器仗神殺の剣   作:てりのとりやき

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鏖(ミナゴロシ)
意味:皆殺し、皆殺しにする。「鏖殺(オウサツ)」。




 

 チェシャが器仗神殺の剣(ゼームレス)を抜刀した。

 それを見届けた直後、リーリェ・ヒプロメロォスが駆けた。

 女の脚力は初速時点で音速を突破し、光速の20%にまで到達している。

 人体認知不可能な速度領域。速さによって加算された衝撃が、女の流麗な構えを解いて放たれる袈裟懸けの斬撃に乗る。

 確実な致命の一撃――チェシャは捉えることすらしなかった。

 

「――」

 

 言葉はなく。静かに、右手で握る直剣を受け流す構えに変える。

 剣と剣が豪速をもって衝突し、リーリェの一撃は無数の火花を生み出しながらも空を切った。

 初撃は失敗か……リーリェは冷静に思考をまとめた。

 誰一人抜いたことのない『オブジェクト』、器仗神殺の剣。製作者であるハサキでさえもその能力を把握していないという剣の効力を試したくて、小手調べに以前までのチェシャなら追従できない速度の斬撃を見舞ったが、あっけなくかわされた。

 ――身体強化? だとしたらあまりにも弱すぎる(・・・・)

 その程度の力で全迷宮全層の破壊が成されるとは到底思えない。もっと何かあるはずだ。何か……。

 

「……?」

 

 と。リーリェは、秒と秒の間隙の中で、思わず疑問を覚えた。

 先ほど剣と剣がぶつかり合い、刃が剣身を走る事で生まれた火花。すぐさま散るはずの火花が、滞留している。

 宙に。ふわふわと。

 煌めく輝きは、通常の火花とはまるで違う。

 

「――――」

 

 リーリェの、大英雄としての本能が警鐘を鳴らした直後。

 チェシャがすぐ側にある火花に向かって、その奥に居るリーリェへと向けて、そっと息を吹きかけた――。

 

 

 

 瞬間、周囲の空間一体が爆ぜた。

 

 

 

 紅蓮の咆哮は既に後退を始めていたリーリェへと瞬きすら要さず到達し、女の右腕の肩から先までを食らい尽くす。

 

「――っぅ!」

 

 痛みですらない喪失が女の神経を蝕んだ。見る必要もなく、女の右腕は炭化(・・)溶解(・・)を通(・・)り越(・・)して(・・)消失(・・)して(・・)いた(・・)

 一体どれだけの熱量があれば、人体の一部を瞬間的な塵に変えるのか。そして何より先の爆発を起こしたのは、間違いなくあの火花一粒。

 この状況。これだけの超火力。かろうじて全身の爆撃を免れた女は、右腕を失いながらも、呆然と呟く。

 

「反物質……」

「へえ。そう言うんだ、これ」

 

 反物質。たった一グラムで星の重力を振り切るだけのエネルギーを生み出す、世の理においておよそ極限。

 それがチェシャの周囲に十三、浮いていた。

 まるで王の命を待つ精霊のように。

 

「まさか、その剣――!」

 

 言葉を最後まで続ける余裕はなかった。

 チェシャがちらりと、遠く離れた位置にいるリーリェへと視線を投げたのだ。――それだけで十分だった。十三ある反物質たちは一斉に、リーリェへと殺到しだした。

 女の精神は恐慌すら湧き起こす暇もなく。

 リーリェは自身が誇る最高速度の脚力を持って回避行動を始めた。

 つまりは光速の99%の速度域。その移動にかかる影響だけで大地に穴が開き、大量の土砂が幾つかの反物質を誘爆させた。その、直撃ではない爆発でさえ、リーリェの肉体のどこかしらにダメージを蓄積させた。

