ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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 やっとこさ更新できました……。下手すりゃ1年空いてた……。


兵藤一誠と幽神正義、2人を合わせれば迷コンビ、『イッセーギ』の誕生だッ!?(後編②)★

「いんや〜、コイツはなかなかにマズい状況っスねー」

 

 リントが頭をポリポリかきながら言う。ユキノ達の方は(おおむ)ね大丈夫だが、問題は悪堵の方だ。……

 

 『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセントの斬撃は思った以上に斬れ味が鋭く、本体の戦闘力も高い。後手に回りきっていては勝てそうにない相手だ。

 

「悪堵パイセン。向こうからも爆発音とか銃声とか、いろいろ聞こえてくるンスけど。もしかしたら、こっち以上にヤバヤバな状況になっちまってるンスかね?」

 

「……あり得る。何せ兄貴と兵藤が同じ場所に居れば、それだけで何が起きてもおかしくねぇからな」

 

「そっスねぇ。しかも、そこにアーシアさんやジュビ(ねえ)さんが加われば―――それはもうTo◯◯ve(トラブ)る発生率がグンと跳ね上がるってもんですな」

 

「そんな事になれば、兄貴はガチモンの鬼になっちまうよなぁ……。味方殺しで全滅なんて笑えねぇよ……っ」

 

 悪堵の脳裏に(よぎ)るのは―――般若面を着けた正義が一誠を捕まえ、地獄の釜を沸かしながら拷問する光景……。

 

 一誠に対する理不尽な制裁は恒例行事となっているが、今の状況ではなるべく避けたい。悪堵はすぐにでも正義のもとへ向かわねばと、焦燥感を(つの)らせる。

 

 しかし、立ち塞がる『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセントはなかなか隙を見せず、逆にこちらが隙を晒せば……あっという間に致命傷を受けてしまうだろう。

 

「はい、お嬢さん。とりあえず応急処置するわよ。トップレスのまま戦えないでしょ?」

 

「私達の神器(セイクリッド・ギア)はどちらかと言えばサポート寄りだから、こういう時にしか発揮されないけど」

 

「あ、ありがとうございます……っ」

 

 そこへヒメガミ・フブキとフローラ・コスモスがやって来て、ウェンディに応急処置を(ほどこ)す。ヒメガミは神器(セイクリッド・ギア)―――『紙神の加護(クラフト・カルティス)』を発動し、包帯のように長い紙を創る。彼女の神器(セイクリッド・ギア)はあらゆる性質および属性の紙を召喚するだけでなく、様々な形状に作り替える事も出来る。

 

 まずは包帯のように変えた紙をサラシ代わりに、ウェンディの慎ましい胸元を覆い隠す。次にフローラが色とりどりの花を咲かせ、サラシに纏わりつかせる。

 

 フローラの神器(セイクリッド・ギア)は多種多様な植物を自在に召喚して操る―――『華々しく咲く戦華(ブルーム・ド・フルーレ)』。両者ともに創造系および召喚系の神器(セイクリッド・ギア)で汎用性も申し分無いのだが……。

 

「問題は、あの金ピカ刃に私達の攻撃が通用しそうにないって事よね」

 

「そうね、せいぜい足止めが限界かしら」

 

 ヒメガミとフローラが口元をへの字に歪めて言う。実際、牽制として2人は攻撃を放ったが……『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセントは両腕から伸びる鋭い刃で彼女達の攻撃を切り裂いた。現状ヤツとまともに(わた)り合えるのは悪堵ぐらいしか居ない。

 

 リントは頭をポリポリと掻いた後、悪堵に耳打ちする。

 

『悪堵パイセン、自分は正義パイセンのもとに行ってみるッス。多分ッスけど、こっちより向こうの方がヘルプ必要そうな感じがするんスよね』

 

『お前も気付いたかよ。……確かにコイツらと同じ気配が2体、あと1つは―――相当ヤバい気配だ。かなりの手練れと見て間違いねぇだろう』

 

 狩人(かりゅうど)の如く生活してきた悪堵は第六感を働かせ、危険性を察知。早急にでもその場所へ駆け付けたいところだが、眼前の(クレッセント)が邪魔してくるのは間違いない。

 

 リントだけでも援護に向かわせるべく、悪堵は行動を開始する。まずは……『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセントに向かって指をクイクイと動かし、まるで「かかってこいよ」と言わんばかりに挑発する。

 

