ナーヴギアで焼き芋作ったら日本を救えたらしい   作:エヴォルヴ

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好評なら続く。

あと、色々整理していきますんで、消えていても悪しからず。


1.ナーヴギアでさつまいもを焼いた男二人

 それは、冬迫る秋の日。俺は友人と共に気まぐれでやっていた動画のライブ配信をやっていた。

 

「やぁ皆! 僕、ミッ────」

 

「言わせねぇぞ!?」

 

「HAHA!」

 

 しょっぱなからチャンネルと社会的地位を殺しにかかってくる友人にツッコミをかます。腐れ縁だとはいえ、なぜこんなやつと三年以上も関わり続けているのだろうか。

 

「キリちゃんに怒られたところで、ハロー皆さん! おはようの人はいない? ああ、いないか!」

 

「キリちゃん言うな」

 

 ゲラゲラと笑う彼は、なぜか持ってきているさつまいも……安納いもをジャグリングしながらカメラに笑顔を振り撒いた。

 

「いつでもどこでもあなたの横にやってくる! 呼ばれなくてもやってくる! あなたの助言者暴走機関車トーマスだよ! そして横にいるのが────」

 

「毎度お馴染み、トーマスのブレーキ役兼常識人、キリトだ」

 

「貴様のような常識人がいてなるものか!」

 

「お前だけには言われたくねぇよ!!」

 

 毎度お馴染みの挨拶をした後、コメント欄を見る。クライン、ミト、アスナ、ザザ、シノン、フィリア、エギル、ユウキ、アイコなど、いつも通りといった感じの視聴者が来ているようだ。

 俺とトーマスがこんな動画を配信し始めたのは、さっきも言った通りただの気まぐれ。一年前から昔流行ったゲームの実況や歌のカバー、トーマスの突拍子もない大実験などをトーマスと一緒に始めたら、意外にもチャンネル登録者が伸びて、今では約二百人程度のチャンネル登録者がいる。

 

 今日のライブは俺達の撮影風景を見せるためのライブだ。前々から「二人はどんな感じで撮影してるの?」とか「撮影風景を見たい!」みたいなコメントは来ていたから、丁度いい……ということでライブ配信をしているというわけだ。

 

『Hello,Friends.俺は今日から長期休暇だが……二人は?』

 

「あらスパチャどーも、PoHさん。今は長期休暇? いいなぁ! 俺達学校だよ学校!」

 

『へへっ、俺もネトゲ仲間の連中と長期休暇だな!』

 

「社会人、大変だろうけどこういう時はいいなぁって思うな……羨ましいぜクラインさん」

 

 俺とトーマス────遠間瑞理(とおますいり)はまだ中学生だからな……明日から配信開始のVRMMO、《ソードアート・オンライン》をオールログインできないのは悔しすぎる。

 

「で、今日は何やるんだ?」

 

「俺が考えてきた。任せろ」

 

「さつまいもが見えてる時点で不安しかないが聞かせてみろ」

 

 コメント欄からも不安しかないという声が上がる中、トーマスは楽しそうな笑顔を浮かべて、さつまいもを掲げた。

 

「さつまいもってさ」

 

「おう」

 

「焼くと美味いじゃん」

 

「おう」

 

 焼き芋を大量に作る企画でも持ってきたのだろうか? トーマスにしては中々大人しい企画な気がするが……まともであるならどうだっていい。

 

「ナーヴギアってさ、凄いバッテリーあるらしいじゃん?」

 

 ────そう思っていた時期が、俺にもありました。

 

「何やらかすつもりだトーマス!?」

 

「まぁ、聞きなさいって。昔、あったじゃん。電子機器使って目玉焼き作るやつ。だからね────」

 

 その邪悪な笑顔を見て、誰も恐れを感じないわけがないだろう。

 

「キリちゃんのナーヴギアを使って、焼き芋を作ろうと思うんだ」

 

「ちょっと待てぇええええ!!?」

 

 思わず叫んでしまった。父と母と妹が買い物に行っていて本当に良かったと思うほど、絶叫してしまった俺はなぜか耳栓をしていたトーマスの体を揺らした。

 

「なんでナーヴギアで焼き芋なんだよ!?」

 

「あれ? 先週焼き芋食べたいって言ってたじゃん。だから親戚から安納いも送ってもらったんだけど」

 

「言った! 確かに言ったけどさ!?」

 

「焼き肉の方が良かった?」

 

「俺のナーヴギアをなんだと思ってるんだ!?」

 

「……調理器具?」

 

「ゲーム機だよ!?」

 

 不思議そうに見るなよ! 当たり前のことだろうが!? なんでこいつはナーヴギアを調理器具だと思ってんだよ!? ナーヴギアは電子レンジでもトースターでもないぞ!? 