 一つ消え、二つ消え、四つ消え、六つ消え……十一の反物質をそうやってリーリェは消し飛ばした。既に女の左足は根元から削り落ち、その両腕は失われていた。

 残り二つの反物質を消し飛ばすため、リーリェは更に、付近にあった山脈を光速限界の脚力を持って蹴り飛ばし粉々にした。

 大量にばら撒かれる瓦礫の数々。いかに小粒の反物質と言えどかわせる密度ではない。

 視界全てを塗り潰す爆光がリーリェのすぐそばで起きた。

 ――耐えしのいだ。

 それだけの言葉がリーリェの内にあった。それだけの言葉しか浮かばなかった。

 僅か一秒以下の出来事だ。たったそれだけでリーリェは通常なら再起不能の重傷を負った。しかしリーリェとて常人ではない。だから、反撃を女の脳内が企てていた、その時。

 背後に熱量の膨張を感じた。

 

「――――」

 

 その、秒以下の時間を刻む中で、徐々に徐々にリーリェの皮膚を溶かし塵に変えていくソレが、今更反物質の粒以外のなにかだとは思えない。

 だとしてもリーリェには疑問が残った。

 確かに反物質二つは、物量で消し飛ばしたはずだった。でなければあれだけの爆発は起きていないだろう。

 であれば、一体何が、反物質にリーリェの背後へと跳ぶだけの移動を許したのか。

 光速の99%まで認識可能なこの眼を前にして。

 

「……!」

 

 まさか、という言葉を紡ぐ時間はなかった。

 リーリェの、決し(・・)て光(・・)速を(・・)超え(・・)られ(・・)ない(・・)脚力(・・)では回避不能な爆発が背後で起き。

 そして『オールエンドの大英雄』リーリェ・ヒプロメロォスの全身が塵と化し。

 女が死んだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「反物質の生成。それに超光速とは驚きました」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「なるほど。どんな効力を発揮する『オブジェクト』かと考えていましたけど、つまりはハサキ様の仰った通りということですね」

 

 女は――ソレは、つらつらと好き勝手な言葉を並べ立てる。

 それを聞くチェシャの顔には、特段驚きを感じている表情もなかった。

 

「0%を1%に変える剣。無か(・・)ら有(・・)を作(・・)る創(・・)造能力(・・・)……それも、当の本人は何を生み出したか理解すらしていない。素晴らしい」

 

 リーリェ・ヒプロメロォスの肉体は既に消失していた。脳も、心臓も、神経も、完全に燃え尽きていたというのに。

 だというのに女の声音はどこからか響いてくる。異常と言えば異常だが、そもそもリーリェは自身の右腕を一本増やすような女だった。

 きっと、肉体の消失など大した影響はないのだろう。

 

「あら。意外ですか?」

「まさか。図太いなって思っただけ」

「ふふ……。ねえチェシャちゃん。少し、私の事を語ってもいいですか」

 

 声は、懐かしむような笑い方をして続ける。

 

「私はかつて、迷宮攻略中に首から上を全損するような怪我を負ったことがあります。――いえ、怪我と言うのはおかしいですね。致命傷、即死、と言い換えるべきでしょう」

 

 普通の人間は脳を失えば死ぬのが道理だ。

 

「ですがその頃すでに私という存在は、自己は、不安定でした」

「あんた発狂してるのよ」

「ええもちろん。二千年の時はやはり残酷ですね。私の精神は随分前から、おかしい」

 

 チェシャの指摘をあっさりと受け入れた女は言う。

 

「……難なく首から上を再生させてしまった私はふと気付いたのです。私の思考は私の脳が行っているものではなかった。魂は、脳には無かったんです」

「……」

「では、“私”とは何処に在るものでしょうか――? 存在とは肉体を前提としたものなのか? では、肉体とはどこまでを指す? 原子の一粒に至るまでが“私”でしょうか、果たして私という形状はどこまでいったら私でなくなるのか? 答えは出ません。私の感覚では魂など認識できないのですから」

 

 そして、徐々に。

 チェシャの眼にも見える形で、異変は始まった。

 