 挑発された事がよっぽどムカついたのか、『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセントは殺意剥き出しで突っ込んできた。悪堵は左腕から針を連射。

 

 弾幕射撃で飛んでくる針。クレッセントは両腕の刃を振るい、全ての針を叩き落とす。その間隙を縫うように悪堵は逆の手―――右手で何かを投げつけた。

 

 狙いはクレッセントの顔面。飛来していく針の陰に紛れ込ませるように投げた物体は……見事クレッセントの顔面に被弾した。

 

 ベチャァッとへばり付くのは―――血の塊。悪堵は先程出していた鼻血を意図的に右手に溜め込み、ソレを投げ付けたのだ。通常の液体なら目眩まし程度にしかならないが、一定の粘度を含んだ液体は使い手次第で汎用性の高い飛び道具となり得る。

 

 更に目元へ投げ付けてやれば視界が塞がれ、僅かでも時間稼ぎが出来る。更に悪堵は追撃を開始。突き刺すように左腕を地面に叩き付けると―――2本の巨大な針がクレッセントの足の甲を貫く!

 

 針を地中に射出、遠隔操作したのだろう。クレッセントをその場に縫い付け、動きを封じた悪堵。更なる追撃を試みて駆け出す。

 

「それじゃ、ここらで行っときまスかねぇ。悪堵パイセン、少しばかり目隠しになっといてくださいな」

 

 同じタイミングでリントも素早く駆け出し、影の如く悪堵の背後にピッタリと張り付く。2人揃って突っ込んでいくが、ここでリントが隠し持っていた悪魔祓い(エクソシスト)製の銃を乱射。悪堵の身体で銃撃の射線と初動作を隠し、相手に読まれないようにする戦法だ。

 

 悪堵の背後から間隙を縫うように撃ちまくるリント。至近距離で何発も銃声が発せられる為か、悪堵は「喧しいなっ」と兜の中で顔を(しか)めつつ、オーラを纏わせた右拳を打ち込みに行く。

 

 足を縫い付けられ、その場を動けないクレッセントは腕から伸びる刃で迎撃。悪堵の右拳とかち合って火花を散らす。

 

「悪堵パイセンっ! すんませんけど、ちょっくら背中を踏ませてもらいまっス!」

 

「は? ぐぇっ!」

 

 背後にピッタリくっついてきたリントは軽快に跳躍。悪堵の背中を踏み台にして2人の頭上を跳び越えようとする。しかし、それに気付いたクレッセントは両肩の刃から無数の光刃(こうじん)を発射。空中では避けようが無い……。

 

「よっ、天界式スーパー錐揉み回転っスよ〜!」

 

 リントは体操選手の如く身体を(よじ)り、回転しながら飛来してくる光刃を紙一重で(かわ)す。全ての光刃を回避したリントが綺麗に着地する――――――が。

 

「ほいっと。100点満点の着地成功っス♪」

 

「お前なぁ、人を踏み台にするなら(あらかじ)め言eブシャァァァァァァァァッッッッ!」

 

 悪堵、突然の鼻血噴射(笑)。それもその筈、リント自身は光刃の被弾を避けたものの―――彼女の水着は端々(はしばし)を斬られ、肩の紐が完全に切れて(ほとん)ど半裸状態になっていたのだ。

 

 最初は頭に『(ハテナ)』を浮かべていたリントだが、視線を自らの肢体に移すとようやく気付く。

 

 「ありゃまぁ、これが噂の『ポロリ』ってヤツっスか。教会のお偉方が言ってた事はマジモンみたいっスね。―――『水着とポロリは標準装備みたいなものですよ』って」

 

「何を教えてんだっ、教会の上層部はぁ……っ!!?」

 

 間違った知識を教えた教会上層部に向けて怒りを飛ばす悪堵。しかし、リントは恥じらう素振りを見せずに告げる。

 

「ん〜、とりま正義パイセンの所へ助太刀(すけだち)ヘルプに行ってきまっス。悪堵パイセンは引き続き、その金ピカ刃くんを引き付けといてくだせぇ。それじゃ、行ってきバイちゃっス♪」

 

 リントは独自の造語を言ってから、軽快な足取りでその場を走り去っていく。悪堵は何がなんでも止めようとしたが……予定外の鼻血を噴射したせいで血が足りなくなり、足元がふらつく。

 

「ち、ちくしょう……っ。兄貴みたいに、輸血用の道具……常備しとけば良かった……っ」

 

