破壊王の双子には兄が居るらしい。   作:なにぬねの

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更新遅くなり申し訳ないです.........。ちょっと別界隈の小説を漁り始めたら止まらなくなったとかなってないとか...ホントごめんなさい.......。



イベ準備中にフレが増えたらしい。

 

 二層進出へのダンジョンを無事踏破したカイ達は、あの後運営からのメンテナンス通知を確認したためそれぞれログアウトしていった。そしてその翌日のことである。

 

 「イベ前にこんなん来るとか......」

 

 いつも道理学校から直帰後夜にログイン、と言う流れで二層の広場についたカイはベンチの上で、彼の眼前にあるメンテナンスの内容について書かれた通知を見て溜息を零した。

 一部スキルの修正とフィールドモンスターのAI強化、防御力貫通スキルの実装に一部ダンジョンボスの認識変更と大きく4つある項目のうち、彼はスキル修正の欄を見ている。

 

 (【四面楚歌】のステータス補正が一体につき10%から5%に減少。その分上昇ステータスは15秒継続か。強かったしなぁ、やっぱ)

 

 対象スキルは所持者にしかその修正内容は知らされていない。カイは自身の弱体化されたスキルを読み上げると残念そうに、はたまた案の定とでも言いたげな表情になる。

 上昇値継続の恩恵を貰えたとて、仮に以前同様に戦わねばいけない時があれば今までの倍の数の敵の中で戦わなければいけなくなったのだ。

 

 「まあしゃあない、他のスキルでなんとか補っていくか。で、こっちはメイプルどんまいだよなあ」

 

 そう言ってカイが開くのは貫通スキルの詳細欄。どうやら各役職ごとに3〜5種ほど実装されたそれらは、今ここにはいない大盾の少女を悩ますには十分すぎる情報であった。

 しかし、この男(カイ)にはそこまで影響のある代物ではなかった。なにせもともとのVITがすでに「0」を示している。貫通も何も無いのだ。寧ろ重装への強力な攻撃手段が増えたため喜ばしいくらいだ。

 

 

 メンテ内容に一通り目を通したカイは「どっこいしょ」となんともその顔面に似つかない爺臭い声を漏らして立ち上がる。

 

 「さて、じゃあ貫通スキルの情報収集とイベ準備に取り掛かるか。つかスキル系の情報以外あんまピンとこなかったしな」

 

 そうつぶやくとカイは掲示板の方へ歩を進めた。

 彼は知る由もない。そのメンテナンス時、運営陣では多くの悲鳴が上がっていたこと。メイプルとともに修正内容で運営の頭を悩ませる大きな一因になっていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。日々移り変わるインターネットの片隅にて、NWOのスレがまたたてられていた。

 

 

1名前:名無しの槍使い

イベに向けて皆どんな感じすか?

 

2名前:名無しの大剣使い

めっちゃ張り切ってるよ

 

3名前:名無しの短剣使い

そりゃもうやっぱあれだろ

 

4名前:名無しの魔法使い

メイプルちゃんのお友達のお披露目会だからな

 

5名前:名無しの弓使い

メイプルちゃんの友達だしなあ 

 

6名前:名無しの大盾使い

あ 俺この前みたぞ友達ちゃん

 

7名前:名無しの短剣使い

おーどんな感じだった?

 

8名前:名無しの大盾使い

なんか装備めっちゃ変わってたよ

しかも多分そこらのショップでは見かけないようなやつ

 

9名前:名無しの槍使い

......ま??

 

10名前:名無しの魔法使い

まあ割と日にちは経ったし運が良ければ装備もゲットできるか

 

11名前:名無しの大剣使い

でも話からしてどうせ高レアの匂いがするのはなんでだろうなあ

 

12名前:名無しの弓使い

もうメイプルちゃんっていう単語でてる時点でなあ

 

13名前:名無しの大盾使い

王子とも仲いいしな

 

14名前:名無しの槍使い

王子なあ あいつもぶっ飛んでんだよなあ

ふたりとも今回のメンテで何かしら修正食らってるに一票

 

15名前:名無しの魔法使い

姫この前毒沼でメイプルちゃんと戯れてたよ

 

16名前:名無しの弓使い

???

