[完結]わすれじの 1206年   作:高鹿

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37 - 08/31 せめてこの夜に誓って

1206/08/31(木)

 

「時にクロウさん」

「……はい、なんすかセリさん」

 

軍議が終わり退出中に話しかけると鳩が豆鉄砲を食らったようなクロウが見えた。かわいい。

 

「アリサさんとオルディーネから聞いたんだけど、実は準起動者も核の中に入れるらしくて」

「マジかよ」

 

まぁオルディーネの準起動者は私しかおらず故にクロウが知るわけもないのでこの反応は想定内だ。でもマジなんだってマジでマジで。

 

「その話を振ってくるってことはつまり入りたいんだよな?」

「もちろん! この機会を逃したらもう未来永劫ない気がするし」

「そりゃそうだ」

 

今までにあった歴史のように巨イナル一の錬成が成立せずに終わるにしても、そもそも巨イナル一を破壊するにしても、私が生きているうちに騎神が動くことはもうないだろうと思う。

そもそも黄昏が終わればクロウは露と消え、オルディーネの準起動者という立場もなくなる。そしてその最終作戦は明日行われ、自由になる時間といえば今だけだ。ミシュラムの壮行会では蒼の騎神も灰の騎神も結界の助力に駆り出されることになっているのでそれを邪魔するわけにもいくまい。

 

「そんじゃ行くぞ」

 

ぐい、と手を取られ軍議での決定による伝達などでにわかに慌ただしくなる艦内を縫うように階段を降りてオルディーネの前へ。それだけで彼は理解してくれたようで、いつもクロウを光に溶かすそれで私も中に入れてくれた。

 

「……っ」

 

かと思った次の瞬間、浮遊、とはまた違うけれど着地する足元が選択出来ない状態で身体が放り出され咄嗟にクロウの気配へ手を伸ばせばどさりと塊で落ちる衝撃。

 

「こんなことなら抱き上げた状態で入ればよかったかね」

 

知らない感覚に心臓をどぎまぎさせているところにクロウの声が案外と近く聞こえ、見れば椅子に座るクロウに横抱きのような形で私が上に乗っかっている状態だ。……なるほど、これを恋人同士でもない二人がやるのは些か不健全さがある距離感なのは理解した!

 

心臓を落ちかせながら辺りを見回すと無数のヘキサが組み合わされた球状の空間で、取り敢えずバランスが取りづらいので操縦席の横に張り出した足場へ移る。席のアームレストの先には半球状のものが左右に一つずつ、これが操縦桿なのだろうか。

 

「完全起動していいか?」

「あ、ちょっと待って」

 

ARCUSIIを取り出し各部を写真撮影していく。エマさんに言わせたらおそらくこれも記録としては後世に残らないのだろうけれど、RAMDAを触ったと推測されるシュミット博士への交換材料になるかもしれない。あの人は性格に難があるだけで一を識って百を創る方だからこの情報を無駄にはしまい。

 

円状のフレームを二本合わせ、椅子の基部から繋がる背骨のような骨子も組み合わさり空間を維持している。考えているよりも随分と物理的に技術で支えられているんだな、と不思議空間とテクノロジーの融合に感嘆が出た。

 

「うん、OK。おねがい」

「よろしく頼むぜ、オルディーネ」

「任された」

 

クロウの声に応じて内部の光が大きくなり、ただの壁に見えていたすべての六角形が周囲の光景を映し出した。オルディーネが現在いる格納庫で、まるで手を伸ばせばフレームに触れそうなほど。

 

「……全天視界?」

 

まるで宙に放り出されたかのような感覚になるけれど、まさかこんな風景でクロウは今まで戦っていたのか。足場があるとはいえ地上から数アージュの場所に生身一つで座っているというのは滅多にないしこんなの精神的に慣れるのだって時間がかかりそうだけれど、起動者というのは理解していたりするのだろうか。

とりあえず写真撮影していくにしてもこれだと情報量が多すぎて機甲兵に組み込むのは却下されそうだ。

 

「あー、実はお前を準起動者にしてからこうなったんだよな」

「……?」

 

私がオルディーネと繋がったのはここ二週間の話で、今までの年月を思えば操作性が変わるなんてレベルのことじゃないと思うのにそれに私が無意識で加担していたともなれば肝が冷える。

 

「セリ、準起動者は騎神に力を貸せるのは知っているな?」

「あ、うん。それはもちろん」

 

私の戦技を使えるようにオルディーネへ貸したことは何度もあるし、霊力源だからか霊的に深く結びついている感覚もある。まさかそれのせいで?

