うぉっち・ざ・ぼっち!   作:鯖ジャム

86 / 86
ぼざろアニメ2期制作決定記念ストック放出


#AD2 vs伊地知(妹)

「ヌジェクパイセーン」

「んー? なぁにー衣久くーん……今なんて言った!?」

 

 ある日の昼下がりのことである。

 俺こと此崎衣久くん16歳は、結束バンドのリーダーである伊地知虹夏さん18歳に呼びかけた。

 なぜか上階の自分の家でなく地下の大人気ライブハウス”スターリー”のフロアに置かれた丸テーブルで勉強道具を広げている虹夏先輩に呼びかけた。

 

「すいません、勉強中に話しかけちゃって」

「いやそれよりあたしのことすごい変な呼び方しなかった!? なんか海外のサッカー選手にいそうな名前で呼ばなかった!?」

「呼んでないですよ」

「呼んでないかぁ」

 

 たぶんググってもヌジェクなんて名前のサッカー選手はいないですよ。ヤフってもきっといないと思います。

 

「そんですいません、なぜここでお勉強をなさっておられるので?」

 

 ともかく、本題はこれだった。

 なんでこの人、わざわざスターリーで勉強してるのか。

 

 対する虹夏先輩の返答は、驚くほどシンプルだった。

 

「ベーシスト出没」

「愚問でした。大変失礼いたしました」

「×2」

「お悔やみ申し上げます」

 

 死人は出てないか。

 ……いや、まだだ!

 

「……うおおおおおおきくりちゃん大好きだあああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「急にどうしたのこわいこわいこわ――……ぼっちちゃんの霊圧が……消えた……?」

 

 我が愛しき幼馴染を生贄に捧げることで、因果逆転の術は完成した。

 スターリーにあるスタジオの防音は完璧だ。その断末魔がフロアに聞こえてくることは一切なかった。

 

 ありがとう後藤、キミのことは忘れない――。

 

 ……よし、もういいかな。忘却。

 

「で、受験勉強、ですよね? お疲れ様です」

「あっうん、ありがと。ごめんね、掃除の邪魔だったかな?」

「いえ、その辺は後でさっとやるんで大丈夫ですよ。まだ全然時間ありますし」

 

 今日は昼間からスターリーに来ていた。

 バイトのシフトは俺と後藤と喜多さんの三人。

 バイトだけなら四時くらいに来れば大丈夫だったが、後藤が喜多さんとギター練習をするために早く行くというので俺も早めに参上したのだ。まぁ、割といつものことである。

 

 二人のギター練習にベースを持って混じれば一応メトロノーム係くらいにはなれなくもなかったのだが、お遊び気分になってしまいそうなので自粛。

 

 どうせ手持ち無沙汰だからと先にフロアの掃除だけでもと思って黙々と箒で掃き掃きモップで拭き拭きしていたのである。

 

 で、最初からずーっと虹夏先輩はいたのだが、あからさまにお勉強中だったので気を遣ってスルーしていたのだが、先の疑問がどうしても気になって尋ねてしまった、というわけだ。

 

「虹夏先輩、あんまり無理せんでくださいね。バンド練習に受験勉強、家事もあってベーシストの介護まで……」

「うん、まず一番最後のやつは切り捨てるから大丈夫だよ。家事も、実はお姉ちゃんがちょっとやってくれるようになってきて」

「それはダウト」

「いやいやホントだって……まぁいろんな意味で任せっきりにはちょっとできないんだけど……」

「あぁ……」

 

 納得した。あの日食べた手作りのカツ丼を俺はまだ忘れていない。

 

「……というか、それはこっちのセリフでもあるからね?」

「え? いや俺は何の嘘もついておりませんが」

「ダウトじゃなくって、無理しないでってところ。まぁあたしたちが引き留めておいてこう言うのもなんだけど、まさかストレイビートで働き始めるとまでは思ってなかったからさ」

「うん、我ながら思い切っちゃった感じはしてますね。とりあえず夏休み中は平気そうですけど……学校始まったらどういうバランスになるやら」

「勉強おろそかにしちゃダメだよー? 学生の本分なんだから……と、言いたいところだけど、結束バンド的にはストレイビートでマネージャーとしてメキメキ腕を上げてくれた方が……?」