 最近は免疫が付いてきたゆえの油断か、鼻血によるダメージが大きい。しかし、敵は待ってくれない……。クレッセントは好機と捉えて右腕の刃を頭上に掲げ、袈裟斬りで振り下ろす。

 

 凶刃(きょうじん)が悪堵に迫りくる刹那―――2つの蹴りがクレッセントの顔面を捉える! 重く鈍い音が響き、不意討ちを食らったクレッセントは仰向けに倒れ込む。

 

 悪堵の窮地を救ったのは……ウェンディとシャルルだった。2人は軽快に着地する。

 

「悪堵さんっ、大丈夫ですか?」

 

「まったく情けないわね、コレでウェンディの借りは返したわよ」

 

「さ、サンキュー……。2人とも助かったぜ」

 

 悪堵は失血のダメージを引きずりながらも体勢を立て直し、ウェンディとシャルルに礼を告げる。再び攻勢に転じようとしたが―――またしても悪夢(ハプニング)が……。

 

 ビリ……ッと何かが破れる音。音の発生源を見てみると、シャルルのスク水の前面が斜めに斬られており、丁度おっぱいに当たる部分が(めく)れていた……。

 

「マタカョブシャァァァッッッ!!?」

 

「ちょっ、助けてあげたのに死にかけってどういう事よ!!?」

 

「ひゃぁぁぁっ! シャ、シャルル! 隠してっ!」

 

 ウェンディが慌ててシャルルのおっぱいを手でガードするが、悪堵は再び鼻血を噴射してダメージ(笑)。シャルルは自分の格好にようやく気付いて、起き上がってくるクレッセントを睨み付ける。

 

「アイツ、レディの水着を斬る趣味でもあんの!?」

 

「シャルルっ、あんまり動いちゃダメ! み、見えちゃう!」

 

「そんな事言ってたら()られるわよ! ほらっ、もう何か構えてるしっ!!?」

 

 シャルルがそう叫んだ直後、クレッセントは両手両足から伸びる刃に危険なオーラを纏わせ、四方八方へ斬撃を繰り出す!

 

 三日月型の斬撃が無数に飛び交い、ウェンディとシャルルを斬り刻まんと飛来してくる。

 

「―――っ! ちょっとヤバいわね!」

 

「防ぎきれるかしら!」

 

 ヒメガミとフローラが同時に駆け出し、幾重にも防御壁を創り上げた。ヒメガミは無数の紙を具現化、盾や壁のように形作って硬質化させる。フローラも同じように鉄の如く硬い茨(いばら)を密集させ、茨の壁を形成。無数の斬撃が防御壁に衝突する。

 

 斬撃の弾幕を浴び続けた防御壁は次第に形が崩れ、斬撃の余波がウェンディ達の柔肌を傷付けていく。更にクレッセント自身も腕の刃に危険なオーラを纏わせ、横薙ぎの一撃を見舞った!

 

 その一振りで防御壁は完全に破壊され、ウェンディ達を後方へ吹き飛ばす。(かろ)うじて致命傷は避けられたものの、衝撃が強過ぎたせいで直ぐに起き上がる事が出来なかった。

 

 間髪入れず追撃を仕掛けようとするクレッセント。フローラは咄嗟にヤツの足下から鋼鉄の茨と、無数の食肉植物を召喚して動きを封じる。雁字搦(がんじがら)めに拘束したところをヒメガミが追い討ちをかける。

 

 紙を硬質化させ、刀、槍、手裏剣等々、あらゆる武器に変化させた物を次々と飛ばす。しかし、クレッセントは全身の刃を縦横無尽に振るって茨と食肉植物を斬り払い、飛来してくる武器の群れを斬撃で撃ち落とした。

 

 更にクレッセントは地を這うような斬撃を放って、ヒメガミとフローラを壁際まで吹き飛ばす。彼女達は寸前で防御壁を創り、直撃は(まぬが)れたが……衝撃の余波で身体が思うように動かせない。そうこうしてる内にクレッセントはウェンディとシャルルの方へと歩みを進める。

 

 ウェンディとシャルルは痛めた身体に鞭を入れて起こす。

 

「シャ、シャルル……っ。大丈夫……?」

 

「ええっ、何とかね。どちらかと言えば、ウェンディの方が大丈夫じゃなさそう……」

 