 

17名前:名無しの短剣使い

死ぬやん

 

18名前:名無しの魔法使い

死にかけになる度ポーションとかスキルとかで回復してたし耐性獲得のためじゃね

因みにメイプルちゃんお手性の猛毒でした ポーション湯水の如く乱用してたわ

 

19名前:名無しの大剣使い

あーじゃあこの前見た焚き火に足突っ込んでるやつも池にわざわざ氷スライム持って飛び込んでたのもそれのためか

 

20名前:名無しの大盾使い

......もう何も驚かない

 

21名前:名無しの短剣使い

同じく

 

22名前:名無しの弓使い

一周回ってサイコだよ

 

23名前:名無しの魔法使い

イベ準備に精がでますな......

 

24名前:名無しの槍使い

俺 ちょっとスキル集め頑張ってくるわ......

 

25名前:名無しの大剣使い

おう......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耐性獲得のために東奔西走して早数日。カイは掲示板の前で少し考え込む素振りを見せていた。

 

 「んー、多分これのことだよな。結構取得者も増えてるみたいだし......行くか」

 

 カイが前々から聞いていたスキル【超加速】。AGIを一定時間大幅に上昇させるものらしく、すでに情報はちらほらとではあるが上がり始めていたものであった。取得条件が70以上のAGIを持つ者に限るそれをカイは今日取りに行こうと決断していた。

 

 

 【超加速】はとあるクエストの達成報酬に貰える物となっており、そのクエストも指定の場所に行けばいつでも受注できるようなものであった。

 森の中にあるであろう一軒のログハウスを目的地にカイは走る。ゲーム内時間が早朝時のため、森の中は静けさとともに清々しさを感じさせる仕様になっていた。

 

 「お、あれか。......ん?誰かいるな」

 

 ようやく木のぬくもりを継ぎ合わせたようなその目的地の小屋がカイの視界に入ると同時に、見知らぬプレイヤーの姿が映り込む。

 カイは一瞬隠れようとしたが、相手の外見からの情報を彼の頭が処理した途端その気は失せた。なにせ、下手なごまかしが効く相手ではないから。

 光を弾くような金髪に澄んだ碧眼。凛々しい目つきの美丈夫は青と白銀の全身甲冑(フルプレート)に包み込まれていた。その出で立ちは二つ名にふさわしいものである。

 

 「【聖剣】......」

 

 カイのつぶやきはその男にもしっかり届いたようで、二人はお互い目を合わせる。

 双方同じタイミングで着いたのか、ドアの前で言葉は交わされ始めた。

 

 「君は確か第一回イベント2位の......」

 

 「ああ、こんちは【聖剣】さん。カイです。戦う意志はないよ」

 

 なるべく不穏にはしたくない、とカイは飄々とした態度で自己紹介をする。が、もちろん内心の緊張感はそのままである。

 

 「分かった。こちらももとよりそのつもりさ。ペインだ。よろしく」

 

 「ん」

 

 差し出された手にカイは応えた。

 

 「ここにいると言うことは、君もスキルを取りに来たのか」

 

 「ええ、そろそろ次のイベントも来ますしね」

 

 思っていたよりも物腰柔らかなペインの言葉にカイは毒気を抜かれつつも、会話のボールを投げ返す。

 

 「じゃあペインさんもですよね。お先にどーぞ」

 

 カイは彼にそのクエストの順を譲る。そもそもこれは早いもの勝ちなどのルールもなければ複数人で行うものでもない。順番の先後などカイに関係があるわけでもないのだ。まあそれは相手も同じだが。

 

 「いいのか?じゃあ遠慮なく先に行かせてもらう。その分早く終わらせないとだな。」

 

 「【聖剣】サマの全速力でお願いしますね」

 

 少しいじりも込めたカイの軽い激励にペインは苦笑を漏らしつつも、小屋の中へ入っていった。

 

 

 残されたカイが、さてどう時間を潰したものかと考える。しかし特にやることもないのでカイは小屋のすぐとなりで仰向けになって寝転がった。クエスト受注の小屋の近くにいるせいかまったくもってモンスターは来ない。

 朝露の水気をまとったそよ風が木々の合間を駆け抜けカイにハリボテの清涼感を与える。しかし徹夜続きの彼に睡魔をけしかけるには十分すぎたようで、数分後に小屋を飛び出していったペインをよそ目にカイはいつの間にか意識を落とした。

      

 

 

 

 

 

 

 およそ半刻と少し後。カイは体を揺すぶられる感覚に瞼を開ける。目の前には先程彼が先鋒を譲った男が立っていた。

 

 「お......終わりましたか」

 

 あくびと伸びが混じえたその言葉はペインの耳に届く。

 

 「ああ、今度は君の番だ。君のそのAGIならそこまで時間はかからないよ」

 

 「そうですか。ありがとうございます」

 

