプル!」
カイの声がかかり、大盾の少女が生み出すは三首の毒竜。
しかし、普段ならば膨大なダメージを与えるはずのそれは鹿に届くぎりぎりで障壁に阻まれた。
三人はコンタクトを取りつつ作戦を変更。メイプルが攻撃を受けながらカイは阻まれない程度の攻撃を入れ削り続ける。その間に、サリーは偵察という名目で鹿の頭部へと近づく。
程なくしてサリーが帰ってくると、彼女はメイプルに情報を伝えた。
「角と林檎だね!おっけー!まとめて吹き飛ばすよー!!」
メイプルが再び【毒竜】を発動し角には攻撃を、障壁の基の林檎は吹き飛ばした。
「「【ウィンドカッター】」」
剣士二人が攻撃が通るのを確認する。
「っし、んじゃ行くぞ!【十二星座の加護】」
カイがボスに近づき、ドームを展開するとボスの視界は暗闇に染まった。瞬間、数多の連撃がHPバーをガリガリと削っていく。
星星をまとうその半球が消えた頃には、ボスのHPバーの残ゲージは極細だった。が、その後キラキラとした光を発しボスはHPをⅡ割ほど回復した。
しかし、3人には無駄なのであった。
「メイプル!」
「うん!【毒竜】!!」
彼女の大盾がボス部屋までと今までの戦闘で貯めに貯めたMPを出し切る。容赦のない毒がボスを襲う。
これにより、メイプル、サリー、カイの3人は二層進出の権利を手に入れた。