 シャルルの言葉に疑問符を浮かべるウェンディ。シャルルが指で胸を指し示す。ウェンディは自身の(つつ)ましい胸元に

視線を向けると―――サラシが細切れとなり、散っていた……。

 

「―――ッッ!!?!??!!? ひぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 

 ようやく自分の痴態に気付いたウェンディはトマトの如く顔を真っ赤にして悲鳴を上げ、両手で慎ましい胸元を隠す。しかし、敵は羞恥に(かが)む乙女を見逃したりしない。

 

 クレッセントは爆ぜるように地を蹴って駆け出し、右腕の凶刃でウェンディに斬り掛かる! 一拍遅れたシャルルは窮地に(おちい)った妹の名前を叫ぶ事しか出来ず、ウェンディも眼前まで迫りくる凶刃に対して反射的に目を閉じてしまう。

 

 振り下ろされる凶刃……直後、肉を斬り裂く不快な音……。飛び散る血飛沫……。

 

『―――っ。―――っ?』

 

 しかし、ウェンディは違和感を覚えた。凶刃が自分に向かって振り下ろされた筈なのに、斬られた感触が全く無い。疑問が尽きないまま、閉ざした目を開けてみると―――。

 

「………ッッ! 悪堵、さん……ッッ!!?」

 

 ウェンディの視界に映ったのは―――クレッセントの凶刃を自らの両腕で止める悪堵だった。禁手(バランス・ブレイカー)の鎧を纏った悪堵は交差させた両腕で凶刃を何とか止めているが、その刃は鎧を容易く破り、骨深くにまで食い込んでいた。

 

 痛みに呻き声を漏らす悪堵。それでも鋭い眼光で敵を見据え、腕に食い込んだ凶刃を逆に掴み返す! クレッセントは追撃するべく刃を引き抜こうとするが―――全く抜けず、どれだけ引き抜こうとしても動かなかった。

 

「痛ってぇなぁ……! 逃さねぇぞ、この野郎!」

 

 悪堵が両手の指全てに力を込めると、クレッセントの刃に亀裂が走り―――刃先がガラス板の如く儚い音を立てて割れた! 悪堵はすかさず左手でクレッセントの腕を掴み、空いた右手をグッと固めて拳を作る。

 

「俺は兄貴みたいに器用じゃねぇし、兵藤みたいに根性あるわけじゃねぇけどよ。誰にも負けねぇモンがあるとしたら、頭の硬さと―――この握力だッ!」

 

 クレッセントの頭部に悪堵の拳が突き刺さる! 1発、2発、3発と鈍く重い音を響かせ、更に頭突きも織り交ぜていく。数発食らっただけでクレッセントの頭部は形がひしゃげ、腰を入れた重い一撃によってクレッセントが大きく吹き飛ぶ。

 

 深く息を吐く悪堵。ダメージを与えたとは言えど、彼自身も相当な傷を負っている。特に両腕の傷は深く裂けており、直ぐにでも処置が必要なレベルだった。焼けるような痛みも走り続ける。

 

「あ、悪堵さん……傷が……っ」

 

「……なぁに、こんな傷、舐めときゃ治る」

 

 気休め程度に傷を舐める悪堵。ウェンディはまた自分のせいで悪堵が負傷した事に負い目を感じてしまう……。まともに戦えるのは悪堵のみ。ウェンディは意を決して―――慎ましい胸元から両手を離し、悪堵の両腕に魔力を送り込む。

 

「お前っ、何を―――」

 

「じっとしててください。私の風の魔力を……悪堵さんに付与します。少しでも痛みを緩和させたいんです……っ」

 

 ウェンディの真剣な表情を見た悪堵は鼻血を出す事も忘れ、彼女の献身的な治療を受ける。不思議と痛みが和らいで、腕に軽さが戻っていく。両腕に纏わりつく風は温かい鼓動を感じ、活力も湧いてくる。

 

「コイツはスゲェな……。痛みが引いていく。それどころか、妙に力も湧いてきやがる」

 

「私、こんな事しか出来ませんけど……」

 

「いや、充分過ぎる。助かったぜ。あとは任せな」

 

 悪堵は感謝を述べてウェンディの頭を優しくポンポンと撫で、ウェンディは頬を紅潮させる。起き上がったクレッセントが音を置き去りにするような速度で向かってくるが、悪堵は風の魔力が付与された拳打で迎え撃つ!