 

「故に、セリの身体能力もこちらにフィードバックされ能力が向上したというわけだ」

「……これは果たして本当に向上していると言っていいのやらと」

「まあ本来視界これくらいだかんな」

 

言葉と共に何やら操縦桿の上で指を弾いた途端、全天ディスプレイは消え目の前にあった横に細長い半透明のディスプレイが強調される。大まかなグリッド、上下左右にルーラー、操縦者の身体パラメータグラフ、ど真ん中に照準があり、おおまかに戦場で必要なUIが揃っている。

 

「で、オルディーネの視界をここに映す」

 

ヴン、とディスプレイには小さく格納庫が映り、目の前で整備が終わっている機甲兵が一機佇んでいる。横を向けばヴァリマール。空間の大きさの割にディスプレイは小さいけれど、こっちの方が感覚としては機甲兵に似ているなと思う……というか、全天視界が私の影響なら聞き取り段階で状態が異なる。

そもそも二年前よりも前だから画像記録を持ち出すことも難しかっただろう。導力カメラも小さくなったとはいえそれなりに技術は必要だ。

 

「俺もお前との契約後に入って吃驚したが、これが意外に快適な操作でな」

「えー、操作誤ったりしそうだけど」

 

しゃがんでコンソール周りの写真も撮りながら訝しむと、宥めるように頭を撫でられる。

 

「その辺はもう感覚がインストールされるんだろうな。つくづくとんでもねえ技術だよ」

 

騎神は何れ闘争の中に舞い込むものであり、闘争の前段階で躓いてもらっては困る、ということだろうか。まあ確かに操作が覚束ない騎神というのは想像しづらいけども。

それに記憶の封印や偽の記憶のインストール、仮面によるインプリンティングのことを考えれば地精側にそういった技術が存在しているのは確かで、騎神にそれが組み込まれていてもなんら不思議ではない。

 

「とんでもないねえ」

 

これが千二百年前の代物というのだからそれも驚きである。騎神が七至宝の分割結果で焔と大地の技術が融合したものであるとしたって、人類はどれだけの年月を詰めばここに到達出来るのか。……もしかしたら技術がある地点に到達したら自動的に世界が破滅に向かうようなプログラムでもあったりするんじゃないか、とうすら寒い考えがよぎって頭を軽く振る。

 

「ま、こんなところだな。知的好奇心は満たせたかよ」

「うん、ありがとう。オルディーネも」

「セリの騎神に対する興味関心が深いというのは昔から知っていたからな」

 

パンタグリュエルの時にそこまで質問責めにした記憶はないけど、自覚以上にバレていたようだ。

クロウに手を取られ格納庫へ戻り、そういえば、と灰の騎神と終末の剣の方を見た。すると休眠状態で目元に灯っていなかった光が稼働し顔がこちらに向き、剣からミリアムさんの思念体も出てきて、やっほー、と手を振られる。

────そう、アリアンロード殿は死の間際に残っていた全ての力を灰の騎神と終末の剣へ託すことで、ヴァリマールの思念の復活とミリアムさんの思念体としての顕現をサポートしてくれたらしい。まったく、最期までとんでもない方だった。

 

「ミリアムさんは久しぶり。ヴァリマール殿は初めまして、セリ・ローランドと申します」

「ヴァリマールでよい。お主のことは意識がない中も伝わってきていた。リィンがすまぬ」

 

丁寧な挨拶をもらいふんわり顔合わせができたところでしかし最後に妙な言葉がついてきたな?と首を傾げる。

 

「センパイ結構嫉妬深いよね~。ヴァリマールもリィンの近さは気にしてたみたい」

 

……なんで久しぶりの後輩と初対面の相手にまで私の嫉妬心バレてるのかなあ!!

 

「あ、思念体だからかそういうのビンカンになっちゃっただけであんま気にしないで!」

「リィンに嫉妬してるなんてまあ俺にバレてる段階で誰にバレてもおんなじだろ。本人以外」

「……いやっ、結構違うと思う……!」

 

一瞬流されそうになったけどつまり結局私の感情が私の中で完結してないってことだよね?というかいつの間にクロウが知るに至ったのか私が知りたいんだけど!ねえ!いつから!!

 

 

 

 

そんなこんなで、夕方。

クロスベル市の南にあるエルム湖の先にある保養地ミシュラムにカレイジャスIIは静かに着水し、先導していた二機のメルカバや騎神たちも波止場に降り立ち結界として組み込まれていく。

結界を張るは焔の眷属たるロゼ殿、蒼の深淵のクロチルダさん、秘術を受け継ぎしエマさん、星杯騎士団守護騎士第二位トマスさん、同じく守護騎士第八位ガイウスくん。これほどまでの人材と機材を投入してミシュラムに不可視の結界が張り終えられる。

列車砲の砲撃にも数発は確実に耐えられる耐久性があるらしいけれど、まぁ明日のこともあって帝国は表も裏もこちらに拘わっている暇はないだろうとの見解で一致した。

そして結界が閉じるのと同時に感覚が遠くなっていくのを感じた。

 

「……結界の中ってすごく静かなんだね」

「賑やかの間違いじゃなく?」

 