 

「もー、しょうがないなぁキリト君はぁ……と、いうわけで俺のナーヴギア持ってきてます」

 

「八万円のゲーム機をなんだと思ってるんだお前……」

 

 いや、言ってたわ。調理器具だと言ってたわこいつ。ナーヴギアの開発者である茅場晶彦も、まさか調理器具にされるとは思ってなかったと思う。

 

『トーマス君の暴走は今に始まったことではない気が……』

 

「やめて、アスナさんやめて。俺もそう思ったけど」

 

『でも真面目に相談に乗ってくれることもあるのよね……』

 

 そう、トーマスは真面目な時はとことん真面目なのだ。いじめへの対策やボランティア活動……中学校の空き教室を占領して悩み相談事務所なるものも設立して、超が付くほど中学では有名になっている。

 

 ネットでも俺との共有アカウントで個人的な悩みを言えずにいる人から話を聞いて、秘匿する弱音の吐き場……みたいなものも無償でやっていて、ネット界隈では「弱音を吐くならキリトーマスの部屋ってアカウントを探せ」なんて言われていたりするそうだ。

 

 重い話から軽くて他愛もない話まで、どんな話でも聞いてくれるということで名が通っているらしい。

 

「あっはっはっ、最近はやってないけどね! ほら、殺害予告とかされたことあったし! それはさておき、焼き芋するために用意するものはこちら!」

 

 取り出したのはアルミホイル、さつまいも、懐中電灯、各種ドライバー、備蓄用バッテリー。

 

「キリト、ナーヴギアに懐中電灯当て続けて」

 

「はぁ……了解」

 

 ここまで来たら、もうトーマスは止まらないし止められない。ドリルに牛乳取り付けて回したらバター作れる説とか、どちゃくそに熱い液体の上にフライパン置けば焼き肉できる説とかやらかすからなこいつ。

 

 器用にナーヴギアを解体していき、大容量バッテリーや基盤を見つけたトーマスは、作業で疲れたのか目を細めた後、鼻歌交じりに焼き芋の準備を開始した。

 

「ナーヴギアに、アルミで包んださつまいもを突き刺します」

 

「冒涜的すぎる……」

 

「続いて万が一のために我々の体を守る防具を用意します」

 

「絶縁素材を使った手袋、防護眼鏡、革エプロン……お前の鞄、なんでも入ってるな」

 

 四次元ポケットか何かなのかと思うくらい色んなものが入っている巨大な鞄から防護服を取り出し、装着した俺達は、運命の瞬間を見届ける覚悟を決めた。果たして生のさつまいもは、ナーヴギアで焼き芋に変わるのか。

 

「電源スイッチ、オン!」

 

 元気よくナーヴギアに電源を入れた瞬間────ナーヴギアがまるで爆発を起こしたかのような爆音を鳴らし、同じく爆音を鳴らしたアルミに包まれたさつまいもからは、甘くて香ばしい匂いがしてきた。

 

「「……」」

 

 その結果に、俺達は何も言えない。トーマスも失敗すると思っていたらしい。

 

『は?』

 

『え……爆発、したよね……?』

 

『ヤバくね……?』

 

 コメント欄が新幹線のように動いていく。そのどれもがナーヴギアに人体へ被害を与える危険性があるのでは、という可能性を探るコメントばかりである。

 

「……ト、トーマス……」

 

「……マジかよ。……キリト!」

 

 まさかの展開に混乱していた俺だったが、トーマスの切羽詰まった声にハッとして行動を始めた。

 

「これってどうすりゃいいんだ!?」

 