 

 凶刃と真っ正面から衝突し、そのまま拳打の乱れ撃ちを見舞う。お互いに一歩も退かない攻防を繰り広げ、風圧がウェンディの髪を靡かせる。

 

 シャルルが駆け寄ってウェンディの安否を確認し、安堵の息を漏らす。彼女の視線も悪堵の方に移り、目の前の凄まじい光景に釘付けとなる。

 

「さっきまでとは丸っきり別人じゃない。ウェンディ、あの変貌ぶりは―――ウェンディ?」

 

「…………」

 

「ウェンディ?」

 

「…………っ」

 

「もしも〜し。ウェンディさ〜ん? ちょっと、しっかりしなさいよっ」

 

「ひゃぁっ!!? あっ、シャルル! 大丈夫!?」

 

「いや、アンタの方が大丈夫? 顔赤くしてポ〜ッと見つめて……何か遭ったの?」

 

「なっ、何でもナイよ!? そ、それよりヒメガミさんとフローラさんも治療しないと! シャルル、手伝って!」

 

「え、えぇ」

 

 ウェンディは誤魔化すようにヒメガミとフローラの元へ駆けていく。そんな(ウェンディ)の分かりやす過ぎる反応にシャルルは意味深にニヤける。

 

『アレは……恋する乙女の顔ね。元々そうだったかもしれないけど、今ので完全に堕ちたってところかしら? フフッ、兄弟揃って罪作りなオスね』

 

 

 ―――――――――――――――

 

 

「んじゃっ、始めましょーやぁ」

 

 氷の銃口を向けながら宣戦布告してくるザミーゴ。彼の(そば)には『液体魔造兵(リキッド・ロイド)』ワーテルと、『樹木魔造兵(ウッド・ロイド)』モリゾウが控えていた。雄叫びを上げ、臨戦態勢を整えている。ザミーゴが空いた左手でワーテルとモリゾウに指示を送ると―――2体の魔造兵(ロイド)は殺気を剥き出しにして突っ込んで行く。

 

 標的は一誠と正義……ではなく、アーシアとジュビアだった。

 

「……ッ!? この野郎! またアーシアをっ!」

 

 一誠は怒声を上げながら2体を止めようとするが、ザミーゴの銃撃が行く手を阻む。撃ち放たれた氷の弾丸が地面に着弾すると―――氷の壁を作り、一誠を足止めする。一誠が憎々しげにザミーゴを睨み、対するザミーゴは撃ち終えた氷の銃をクルクルと回し、投げ捨ててから直ぐに新しい氷の銃を生成する。

 

「この状況でお姫様を助けに行こうってのか? ヒーロー気質だねぇ。でもよぉ……そいつは(みずか)(マト)になりますって言ってるようなもんだ。行きたきゃ行っても良いぜ? 俺は典型的な悪人だから、遠慮なく背中をブチ抜かせてもらうよ〜ん♪」

 

 クルクルと氷の銃を回すザミーゴ。氷の銃をもう一丁生成し、一誠に向けて銃撃を開始。一誠は氷の弾丸を跳んで回避するが……ザミーゴの氷銃は使い捨て式なので、直ぐに新しい氷の銃を生成しては発砲。無限ループによる弾切れ無しの射撃になす(すべ)が無い……。

 

ICE(アイス)を込めて 弾丸を〜♪ 大げさだけど 受け取って〜♪ 卑怯な〜んて 言わないでよね〜♪」

 

 ザミーゴはS◯perflyの名曲(アレンジ済み)をノリノリで口ずさみながらエンドレス射撃を続け、とことん一誠を妨害する。一誠は氷弾(ひょうだん)(かわ)すので精一杯。次なる替え歌は……奇天烈な大百科でお馴染みのヤツだった。

 

「いざ 撃ち抜け 心臓〜♪ 目刺(めざ)すわ 肝臓も〜♪ 茹でた〜ら 皮を剥い〜で グリグリと塩漬け〜♪」

 

「それ絶対にコロッケを作ってねぇナリィッ!!?」

 

「揚げれ〜ば コロッケだ〜よ♪」

 

「揚げれば何でもコロッケになると思うなァッッ!」

 

 余裕綽々の態度と替え歌にムカッ腹が立つ一誠だが、氷の弾幕射撃は途切れない。その間にもワーテルとモリゾウが攻撃を繰り出す。ワーテルは両腕から激しい水流を放ち、モリゾウは右腕を地面に突き刺し、幾重にも生えた樹木のトゲがアーシアとジュビアに襲い掛かる!