隣にいたアンから疑問が聞こえ、うん、と頷く。

 

「私を慮ってくれたのか干渉の力が物凄く抑えられてて……ああ、たぶんみんなこういう世界で生きていたんだろうって。不思議だね、数年前は自分もそうだった筈なのに」

 

この壮行会はカレイジャスIIの乗員はもちろん、リベール組にクロスベル組、千の陽炎作戦に参加する各勢力の一部など、作戦の規模……というより皇子殿下の顔の広さがあってか非常に多くの人が集まる。テーマパークが併設ということもあって私が取得してしまう情報が遥かに多いだろうと覚悟していたのだけれど。

 

「それなら頭痛とか気にせず遊べるってことだよね」

 

嬉しそうなトワに手を取られ、うん、と弾む足取りで騎神から降りてくるクロウの元へ三人で駆け寄っていった。あと本人はめちゃくちゃ渋ってたけど私たち全員からの説得に根負けしたジョルジュもちゃんと来るみたいだし、ああ、本当に、泣きそうなほど嬉しい。

 

 

 

壮行会はミシュラムにある別荘住宅地の最奥にある歴史ある迎賓館で行われるようで、ホテル・デルフィニアに部屋を充てがわれた私たちは部屋に荷物を置き、迎賓館側に部屋を用意されたから待っていてくれた男性陣二人と再度合流して歩いていく。

部屋が完全に分けられるぐらいならみんな迎賓館側が良かったけれど、部屋の割り当てとか色々あるだろうから仕方ないか。なんなら一番最初の課外活動みたいに大部屋五人でもとさえ。

 

「壮行会ってどんな形でやるのかな」

「前の会合時の会食みたいな空気は無くすため、あまり重くはならないだろうさ」

 

大仰なパーティの感覚があるアンの言葉に納得しつつ、歩調を緩めていくと四人の視線が自分に集まり、やがて小さなベンチのある広場の近くでぴたりと足が止まってしまった。

あ、どうしよう。意外にあれ結構もやもやしてたんだな、と自分の中で妙に感情が凝ってしまっていたことに気が付く。言うべきか、言わざるべきか。

 

「どうしたんだい?」

 

ジョルジュから心配そうな声がかけられ、いつの間にか俯いてしまった顔をトワが覗いてくる。

 

「あの……本当に、わがままで申し訳ないんだけど」

「おう」

 

ととと、っとクロウの近くに行きそっとコートの袖を掴み、自分の愚かさでぎゅうっとなる心臓を殺して口を開いた。

 

「もし、例の会合みたいにテーブルが分けられてたら……VII組の方に行かないで、ほ、しい」

 

言葉を綴った瞬間、ぼろりと涙があふれ、ぎょっとした面々に手を引かれ近くのベンチに座らされた。隣にトワ、前にクロウが膝をついて、アンが背中をさすり、ジョルジュは真後ろで壁になってくれて、他の気配が感じ取れないから逆に四人の、私の大好きな人たちを如実に感じ取れてしまいそれでもまた涙がこぼれていく。

 

「ご、ごめ……っ、なくつもり、じゃ、なか……っ」

 

あふれはじめた感情はしかし止まってはくれず、トワから差し出された柔らかいハンカチをぐしゃぐしゃにしていってしまう。自分が嫉妬深いとは多少なりとも自覚はあったけれど、まさかここまでとは思わなくてそういう意味でも自分に幻滅した。

 

「うん、大丈夫、ここには私たちしか今いないよ」

「そうそう、後に思い切り遊ぶために心の澱は吐き出しておくのが吉さ」

 

ゆっくりさすられる背中に、だんだん呼吸が整ってきて、しゃくりあげる頻度が減っていく。

 

「な、オレが前に言ったこと覚えてるか?」

 

しゃがんだクロウが私を見上げてきていて、何に対する言葉なのか分からず首を傾げると、悪戯っぽく笑って目が細められる。

 

「カノジョにかわいいわがまま言われたら、オレは笑いながらそれを叶えてやりてえんだよ」

 

それは、確かクロウがVII組に行ってしまってあまりのことに私が情緒不安定に陥った時に突撃して言われた言葉だ。……しかし果たしてこれはかわいいわがままなんだろうか。こんな、リィンくんどころかVII組という概念自体にまで嫉妬して、そこに混ざらないでなんて、全然可愛くも何ともない。

 

「……クロウは、ななくみ、だけど、私たちの方が付き合いながいじゃん」

「そうだな」

「VII組の子たちはかわいいけどさも俺たちの方が付き合い長いですみたいな当たり前のような顔であっちに組み込まれてるのいやだよ……やだ……」

 

ぐす、と今の今まで、ずうっと抱え続けて、もう最期まで隠し通せるかなと思っていた感情をきれいにすべてぶちまけてしまい、歯噛みせざるを得ない。なんでこんな、こどもっぽい。