「本音丸出しじゃないっすか。いや、確かにゆくゆくは、みたいな話もちょっとしてますけど、大学には行くつもりですよ。そこは方々合意してるところなんで」

 

 大学、大学なぁ……とりあえず進学したいとは母さんに言ったし、あの後父さんとも連絡とって少し話をしたけども、今のところ具体的にどこに行きたいとかないんだよなぁ。

 

「……ま、俺勉強できるんで、そこそこやってそこそこのところに入れるようにしますよ」

「うわー、嫌味嫌味。来年痛い目見るよー」

「いやもうそれより今は来月どうするかですよ……ぶっちゃけこっちの方に引っ越したいなってちょっと思ってたり」

「え、本気? ぼっちちゃん殺す気?」

「背に腹は変えられないかと」

 

 無限にある後藤の命と限りある俺の命、どちらが重いかは言うまでもない。

 

 ……が、今の時点では誰に相談してるわけでもないので、あくまで一つの案だ。

 ただ、本当に生活がキツそうだったら、俺は容赦なく後藤を見殺しにするつもりである。

 

「……うーん、まぁぼっちちゃんが可哀想だけど、それより衣久くんの身体が心配だし、しょうがないかなぁ」

「後藤の一人や二人、安いもんですよ」

「いやいや安くない安くない……あ、ひとりふたりと言ったら、ふたりちゃんにも反対されちゃうんじゃない?」

「あー」

 

 ある。大いにあるな。

 最終的にジミヘンをけしかけられて俺は死ぬかもしれない。なんで基本命の危険が伴うんだよ。

 

「とにかくまぁ、あれですね。お互い、無理せず頑張りましょう」

「うん、そうだね。頑張ろう! ほどほどに!」

 

 と、そんな感じで俺と虹夏先輩はぼちぼち頑張っていくことにしたって話。

 終わり。




次回、未定!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

再会した幼馴染が引きこもり寸前だったから面倒見る(作者:たーぼ)(原作:ぼっち・ざ・ろっく!)

▼ぼっち更生物語。▼のようなものでもあったりなかったりするかもしれない。▼ご厚意で描いて頂いたファンアートがあまりにも良すぎたので表紙として使用させていただく許可を貰いました。▼オリ主もいるから新規の人も容姿の目安として見てみてね。▼【挿絵表示】▼※男オリ主が出てくるので、それが苦手な方はブラウザバックをオススメします。


総合評価:34167/評価:9.17/完結:143話/更新日時:2025年10月15日(水) 20:00 小説情報

【完結】俺の姉貴はやべーヤツ(作者:わへい)(原作:ぼっち・ざ・ろっく!)

山田の弟が色々がんばったお話


総合評価:16145/評価:8.96/完結:98話/更新日時:2024年07月05日(金) 21:03 小説情報

めしくい・ざ・ろっく!(作者:布団は友達)(原作:ぼっち・ざ・ろっく!)

▼「今お金無いからご飯作って」▼ 定期的に飯を食いに我が家を訪れる同級生――山田リョウと、俺のお話。▼


総合評価:18497/評価:8.46/連載:86話/更新日時:2025年02月16日(日) 14:39 小説情報

逃げるは恥だが鬼は死ぬ《完結》(作者:ラゼ)(原作:鬼滅の刃)

絶対に戦おうとしない主人公が、なんやかんやで鬼殺隊と関わっていく話。回避力全振り。戦わないけど煽る。全力で煽る。


総合評価:39522/評価:8.96/完結:20話/更新日時:2021年02月27日(土) 07:45 小説情報

真・恋姫†無双〜李岳伝〜(作者:ぽー)(原作:真・恋姫†無双)

現代日本から、なぜか女性ばかりの三国志の世界に転生し、乱世を生き抜く一人の少年の物語。姓は李、名は岳、字は信達。生まれ落ちたのは漢の天下の最北端、匈奴が治める大平原……  ※真・恋姫†無双の二次創作です。オリキャラたくさん出ます。雑な歴史考察と捏造に溢れかえっております。お気をつけ下さい。にじファン閉鎖に伴い移転させていただきました。▼「小説家になろう」にて…


総合評価:55493/評価:9.18/完結:186話/更新日時:2025年09月21日(日) 22:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>