 その安心感を生み出す情報にカイは感謝を送りながら小屋へ向かう。

 

 「んじゃ、行ってきますね」

 

 「ああ。応援しておくよ」

 

 カイは目の前にある木製のどっしりした作りのドアを軽くノックした。でてきたのは白いひげを伸ばした一人の老人であった。

 

 「こんなところに人が来るとは珍しい......とりあえずあがっていきなさい。このあたりは厄介なモンスターも多い」

 

 そんな言葉とともにカイは招かれる。和やかな雰囲気でクエストは始まっていった。

 

 

 【超加速】を取得するこのクエストは、先程の老人の代わりにとある泉へ【魔力水】なるものを汲みに行くというもの。ただしそれが制限時間付きとなっているのだ。その水は1時間でインベントリから消えてしまう。泉まではAGI70のプレイヤーが走って30分の場所にある。しかしこれはただ単に「走る」と言う行為のみをした場合だけであって実際には多数のモンスターを倒しながら行かなければならない。

 が、やはりペインの見立ては合っていたのかカイも水を汲んでから大体半刻ほどで老人の待つ小屋に戻ることが出来た。

 

 「あー......トレントが一番面倒くさかったか。地味にHP削られたな」

 

 カイはそうぼやきながら小屋の戸をノックし入る。

 

 「汲んできましたー」

 

 「おお!待っていたぞ、無事そうで何より何より......。ふむ、お礼をせねばならんな......どれ、少し待っていると良い」

 

 老人がそう言い引き出しから持ってきたものはカイのお目当ての巻物であった。

 

 「スキル【超加速】が覚えられる。役に立つはずだ......遠慮はいらんぞ」

 

 カイがその巻物を受け取ると老人は急に姿を消す。

 

 「え?」、という間抜けな声を上げた瞬間、彼の背後に老人が姿を現す。

 普段の癖も相まってか、カイは突然現れた気配を頼りに腰にある剣の柄を握りしめ急速に振り返る。

 しかしそこにはまるでイタズラ大成功とでも言わんばかりの満面の笑みを浮かべる老人が立っていた。

 

 「ふふ......精進すると良い」

 

 「あ、はぁ...」

 

 驚き、締まりのない返事を返してしまったカイは早急に小屋を出た。

 戸を開けるとゲーム内の時間が日中になったのか、木々の隙間から感じる陽の光が先程より強く感じた。といってもやはり電脳世界なことに変わりはないため温度などが変わったわけではない。

 

 「っし、今日はあとなにやろうか...って、まだいたんですか」

 

 小屋の裏手側から身を現したのは、クエスト前にカイが出会った【聖剣】の名を持つ男であった。

 まさかまた会うとは一ミリも思っていなかったカイは無意識に眉を顰める。

 

 「え、何ペインさん暇なんですか?まさかずっとそこにいたとか......?」

 

 とっさのことにより少々言葉がきつくなるが彼は気づかない。

 

 「気を悪くしたんならすまない。ところで君、いやカイ」

 

 「ん?」

 

 「この後予定はあったりするか?」

 

 「んん??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「君があの王子君?情報通りすっごい美形だねー」

 

 「ペインについで二位だったんだろ?やっぱ方針とか決めてんのか?」

 

 「イベント以来だな」

 

 (助けて、誰か.........)

 

 あの後ペインに捕まり連行されたカイは、彼に仲の良い奴らを紹介したいと言われまんまと囲まれていた。学校では慣れと日々の積み重ねもあってか滞りないコミュ力を猫かぶりとともに発動しているが、本来カイはそこまで人付き合いが得意なわけではない。普段取り繕っているそれも集中砲火と「イツメンの中にぽつんと部外者」と言う状況下に置いてあっさりと崩れてしまうのだ。絶賛どもり中である。

 

 「そんな一気に言われれば彼も困るんじゃないか?」

 

 ペインから救いの手を伸ばされる。が、

 

 (そもそもお前のせいなんだよなあぁ!)