すると目の前にいるクロウが両腕を広げて笑う。

 

「明日VII組なのは変わんねえけど、今のオレはV組のクロウ・アームブラストだぜ」

 

そう言い切られ、ぐしゃりとハンカチを握りしめながらクロウに抱きついて肩に頭を預けた。

そう、そうなんだよ。私にとって君はV組のひとで、ずっと隣のクラスで、授業受けてたじゃん。合同訓練だってよくある組み合わせで、そうやって、一年半過ごしてた。────さびしかった。

 

「ま、確かに後輩の前で先輩面するためにクロウを譲っていたところは私もあるさ」

「アンちゃんが……? さすがにその嘘は苦しいんじゃないかなあ」

「さすがに慰めるにしてももう少しリアリティにある話にしなよアン」

「ジョルジュはともかくトワまで! 私も泣いてしまいそうだが!?」

 

コントのようなテンポのいい会話が頭の後ろで繰り広げられ思わず笑ってしまう。駄目だコートを掴む手から力が抜けそうになった。

 

「────ごめん、みんな」

 

顔を上げ涙を指先で切りながら言うと、ぐしゃぐしゃといつかの日のようにジョルジュの手が私の頭をかき混ぜ、トワに頭を抱き込まれ、アンには背中を軽く叩かれる。

 

「謝られることじゃない、むしろ可愛いわがままに巻き込まれて役得だよ」

「まあ多かれ少なかれ、ちょっとはみんな思ってたよね?」

「トワの言う通りさ。僕も寂しくてあんなことしたと言われたら正直ぐうの音も出ない」

 

でも泣くほどじゃないと思うし、VII組のところへ行かないでって言うだけでこんなに感情爆発させる羽目になるとは思わなかった。最近感情表出のハードルが下がってる気がする。大人として良くない……良くないと思う、けど……結構すっきりはした。うん。

わりと節々で感じてたことだからかなりストレス源だったのかも。でももう大丈夫。

 

「目元赤くなっちゃってるから、迎賓館ついたら濡れタオル貰おっか」

「そんじゃ行くとすっかね」

 

立ち上がったクロウに差し出された手に自分のを預けて立ち上がらせてもらいながら、本当に四人のやさしさに感謝するしかなかった。

 

 

 

 

「いや~、まさか立食形式だったとはね」

 

パラソルの下で笑うアンの言葉に、んぐ、となってしまう。

 

迎賓館に到着し男性陣に用意された部屋で時間まで暫く目元を濡れタオルで休め、壮行会が催されるという大広間へ通された瞬間、椅子の大部分が撤去され、しかしご馳走はしっかりとテーブルの上に並べられているのを見て心臓が凍るかと思った。いや本当に。

しかし確かに立食形式であれば堅苦しさはだいぶんと抜けるし参加人数もあの時より随分と増えているから言われてみればこれしかないチョイスには感じるけども。

 

「私はベソ掻き損でしたね……」

 

そうして無事に終わった壮行会から貸切MWLという豪勢なアフターパーティーに繰り出し、屋台でお酒を買いつつパラソルの一つに腰を据えたところで先ほどの発言だ。もう頭を抱えるしかない。どんな顔して過ごせばいいんだこれ。

 

「まあまあ、寂しくて泣いちゃうセリちゃん可愛かったよ?」

「トワがアンみたいなことを言う!」

「おうおう、オレのかわいいカノジョいじめてくれんなや」

「とりあえず必要なものはこれで揃ったかな?」

 

ツマミ調達が思いのほか早く終わったから確保していた席へ飲み物調達班が戻ってきて、頼んでいたお酒などが各自の手に渡り、そうして。

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

クロウは飲むフリだけど、それでもこの五人でこの瞬間を迎えられるなんて生きてみるものだと思う。別に自殺を考えたりはしなかったけど、自分の命を大切にはしていなかったなという自覚はあるので。

 

「……実はさ、昔クロスベルに一人で来たときに、MWLにみんなで卒業旅行とかで来たいなぁって無邪気に思ってたんだ。まさかこんな形で叶うなんて本当に夢みたい。すっごく嬉しい」

 

もう二度と訪れないと思ってたことが実現していて、まるでもう女神さまの奇蹟を貰っているのかもしれない。だからこれ以上求めたらいけない。

心にそうセーブがかかっていくのがわかる。

だけど今日、この瞬間を目一杯遊んで、楽しんで、思い出を作って、明日に臨むのは分不相応じゃないと思いたい。

 

「そういえば課外活動が終わって少しした時もセリは泣いていたか。寂しがり屋は筋金入りと」

「うわーーー、よくそんなの覚えてるねえ……」

「はは、あの後クロウが入ってきてあわや修羅場になりかけたっけ」

「恋仲にもなってないのにセリの男気取りするヤツに渡すつもりはなかったがね?」

 