 

「水辺のジュビアは負けませんっ!」

 

 そう強く言い放つジュビアは手元と足下に魔法陣を展開。ジュビアが両手を頭上に掲げると、プールの水がジュビアの元に集まり―――まるで生物のようにうねりを上げ、やがて巨大な腕を形成する。ジュビアが手を振るうと、呼応するように水の腕が拳を作り、襲い掛かってくる水流と樹木のトゲを一挙に叩き潰す!

 

 ジュビアは更に追撃を開始。両手に水を集め、勢い良く振るうと―――水が無数の刃と化して、ワーテルとモリゾウ目掛けて飛んでいく。モリゾウは右腕を盾にして水刃を防ぎ、ワーテルは液体状のボディを利用して刃を受け流す。

 

 痛くも痒くもないと言わんばかりに誇示するワーテルとモリゾウ。ジュビアはムゥッと眉根を寄せるが、アーシアを庇うように歩みを進める。

 

「アーシアさんには指一本触れさせません。水辺はジュビアの独壇場、つまり―――水も(したた)る良いジュビアなのですからっ!」

 

 ジュビアがビシッとポーズを決めて謎の持論を言い放つ。そこへパチパチと手拍子を送るザミーゴ。

 

「健気なお嬢ちゃんだねぇ。泣かせるねぇ。感動しまくって涙がチョチョ切―――レィッ!」

 

 ドォンッッッ! わざとらしく涙を拭うような仕草を見せた直後、またも不意討ちの射撃でアーシアとジュビアを狙い撃つザミーゴ。だが、警戒していた正義は発砲前に駆け出し―――オッカマスとガチムーティの足を掴んだ。

 

 突然の浮遊感に2人は反応が遅れ、正義はあろう事か―――両者を棒の如くブン回して氷弾を打ち返した! 打ち返した瞬間、2人は「「ゴッピバァッッ!!?」」と奇声に似た悲鳴を発した……。ザミーゴは直ぐに新しい銃を生成して氷弾を撃ちまくるが、正義は演舞の如くオッカマスとガチムーティを振り回し、全ての氷弾を打ち返していった。

 

「嘘だろ……アイツ、ヒト(?)を武器にしてやがる……っ!!?」

 

「ヒュウっ♪ やるじゃねぇか。それなら追加でホクト―――じゃなかった。触手百裂拳だぁ!」

 

 氷弾だけでなく、ザミーゴの触手も一斉に襲い掛かってくる! 正義は先程手に入れた(?)ばかりの得物(?)を構えて迎撃態勢を取る。

 

「行くぞ。名刀『虹オカマ』、名刀『肉一文字』」

 

「「ゴペペペペッ……ペ………っっ」」

 

 ザミーゴの首元から伸びる無数の触手と、正義が振るう二振りの得物(??)が激しくぶつかり合う! 鈍い打突音と哀しげな鳴き声、血飛沫(ちしぶき)が辺り一面に飛び散る地獄絵図……。(幽神正義)怪物(ザミーゴ)による血も涙も無い打突の応酬が展開した。

 

 だが、相手の手数が多過ぎるゆえに得物(?)どもの耐久力が限界を迎え、しなびた植物のように上半身が力無く垂れ下がる。正義はボロボロになった得物(?)達を投げ捨て、次の得物(?)を調達しようとする。まずはエルゲロッペの足を掴むが―――。

 

「…………ブヨブヨで気色悪いッ!」「ブベェッ!!?」

 

 速攻で離した挙句、蹴り飛ばした(笑)。次に狙いを定めたのは……(かろうじて存在を認識できた)ジィミスンギ。細いがブヨブヨよりはマシだろうと踏ん切りをつけ、いざ足を掴んだ刹那―――ポキっと折れた。

 

「…………クズがッ!」

 

 罵声を吐き散らして投げ捨てる正義。その様子を見た一誠は『お前が一番のクズだと思うぞ?』と心中でツッコんでおく。

 

「チッ、もっと他に頑丈な武器(ヤツ)は無いのか?」

 

 周りを見渡す正義。彼が視界に捉えたのは―――無論、一誠だった。無言でズカズカと歩みを進め、「丁度良いのを見つけた」と言わんばかりに手を伸ばす。

 

 瞬時に危険を察した一誠は「ヒョォヮァッ!!?」と甲高い悲鳴を上げながら回避した。その後、何度も捕まえようとする(正義)だったが、一誠は巧みな動きで見事に躱す。

 