「そして当人ですら知覚も理解もできないものは、幾らでも拡大解釈が可能です。ええ、あたかも人間が神を幻視するかの如く。想像は、常に創造を呼び起こすのです」

 

 ゆっくりと、脳らしきものが織られた。複層していく有機物たち。完全な形を得た脳から視神経が生え、眼球が精製され、更に脳の下部から太い一本の幹が――脊椎が生まれた。

 

「私の特異性はつまり、そういうことなんですよ」

 

 やがて神経は骨を覆い、筋肉を纏い、脂肪と内臓を生み出して。

 女は、チェシャの眼前十メートル先にて、美しい肉体を再び得た。

 ――だがそこで止まらなかった。

 

「……存在と自我の拡張」

「当たり」

 

 女の右肩甲骨。そこから更に、何かが生えた。蕾が花開いていくような光景に似て、折り畳まれた“何か”はゆっくりと、生えていく。

 柔らかな肌色。

 か細い上腕の骨。

 筋も少なく。

 五指はたおやかに、しかし握る剣は武骨。

 ――“何か”とは、女の右腕だった。

 だが、圧倒的に、長かった(・・・・)

 

「世の中には、頭の中に地獄を飼う人種がいます。私には飼えない怪物を住まわせる人種がね」

 

 成層圏すら突き抜けて。

 星々にすら届く右腕を。

 恒星を握り潰せるだけの手を。

 全てを割断する剣を備えた、この一振りの腕。

 

「チェシャちゃん。これが私の、想像しうる限界点」

 

 この肉体は不変にして不朽。

 無限の再構築と拡張が可能な自我を前に、超光速も反物質も、意味を成さない。

 『オールエンドの大英雄』は無限の復活と無限の調整を繰り返す、まさしく探索者の体現と知れ。

 ――だが、鏖殺者であるなら超えられるはずだ。

 

「直径14兆kmを誇る“私の右腕”を――」

 

 “絢爛の地下迷宮”最終層の半径を誇るだけ(・・)の右腕を。

 女はただただ、チェシャ・バイストィアへと向けて振り落とした。

 

「――オールエンドの一撃を、超えてみせなさい!!」

 

 裁定の一振りがそうして始まった。

 14兆km先の末端部分から、リーリェの右肩に生える根元まで、既に光速の99%にまで加速しきっている“右腕”。

 空間に与える影響は甚大を通り越している。宇宙空間を浮かぶデブリを次々に砕き、無数の惑星をも破砕して、ただ一点……チェシャ・バイストィアを潰すまで止まらない一撃だ。

 直撃したところで、既に不死(スレイヴイレス)を得たチェシャの肉体が滅びることはないだろう。

 ――だから、そう。

 この殺し合いに意味はない。

 だとしても、どちらかの優劣を決めなければ、前に進めないのだろう。――女も、私も。

 超越者同士の戦いとはつまるところ、相手を屈服させることに重きを置く。チェシャは今更そんなことを理解して。

 

「……」

 

 見た。

 自分へと降りかかる災禍、その形を。

 女の、祈るような表情を。

 自身が右手に握る一本の剣を――刻まれた言葉を。

 

 

 

 

 

 私の聖者。私の暗がり。私の構成要素。私の生涯。

 例え最後のための空虚な名誉だったとしても、私の死はあなたの終わりと共に。

 

 

 

 

 

 ゼームレス。

 ……願いは、確かに聞こえているから。

 すべて捉えて、チェシャは、心の中でのみ頷く。

 大丈夫。

 本当の意味で怖いものなんて、もうどこにもない。

 だから、理解できない力を振るおう。

 この先に何があるのか? チェシャには分からない。だとしても道はあるはずだ。ハサキが打ち、今自分自身が握るこの剣によって拓かれる道が。

 

「…………」

 

 見ててね、ハサキ。

 私はあなたの想いと共に超えていく。

 限界も。リーリェの思想も。わだかまる壁も、神も!