もう今日はいじり倒されると思うけどそれも仕方ない。いやでもさあ!寂しいし悔しいよ!!リィンくんに嫉妬はするしVII組にも嫉妬するし何ならクロチルダさんにだって嫉妬するしもうクロウ関連で嫉妬しないのたぶんトワとアンとジョルジュとオルディーネぐらいじゃない!?あ、スカーレットさんもたぶん嫉妬しないな……立ち位置がお姉さんだし……。

 

「しかしそうまで想われていて果報者じゃないか、なあクロウ」

「お前のその笑顔はぜってぇ碌でもねえ話題の前触れだろ!」

 

いやあの時はクロウがどうとかと言うよりみんなと疎遠になったら嫌だなぁっていう感情が強かったのと人肌で涙腺が緩んでしまっただけなんだけど。まぁ掘り返すと更なる墓穴にしからないからやめておこう。

 

「うん? 男共が両方碌でもないの間違いだろう」

「ごめんそれは思ったことある」

 

片やテロリストで片や世界転覆暗躍組織の一員だったなんて思いもしなかった。一応私は情報屋とかいう裏世界に足突っ込み始めてはいるけれどそれでもそういう状況ではないし。

 

「内戦の頃は俺もまぁいろいろやってたのは認めるけどよ」

「僕の方は返す言葉もないね」

「うーん、確かにクロウ君もジョルジュ君もとんでもないことしてたけど、それアンちゃんとセリちゃんにも言えるからね?」

「……あ」

 

静かに話を聞いていたと思ったら静かにプラカップを2/3ほど空けているトワが見えてしまいこれはもしやもしかするかもしれないと内心冷や汗をかき始めた。

 

「そもそも二ヶ月前だって黙って霊園に行かなければ防げたこともあったよね?」

「……万全を期すならリィンくんに護衛してもらうとか回避策はあったねえ」

 

それを私の感情が許すかどうかは別問題だけれど、関わる物事の大きさを考えたら身の安全を優先するべきだし、考えすぎで笑い話になるなら一番いいというのは私も知っていたというのに。それに帝都近郊の霊園なんだから日程を遅らせてリーヴスから日曜午後に出張してもらう、なんてのも可能だったろう。

 

「そりゃあ、お墓を掘り返したりとか気が咎めるっていうのも分かるけど……それでも何か言い残しておくとか相談くらいしてくれてもよかったと思うよ」

「ト、トワさん……? ちょっと、怒っていらっしゃる?」

 

畳み掛けるようなトワの言葉にアンが震える声で問いかけると、残っていたお酒をぐいっと煽りカァンッとプラカップでそこまで高らかに鳴るのかという感嘆さを引き出されるような音を立てられ内心で拍手をしてしまった……が、戻ってきたトワの目は確実に据わっている。

 

「やだなぁ。ぜんぜん怒ってないってば」

 

これはもう随分と怒っていらっしゃる。普段温厚な人ほど怒ると怖いというのはつまり、普段怒るということに滅多にリソースを割かない人が割くと決めたら徹底的ということだと私は思ってる。だから口答えしても火に油だし、そもそも全員トワには頭が上がらない。

 

「こーら、ジョルジュ君にクロウ君も他人事みたいな顔しないでちゃんと聞く! ────いいですか、トールズの卒業生としてわたし達はちゃんと襟を正さないとっ!」

 

私たちに水が向いていた最中でこそこそとクロウとジョルジュが肩身狭そうに話しているとぎらりとトワの瞳が光り二人の背筋が伸びた……かと思ったらクロウは、あっ、と感嘆詞を落としてふにゃりと。

 

「オレは中退扱いでちゃんと卒業してねぇから問題ねえじゃん!」

 

中退だからって問題ないわけじゃないというかそもそも卒業生というより人間性の話をしているからその点はしっかりしてもらいたいのだけれど。

ああでもそうか、死亡は中退扱いなんだなあ。規定数の単位を取得していないんだから卒業扱いには出来ないしそもそもクロウはその落とした単位を取り戻すためにVII組にいたわけで当たり前なんだけど。どうも結びつきづらい事例というか。

 

「甘いよクロウ君。トールズの規定だと中退でも再入学して不足単位を再取得して卒業も可能だから、何だったら分校で私やリィン君が教えるのもいいんじゃないかな?」

「嘘だろ!? トワはともかくリィンの教え子って……」

「いいじゃん、同い年の教え子としてゆっくり教えてもらいなよ」

 

わっはっは、と笑いながらクロウの背中を叩くと、お前その話するか!?、とクロウの叫びが聞こえると共に三人の疑問符が見えてしまう。

 

「あ、ほら。クロウって20歳で亡くなって今も別に生きてるわけじゃないから肉体年齢も精神年齢もそのままだよね? だから」

「いい、いい! 皆まで言うな!」

「つまり……一応は辛うじて年上だと理解だけはしていたがそもそも今は年下なのか!」

「ああ、確かに髪や爪が伸びないのに歳を取るのもおかしな話だよね」

「じゃあ心置きなく学院に通えるね、クロウ君!」

 