 

 カイはもう一周回ってキレているくらいだった。しかし流石に取り繕える余裕を取り戻したのか言葉を発し始める。

 

 「えっと、因みになんで今日俺呼ばれたか聞いてもいいですか......?」

 

 一番気になっていることをカイは口に出した。その問いには、先程助け舟を出したペインが答える。

 

 「もともと第一回イベントの表彰式以来こちらが気にかけていたんだ。それで今日丁度会えたからぜひ話してみたいなと思ったんだよ。ドレッドに至っては既に戦闘で相対したようだし」

 

 「はあ、なるほど」

 

 「実力も話題性もペインと同じくらいあるからね〜。やっぱり気になっちゃうでしょ」

 

 ペインの言葉に同意を見せるのは、暖色系等の戦闘服(バトルコスチューム)の上から純白の魔導使用ローブを羽織った金髪の少女、フレデリカ。ペインほど情報は聞かないが、彼と汲んでいる時点で実力者なのだろうとカイは踏んだ。もっともそれは他の二人にも言えることであって、屈強な見た目によく映える大斧を持った強面のドラグ、黒ベースの装備に迷彩柄のマントとバンダナをまとったドレッド、どちらもカイの目には高ランカーに見えていた。

 カイが思考に浸っていると、ドラグの一言によって呼び戻される。

 

 「んじゃ、今日はカイも混じえて探索行こーぜ」

 

 「え」

 

 「あー、いいねぇ!マップの西側進めようって言ってたし!」

 

 「えっ」

 

 「丁度いい。久々に戦闘が見れるな」

 

 「......」

 

 「カイはそれでいいか?」

 

 「......ダイジョブです」

 

 今日の彼は運が悪いようだ。

 

 

 フィールドに入って5人は一度隊列を整える。カイは中衛兼火力補助のような位置づけになった。もともと第一回イベントのときにスキルの殆どを惜しみなく使ってしまっているので、今更この4人の前で出し惜しむ意味もないのだ。

 カイは一度メイプルとサリーに連絡を入れた後、新たにパーティに加入した。恐らく現NWOでは最強格とも言える一つの集団ができてしまった瞬間である。

 なのでもちろん彼らはそこらのモンスターに進行を止められることなど全くもって無かった。

 

 「ペイン!今タゲ取ってるの任せた!右のやつ潰してくる。【獅子の矜持】【幻魚の尾鰭】!」

 

 カイは自身にAGIのバフを、ペインにSTRの物をかけてから疾走する。共闘を重ねることによって調子を取り戻し、彼らに対して敷いていた緊張感を払拭した彼はもう呼びタメが可能なほどに回復していた。

 最初こそ粗さを見せたその戦闘面も既にいつも道理のトッププレイヤーたる実力を発揮する。その手並みにはペインを含めた4人も表には出さないが目を見張っていた。

 

 「後続の所に突っ込む!カイ、フレデリカ!頼んだ!!」

 

 パーティ内一白兵向きのドラグは、名を呼んだ二人の人物の返事も待たずに走り出し、その身程ある大斧を振りかぶる。

 

 「え、ちょまっ!【雄牛の守り】!フレデリカ!!【撃手の器量】!!」

 

 「分かってるってー!【多重障壁】!【多重炎弾】!ドレッド〜」

 

 「もう片付けてる」

 

 想定より数の多いモンスターに遭遇し最初こそ焦るが、そこは彼らの実力の高さと言うか、戦況は着実に好転していく。

 

 「ドラグ!退いてくれ!【壊滅の聖剣】!!」

 

 殲滅と足止めを行っていたドラグを一時引かせ、ペインがその手にある長剣を振り下ろす。らしいと言えばらしい締めくくりであった。

 

 

 「結構数多かったな。ここらへんは掲示板に情報上げとくか。下手すりゃリンチになりかねない」

 

 うち漏らしや面倒な敵の迅速な処理に当たり、戦場を駆け回っていたドレッドが一息ついて先程の戦闘の感触を話す。

 彼の言葉には皆同意なようで、それぞれ賛同的な言葉を返していた。

 

 「それにしてもカイはやはりソロでもパーティでもオールラウンダーな動きだな。いつもよりも安定感があったぐらいだ」

 

 「ねー。ドラグも見習ってほしいんですけどー」

 

 「流石に俺にあれは無理だな」

 

 「でも俺、こうドッカーン!みたいな大技がほしいんだよね。一撃必殺的なやつ」

 

 「確かにそういう面ではうちのペインのほうが目立つな」

 

 「いや、カイがイベントで見せていたドーム状のあの技も大分目を引くと思うのだがな...」

 

 街の方に戻りながらそんな和やかな話を交わす。

 着いたら今日はそのまま解散となったが、カイはもう一度くらい一緒にプレイしたいとも考えていた。

 因みに、フレデリカがカイのバフスキルの一つである【撃手の器量】の追尾弾に惹かれたのは言うまでもない。

 

 

 そんなこんなで、カイのフレンド欄には今日新たに4つのバーが追加された。

 マルチプレイの良さを改めて実感したカイは、再び第二回イベントへ気持ちを切り替えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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