 剣を、大上段に構えた。

 理解不能な力は、――器仗にして神殺しの剣は、たったそれだけでチェシャの願いを叶えた。

 

「――――」

 

 剣の切っ先、その直線状すべての空間が歪む。

 歪みの発生源は剣だ。その剣の先端部から、光にも似て闇が生じた。

 闇は僅かな暗い瞬きと共に伸び。

 伸びて。

 伸び続け――やがて。

 

「――」

 

 全長――という物事の測りすら通用しない存在が、そこにはあった。

 黒く、ひたすらに黒い剣。……否。色素としての黒ではない。それは光すら吸い込んで離さないからこその漆黒だ。

 かの存在が意味成すところを、リーリェだけがこの場において理解していた。

 

「重力……特異、点……」

 

 如何な手段か、形状は剣。器仗神殺の剣、その末端から生じる黒一色の存在は、光を外界へと逃がさない絶対存在――重力特異点そのもの。

 黒く、扇平な形をした剣の末端はどこまでも無限に続いていた。

 

「全長30兆km超の、重力特異点を加工した剣――」

 

 速度も、質量も、ひいては熱さえ、意味を成さない極限。

 今この時、光と時空はすべてがチェシャの下位に立った。

 

「反物質の生成、重力特異点、超光速――!!!! これが鏖殺者、これが正確な虐殺(デッドセット)!」

 

 もはやその叫びは狂喜に近い。

 先の、ハサキの意思を理解した時と同じように、リーリェは哄笑を上げていた。

 

「この瞬間をずっと待っていたんです」

 

 チェシャの構えは変わらない。

 頭上へと掲げた剣は、重力を左右する剣は、ただ女だけを捉え。

 

「さあ、迷宮神話の殺戮を、始めましょう?」

 

 ――振り下ろす。

 

 

 

 一刀は軽々と宇宙生物――迷宮守護者を割断。

 恒星を二分割し、ありとあらゆる星を絶命させた。

 宇宙の各部で星の核が破壊される爆光を伴い、重力の剣は、リーリェの全長14兆㎞にも及ぶ右腕を真っ二つに引き裂き――。

 

 

 

 音は無く。

 長大な右腕を失ったリーリェは、その場にへたり込んでいた。

 星々の悲鳴が轟く天蓋を背に、ただ静かに立つ少女を見上げて。

 

「…………いいんですか?」

 

 呆然と、リーリェが言った。

 チェシャは頷いた。

 

「ずっと言ってるでしょ。戦う理由がないって」

 

 リーリェの眼前。鼻先数センチのところで、色のない黒をした剣が静止していた。

 振るいきれば、リーリェだけでなく、迷宮全体に確実な死を与えられた一撃だったと言うのに。

 

「ですけど、私は今後もチェシャちゃんを殺そうとすると思いますよ」

「だったらその度に半殺しにすればいいだけよね」

 

 言って、器仗神殺の剣から黒の闇が消え去る。少女が剣を鞘に収めるのを見て、思わずリーリェは笑ってしまった。

 

「昔から甘い子でしたね、あなたは」

 

 分割されてしまった恒星が急激な死を迎える中。消えゆく輝きを灯りにして、リーリェは立ち上がる。

 

「甘くていい。私はどこまでいっても私なんだってこと、忘れたくないから」

「……本当に甘いんですから」

「ふん。その甘さに救われたんだから、感謝しなさ……」

「?」

「なにあれ」

 

 チェシャは女の背後に異物を見つけた。

 それは、階下へと向かう階段だった。周囲を黒く切り取り、まさしく異物として存在している。

 無人の惑星にはあまりにも違和感の強い人工物。まるでつい今しがた現れたかのようだ。

 

「あれは?」

「ああ、あれ」

 

 リーリェはなんて事ないように答える。

 

「『十二分割された真理』で見ました。全ての地下迷宮の攻略が完了したときに出現する、13番目の地下迷宮――“六角魔女の迷宮”、その入り口でしょう」

 