もう全員多少とはいえ酒が入り始めてるせいで言動がわりとガバガバというか容赦がない。

それにしてもこのテンポ感とキレの良さ本当に久しぶりでいいな~。最高。先輩として格好つけなくていいせいでひどいひどい。

 

 

 

 

「ん、トワ」

 

何杯目かわからないビールを飲んだアンが広場の時計を指し、そうだね、と頷いて立ち上がり私の肩を叩いた。

 

「ちょっとブティック覗きたいんだけど、セリちゃんついてきてくれる?」

「うん? いいよ。アン……というか他の三人は?」

「私もついて行っていいのかい?」

 

ミシュラムにあるブティックといえばコルセリカだろうし、男女どちらも揃っているからどうせならみんなで見に行った方がいいのではと。

 

「ああ、でもここで管を巻きそうになってる男共を監視しておくさ」

「別にどっこも行かねえわ」

「同意見だね」

「ほう、ならその言葉違えるなよ? 特にクロウは、だ」

 

何やら含みある言い方だけれど、それが内包する意味が今の私ではいまいちよくわからない。まぁでもクロウに対して含みがあるなら別に私に関係があるでもなしいいか、と考えを放棄した。お酒が回ってるとも言う。

三人で連れ立ってMWLを出て(こう言う時貸切だとゲートがスルー状態なのは楽でいい)、アーケードモールのコルセリカへと。中にはアルフィン殿下やエリゼさん、ミュゼさんなど楽しそうに服を見ていて微笑ましい。

 

「さ、それじゃあセリちゃん、試着室に入ろっか」

「ん?」

「服は私たちが持っていくから諦めて着せ替え人形になってくれたまえ」

「んん?」

 

そんな長時間試着室を占拠するのは良くないのでは!?と思ったのも束の間二人と店員さんの流れるようなムーブメントで私は試着室に入れられてしまい、どういうことだと困惑しているうちにあれよあれよと言われるがまま請われるがままに服を着替えていった。どうして。

 

 

 

 

「わ~、すっごくかわいいよセリちゃん!」

「素材がいいとこうまで映えるとはいやはや楽しいね、うん決まりだ」

 

着せ替え人形と言われはしたけれどそもそももう服にアタリがつけられていたのか、持ってこられた白い少しタイトなワンピースに腕を通し、肩周りが軽いとはいえうっすら透けている上着の組み合わせは確かに可愛いけど。いや決まったって何が!?

 

「ええ、セリさんのスタイルを最大限綺麗に魅せるシルエットに、レースのボレロ」

「極め付けは胸の中心の蒼い花、ですね」

「セリさんに蒼といえばもう誰か決まってますから」

 

様子を窺ってきていた殿下たち……というより(元が一人いるけど)アストライア女学院生の三人まで当たり前のように会話に参加している……のだけれど……何が!?(二度目。)

 

「うん、これをこのまま貰おう。着ていた服はホテルの三〇二へ持って行ってくれ」

「いや……待って!? ごめん事態についていけていないんだけど!」

 

この場で状況を理解していないのがおそらく自分だけということに困惑が隠せない。私が理解出来ていないものをたまたま通りかかった殿下たちは理解出来ているというのもよくわからないんだけど!

 

「はい、セリちゃん。普段ヒール履き慣れてないだろうから履くのはこのサンダルね」

 

トワが用意してくれたのは華奢なサンダルでローヒール……とはいえ土踏まず辺りが空洞じゃないウェッジソールタイプのもので、テーマパークを歩くにしてもスニーカーじゃ味気ないし、という女性の苦労が見え隠れするなぁといつも感じていたやつだ。

 

ああこれもう抵抗しても無駄なやつだな、と諦めサンダルにつま先を通し足首を留め、店員さんと天真爛漫三人に見送られながら、手を引かれつつ来た道を戻っていくことになった。

……あれ、これ、もしかして。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん!」

「トワと私に殿下たちの合作だがどうかね?」

 

急にセリを連れてどっか行ったと思えばゼリカの背に隠れていた見慣れない影をトワが背中を押して送り出してきて、さっきまでと随分違った格好になったセリに、思わず、固まっちまった。

 

清楚な白いワンピースドレスはシンプルなようでいてレースなどがふんだんに使われており、おなじテーマとして作られたんだろうボレロもワンピースを邪魔しない形で装飾が施されてて、もうオーダーメイドかってくらいきれいなんだが、ワンポイントとして中央に蒼い──俺の色の花が添えられている。

 

いや、おい、なんだこれ。

 

「……な、なんかいってよ……恥ずかしいから……」

「女性に恥をかかせるとは、と言いたいが、セリ、顔を上げてみたまえよ」

「え?」

 

ゼリカの野郎に促されて恥ずかしさから顔を伏せていたセリとばっちり視線が合っちまい、今の自分がめちゃくちゃになってる表情なんだな、ってのが間接的に解っちまった。

いや、好きな女のそんな(普段絶対に着ないだろう)かわいい服装を見せられたら誰だってこうなるだろうがよ!