「馬鹿野郎お前、拡散すんだよぉ! 配信見てる皆もやってくれ! 中身開けた以外で何もしてないのに爆発はやべぇって! 見ろこれ! ホクホクの焼き芋じゃねぇか!?」

 

「わぁ、ねっとりホクホクの焼き芋……って嘘だろ!?」

 

 俺もトーマスもコメント欄も大騒ぎである。俺とトーマスは予想外すぎる結果に大慌てし、コメント欄ではナーヴギアの危険性とその可能性を拡散するための大騒ぎだ。

 

「あちっ……不良品だった可能性は……ほふっほふっ……! あるけど……美味……!」

 

「食っとる場合かァ! ってあっづ!? 美味!?」

 

「なー。安納いも超うめぇ」

 

 安納いもなんて中々食べられるものじゃないからな……ってそうじゃない。焼き芋は美味いがそうじゃないぞトーマス。

 

「チャンネル削除ありえるぞこれ……」

 

「いや、さすがにないだろ……ないよな?」

 

 不安になってきたぞ……焼き芋食べて心を落ち着かせるんだ……美味いなこれ……遠赤外線で焼いたらさらに美味しいと思う。公園で許可もらって焼き芋やろうかな……今度の企画はそれでいいや。外来生物捕まえて食べる企画でもいいな……大人の人連れてこないとダメだけど。

 

「で、真面目にどうするよ、これ」

 

「警察に通報……は、ねぇな。業者に連絡……しても揉み消されそう」

 

『大人への信頼の低さに草を生やすしかない。火傷とかしてねぇか?』

 

『Japanってのはそんなに大人が信用ならねぇのか? ところで漏電で感電しないようにな』

 

『とりあえず消費者庁に連絡しとけばいいんじゃないか? それと、もっと安全を期するべきだったな』

 

「ネットの大人が優しい」

 

 俺がネットの大人達の優しさに震えていると、隣で焼き芋を頬張っていたトーマスがペカーッ! という効果音が付きそうな笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「よし、トラブルがあったけど、企画はここまで! あとで編集して投稿するよ! 次回は……キリト、どうしよっか?」

 

「ソードアート・オンラインやってみた! って配信か動画を出そうと思ってたんだけど……」

 

「肝心のナーヴギアがこれじゃあねぇ……何かあったら怖いので別の企画を考えよう! ってことで、リクエストある?」

 

「いっそオフ会とかやるか? ……いや、中学生がオフ会主催とか何あるか分からないから止めとくか」

 

 暗い話にならないように話題を変えたトーマスに乗っかる形で提案する。

 

「さすがにねぇ……高校生になってからじゃないと不味くない?」

 

「だよなぁ」

 

『外来種企画とかはどうだ?』

 

「お、ザザさんスパチャあざす。ねり飴買うのに使わせてもらいますわ」

 

『ねり飴とか、汚れんじゃん』

 

「お? 喧嘩か? ジョニーさん、買うぞ?」

 

 ねり飴派に喧嘩を売るとは、さてはジョニーさんえびせんべい派の人間だな? 

 

『僕としてはオールダンス企画もう一回やってほしいな!』

 

「「意外! それは拷問!!」」

 

『分かる』

 

『汗だくでも笑顔な二人は推せた』

 

『さすがの体力だとは思ったな。サバイバルに興味はないか?』

 

「あれぇ!?」

 

 馬鹿みたいに人気があるぞ二十四時間ダンス配信! あれだけなぜか視聴率滅茶苦茶伸びたんだよなぁ……人間って、誰かが苦しんでいる姿を見て快感を覚えるようにできているのかもしれない。じゃないと色んな作品で悪役とか生まれないだろうし。

 

「む、むむ……どうするよキリト」

 

「一旦持ち帰る、それでいこう」

 

『逃げた』

 

『逃げたわね』

 

『逃げるなアア!!』

 

『古戦場から逃げるな』

 

『ダンスから逃げるな』

 

『古戦場から逃げるな』

 

「「やめろ、もう十天衆の限界超越は終わったんだよ」」

 

 苦行だったが。

 

 この後、安価やって次の配信は保護者と生物の動画を上げている大人の人同伴外来種捕食企画となった。

 

 ブーイングはあったけど安価は絶対なのである。

 

 

 

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