 ふうん。

 先の一撃で迷宮守護者を切り裂いた結果だろうか。チェシャは曖昧に頷いて、側まで寄って来た女に尋ねる。

 

「あの先に何があるの?」

「さて。私はその未来を見ていません。もしかすると、世界の答えが眠っているのかもしれませんね」

「……長い旅になりそうね」

「あら。行くつもりなんですか?」

「むしろあんたは行かないの?」

「……。」

「私もあんたも、探索者でしょ」

 

 理由はどうあれそこに冒険があったから、ここまで来たんじゃないの。

 そういう意思を込めてリーリェを見上げた。年上の女は、困った様子でため息を吐くと、わざとらしく両の掌をチェシャに見せつける。

 

「私の完敗ですね」

 

 今度こそ戦闘の意思はなくなったのだろう。どこか晴れ晴れとした表情で、大英雄は微笑んでいる。

 それを確かに見届けてから、チェシャは歩き出した。

 先の、十三番目の迷宮へと続く階段へと。

 その後ろを追うリーリェが歩きながら言った。

 

「今でも信じていますよ。いつかチェシャちゃんが全ての迷宮を破壊すると。その時をこの目で見るまで、チェシャちゃんの側を離れるつもり、ありませんからね?」

「堂々とストーカー宣言すんな」

「……でも、一度地上に戻っても良いのでは? 十三番目の迷宮がどれだけ深いか分かりませんが、少しハサキ様に会うくらいの余裕はあると思いますよ」

「やっとやるべき事が見えたのよ」

 

 やるべきこと? 女の小首を傾ぐ仕草に、チェシャはついと目線を落とす。

 右手に握る鞘入りの勅剣。抜いた剣身を走る言葉を思い起こした。そこに秘められたハサキの飢えと嘱望を。

 

「私はハサキの神になる。本当の意味で、正真正銘の神様に。あの奥にはきっとその手段が眠ってる」

「チェシャちゃん。あなたまさか、『十二分割された真理』を……?」

「さあ。これ(・・)がなんなのかなんてわからないけど」

 

 たぶん、迷宮守護者を殺した瞬間だ。

 なにかがチェシャの中に流れ込んできた。情報の濁流とでも言うべきものが。

 具体的な形もなく、また、リーリェが見たという『未来』とも違うもの。

 『十二分割された真理』……。

 それはとても懐かしい世界だった。

 

「懐かしい過去を、思い出してたの」

 

 リーリェが理解できない様子できょとんとしている。それをおかしく思いながら、チェシャは足を止めた。

 目の前にある階段。

 この奥に待つものが何なのかは知らない。

 そもそも、迷宮とは何だろうか。

 世界には十二の迷宮しか無いのではなかったのか。こうして現れた、十三番目の地下迷宮へと続く階段が、一体何を意味するのか……。

 もしかすると神様が居るのかもしれないし、たった二人の探索者では殺されてしまうかもしれない。リーリェが突然殺そうとしてきたように、敵意しかないのかも。

 だとしても、まあ、大丈夫だろう。

 世界の真理より、たった一人の愛情さえあればそれで。

 

「ハサキ。もうちょっとだけ、待ってて」

 

 いつまでも神を待つハサキ・ノバク。

 私は必ずあなたの光になって、あなたの下に帰る。

 

「さあ行くわよリーリェ」

「なんだか鼻息荒いです~」

「なによ。誰も知らない冒険が待ってるのよ。ワクワクするでしょ!」

「チェシャちゃんはいつまで経ってもチェシャちゃんですねー」

「あんたのその、私を小娘扱いする喋り方、いつも腹立つんですけど」

 

 二人は言い合いながら階段へと足を踏み入れ。

 瞬間、女と少女の姿は掻き消えた。まるで最初からその世界には存在しなかったかのように。

 後には、死にゆく恒星と、光と輻射熱と重力の祝福を失った星系の死が在るのみ。

 

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