 

「あまりにも可愛らしすぎて声が出ないとさ」

「クロウ君がここまで恥ずかしがるの実はなかなかないよね?」

「ああ、やっぱりこんなことだろうと思ったよ」

「時間稼ぎ助かった、ジョルジュ」

 

別に誰がいなくたってセリがいねえならどこにいくつもりも欠片すらなかったが、なるほど、と前髪をぐしゃりと崩し、ない呼吸を整える。いくら心臓が動いてないとはいえ驚くもんは驚くし、どぎまぎすりゃ声だって震えるっつうの。

 

「あーーー、ったく、こんなことするってことはセリ借りて行っていいってことだろうな! もう戻らねえぞ!」

 

叫んでセリの手首を掴み、慣れねえ靴を履いてっから速度調整はしっかりとしつつもその場から離れるように歩いていく……が「えっ、えっ、えっ」と困惑した声をあげながら俺と三人を見比べるセリに少しだけ歩調を緩めちまう。

 

「いってらっしゃい、セリちゃん、クロウ君」

「楽しんできてくれたまえ。後悔のないように」

「僕たちのことは気にしないで」

「……うん、ありがとう!」

 

背中に受け取った声でミシュラムデートをお膳立てされたんだと理解してくれたセリはそっと指を絡めるように俺の腕に寄り添ってきて、ああもう本当にかわいいな、と動いてないはずの心臓が締め付けられた。かわいい。

 

 

 

 

「ホラーコースターって射撃なんだ! ねえクロウと私なら最高得点取れるんじゃない?」

「お、いっちょ共同作業で最高得点塗り替えしてやるとすっか」

「……結婚式みたいなこと言うねえ」

「お前ワンピースは恥ずかしがるのにそこは恥ずかしがらねえのかよ!」

 

 

「鏡の城……私はいいかな。占い師の方が最奥にいるって言うし」

「そんな嫌いだったかよ」

「良くても悪くても囚われちゃったり恨んだりしかねないから」

「じゃあビーチの方行こうぜあっちもなんかやってるみたいだしよ」

 

 

「……マカロフ教官とメアリー教官だ」

「あの二人もようやく進展すんのかねえ」

「学院生時代はそうと思ってなかったけど、なるほどなってペアに思えてくる不思議」

 

 

「てもちはなび」

「かつて林業従事者で馴染みがないにしても発音ゆるくなりすぎだろ、ほら」

「あっ、なるほど、片方つけたらもう片方から火種貰えばいいんだ」

「おまえの反応って時々ものすげえ素直だよなあ」

「うん? ばかにされてる?」

「かわいいって話だよ」

 

 

「あ、そうだ観覧車乗りたい観覧車」

「そんじゃ戻るとすっか」

 

 

「あ、らぶらぶだし先輩かわいいじゃん」

「あはは、ありがとうフィーさん」

「俺のカノジョすげーかわいいだろ」

「クロウはドヤ顔しなくていいよ。先輩は単体でかわいいし」

「お前なー!」

 

 

 

 

「結構遠くまで見渡せるんだ。エルム湖もMWL側もどっちも綺麗」

 

道中会った学院生共ほっとんどにひやかされながら観覧車に乗り込み、向かいで窓の外に視線をやってたセリがにこりと笑って俺の隣に座り直してくる。……結構デカいと思ったがこうして二人座りすると意外に狭いっつうか密着するっつうか。なるほど恋人同士ののりもんだって言われる理由を体感してる。

 

「楽しかったね」

「ああ、アイツらに感謝しねえとなあ」

 

ぎゅっと手を握り合い、肩に預けられた頭に俺のも乗せてくすくすと笑い合う。ほんと、こうしてるとV組の俺に戻ったみたいだ。何も知らねえお前の横で心臓痛めてたあの日々に戻りたいとは思わねえが、あの日々が惜しくなかったといえば嘘になる。

 

「これからどうするよ」

「んー、観覧車からオルディーネが見えたし、挨拶しに行きたいな」

 

夜景を撮るためかARCUSIIを取り出したセリに、ああそうだ、と思いつくことがあって端末をねだると疑問符を浮かべながらも渡してくれた。これは俺の端末に保存するわけにいかねえからな、とカメラアプリを起動してセリを抱き寄せパシャリとシャッターを切る。

 

「……あんま写真撮らなかったよな、って思ってよ」

「たしかに」

 

撮った写真をアルバムで表示させ、驚きながらもかわいいセリと自分で言うのもなんだが緩んだ顔の自分が映ってて、どう見たってしあわせそのものだ。

 