「……貴様、何故避ける?」

 

「避けるに決まってんだろ! お前、今なにしようとしたっ!? 絶対俺を次の武器として使おうとしてたよなっ!!?」

 

「よく分かったな、兵藤。貴様はたった今から名刀『変態丸』として初陣(ういじん)を果たし、目の前の敵を討ち取るんだ。そして、唯一無二の名刀となり、功績と共に後世まで名を遺す。ありがたく思いながら役目を(まっと)うするが良い」

 

「この鬼! 悪魔以上の悪魔! 鬼畜! 般若! 名付けのセンスも酷いけど、何よりお前の発想全てが酷いっ! ヒトをヒトとも思わない人権無視の蛮行祭り! 誰かぁっ! おまわりさんだけじゃない、弁護士も呼んでくれぇぇっ! 俺この場を生きて帰れたら、絶対に(コイツ)を訴えまァァァすッ!」

 

「はぁ……なんてワガママな奴だ。そこまで言うなら代わりの案を出してやる」

 

「ワガママって言葉を辞書で調べ直してくれ! そこに正しい意味が載ってるから! ……んで、代わりの案って何だよ」

 

「右腕、右足、左腕、左足、どれか1つ選べ」

 

「え、何その不穏な選択肢……っ。何をする気?」

 

「決まってるだろう、選んだ貴様の一部分を切り落として武器に使う。何か問題でもあるのか?」

 

「問題だらけだよっっ! いや、むしろ問題しか見当たらねぇよっ!!? なに真剣な顔で恐ろしいこと思いついてんだぁ!!? 俺の体はトカゲの尻尾みたく生えたりしないんだよぉっ!」

 

「まだ話の途中だ、最後まで聞け。そうして俺が使い捨てた後、貴様は落ちたブツを拾って急いでアーシアのもとへ行き―――元通りに繋いでもらう。そうすれば貴様の命は保証され、どれだけ切り落としてもアーシアの手厚い介抱を受けられる。俗に言うWin(ウィン)-Win(ウィン)ってヤツだろ、良かったな」

 

「何処がWin-Winンンッ!!? しかも、使い捨てる気満々っ! お前だけが一方的にWin-Winして、俺はLose(ルーズ)-Lose(ルーズ)してるだけじゃねぇかァァァッッ!」

 

「ほぉ、少しばかり英単語を理解できるようになったとは驚きだ。あとでバナナを買ってやる。それもプレミアムな品種だ」

 

「ウキィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ッ!!? 俺は猿じゃなァァァいッッ!」

 

「そうだな。貴様はどちらかと言えば……チンパンジー寄りのオランウータン、もしくはオランウータン寄りのチンパンジーだ。鼻の下が長い」

 

「どっちにしろ猿じゃねぇかァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッ!!!!!」

 

 一誠の怒声(笑)が響き渡り、ザミーゴは腹を抱えて笑う。

 

「ヤッベェなコイツら。下手な漫才コンビより面白(おもしれ)ぇぞ(笑)」

 

 ザミーゴは無数の触手を引っ込めて、氷の銃をクルクルと回す。どうやって攻めてやろうかと考察している最中―――一誠達のもとに助っ人(?)が颯爽と現れる。

 

「自分、参上っス」

 

 そう言ってポーズを決めるのはリント・セルゼン。しかし、今この場に於いて彼女の登場は何よりも悪手(あくしゅ)にしかならなかった……。何故なら、リントの水着は殆どの面積が破れており、ほぼ全裸に近い格好をしていたからだ。

 

 正義は般若面の目、鼻、口、あらゆる隙間から鼻血をブシャァァァッッッッと噴射し……そのまま崩れるように倒れ込んだ。一誠は「ウホッ!」と歓喜の叫びと共に鼻の下を伸ばし、鼻血も忘れずに出す。

 

「リ、リントさんっ! お、お胸が見えちゃってますぅ!」

 

「ジュビィっ!? 正義さまが打ち上げられた魚のようになってしまいました! リントさんっ、早く胸を隠してください! 正義さまが死んじゃいます!」

 

「アーシア姐さん、ジュビ姐さん。自分に抜かりは無いッス。こんな時の為に道中でタオルを拝借してきやしたからね」

 