「ありがとう。大切にするね」

 

俺の傍じゃないところで笑ってて欲しいなんて願いながら、こんな日に写真撮影なんて矛盾してるにもほどがあるってわかってるが、それでももう、俺に心を寄せ続けると決めたヤツを遠ざけるのはふざけてると言われたって仕方がねえなと諦めた。

なあ、俺のことを想いながら、長い時間をかけてちゃんとしあわせになってくれよ。

 

 

 

 

「おや、なかなか見ない格好をしているな」

 

エルム湖北西対岸、クロスベルの方を警戒しているオルディーネへ近づいていくと俺たちの気配に気がついたのか振り返られ第一声がそれだ。ったく、一体誰に似たんだか。

 

「えへへ、なんかみんな助けてくれて」

「うむ、それを"かわいい"と人は言うのだろう」

 

……俺が言えてない言葉をサラリと言いやがるし!

 

「ありがとう。問題はなさそうかな」

「ああ、いい夜だ。湖も凪ぎ、闘争の足音は僅かほども聞こえない」

「ま、明日になればそうもいかねえが、英気を養うにはもってこいってわけだ」

「静かに過ごせるよう尽力しよう。二人も、悔いのないように」

「おう」

 

オルディーネに労いをかけに行ったら激励を貰っちまって、さあ明日も早いしそろそろ就寝準備でもするか、とホテルへセリを送り届けに行くことにした。

鍵をフロントに預けてあるってんで受け取って扉の前まで向かうつもりだったんだが。

 

「ローランド様ですね。お部屋整えておりますのでどうぞアームブラスト様もご一緒に」

 

ホテルマンの妙な言い回しに、ん?、と二人で顔を見合わせつつ案内で後を追っていくとどう考えても二人用のセッティングがされている部屋で、こんなだったのか?、とアイコンタクトを送ると俺以上に疑問で満ち溢れてるセリの顔がそこにあった。

 

「どうぞごゆっくり」

 

パタンと扉が閉められセリがARCUS端末を開くと、そういうことか~!、と端末を両手で握りながらへなへなと蹲る。

 

「最初はちゃんと二人部屋にエキストラベッドが入ってたんだけどこれハメられた! 用意周到すぎる二人とも! というか部屋割り段階なんだから殿下もグルだ!」

 

つまりセリを騙すために本来使わないベッドを入れて三人部屋という偽装をした上で、俺たちがミシュラムデートをしてる間に全部の荷物を迎賓館側の部屋に運び込んだってわけか。

そんで俺たちがホテル側なのも、まあ、下世話な話もあるとはいえそういう想定をしてくれてんだろう。

 

「……ま、この際厚意は受け取っとこうぜ」

 

どうせ俺たちがこっから連絡を取ろうとしても狸寝入りを決め込まれるだけだしな。それなら親友共がよってたかって作ってくれたこのチャンスを無駄にする方がよくねえってもんだ。

 

「それも……そうだね」

 

うん、と意識を入れ替え立ち上がったセリの瞳にはもう罪悪感はなく、ぽすん、とクッションを抱えながらソファに座るから俺もその対面に腰掛ける。

 

「お風呂でも入っちゃおうかな。いろいろあって疲れたし、明日も早いし」

 

もにもにと抱えたクッションに頭を預けながら呟くセリに、もうここしかねえかと腹を括った。

 

「セリ、頼みがあるんだが」

「改まってどうしたの。どうぞ。聞くだけ聞く」

 

こういう時だからって流されたりして、なんでも、とは言わねえお前のそういうところが本当に好きだなと気持ちが余計積もっていく。どんだけ好きになれば感情って飽和するんだろうな、なんて馬鹿みてえに考えちまうくらいだ。

 

「お前を抱きたい」

 

だから、陽霊窟の前の晩に断られて、まあ人数がいたのもあってずっと抱きしめるだけに留めてた思いをぶちまけた。

でも今の俺にはいわゆる男の機能はねえし、性欲が弱いわけじゃねえセリにそういう意味で触れたら、余計辛くならせるだろうことだって、わかってて、それでも最後の最期におまえにふれたいと思っちまったんだ。

 

「……ありがとう、聞いてくれて」

 

言いながらセリはクッションを置きながら立ち上がり、俺の横に座り直してきた。

軽く開いた膝の上で握り込んでた拳にそっと小さな手が乗って、ふにりとやらかい身体が押しつけられる。

 

「いいよ」

「……本当にいいのか?」

「その、欲しくなること自体は許してもらいたいけど……私だってクロウにさわられたい」

 

泣きそうな顔で、だけど精一杯笑おうとしてくれるお前が、本当に健気で、愛しくて、嗚呼死にたくないって今更どうしようもない願いを抱いた自分に笑っちまった。




(原作の前日譚タイトルがあまりにもよすぎるのでそのままで行きました。)
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