 そう言ってリントが見せてきたのは―――明らかに小さいサイズのタオルだった。いざ巻こうとするが、やはり長さが足りないせいか、タオルの両端が背中まで届かない。前の方で留めるように巻き付けようとするが……それも叶わず。そこでリントが目を付けたのは―――打ち上げられた魚の如く、ピチピチと痙攣しながら鼻血の海上を漂う正義の腰にあったウェストポーチだった。

 

「正義パイセン、しっつれいしま〜っス」

 

 トテトテと正義のもとに駆け寄り、ウェストポーチを取り外す。ベルトの長さを調節してポーチ部分を背面に、ベルトの留め具を前面でカチッと合わせて装着完了。ベルトの部分が最低限の部分しか隠せてないので……上乳も下乳もハミ出している。

 

 あまりにもシュールなファッションに、一誠は思わず指摘する。

 

「いや、なんでそっち(ベルト部分)を前にしたの?」

 

「いんやぁ、ポーチの部分を前にすると動きにくそうな気がしまして。あと、アーシア姐さんやジュビ姐さんに負けないように、自分もセクシー路線を取り入れていこうかと」

 

『何だろう……。俺としては眼福で嬉しいけど、この()の将来がちょっと心配になってくるな……』

 

 恥じらう事無く、ズレ過ぎたセンスと肢体を披露するリント。その奔放ぶりに一誠はまるで『娘を心配する父親』のような苦悩を脳裏に()ぎらせた。いつかアーシアと子作りして、子供が出来たら―――なるべく正しい教育をしていこうと思える程に(笑)。

 

 そんな矢先、後方から「きゃあっ!」とアーシアの悲鳴が聞こえてくる。視線を移すと―――地面から伸びた蔦と樹木がアーシアに絡み付き、彼女を捕縛していた! 突然の事態にジュビアも驚く。

 

 実は―――モリゾウは足の裏から密かに根っこを地面の下に忍ばせ、気配を悟られないよう徐々に樹木を進ませていたのだ。樹木の魔手がアーシアの真下辺りに行き着き、タイミングを見計らって捕縛に動いた。アーシアの首、胸元、両手、両足に蔦が絡み付き、両手は頭の後ろで組んだ状態で拘束される。

 

 ……俗に言う『後頭両手縛り』である(笑)。

 

 扇情的な格好にされたアーシアは頬を朱に染めて、モジモジと身体をくねらせる。その光景に一誠は更に鼻血を噴射。

 

「なんて卑怯(ハレンチ)な野郎だっ! 俺ん()のアーシアに(エロ)い事してんじゃねぇっ!」

 

「赤龍帝の旦那、本音がチラチラと見え隠れしてるのは気のせいっスかねぇ?」

 

「ハハハッ、やっぱり金髪のお嬢ちゃんがアンタらの泣き所みてぇだなぁ? ダメだぜぇ? 大事なモンはちゃんと守らねぇとよぉ。そういうの悪党にとっては最高の獲物になっちまうからなぁ」

 

 ザミーゴは指をクイクイッと動かして指示を出し、意図を読み取ったモリゾウは蔦から無数のトゲを生やし、枝分かれしたトゲの切っ先をアーシアに向ける。

 

「ハイッ、これで立派な人質の完成〜♪ お前ら妙な真似は極力(きょくりょく)するなよ? 何かしようもんなら、金髪のお嬢ちゃんがグロいオブジェに変わっちまうぜ?」

 

 典型的な悪党のパターンを見せるザミーゴ。卑劣な手腕に一誠達は睨みを利かせ、歯を食いしばる。一誠は頭をフル回転させ、アーシアの救助方法を模索する。

 

 ―――そして、ある方法を思い付いた。

 

『……今なら大丈夫だよな? あの幽神()は今、鼻血の海に沈んでいる。少し気が引けるけど、これも大事なアーシアを卑怯者の手から守る為! つまり、大義名分はここに有り! 待ってろ、アーシア! すぐに助けてやるからな!』

 

 この後、一誠の行動によって理不尽の鬼―――幽神正義が更なる狂気を爆発させる……っ。




 やっと更新しましたが、内容を読み返してみれば『これならもう少し早く更新できたのでは?』と思ってしまう始末……。

やはりオリジナル回は描写が悩む上に、落とし所が難しいですね。

そのお詫びと言ってはなんですが、シド・ヴァルディのイメージイラストが完成しましたので載せます!


【挿絵表示】


さて、次回は般若……もとい、幽神正義がいろんな意味で暴走します(笑)
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